山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

2月23日の裁判(控訴審)について : 控訴人側(上山市民)提出の準備書面の公開

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*この記事は前回のブログのつづきです。

 平成29年2月23日に仙台高裁で行われた、敷地造成工事の公費返還及び損害賠償を求める控訴審で、守る会は控訴準備書面(1)と 証拠甲34~49号を提出致しましたので、準備書面を公開致します。

 この書面は、守る会が山形地裁の判決(棄却)を受けた後、仙台高裁への即時抗告時に提出した控訴理由書の内容を補完する内容です。

 平成29年2月17日付で、上山市が仙台高裁に提出した答弁書(前回のブログで文書を公開済み)は、守る会の控訴理由書に対する反論であり、控訴棄却を求める内容でした。通行権侵害に関する主な反論主旨として以下のように述べています。

  • 守る会が主張する通行権侵害が、問題となる余地はない。
  • 大型車や緊急車両の通行、歩行者等の安全が妨害されるほど、通行量が増加するとは認められない。
  • 市道すべての箇所で、大型車がすれ違うことができなければ、大型車の通行が不可能、困難になるとは認められない。
  • 守る会が提出した甲31号証のビデオでは、敢えてセンターラインを越え、ふくらませているに過ぎない。
  • すれ違いが困難になるほど多数の長さ12メートル程度の大型車が通行する根拠がない。

とされていますが、守る会では、この答弁書に対し証拠甲34~49号を添付し、控訴準備書面(1)で反論しています。

 被控訴人側(被控訴人 横戸長兵衛氏)は「市道前川ダム東線の交通量が増加することは、エネルギー 回収施設建設が原因ではなく、関連性がない」と述べていますが、これについて守る会は、甲34~47号証において、組合(上山市長は、組合の 副管理者の立場)が施設建設と道路工事との関連性を認めている各種書類 を提出しています。この市道改良工事は、明らかにエネルギー回収施設関連工事の一環であると考えられます。でなければ、税金を使って市道を拡幅する意義は、どこにも見当たりません。

 更に、冬期は市道に積雪があり、除雪をしても有効幅が狭まる様子を守る会が測定し、写真で説明しています。組合が、エネルギー回収施設稼働後に発生する熱エネルギーを利用して市道の融雪をしたとしても、 市道全長で融雪されるわけではなく(ロードヒーティング箇所は一部に過ぎません)、除雪した雪で狭まる箇所は必ず発生します。ただでさえ狭いカーブ箇所や、橋の上でのすれ違いは、ますます困難になります。新設 される公共施設へのアクセス道路として妥当と言えるでしょうか。

 また道路のカーブ箇所で、長さ12メートル程度の大型車が、センターラインオーバーする様子について、当初守る会はその軌跡を図示していましたが、図示では困難性を認められなかったため、実際のすれ違い動画 を提出した経緯があります。しかし、その動画に対しても、わざとセンタ ーラインを越えさせた画像であるとの指摘がありました。守る会は、証拠 甲49号としてさらなる動画を車内と車外の映像で表現し、提出しております。(後日動画を公開予定)

 これらの証拠すべてはデータ量の関係上公開できませんが、その概略の説明である証拠説明書を公開致します。

 また、2月23日の法廷において、守る会は「証拠申出書」において、控訴人代表1名(60分)と、元上山市役所職員1名(60分)、造成工事を請け負った企業代表者(30分)の人証を求めましたが、裁判官合議の上、申請は認められませんでした。更に追加証拠甲50~52号証が受理されることもありませんでした。

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*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年(行コ)第19号
前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

控訴審準備書面(1)

控訴人   上山市
控訴人  上山市長 横戸長兵衛 外1名

平成29年2月21日

上記控訴人ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

仙台高等裁判所第2民事部 御中

第1 はじめに

本書面は、控訴理由書に関して、控訴人らの主張の補充を行うものである。主張の補充の要点は、①本件工事と清掃工場建設計画とが密接な関連性を有すること、②清掃工場建設工事及びその稼働後に本件道路の交通量が増加すること、③本件工事によってもなお、本件道路は大型車同士のすれ違いが困難となっていること、の3点である。

第2 本件工事と清掃工場建設計画との密接な関連性

 本件工事と清掃工場建設計画との間には、密接な関連性がある。このことは、第一に、上山市平成27年度施政方針に、「エネルギー回収施設に係る前川ダム東線の道路改良工事を実施してまいります」「山形広域環境事務組合が川口地内に建設するエネルギー回収施設については、造成工事及び道路改良工事に着手し、平成30年12月の稼働に向け構成市として協力してまいります」などと述べてあることからも明らかである(甲34)。上山市は、本件工事が清掃工場建設及び操業のために行う道路整備であり、そのための協力工事であることを十分に認識しているのである。

 第二に、本件工事と清掃工場建設計画との間に密接な関連性があることは、山形広域環境事務組合の資料からも明らかに読み取ることができる。即ち、本件工事は、道路に消雪施設を設置する工事も含まれるものである(甲17)が、この道路に消雪施設を設置する計画を含む市道前川ダム東線道路改良工事は、清掃工場建設計画の当初からこの一部として計画立案、実施されている。例えば、次のような資料がある。

  1.  組合は、平成26年7月24日に、「エネルギー回収施設(川口)建設事業施設整備基本計画書」を策定したということであるが(甲35)、その際に作成されたリーフレットに、施設で発生する余熱を利用して市道前川ダム東線のロードヒーティングを実施する計画の記述がある(甲36)。
  2.  組合が同年7月に作成した「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」には、「…冬季の構内ロードヒーティングや市道前川ダム東線へのロードヒーティングといった温水供給を行う設備を設置…」(21p)という記載の他、「第3章 余熱利用計画及びエネルギー供給施設の検討について」という箇所の「I 余熱利用先・活用方法」の中の「(3)発電後のタービン排気熱の利活用)」の欄には、「③ 市道前川ダム東線のロードヒーティング」(33p)という記載がある(甲37)。
  3.  平成26年12月19日に公開された「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業実施方針」の中に「Ⅱ 事業の内容に関する事項」という箇所があるが、その中の「11 事業の対象となる業務範囲」には、「(2) 組合又は上山市が行う業務」との記載があり、その中の「ア 複合施設に関する業務」の「 (ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に、「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」という記載がある(甲38・7p)。本件道路は、清掃工場に付随する複合施設であり、上山市が行う本件道路改良工事は、組合の事業である清掃工場建設及び運営事業の一環であることが明記されている。また、この文書の8pにも、「Ⅱ 事業の内容に関する事項」の中の「18 余熱利用計画」という項目があり、そこでは、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。…」と書かれているし、「実施方針添付資料-4 役割分担概念図」の中にも、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記載がある。
  4.  同じく平成26年12月策定の「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書 設計・建設業務編(案)という文書の中の「第2節 計画主要目」の「5 余熱利用計画」という箇所には、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う」、「(3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」という記載がある(甲39・14p)。この文書には、「第4節 設計・建設条件」の中の「2 建設工事」「(2) 建設工事基本条件」「ウ 復旧」という箇所には、「建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること」という記載がある(甲39・26p)ほか、77p、79p、95p、96p、97p等に、本件道路に設置するロードヒーティング設備に関する記載がある。この文書の添付資料-10には、本件道路のロードヒーティング計画図がある。本件道路工事が、清掃工場建設及び運営事業の中に含まれていることが分かる。
  5.  平成27年1月23日に発表された「実施方針等に関する質問・意見への回答」という資料の中には、「市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備の仕様として「ポンプ口径φ100」と記載がありますが、市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備側にポンプは無く、エネルギー回収施設内のポンプにて温水を循環し、取合い点の配管口径がφ100mmであると理解してよろしいでしょうか」という質問がなされ、組合から「御理解のとおりです」という回答がなされている(甲40・№48の質問)。
  6.  平成27年3月23日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 入札説明書」という書面の「Ⅲ 事業の概要」という部分の「12 事業の対象となる業務範囲」の中の「(2) 組合又は上山市が行う業務」という箇所には、「ア 複合施設に関する業務」のうち、「(ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」が含まれている(甲41・8p)。
  7.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 要求水準書 設計・建設業務編」には、前記甲39と同様の内容の記載がある(甲42)。
  8.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 様式集」には、「要求水準に対する設計仕様書(様式5-4) 記入要領」という欄があり、そこには、「項番140 電力利用以外にも発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う。…」、「項番143  (3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」、「項番326 ウ 復旧 建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること。」、「項番854 …水冷式蒸気復水器は、冬季の構内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング、付帯施設への熱供給を行うための温水を回収する目的で設置する。」、「項番902 ロードヒーティングの範囲を事業提案書の中で図示すること。なお、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備(約2,000㎡)への温水等の供給についても考慮すること。」、「項番1436~1460 3 ロードヒーティング設備 …市道前川ダム東線部[ ]GJ/h 必要水量0.4L/min・m2 吐出し量801.0L/min 配管口径φ100 温水送水温度 約40℃ 温水戻り温度 約25.7℃ [中略] 市道前川ダム東線部[約2,000]m2 [中略] エ 橋梁及び市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備(要求水準書添付資料-10「余熱利用について」参照)への供給熱量や配管経路等を考慮し、設置すること。オ 組合にて市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備との取り合い点までの配管及びバルブ、ハンドホールの施工を行うこと。 [中略]カ 市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備には環境負荷の低い不凍液を用いる。」、「項番1488 (5) 特記事項 ア 休炉時に事業実施区域内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備に必要な熱源を供給できるようにすること。」、という記載がある。また、同文書の「(様式6-5)1.設計・建設に関する事項 (1)機械設備に関する事項 エ 地球温暖化対策・エネルギー有効利用」という欄には、「【評価のポイント】」と書かれた箇所があり、そこには、「③余熱利用の安定性の確保」として、「・橋梁部及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備等(市道前川ダム東線は放熱管除く)の不具合への対応等について具体的な提案がなされているか。」という記載がある(甲43)。
  9.  平成27年5月8日に発表された「第1回入札説明書等に関する質問への回答」という文書では、「市道前川ダム東線部のロードヒーティング設備へ供給する温水の温度および水量は、供給熱量を遵守すれば事業者側での検討結果に応じて提案することは可能でしょうか。」という質問が出され、組合は、「原則として要求水準書に記載のとおりとしますが、概要説明会における提案は可能です。可否については別途判断します。」という回答を行っている(甲44・№38の質問)。また、この文書の「添付資料 1」として、「役割分担概念図」という資料が配布されているが、ここでは、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記述がなされている。それから、この文書の「添付資料 2」として、「消雪計画平面図」という図面が配付された。これは、本件道路における無散水消雪範囲を示す図面であり、前記甲42添付の図面とほぼ同じものであるが、「消雪管取合い点」という記載が加筆されている(甲44)。

 以上のように、清掃工場の建設計画の段階から、本件道路の改良工事は、清掃工場計画の一環として考えられていたのであり、本件道路の改良工事は、清掃工場建設計画があって初めて計画されたものである。

第3 本件工事による本件道路の交通量の増加

 清掃工場建設工事の進捗に伴って、本件道路において工事車両の増加が予定されていることは、組合作成の平成29年2月1日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」第5号にも記載されている(甲47)。清掃工場建設工事が本件道路工事と一体のものであることは前述の通りであり、清掃工場建設工事のための工事車両の交通量が増加するというのは、本件道路工事の結果である。

 また、清掃工場計画の中に、本件清掃工場を防災の拠点とする、ということが盛り込まれている。これは、平成26年7月の「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」17pに、「災害発生時、近隣住民等が避難すること等に対して、「上山市地域防災計画」との連係を図ります」と書かれているし(甲37・17p)、組合作成の平成28年3月15日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」創刊号にも「防災拠点としての機能強化」として、「東日本大震災で浮き彫りとなった「電力」、「水」、「燃料」不足を補うことができる防災拠点とします。300名×7日間の避難を想定した備蓄計画とし、地域の皆様の安全と安心に貢献します」(甲45)、同年9月1日付同だより第3号にも、組合管理者・佐藤孝弘が清掃工場に関して「防災拠点機能を付加」することを述べたことが書かれている(甲46)。 清掃工場用地が防災拠点とされるということは、災害が発生した場合、本件道路に緊急車両等が殺到することを意味する。当然のことながら、大型の緊急車両や避難用のバス等も殺到するということである。これは、単に、清掃工場に緊急車両が来るということだけではなく、ピストン輸送等のために、清掃工場から出て行く車両もあるということである。この場合、十分なすれ違いもできない本件道路は、渋滞を来たし、元来本件道路を利用していた控訴人の車両の通行の妨げとなるし、同控訴人の従業員等が本件道路を用いて避難することを困難とさせることにもなる。

 特に冬期は、積雪により、本件道路の有効道幅が、他の季節よりも狭くなり、交通が困難となる。本件工事は、国道13号線との交差点に近い五反田橋は、工事の対象となっていないため、消雪設備もないから(甲42、44)、積雪があると、道幅が著しく狭くなる。平成29年1月16日の積雪の際には、本件道路の道幅は、五反田橋で4.5m、奥羽本線のガード下で5.0mとなっていた(甲48)。五反田橋やガード下の地点を工事対象区間としなかった本件工事は、中途半端な意味のない工事となっていることを物語っている。

第4 本件工事によっても大型車両のすれ違いが困難となっていること

本件工事によっても、大型車両のすれ違いの困難性が全く解消されていないことは、既に控訴理由書において述べたところである。控訴人らは、近時の本件道路における大型車両の通行状況を調査した。その結果、大型車両は、奥羽本線のガード下においては、センターラインを越えて通過していることが分かった(甲49)。これは、この地点において、大型車同士のすれ違いは不可能であることを物語っている。

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今後予定されている裁判:

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

平成29年4月18日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

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