山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

ごみ処理にかんする山形市からの回答:山形市公式ホームページ「みんなの意見・提言コーナー」への投稿 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 平成29年6月18日、山形市公式ホームページ「みんなの意見・提言コーナー」宛に意見を寄せた市民がいらっしゃいます。ごみ処理に関する内容でしたので、投稿者のご了解を得て、掲載させていただきます。

 その意見に対し、同年7月19日に山形市より回答がありましたので、併せて掲載致します。

 山形市のごみ処理は、山形市を中心とする2市2町(山形市上山市山辺町・中山町 )で構成される山形広域環境事務組合によって管理、運営されており、現在山形市の2か 所(蔵王半郷地区・立谷川地区)において、ストーカ式炉が稼働しています。

 各市町から排出される燃えるゴミの比率は、8 : 1 : 0.5 : 0.5であり、山形市から排出されるゴミが、全体の約8割を占めていることが分かります。

 しかし、どちらの炉も老朽化が著しいということで、これまで約17年に渡り、新たな 炉の建設計画が進められてきました。これまでの候補地では5回の反対運動が起こり、 上山市川口は5回目の反対運動になります。そのような中、現在建設が行われているのは、 山形市立谷川(従来のストーカ式炉隣接地)と、1年遅れで上山市川口ということになります。

 2市2町の「ごみ処理基本計画(5年毎に更新)」を見ると、いずれも熱心にゴミ減量と 分別、リサイクルに取り組んでおられ、循環型社会形成に向けてよい方向に進んできたことが伺えます。山形市では、個人、団体、事業者で構成される「ごみ減量もったいないねット・山形」が行政と共に活動を続けており、「ごみ減量」と「資源の再利用」を推進するために活動し、実績を上げています。

 しかし、この2市2が導入決定した「ガス化溶融炉」は、従来型のストーカ式炉より も更に高温で燃焼するため、これまでの燃えるごみ(紙・生ごみ・布など)の他に、プラ スチック類も燃焼可能ということで、これまでの基本方針が変更され、ごみ量が増加に 転じることが予想されています。これは、ごみ減量の目的に相反することではないでしょうか。

 この投稿は、そのあたりの矛盾点について、山形市の担当課に尋ねた内容ですが、 残念ながら、その矛盾点について明快な回答にはなっていないことを残念に思います。

 守る会では、現在稼働している山形市半郷・立谷川焼却場に関する焼却ごみのついてかつて情報公開請求し、膨大な量の処理実績データを入手し、専門家に分析をお願いした結果「2市2町の燃えるごみは、人口の自然減少や市民のごみ減量努力が功を奏し、順調に削減されており、今後焼却場は1か所で済む」という結論に達して、その論文を組合管理者並びに山形県知事へ提出しております。

 またこの投稿では、「エネルギー回収施設」と銘打ちながら、 実際は地域にそれほど還元されないのではないか、と疑問を投げかけていますが、それに対しどのようにエネルギーを還元されるか回答がありません。
 ●守る会による組合事業の調査では、発生する廃熱エネルギー利用として
  1 焼却施設内での使用(具体的内容は不明)
  2 電気自動車への利用(具体的内容は不明)
  3 施設までの上山市道の一部融雪利用(冬期のみ)
 とされており、周辺地区へエネルギーを還元するとは記載されておりません。

 今回の山形市からの回答により、「ごみ削減を目指しながら、(炉の性質上、燃やし続けなければならないため)大量のごみが必要とされる焼却場が2か所必要なのか」という大きな矛盾に、これらを推進する山形市自体が回答できないことが明らかになりました。


「みんなの意見・提言コーナー」への投稿と回答

投稿:公称「エネルギー回収施設」は市民のゴミの分別と減量の努力を無駄にし、分別意欲を低下させる施設になるのでしょうか。                               

 立谷川の清掃工場が新たに建て替えられ、10月に稼働すると新聞報道がありました。また半郷清掃工場も老朽化のため、それに代わって上山市南部に新たに建設が進められ、それは米沢・東京方面に向かう列車や新幹線の車窓からも間近に工事の様子が覗えます。

 しかし山形市役所と山形広域環境事務組合のホームページを拝見すると、どちらも「清掃工場」とは称しないで、「エネルギー回収施設」と称されており、これが正式名称になっているようです。現在の立谷川と半郷の清掃工場は4月から広域環境事務組合に移管なったようですので、新施設も事務組合の所管になりますが、山形市役所内には「ゴミ減量推進課」という部署があり、文字通りゴミの減量化を目指す仕事をされながら、事務組合のホームページを見れば、新しいエネルギー回収施設はプラスチック類の搬入が増え、むしろゴミの増量を招く施設のように思われ、山形市と広域環境事務組合とは真逆の方向性にあるようなので、整合性の有無についてお伺いさせていただきます。

 「エネルギー回収施設」という呼称から連想されるのはゴミの焼却熱を活用しての発電施設のようで、毎日膨大な量のゴミを焼却すればかなりの電力を一般家庭や事業所に供給できるようなイメージです。しかし広域環境事務組合のホームページで見る限りは電力の供給は施設とその敷地内に限られ、発電施設としてはかなり小規模で、あくまでも施設の主力事業はゴミの焼却(正確には溶融)のようで、「エネルギー回収施設」という呼称はかなり実態からかけ離れているのではないでしょうか。

 そして、施設の本体は「焼却炉」というよりは「流動床式ガス化溶融炉」ということのようで、プラスチック類の焼却に伴い発生し易い有害なダイオキシン類の発生を極力抑制するために従来の焼却炉よりもかなりの高温で溶融するようです。つまりは、それだけ燃料費がかかるので、その代わりに焼却すればかなりの高熱を発するプラスチック類が事実上の補助燃料として“歓迎”されることになり、それゆえ多ければ多いほど効率的になるようです。

 また、ペットボトルも炉に投入すれば高温燃焼しそうです。むろん、プラスチック類ほどでなくとも紙類も多いほど望ましく、ナマゴミさえ敵ではなくなりそうです。こうなれば、過去何十年にもわたって廃棄物の分別を徹底化してきた市民の努力は何であったのかということになります。 また、両施設とも効率的運転の維持のために24時間稼働とのことです。つまりはそれだけ「燃やせるゴミ」の量が必要になるように思われます。 山形市役所には「ごみ減量化推進課」という部署があり、市民からなる「もったいないネット」という組織もゴミの減量化運動により協力しており、その他の一般市民も日常的にゴミの分別と減量化に努力してきましたが、二つの「エネルギー回収施設」が完成のうえ稼働すれば、むしろ分別は疎かになるだけでなく、「ゴミの増量」が推進されることになりかねません。それで、10月からの立谷川での稼働開始を前に、燃えるゴミ(「燃やせるゴミ」と申した方が適切だと思います)とプラスチック類、ペットボトルは従来通り分別の徹底を求められるのか、それとも分別は縮小で再編集されるのか、または同じ袋に入れてもよろしいのか、お伺いしたいと思います。 ※個人的には従来どおりに、分別回収して資源化し、ごみ減量化推進運動に官・民ともに協力し、清清しい空気の山形・2市2町広域の環境を守ることをめざす選択も検討すべきと考えております。多額の税金を燃やすごみ処理に費やす政策から、いかにして燃やさず処理するかに知恵をしぼる政策を進めていただきたいと思っております。 以上のように私は「エネルギー回収施設」という呼称に違和感がありますし、また、ゴミ減量化とは裏腹のゴミ増量化に転換しそうな予感がありますので、山形市と事務組合から納得のいく回答をいただきたいと思います。

Eメールによる山形市からの回答:

-----Original Message-----From: 広報課
Sent: Wednesday, July 19, 2017 4:23 PM
To: *****@*******
Subject: 山形市公式ホームページ「みんなの意見・提言コーナー」への投稿に対する回答について

****様

 このたび、本市ホームページ「なんたっすやまがた」の「みんなの意見・提言コーナー」にご投稿いただきありがとうございます。

さて、平成29年6月18日にいただいた、ご意見ご要望、お問合せについて、大変遅くなりましたが、以下のとおりお答えいたします。

 平成28年度に山形市の家庭から排出されたごみは、燃やせるごみは42,808トン、プラスチックごみは1,674トンで、有料化以前の平成21年度に比べ、燃やせるごみは5,343トン、プラスチックごみは508トン減少しています。

 現在、燃やせるごみは清掃工場で焼却しておりますが、プラスチックごみは、立谷川リサイクルセンターに搬入後、民間施設において焼却、または一部固形燃料化によるリサイクルが行われております。

 新たなエネルギー回収施設では、これらのプラスチックごみを環境保全に優れた自前のガス化溶融炉で全量焼却処理することによって、熱エネルギーとして回収を図るものであり、発電や温水に利用することにより、これまでよりも効率的に資源として活かすものであります。このようなリサイクルの方法をサーマルリサイクルと言い、エネルギー回収施設という名称は、このことに由来するものであります。

 また、エネルギー回収施設の処理規模は、山形広域環境事務組合を構成する2市2町のごみ処理基本計画に基づいて設計されており、2つのエネルギー回収施設の処理能力は、現在の施設の360トン/日よりも2割程規模が小さい300トン/日となっており、今後とも燃やせるごみの減量に努めるため、ペットボトルや古紙類については、これまで以上に再資源化を進めるなど、市民・事業者と連携しながら、ごみを出さないライフスタイルへの転換を図る運動を展開してまいります。

 なお、ごみの分別・収集方法につきましては、プラスチックごみの可燃材としての効果的な活用方法や、分別によるごみの減量効果等を検証しながら、エネルギー回収施設(川口)が稼働し2場体制が整うまでの間に決定してまいります。

 今後もごみ減量施策へのご理解とご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 今後共、市政発展のためご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

〒990-8540
山形市旅篭町2-3-25
山形市役所環境部ごみ減量推進課長
℡代表023(641)1212 内線688

 


山形市公式ホームページ「みんなの意見・提言コーナー」
http://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/iken/iken.html

7月18日の裁判について4 :公開質問状に対する山形県からの回答の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 山形広域環境事務組合(山形市上山市山辺町・中山町)が行っている公称 「エネルギー回収施設」の敷地造成工事は、山形県に対し「開発許可申請」は必要であるものの、取り立てて造成工事の許可を申請する必要はありません。

 しかし、この敷地の特殊性として東側が「前川ダム放水路(一級河川忠川)」 に接していることが挙げられます。そして、この放水路を管理しているのは山形県 です。さらに、この放水路は敷地直下で一級河川前川に合流しており、この川を管理しているのもまた山形県です。

 それ故、組合は造成工事を行うにあたり、まずこの放水路に搬入路としての新橋を架ける必要がありました。この放水路は上流の前川ダム完成と同時に、コンクリート三面張りの放水路として昭和56年に竣工し、現在36年目を迎えています。特に造成工事が始まって以降、この敷地に接する護岸壁には多くのクラック(亀裂)が 入るようになり、架橋工事訴訟ではその安全性について組合と山形県の両方を相手に裁判が行われ、守る会は敗訴しました。

 引き続き造成工事に関する訴訟を、組合を相手に継続中ですが、造成工事に関連して、この劣化した放水路左岸を組合は大きく切り欠く計画を立て、あろうことか、 放水路に排水する計画を立てました。この計画を許可したのは山形県です。

 山形県はいったいどのような見識で、この無謀と思える計画を許可したのか問うため、山形県知事に対し公開質問状を提出し、回答を得ましたので公開致します。 回答は異常なほど簡単で、河川管理者として責任ある回答であると到底思えず、非常に残念に思います。

 いずれにしても、山形地裁における敷地造成工事裁判は、去る7月18日結審しましたので、11月の判決を待ちたいと思います。

関連リンク:
2017-02-09 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-10 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (2) | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-11 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (3) | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-12 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (4) | 山形県上山市川口清掃工場問題


※内容はブログ用に一部編集しておりますので予めご了承ください。

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平成29年3月14日

山形県の環境と観光産業を守る会
*****様

山形県
県土整備部参事(兼)河川課長
村山総合支庁建設部長

「公開質問状」に対する回答について

 平成29年2月7日付けで提出された「公開質問状」について、別紙のとおり回答いたします。

 

(別紙)
質問1
1. 造成工事の際、忠川左岸壁の排水樋管、及び排水口が新たに設置されたこと により、忠川左岸のコンクリート護岸壁が一部切り欠かれた結果、天端高は、 計画護岸高に対し低く不揃いとなりました。これは河川法上、危険で由々しき 事態であると考えますが、貴殿は組合に対し「護岸天端高の復旧指示」を出される予定はございますか。

回答1
 予定はありません。

 

質問2
2. 造成工事着手以前雨水貯留、及び雨水浸透機能維持のため、「造成前の貯留、 及び浸透能力をもつ調整池を造成地内に設置する指示」を、組合に対して出さ れる予定はございますか。現状のままでは、敷地及び里山から流出された雨水 が、忠川排水樋管及び排水口を通して直接前川へ排水されることにより、一級 河川前川下流域での更なる洪水氾濫の助長が予想されます。豪雨時における前 川の堤防洗掘による破堤の危険、及び前川の忠川合流点より下流域での氾濫は ご存知の通りで、上山市民の安全上看過できません。

回答2
 予定はありません。

 

質問3
3. 造成地における本体建設工事の差し止め、もしくは造成・開発区域計画や設 計の変更要求を行う予定はございますか。 ※山形県の環境と観光産業を守る会(以下“守る会”とする)は、平成9年河 川法改正に基づく一級河川前川、忠川の具体的な河川整備基本方針、河川整備 計画は、不存在と認識しております。現状は名目のみで内容を伴わず、施設維 持のみを行う計画であり、これにより洪水被害を防止することはできません。 また、平成9年の河川法改正による環境の内部目的化がなされておらず、本来、開発、造成にあたっては、事前に前川の状況、及び流下能力、河川整備計 画の公表及びパブリックコメントを経た上で、進捗状況に照らして初めて「許可」されるべきものであり、排水先の河川の整合、能力を無視した造成、開発、 排水施設工事の許認可を行えるものではないと考えます。

回答3
 山形広域環境事務組合が行うエネルギー回収施設本体建設工事並びに造成、開発区域の計画及び設計に係る許認可については所管事項外ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問4
4. 昭和48年8月に山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」のダム設計流量配分において、前川上流より160㎥/ s分派したものを前川へ戻す施設の水路は、どのようなものか、またどのような施設管理がなされているのか、お示し下さい。またその際のリスクをどの様に市民へ周知徹底されているかをお示し 下さい。

回答4

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 導水路の能力を超過した水は、導水路の切り欠き部をとおり本川に戻る構造になっているため、特別な管理は行っておりません。
 また、この際のリスクについての公表資料はございません。

 

質問5
5. 平成27年5月、組合が山形県に対し申請した敷地に接する忠川護岸壁への排 水樋管、排水口の設置を許可した経緯、及び確認事項等を詳細にお示し下さい。 許可に当たり「許可するもやむを得ない」とコメントした理由も、具体的に明 らかにして下さい。

回答5
平成27年5月13日付け山広環第99号により許可申請があり、「河川敷地占用 許可準則」及び「工作物設置許可基準」等の基準(以下、「審査基準」という。) に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、「許可するもやむを得ない」との表現の意図については、既に平成27年 9月8日付の公開質問状で質問いただいており、これに対し平成27年9月18日 付文書で回答しております。

 

質問6
6. 敷地造成工事により、これまで休耕田であった貯留浸透機能を無にし、造成 地からの雨水を、排水樋管及び排水口から直接(流出係数100%を忠川に)排 水し、さらに里山から休耕田に貯留・浸透していた流出抑制機能(これについ て検討されているか疑問)を無にして水路により雨水を集め、樋管排水口によ り直接忠川へ排水することは許可できるものでしょうか。改めて見解をお示し 下さい。

回答6
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱」(以 下、「指導要綱」という。)の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要は ありません。

 

質問7
7. 護岸天端の高さについて、排水樋管部、及び排水口部では、従来の連続した コンクリート護岸壁を、こともあろうに大きく切り欠いています。従来は、護 岸壁に遮られて、休耕田に一旦貯留・浸透した雨水が直接忠川に越流すること はなかったことを考えると、現計画は著しく貯留・浸透効果を欠いています。 にもかかわらず、何故組合に設置許可を与えたのか、その理由をお示し下さい。

回答7
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行 う必要はありません。

 

質問8
8. 組合は、敷地造成設計に際し作成した雨水排水計画において、開発・造成後 に増加する排水量は、忠川の設計洪水流量170㎥/sと比して1%以下である としています。しかし現状は、本来の河川整備基本方針、河川整備計画が具体 的に策定されておらず、忠川の計画高水流量も定められていない状態です。山 形県が策定した「前川治水ダム事業計画」では、前述の通り「洪水時の前川ダ ム設計洪水流量170㎥/s」及び40年確率での計画高水流量0㎥/s」と定め られています。敷地造成により排水量がわずかでも増えれば、分母がゼロであ るため流量の増加する比率は無限大となります。これは、「山形県河川流域開 発に伴う雨水排水対策指導要綱」に反するものと考えます。以上により、洪水 に対し無策の排水樋管等設置に係る計画を何故許可できるのか、その根拠をご 回答ください。

回答8
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行 う必要はありません。

 

質問9
9. 前川本川の計画(前川治水ダム事業計画)と、敷地からの排水との整合性は、 確認されているのでしょうか。 ※流出係数は、平地で0.6, 山地で0.8ですが、造成地排水区域として接する 山地も含むべきと考えます。また、初期損失雨量は、流量観測資料を基に20 ~30mm としているものの、計画に反映されていません。さらに、流出計算手法 は、山形県が単位図法を採っているのに対し、組合は合理式、及び道路土工要 綱による計算をしており、双方に齟齬が見られます。また、降雨強度式は、 山形県河川整備計画で用いるものと異なっているため、計画自体に整合性が見 られず、造成前の安全性が担保できていません。

回答9
本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要 はありません。

 

質問10
10. 前川の忠川合流点から下流の水量について、造成・開発前後の10年確率(造 成地の排水計画降雨時)、40年確率(河川の計画降雨時)、また超過洪水(ダム の設計外力)において、前川の洪水量や被害を解析、確認をしておられますか。 忠川(前川ダム放水路)を、既にダム設計流量170㎥/sまでの流下能力で 改修していることは、本支川バランスを著しく欠いており逆転していると考え ますが、これについての見解をお示し下さい。 ※この計画では、一級河川として前川の支川である忠川の流下能力が大きくな り過ぎ、下流である前川への過負荷となっています。この計画は、本来前川ダ ム上流部及びダム直下流地狭溢部まででの間で氾濫していた洪水被害を、前 川下流部に位相、集中させる行為であって、前川の忠川合流点下流の河道が未 改修の現状においては、極めて危険な計画であると言えます。さらにダム設計 流量時(東北地域での記録的降雨による超過洪水時)には、本来自然と忠川上 流で氾濫していた被害を、前川ダム放水路としてそのまま前川下流へ170㎥/ sまでの洪水として移し、下流市街地での被害を増大・集中させる構造となっ ており、極めて不適切であると考えます。

回答10
本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要 はありません。 また、忠川(前川ダム放水路)の整備は、ダムの安全性を確保するために実施 されたものであり、本支川のバランスを考慮する施設ではありません。

 

質問11
11. 管理用通路幅員(排水樋管上部、他の地点)について ① 申請当初の図面では3.0mで設計されていたものの、実施図面では2.0m に変更されています。完成時に、すべての区間で2.0m確保できているか、ま た現状では雑草が茂り、人も歩けないような状況で放置されており、造成工事 を優先されていることに疑問を感じざるを得ませんが、その現状確認をなさい ましたでしょうか。 ② すでに造成工事は終了していますが、組合は忠川沿いの管理用通路として 幅員を連続させずに放置しています。これを、河川管理者としてどのように考 えておられますか。 ③ 河川管理用通路の幅員は、設計当初図面通り通常の3.0mでしたが、実施 設計時2.0mに設計変更した経緯をご存知でしょうか。幅員が1.0m も狭まっ たことについて、許可された際どのように解釈されましたか。さらに用地境界 杭からの造成地までの蝠員は2mに欠けている現状をいかに解釈されておられ ますか。 ④ 現在造成地の左岸に、2.0mの管理用通路が確保されておりますか。たとえ 工事中であっても、安全上、河川管理・監視の観点で管理用通路は、いつでも 利用できる状態であるべき、と考えます。

回答11
①~④について
当該区間の河川管理用通路については、現状で河川管理上問題ないものと認識 しております。

 

質問12
12. 忠川に旧橋梁を残置したことにより、旧橋と新しく架設された橋が連続し、 一級河川忠川の河川上空を余分に占用する結果となりました。橋梁が連続して 2ケ所存在することは、河川管理、治水機能、河川環境、景観上望ましいこと ではありません。これについて、旧橋残置を許可する理由をお示し下さい。ま た新橋(しんちゅうかわ橋)の河川占用を、造成地通行のみへの占用とされて いる理由についてもお示し下さい。

回答12
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問13
13. 新橋(しんちゅうかわ橋)の河川管理用通路としての部分について、河川管 理時、及び平常時に造成地への車両通行止めとする措置がとられているか、ご 回答ください。

回答13
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問14
14. 河川区域、河川保全区域を如何に設定されているか、またそれが造成工事に 反映されているか、をお示し下さい。

回答14
造成工事にあたり境界確認により河川区域を確認した上で、必要な範囲につい て河川占用許可を行っております。なお、河川保全区域は設定しておりません。

 

質問15
15. 忠川の造成地区間、特に橋梁架設付近の現状点検結果については、錆の流出 及び表面に目視できる変状について、河川管理者としていかに評価し、補修の 必要なし、異常なしと判断されたのでしょうか。お示し下さい。

回答15
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問16
16. 現在上山市が発行している洪水避難地図は、防災上の観点から前川、忠川流域を含む村山圏域として、貴県が氾檻解析を行った結果(基データ)をもとに作成され、公開されています。この氾濫解析は「前川ダム事業完成時の河道条件として、40年確率の洪水に対し河川が改修されていない状況において、同年確率計画の洪水が起こった場合の氾濫区域、氾濫水深を想定した」ものです。 この上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)について、お尋ね致します。

 

  1. 上山市内を流れる前川、及びその上流に位置する前川治水ダム放水路 (旧忠川)の治水安全度は、支川である忠川が高く、本川である前川で低 いため、前川下流域での氾濫が増幅されています。この安全度が、本支川 で逆転している現状をどのように説明されますか。ちなみに、平成29年 1月13日に山形県において情報公開請求文書を受理予定でしたが、前川 上流部の「前川危険水位流下能カ一覧表」は「不存在」との回答でした。
  2.  洪水避難地図により、県民(40年確率計画を想定条件)と国民(100~ 200年確率)に危険度を周知し、その対策を講じていることは、防災上、 かつ治水安全上の蔑視であると思います。同じ国民として平等であるはず の市民の命、財産に対する防災対策の格差についてご説明をお願い申し上 げます。国でも県でも市でも、洪水に対する危険度の見積もり方、周知の 仕方、及び防災上の安全対策(避難の仕組み、避難路、避難所の設定等)、 同じ確率年で計画を立てるべきではないでしょうか。
  3.  前川、忠川において、添付資料―2にある通り造成地の直接排水が、前川 ダム及び忠川において40年確率の計画高水量を増やし、前川においては その数値計画すらないというような造成工事を、何故許認可できたのか、 その理由をお伺い致します。
  4.  村山圏域の氾濫解析については、“想定外を想定する“という防災上の 条件として、上流から溢れながらも集まる最大流量(現況河道、下水道整 備状況、地目、造成地等、地形状況のトレンドも含み)を見直し、改定し て、データを上山市へ渡され、市の防災対策として反映、見直すよう指示 される予定はございますか。また隣接する南陽市等も含め公助としての防 災対策を、市単独ではない県として、避難路及び避難所等の防災対策につ き、関連市町村へ指導なさる予定はございますか。

回答16

  1. 忠川(前川ダム放水路)の整備は、ダムの安全性を確保するために実施され たものであり、本支川のバランスを考慮する施設ではありません。
  2.  確率年を同じにすることが、必ずしも同じ水準の安全性を担保することには なりません。
  3.  造成工事に係る許認可は所管事項外であり、回答は控えさせていただきます。
  4.  氾濫解析については、今後見直しを予定しています。 なお、避難路及び避難所等の防災対策に係る関連市町村への指導は所管事項 外であり、回答は控えさせていただきます。

7月18日の裁判について3:守る会提出の甲69号証公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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7月18日、山形地裁で行われた敷地造成工事に関する口頭弁論で、この裁判は結審しましたが、守る会は証拠甲69号証として、河川工学博士による論考「前川ダム放水路(忠川)右岸壁と前川右岸壁の接続状況」を提出しましたので、公開致します。

 近年豪雨による河川氾濫、土砂災害は激増しており、行政サイドの河川計画は想定外を超えた事態となっています。その計画のは本当に安全と言えるのでしょうか。* この論考では、現実の現場写真や他の事例を用いて、説明されています。

 守る会は、裁判官に対し調査嘱託申立書を提出し、これまでも何度か現地審査を求めましたが、ことごとく却下されているのは、非常に残念なことです。災害は数字や計算(とはいえ、組合の計算にはミスがあると申し立てています)だけで判断できるものでしょうか。また、守る会は、分析をした者の各種資格証明書等々も証拠として提出しております。

* 守る会は敷地造成計画の設計を担当した業者が、これほどの工事規模にもかかわらず、(道路工事に関する資格は有していても)河川工事に関する資格を有しておらず、専門性・経験が極めて乏しく、そのため設計の内容が誤っていること、そして設計者の裁判での主張の河川の考え方に関する根本的な誤りについても指摘しています。

 


前川ダム放水路(忠川)右岸壁と前川右岸壁の接続状況

河川工学博士 ****

 前川ダム放水路(一級河川忠川)と、一級河川前川は上山市川口地区のJR奥羽本線山形新幹線)ガード直下流で合流する。平常時、前川ダム放水路の計画流量は0㎥/sであるが、豪雨に伴い前川ダムの決壊を防ぐため、緊急時には放水路に放水するとされている。その場合、当然前川も増水している状況であり、計画高水流量170㎥/sプラス造成地からの排水量(昭和48年計画時には想定されていなかった水量)が、この合流点周辺でぶつかり、濁流が護岸壁を超える恐れがある。下記地図の中央を流れる川は一級河川前川。前川ダム放水路(一級河川忠川)と建設地下流で合流し、緊急放水時にはこの辺りで川水が膨れ上がる。ピンク色部は建設地。

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 平成26年と27年7月豪雨において、前川は連続して氾濫し、この合流点より下流域に甚大な被害をもたらした。真夜中に上山市中心市街地に避難勧告が出されたのは、これまでの意見書通りである。造成地へ向かう五反田橋周辺は、前川両岸に浸水し、橋桁スレスレまで押し寄せた経緯があることも同様である。

 前川ダム放水路の右岸は、上山市道に接している。造成地に架かる新忠川橋より下流護岸は、前川との合流点まで高いコンクリート擁壁となっている。(写真‐1)山形新幹線ガードを潜ってすぐの地点で、前川右岸との切り替えが行われており、この地点での放水路擁壁高(上山市道路面をGLとした場合)は、1.43mである(写真‐2)が、前川に接続される部分では斜めに切り下げられており、その段差は0.9mとなっている(写真‐3)。この地点に於いて、前川の左岸はコンクリートで非常に高く構築されているため、合流地点で溢れた川水は、最も低くなったこの切り下げ地点から上山市道へ流出する可能性が非常に高い。現在ですら豪雨時には前川の限界値を超えた水量を支えているにも拘わらず、これ以上造成地からの雨水を前川に受け入れることがあってはならないし、排水樋門や排水口を開いて放水路に放流することがあってはならない。

 この合流地点から流れ出た水が上山市道へ流れ出ると、ガード下から五反田橋までの区間は冠水する恐れが十分に考えられ、隣接地に勤務する社員や、公称エネルギー回収施設に勤務する職員、及び見学者や前川ダム周辺の観光客等の避難路が絶たれることになる。かつて豪雨時には、この上山市道が崩落した経緯があるため、逆に前川ダム方面の上流へ逃げることも不可能となる。 このような理由からも、豪雨時の敷地からの排水は、ゼロでなければならない。

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写真‐1 2016.09撮影 上山市道から見た前川ダム放水路右岸コンクリート擁壁 

 

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写真‐2 2017.06.02撮影 合流地点付近の前川ダム放水路右岸擁壁高 H=1.43m

 

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写真‐3 2016.09撮影 前川ダム放水路から前川に切り下げられたコンクリート護岸
上流に明治初期建造の文化財2連アーチ橋「堅盤橋」が架かる

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写真‐4  2016.09 合流地点より前川下流を見る 左岸コンクリート護岸壁
右岸の護岸高は低く、上山市道に接している

 

 

参考 アメリカのオーロビルダム放水路崩壊によるダム決壊

f:id:mamorukai:20170725035531j:plain2017.02.15 カリフォルニア州オーロビルダム(1968竣工)の放水路に陥没穴が見つかる

今年に入っての大雨や豪雪により湖の水位が上昇したため、水を約1,400m3/sで放流していたところ、排水路に穴が発生。それでも湖の水位の上昇が激しく、やむを得なく損傷した放水路から継続して放流を行っていたところ、この穴がさらに拡大。そこで2月11日、問題が起きた際に使用される緊急排水路(補助排水路)を、1968年のダム完成から初めて使用した。

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事態は収まるかとみられていたが、12日午後、今度は緊急用放水路でも浸食が起き、水が360m3/sで流れ始めたことが判明。

出典CNN.co.jp : ダムの放水路が決壊の恐れ、住民に避難勧告 米加州

放水路がいつ決壊してもおかしくない状況となったうえ、土砂などが崩れ落ちてより危険な状態になる可能性が浮上した。

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ブラウン知事は州議会に対し、水インフラ用の財源から3億8700万ドル(約440億円)、さらに州の一般財源から5000万ドル(約56億円)を拠出する予算措置の承認を要請。「老朽化したインフラが限界にきている。何らかの緊急措置を講じることはできるし、そうする予定だが、計画を進めるには巨額の費用を投じなければならない」と述べた。

7月18日の裁判について2:山形環境事務組合提出の第6準備書面の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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敷地造成工事住民訴訟における山形環境事務組合側の第6準備書面の公開

 平成29年5月29日付で、守る会は山形地方裁判所に第7準備書面を提出致しましたが、それに対し山形環境事務組合側は7月14日付で、第6準備書面を提出しましたので、公開致します。

 7月18日の口頭弁論で裁判は「結審」しましたので、守る会はこの準備書面に対し反論することは不可能となりました。

 


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平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件

原告 上山市
被告 山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘

第6準備書面

平成29年7月14日

山形地方裁判所 民事部 合議係 御中

被告訴訟代理人
弁護士  内藤和暁
同  古澤茂堂
同 小野寺弘行

被告として,以下のとおり,原告ら準備書面(7)に対する反論を行う。

第1 排水口の切欠きによる雨水流出量の増加との原告らの計算の不相当性

 原告ら準備書面(7)の二1と2の第1段落,第2段落は,忠川には「前川治水ダム 下流からの雨水排水は計画されておらず,前川治水ダム放水路の計画洪水流量は0 ㎥/sとなっている」,忠川の「コンクリート水路護岸壁は,流域からの雨水排水量 を規制すべき(本件において,忠川の計画洪水時には0㎥/s) ものである」とし たうえで,本件造成工事における忠川への排水口設置のために忠川護岸を切り欠い たことについて,「その計画護岸を大きく切り欠いて,造成地の排水のみを優先して おり,下流の前川の氾濫への影響には全く考慮されていない」,「排水口の切り欠き は,従前の造成地からの排水口よりも格段に巨大になっており,造成地からの雨水 排水を従前よりも遥かに大量に行うことを可能にしている」,「忠川及び前川への洪 水氾濫を招くことになる」旨を主張している。

 しかしながら,まず,忠川の計画洪水時には0㎥/sとの主張は忠川の計画高水 流量が0㎥/sであることを主張していると思われるが,被告第1準備書面第2の 3 (2) (12頁,13頁)において前述したとおり,甲第18号証の「前川治水ダム 事業計画書」25頁の図1-9「計画高水流景配分図」は前川ダムの流量配分に ついて,前川ダムにおいて140㎥/ sの計画高水流量が発生した場合に,これを 忠川に放流せず,全て前川ダムに貯留するという趣旨で忠川の流量を0としている に過ぎず,エネルギー回収施設の建設地等からの雨水流入分も含めて忠川の計画高 水流量が0㎥/sであるとしているものではないものである。 よって,忠川の計画 高水流量が0㎥/sである,忠川への流域からの雨水排水量を規制すべきである, との上記原告ら主張には理由がないものである。

 また,忠川及び前川の氾濫を招くとの点についても,被告第1準備書面第2の2 (1), (2) (8頁乃至10頁),被告第5準備書面第1 (1頁乃至3頁)において詳述 したとおり,本件造成工事に伴う忠川,前川への排水量の増加は前川本川の計画高水 流量のわずか0.1%程度に過ぎず,忠川,前川の洪水処理計画に影響を生じさせるようなものではない。

 従って,いずれにしても,本件造成工事における忠川への排水口設置のために忠 川護岸を切り欠いたことが「忠川及び前川への洪水氾濫を招くことになる」などとする上記原告ら主張には,理由がないものである。

 

第2 排水口及び排水樋門設置部の護岸強度に関する原告ら主張の不相当性

 原告ら準備書面(7)の二2の第3段落は,本件工事において設置される排水樋門について,「排水樋管周辺の護岸壁内鉄筋は,すべて寸断されてしまい護岸強度を保持 する連続性は失われた」,「樋門コンクリート打設の際,従来護岸壁に残存する鉄筋 と,新たな樋門の鉄筋が正しく接合されたか,疑問である」旨を主張している

 しかしながら,まず,忠川の護岸への排水口,排水樋管のすり付けにおいては, 甲第16号証の雨水排水計画41頁に記載しているように,忠川の護岸本体の既設 配筋を可能な限り残し,補強のための鉄筋を配筋し,この際,配筋ピッチは現況の 300mmよりも密になるよう250mmピッチとし,ダブル配筋とし,コンクリ ート設計強度は現行基準による24Nとしているものである。従って,排水口及び 排水樋門の設置に当たり,護岸コンクリートの強度は十分に確保されているもので あり,「排水樋管周辺の護岸壁内鉄筋は,すべて寸断されてしまい護岸強度を保持す る連続性は失われた」などとする上記原告ら主張には理由がないものである。

 次に,忠川の護岸と排水樋門の接合との点については,甲第16号証の雨水排水 計画36頁乃至40頁記載のように本件工事においては,排水樋門の排水樋管工 設置時の荷重が自立型特殊堤である忠川の護岸本体に影轡を及ぽすことのないよう, 排水樋管工は護岸とは独立した直接基礎によって支持することとしており,忠川の 護岸とは応力を分断しているものである。よって,「従来護岸壁に残存する鉄筋と, 新たな樋門の鉄筋が正しく接合されたか,疑問である」などとする原告ら主張は, 本件造成工事において設置された排水樋門の構造に関する理解を誤ったものに過ぎ ないものである。 従って,いずれにしても,排水口及び排水樋門の強度に関する上記の原告ら主張には,理由がないものである。

 

第3 排水樋門の高さに関する原告ら主張の不相当性

 原告ら準備書面(7)の二2の第4段落は,本件工事において設置される排水樋門が従来の忠川護岸天端よりも低くなっていることについて,「豪雨時に前川ダムから放水された場合放水路を流れる水は,この低く施工された護岸部より造成地内に流入し,樋門部を洗掘することになる。それにより,排水樋門は崩壊流出する恐れがある。」旨を主張している。

 しかしながら,甲第16号証の雨水排水計画28頁,30頁記載のように本件 造成工事において設置された排水樋門は,バランスウェイト式フラップゲートであ り,河川水位の上昇に伴い,上部ヒンジを回転軸として扉体への水圧によりゲート の吐口部が閉鎖される構造となっており,前川ダムから忠川に放水された水がその まま排水樋門内部に流入することとはならないものである。 また,甲第16号証の雨水排水計画29頁記載のように、エネルギー回収施設が 建設される敷地は,造成が行われ、排水樋門の排水口天端よりも敷地造成面の方が 高くなっているものであり,仮に万が一,洪水時に排水樋門のバランスウェイト式 フラップゲートの不完全閉鎖が発生したとしても,上記原告ら主張のような水が敷 地内に流入する,樋門部を洗掘するなどといった事態が生じるものではなく,不完 全閉鎖によって発生する被害は小さいと考えられるものである。

 従って、本件工事において設置される排水樋門が従来の忠川護岸天端よりも低く なっていることを問題とする上記原告ら主張にも、理由がないものである。

以上


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昨日(7月18日)の裁判について:守る会提出の第7準備書面の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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上山市川口清掃工場敷地造成工事に関する住民訴訟が結審しました!  

 上山市川口では、昨年6月に敷地造成工事が終了し、8月より本体工事が始まりました。現在、本体差し止め訴訟が行われていますが、同時に以前より敷地造成工事の住民訴訟(平成28年(行ウ第1号))が続いています。

 本日(平成29年7月18日)は、山形地裁において16:00より弁論準備が行われ、引き続き第3号法廷において口頭弁論に進んで結審致しました。

 判決は、平成29年11月6日に、山形地裁で言い渡されます。

 ここに至るまで、守る会は証拠として1~69号証と準備書面(1)~(7)を提出し、 組合側は証拠として1~13号証と第1~6準備書面を提出しています。また、途中で守る会は、山形県に対し「公開質問状」を提出し、回答を戴きました。これらの経緯につきまして、順次公開して参ります。

 この造成工事に関し最も大きな問題は、これまで田畑であった土地が、造成工事 によって保水力を失い、隣接する「前川ダム放水路(一級河川忠川)」に雨水や廃水が流失する事態を危険とみなす点です。これまでの準備書面では、この造成工事を計画した受注企業や、雨水排水計画を立案した個人の資質も問うています。山形県の計画では、本来この前川ダム放水路を流れる計画流量は0トンであるべきですが、 組合の計画では「わずかだから問題ない」という判断で、工事が進められました。

 守る会は河川工学の専門家に依頼し、この計算を分析して戴いた結果、組合の雨水排水計画書の計算に誤りがあったことを指摘しました。「計画を立案した企業担当者の反論書は、説得性に欠けていて危険というのが、守る会の申し立てです。

 更に守る会は、前川ダム放水路三面張りコンクリート壁の劣化状況や、組合が左岸壁を大きく切り欠いたことによる放水路の危険性についても指摘して参りました。 また、平成29年4月17日付で、守る会は裁判所に対し下記2点の申し立てを行いました。

  1. 証拠申出書(2)「人証の申請」
    造成工事を行った企業代表を証人として呼び出すことを求めました。
  2. 調査嘱託申立書
    山形県村山総合支庁建設部に対し「忠川及び前川に関する計画高水流量が争点の一つとなっているため、担当官庁の見解を調査する」ことを求めました。

 しかし、本日の口頭弁論では、裁判長よりいずれの申し立ても「必要がない」と の理由で却下されたため、結審に至りました。

 本日結審したとはいえ、これまでの守る会の申し立てに対し、組合側は十分に反論したと納得することはできませんが、判決が下る日を待ちたいと思います。

 当記事では、前回5月29日付で、守る会が提出した「準備書面(7)」を公開致します。


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平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件

準備書面(7)

原告 上山市
被告 山形広域環境事務組合 管理者佐藤孝弘

平成29年5月29日

上記原告ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

山形地方裁判所 御中

第1 はじめに
 本書面は、原告らの主張の補充を行うものである。

第2 原告らの主張の補充
 原告らの第6準備書面に対する被告の態度について
 被告は、原告らの第6準備書面に対して、前回の弁論準備手続きの際に、特に反論を行わない旨発言した。
 このことは、被告において、原告らの第6準備書面の内容について、特に争わない旨を表明したものと理解すべきである。

二 本件造成地における排水口の問題

1 前川ダム設計時の計画について

 昭和48年8月、「前川治水ダム事業計画書」に基づき、前川治水ダム放水路としてコンクリート護岸3面張り水路が築造された。この前川治水ダム放水路が忠川である。この設計に於いては、忠川の流域(集水区域)に、本件造成地は含まれていない。つまり設計時は、前川治水ダム下流からの雨水排水は計画されておらず、前川治水ダム放水路の計画洪水流量は0㎥/sとなっている。この点は、これまで、原告らが繰り返し述べたところである。

2 敷地造成工事における前川治水ダム放水路左岸の欠損について

 組合が行っている本件造成工事において、改めて注目すべきなのは、その雨水排水計画における2か所の排水口地点で、忠川の左岸側コンクリート水路護岸壁高さを大きく切り欠いている点にある。このように、護岸コンクリートを大きく切り欠いていることは、忠川及び前川への洪水氾濫を招くことになる。

 即ち、コンクリート水路護岸壁は、流域からの雨水排水量を規制すべき(本件において、忠川の計画洪水時には0㎥/s)ものであるが、組合は、その計画護岸を大きく切り欠いて、造成地の排水のみを優先しており、下流の前川の氾濫への影響には全く考慮されていない。この排水口の切り欠きは、従前の造成地からの排水口よりも格段に巨大になっており、造成地からの雨水排水を従前よりも遙かに大量に行うことを可能としている。

 また、この切り欠きは、本来は左右岸平等であるべき河川管理施設護岸高の常識を逸脱している。そして、特に排水樋管周辺の護岸壁内鉄筋は、すべて寸断されてしまい護岸強度を保持する連続性は失われた。組合は、新たにコンクリート樋門を設置したが、この樋門コンクリート打設の際、従来護岸壁に残存する鉄筋と、新たな樋門の鉄筋が正しく接合されたか、疑問である。組合は放水路を管理する山形県に対し、護岸切断とその復旧について図面訂正を申請しているが、その接続における詳細図は示されていない。今後起こり得る豪雨時に、この排水樋門が、前川ダムからの放水の圧力に耐えうることを裏付ける証拠はない。

 そして、河川管理施設として計画護岸高を維持管理すべき施設に、2か所の排水口を設けると共に、計画護岸高を切り下げていることは由々しき問題である。河川法上従来の護岸高は左右岸平等に保持されるべきであるが、排水樋門敷地内部は従来の護岸天端よりも低く施工され、段差ができている。この護岸壁が従来設計を無視した高さであることにより、河川管理施設としての機能は維持できなくなってしまっている。つまり、豪雨時に前川ダムから放水された場合、放水路を流れる水は、この低く施工された護岸部より造成地内に流入し、樋門部を洗堀することになる。それにより、排水樋門は崩壊流出する恐れがある。いかにコンクリートを頑丈に新設しても、洗堀されれば、足元から崩壊する危険性がある。その結果、造成地に本来貯留されるべき洪水氾濫量の水量を忠川に排水し、前川の洪水を増長する施設となってしまっている。早急に護岸壁を従来の形状に復旧すべである(以上、甲68)。

山形県の環境と観光産業を守る会の活動がドキュメンタリー映画になりました!

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ドキュメンタリー映画
上山市川口地区ゴミ焼却場をめぐる静かなる闘いの記録 2012.9 - 2016.12

 平成24年5月、上山市川口における一般ごみ焼却施設の建設問題が明るみに出ました。川口地区住民のほとんどに何も知らされないまま住民説明会が行われて以来5年。話し合いは、まった噛み合わないまま訴訟に至り、これま7件の訴訟を提起し、現在も裁判が続いています。

 市民としての激しい不条理を感じつつ、活動の記録をして参りましたが、これまでの4年間を一本の映画としてまとめました。一般の映画館で観ることはできませんが、現在全国各地で自主上映会が行われています。来る7月22日(土)は、山形市七日町において上映会が行われますので、ご案内致します。

 約1時間の上映後、参加者でのフリートーキングも予定されています。「市民の声」とは何か、一緒に考えてみませんか?

上山市川口地区ゴミ焼却場をめぐる静かなる闘いの記録 2012.9 - 2016.12」 上映会

  • 日時: 平成29年7月22日(土) 18:30~20:00 (開場18:00)
  • 場所: 山形市七日町シネマ通南側 郁文堂書店
  • 問い合わせ先: NPO法人まちづくり山形 
  • TEL: 023-679-3301
  • 入場無料
  • 申し込みは必要ありません

 山形県の環境と観光産業を守る会では、自主上映を希望する団体、個人に 映画DVDまたはブルーレイを貸し出しておりますので、ご希望の方はこのブログのコメントからご連絡ください(やりとりや連絡先等は非公開とさせていただきますので、ご安心下さい)。

2月23日の裁判(控訴審)について : 控訴人側(上山市民)提出の準備書面の公開

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*この記事は前回のブログのつづきです。

 平成29年2月23日に仙台高裁で行われた、敷地造成工事の公費返還及び損害賠償を求める控訴審で、守る会は控訴準備書面(1)と 証拠甲34~49号を提出致しましたので、準備書面を公開致します。

 この書面は、守る会が山形地裁の判決(棄却)を受けた後、仙台高裁への即時抗告時に提出した控訴理由書の内容を補完する内容です。

 平成29年2月17日付で、上山市が仙台高裁に提出した答弁書(前回のブログで文書を公開済み)は、守る会の控訴理由書に対する反論であり、控訴棄却を求める内容でした。通行権侵害に関する主な反論主旨として以下のように述べています。

  • 守る会が主張する通行権侵害が、問題となる余地はない。
  • 大型車や緊急車両の通行、歩行者等の安全が妨害されるほど、通行量が増加するとは認められない。
  • 市道すべての箇所で、大型車がすれ違うことができなければ、大型車の通行が不可能、困難になるとは認められない。
  • 守る会が提出した甲31号証のビデオでは、敢えてセンターラインを越え、ふくらませているに過ぎない。
  • すれ違いが困難になるほど多数の長さ12メートル程度の大型車が通行する根拠がない。

とされていますが、守る会では、この答弁書に対し証拠甲34~49号を添付し、控訴準備書面(1)で反論しています。

 被控訴人側(被控訴人 横戸長兵衛氏)は「市道前川ダム東線の交通量が増加することは、エネルギー 回収施設建設が原因ではなく、関連性がない」と述べていますが、これについて守る会は、甲34~47号証において、組合(上山市長は、組合の 副管理者の立場)が施設建設と道路工事との関連性を認めている各種書類 を提出しています。この市道改良工事は、明らかにエネルギー回収施設関連工事の一環であると考えられます。でなければ、税金を使って市道を拡幅する意義は、どこにも見当たりません。

 更に、冬期は市道に積雪があり、除雪をしても有効幅が狭まる様子を守る会が測定し、写真で説明しています。組合が、エネルギー回収施設稼働後に発生する熱エネルギーを利用して市道の融雪をしたとしても、 市道全長で融雪されるわけではなく(ロードヒーティング箇所は一部に過ぎません)、除雪した雪で狭まる箇所は必ず発生します。ただでさえ狭いカーブ箇所や、橋の上でのすれ違いは、ますます困難になります。新設 される公共施設へのアクセス道路として妥当と言えるでしょうか。

 また道路のカーブ箇所で、長さ12メートル程度の大型車が、センターラインオーバーする様子について、当初守る会はその軌跡を図示していましたが、図示では困難性を認められなかったため、実際のすれ違い動画 を提出した経緯があります。しかし、その動画に対しても、わざとセンタ ーラインを越えさせた画像であるとの指摘がありました。守る会は、証拠 甲49号としてさらなる動画を車内と車外の映像で表現し、提出しております。(後日動画を公開予定)

 これらの証拠すべてはデータ量の関係上公開できませんが、その概略の説明である証拠説明書を公開致します。

 また、2月23日の法廷において、守る会は「証拠申出書」において、控訴人代表1名(60分)と、元上山市役所職員1名(60分)、造成工事を請け負った企業代表者(30分)の人証を求めましたが、裁判官合議の上、申請は認められませんでした。更に追加証拠甲50~52号証が受理されることもありませんでした。

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*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年(行コ)第19号
前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

控訴審準備書面(1)

控訴人   上山市
控訴人  上山市長 横戸長兵衛 外1名

平成29年2月21日

上記控訴人ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

仙台高等裁判所第2民事部 御中

第1 はじめに

本書面は、控訴理由書に関して、控訴人らの主張の補充を行うものである。主張の補充の要点は、①本件工事と清掃工場建設計画とが密接な関連性を有すること、②清掃工場建設工事及びその稼働後に本件道路の交通量が増加すること、③本件工事によってもなお、本件道路は大型車同士のすれ違いが困難となっていること、の3点である。

第2 本件工事と清掃工場建設計画との密接な関連性

 本件工事と清掃工場建設計画との間には、密接な関連性がある。このことは、第一に、上山市平成27年度施政方針に、「エネルギー回収施設に係る前川ダム東線の道路改良工事を実施してまいります」「山形広域環境事務組合が川口地内に建設するエネルギー回収施設については、造成工事及び道路改良工事に着手し、平成30年12月の稼働に向け構成市として協力してまいります」などと述べてあることからも明らかである(甲34)。上山市は、本件工事が清掃工場建設及び操業のために行う道路整備であり、そのための協力工事であることを十分に認識しているのである。

 第二に、本件工事と清掃工場建設計画との間に密接な関連性があることは、山形広域環境事務組合の資料からも明らかに読み取ることができる。即ち、本件工事は、道路に消雪施設を設置する工事も含まれるものである(甲17)が、この道路に消雪施設を設置する計画を含む市道前川ダム東線道路改良工事は、清掃工場建設計画の当初からこの一部として計画立案、実施されている。例えば、次のような資料がある。

  1.  組合は、平成26年7月24日に、「エネルギー回収施設(川口)建設事業施設整備基本計画書」を策定したということであるが(甲35)、その際に作成されたリーフレットに、施設で発生する余熱を利用して市道前川ダム東線のロードヒーティングを実施する計画の記述がある(甲36)。
  2.  組合が同年7月に作成した「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」には、「…冬季の構内ロードヒーティングや市道前川ダム東線へのロードヒーティングといった温水供給を行う設備を設置…」(21p)という記載の他、「第3章 余熱利用計画及びエネルギー供給施設の検討について」という箇所の「I 余熱利用先・活用方法」の中の「(3)発電後のタービン排気熱の利活用)」の欄には、「③ 市道前川ダム東線のロードヒーティング」(33p)という記載がある(甲37)。
  3.  平成26年12月19日に公開された「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業実施方針」の中に「Ⅱ 事業の内容に関する事項」という箇所があるが、その中の「11 事業の対象となる業務範囲」には、「(2) 組合又は上山市が行う業務」との記載があり、その中の「ア 複合施設に関する業務」の「 (ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に、「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」という記載がある(甲38・7p)。本件道路は、清掃工場に付随する複合施設であり、上山市が行う本件道路改良工事は、組合の事業である清掃工場建設及び運営事業の一環であることが明記されている。また、この文書の8pにも、「Ⅱ 事業の内容に関する事項」の中の「18 余熱利用計画」という項目があり、そこでは、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。…」と書かれているし、「実施方針添付資料-4 役割分担概念図」の中にも、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記載がある。
  4.  同じく平成26年12月策定の「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書 設計・建設業務編(案)という文書の中の「第2節 計画主要目」の「5 余熱利用計画」という箇所には、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う」、「(3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」という記載がある(甲39・14p)。この文書には、「第4節 設計・建設条件」の中の「2 建設工事」「(2) 建設工事基本条件」「ウ 復旧」という箇所には、「建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること」という記載がある(甲39・26p)ほか、77p、79p、95p、96p、97p等に、本件道路に設置するロードヒーティング設備に関する記載がある。この文書の添付資料-10には、本件道路のロードヒーティング計画図がある。本件道路工事が、清掃工場建設及び運営事業の中に含まれていることが分かる。
  5.  平成27年1月23日に発表された「実施方針等に関する質問・意見への回答」という資料の中には、「市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備の仕様として「ポンプ口径φ100」と記載がありますが、市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備側にポンプは無く、エネルギー回収施設内のポンプにて温水を循環し、取合い点の配管口径がφ100mmであると理解してよろしいでしょうか」という質問がなされ、組合から「御理解のとおりです」という回答がなされている(甲40・№48の質問)。
  6.  平成27年3月23日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 入札説明書」という書面の「Ⅲ 事業の概要」という部分の「12 事業の対象となる業務範囲」の中の「(2) 組合又は上山市が行う業務」という箇所には、「ア 複合施設に関する業務」のうち、「(ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」が含まれている(甲41・8p)。
  7.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 要求水準書 設計・建設業務編」には、前記甲39と同様の内容の記載がある(甲42)。
  8.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 様式集」には、「要求水準に対する設計仕様書(様式5-4) 記入要領」という欄があり、そこには、「項番140 電力利用以外にも発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う。…」、「項番143  (3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」、「項番326 ウ 復旧 建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること。」、「項番854 …水冷式蒸気復水器は、冬季の構内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング、付帯施設への熱供給を行うための温水を回収する目的で設置する。」、「項番902 ロードヒーティングの範囲を事業提案書の中で図示すること。なお、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備(約2,000㎡)への温水等の供給についても考慮すること。」、「項番1436~1460 3 ロードヒーティング設備 …市道前川ダム東線部[ ]GJ/h 必要水量0.4L/min・m2 吐出し量801.0L/min 配管口径φ100 温水送水温度 約40℃ 温水戻り温度 約25.7℃ [中略] 市道前川ダム東線部[約2,000]m2 [中略] エ 橋梁及び市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備(要求水準書添付資料-10「余熱利用について」参照)への供給熱量や配管経路等を考慮し、設置すること。オ 組合にて市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備との取り合い点までの配管及びバルブ、ハンドホールの施工を行うこと。 [中略]カ 市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備には環境負荷の低い不凍液を用いる。」、「項番1488 (5) 特記事項 ア 休炉時に事業実施区域内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備に必要な熱源を供給できるようにすること。」、という記載がある。また、同文書の「(様式6-5)1.設計・建設に関する事項 (1)機械設備に関する事項 エ 地球温暖化対策・エネルギー有効利用」という欄には、「【評価のポイント】」と書かれた箇所があり、そこには、「③余熱利用の安定性の確保」として、「・橋梁部及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備等(市道前川ダム東線は放熱管除く)の不具合への対応等について具体的な提案がなされているか。」という記載がある(甲43)。
  9.  平成27年5月8日に発表された「第1回入札説明書等に関する質問への回答」という文書では、「市道前川ダム東線部のロードヒーティング設備へ供給する温水の温度および水量は、供給熱量を遵守すれば事業者側での検討結果に応じて提案することは可能でしょうか。」という質問が出され、組合は、「原則として要求水準書に記載のとおりとしますが、概要説明会における提案は可能です。可否については別途判断します。」という回答を行っている(甲44・№38の質問)。また、この文書の「添付資料 1」として、「役割分担概念図」という資料が配布されているが、ここでは、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記述がなされている。それから、この文書の「添付資料 2」として、「消雪計画平面図」という図面が配付された。これは、本件道路における無散水消雪範囲を示す図面であり、前記甲42添付の図面とほぼ同じものであるが、「消雪管取合い点」という記載が加筆されている(甲44)。

 以上のように、清掃工場の建設計画の段階から、本件道路の改良工事は、清掃工場計画の一環として考えられていたのであり、本件道路の改良工事は、清掃工場建設計画があって初めて計画されたものである。

第3 本件工事による本件道路の交通量の増加

 清掃工場建設工事の進捗に伴って、本件道路において工事車両の増加が予定されていることは、組合作成の平成29年2月1日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」第5号にも記載されている(甲47)。清掃工場建設工事が本件道路工事と一体のものであることは前述の通りであり、清掃工場建設工事のための工事車両の交通量が増加するというのは、本件道路工事の結果である。

 また、清掃工場計画の中に、本件清掃工場を防災の拠点とする、ということが盛り込まれている。これは、平成26年7月の「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」17pに、「災害発生時、近隣住民等が避難すること等に対して、「上山市地域防災計画」との連係を図ります」と書かれているし(甲37・17p)、組合作成の平成28年3月15日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」創刊号にも「防災拠点としての機能強化」として、「東日本大震災で浮き彫りとなった「電力」、「水」、「燃料」不足を補うことができる防災拠点とします。300名×7日間の避難を想定した備蓄計画とし、地域の皆様の安全と安心に貢献します」(甲45)、同年9月1日付同だより第3号にも、組合管理者・佐藤孝弘が清掃工場に関して「防災拠点機能を付加」することを述べたことが書かれている(甲46)。 清掃工場用地が防災拠点とされるということは、災害が発生した場合、本件道路に緊急車両等が殺到することを意味する。当然のことながら、大型の緊急車両や避難用のバス等も殺到するということである。これは、単に、清掃工場に緊急車両が来るということだけではなく、ピストン輸送等のために、清掃工場から出て行く車両もあるということである。この場合、十分なすれ違いもできない本件道路は、渋滞を来たし、元来本件道路を利用していた控訴人の車両の通行の妨げとなるし、同控訴人の従業員等が本件道路を用いて避難することを困難とさせることにもなる。

 特に冬期は、積雪により、本件道路の有効道幅が、他の季節よりも狭くなり、交通が困難となる。本件工事は、国道13号線との交差点に近い五反田橋は、工事の対象となっていないため、消雪設備もないから(甲42、44)、積雪があると、道幅が著しく狭くなる。平成29年1月16日の積雪の際には、本件道路の道幅は、五反田橋で4.5m、奥羽本線のガード下で5.0mとなっていた(甲48)。五反田橋やガード下の地点を工事対象区間としなかった本件工事は、中途半端な意味のない工事となっていることを物語っている。

第4 本件工事によっても大型車両のすれ違いが困難となっていること

本件工事によっても、大型車両のすれ違いの困難性が全く解消されていないことは、既に控訴理由書において述べたところである。控訴人らは、近時の本件道路における大型車両の通行状況を調査した。その結果、大型車両は、奥羽本線のガード下においては、センターラインを越えて通過していることが分かった(甲49)。これは、この地点において、大型車同士のすれ違いは不可能であることを物語っている。

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今後予定されている裁判:

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

平成29年4月18日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

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