山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

結審へ向けて(3) 原告側第2・3準備書面の公開|上山市川口地区助成金裁判

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 明日(10月13日)は「上山市川口の清掃工場差し止め訴訟」と、「清掃工場の建設地である上山市川口地区へ支払われている助成金についての裁判(上山市川口地区助成金裁判)」が開かれる予定で、上山市川口地区助成金裁判はいよいよ結審すると思われます。
 結審へ向けてのまとめの3回目となる今回は、これまでの私たち守る会側の主張がまとめられた第二・三準備書面を公開いたします。第二準備書面は平成30年08月28日、第三準備書面は令和02年01月21日に提出されました。


※「禁無断転載」
※ Web公開用に一部編集を行っています。

 

平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金支出差止等請求住民訴訟事件

準備書面(2)

原告 一般市民
被告 山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘

平成30年8月28日
上記原告ら訴訟代理人
弁護士 梶山 正三
弁護士 坂本 博之

山形地方裁判所 御中

第1 はじめに
 本書面は、被告の平成30年4月23日付第2準備書面に対して、認否・反論を行うものである。

第2 被告の第2準備書面に対して
一 同第1に対して
1 同1に対して
 (1) 同(1)に対して
 第1段落の第2文は争う。
 被告が主張する、周辺地域活性交付金の支出に当たっての、川口地区会からの申請書の提出と被告の交付金の決定が美必要であるというのは、形式的なものに過ぎない。平成26年4月24日に上山市役所で行われた川口地区会と組合との会合では、組合職員は「地区会の運営費相当額として300万円を25年間にわたって交付する中で……」と述べており、組合が同地区に対して25年間に亘って毎年金300万円を支出することは、組合と同地区との間の了解事項となっていたものである。また、組合職員は、同地区の****会長の「毎年申請するやり方から毎年自動的に振り込みとならないか?」という質問に対して、「補助金であるため年度ごとの申請になる。なお、申請書の手伝いはする」と述べており、同地区からの申請書の提出と組合による交付決定が形式的なものに過ぎないことが分かる(甲18)。
2 同2に対して
 第2文は争う。
 被告は、平成30年度以降の川口地区に対して交付される地区会活動助成金について、未だ、組合のいかなる補助金交付要綱に基づくいかなる補助金を指すか不明である、などと述べている。
しかし、原告らの準備書面(1)において述べたように、支出の対象となる工事は、同準備書面においても述べた通り、十分に特定されている。従って、その根拠となる交付要綱が特定されていなかったとしても、補助金の特定については十分である。なお、組合では、毎年、「平成○○年度エネルギー回収施設建設関連施設整備事業補助金交付要綱」という名称の交付要綱を定めているようであるが、平成30年度以降も同様の名称及び内容を持った交付要綱が定められるものと思われるので、平成30年度以降の年号が付された「エネルギー回収施設建設関連施設整備事業補助金交付要綱」又は同様の内容を有する交付要綱に基づく補助金ということが言えるものと考えられる。
3 同3に対して
 第2段落の第2文は争う。
 被告は、川口地区から平成28年度の周辺地域活性交付金実績報告書(乙6の4)による報告を受け、交付対象事業が完了したことを確認しているなどと述べている。しかし、同地区会から提出された実績報告書の内容と、同地区会における決算報告書(甲8)の内容とが全く異なっていることは、準備書面(1)において詳細に述べた通りであり、被告はこの点について何ら具体的な反論を行っていない。
 被告は、「交付対象事業が完了したことを確認している」などと述べているが、どのような確認を行ったのか、具体的に明らかにすべきである。
 また、川口地区会が実績報告書の内容と全く内容と異なり、「環境保全事業」などに地域活性交付金を使っていないことは、平成28年度に限ったことではない。平成26年度、27年度、29年度においても同様であることは、川口地区会の各年度における決算報告書を見れば一目瞭然である(甲16、19、20)。因みに、被告は、平成29年度の交付金申請書を書証として提出している(乙7の1)が、その中で川口地区会が述べている交付金の使途と、地区会の決算報告書(甲20)に示された実際に使用された交付金の使途はまるで違っている。このように、実績報告書の内容と真実の使途とがまるで違っていることが明らかであるからこそ、被告はこの点についてまともな反論ができなかったものと思われる。
 そもそも、前記平成26年4月に行われた組合と川口地区会との会合の席上、、組合職員は、「地区会の運営費相当額として300万円を25年間にわたって交付する中で……」と述べており(甲19)、地域活性交付金が通常の地区会の運営費として使われることについては、組合と川口地区会双方ともに了解していたことであったことが分かる。そして、その席上での組合職員の「申請書の手伝いはする」との発言は、同地区会からの申請書の提出と組合の交付決定とは、形式的なものに過ぎず、内容を伴うことが念頭に置かれていなかったことを物語っている。

二 同第2に対して
1 同1に対して
 (1) 同(1)に対して
 第3段落の第2文以下は争う。
 被告の主張は、第一に、原告らが準備書面(1)で述べた、組合の「エネルギー回収施設建設に係る周辺地域活性交付金交付要綱」は、一般廃棄物処理施設の設置者の地域に対する配慮の要請を定めた廃棄物処理法9条の4の規定に違反するとの指摘について、何らの反論もしていない。同法同条は、一般廃棄物処理施設の設置者に対して、「当該一般廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び増進に配慮するものとする」と規定しているのであり、地域の活性化を図ることは、この条文には規定されていない。組合の上記交付要綱は、この廃棄物処理法の規定を超えるものである。
 第二に、被告は、本件交付金補助金は、川口地区の地元住民の負担感・不公平感を軽減させ、地域住民の宥和、地域コミュニティの醸成を図ることによって、組合の環境行政等に対する理解と協力を得て、本件エネルギー回収施設の早期稼働と廃棄物処理事業の安定化と業務の円滑な遂行を図ることを目的に支出されるものであり、組合の目的の範囲内で行う行為である、などと述べている。しかし、組合の行っている行為は、本件清掃工場建設に対して、十分な説明をして議論を尽くし、理解を求める代わりにお金で地元住民を釣るというやり方に他ならない。交付金等を交付したからと言って地元住民の負担感や不公平感は消えることはないし、地域住民の宥和が図られることもない。地域コミュニティの醸成が図られるということもない。また、この交付金は、「地元住民」に対する対策を言われているが、組合が地域対策の対象としている地元住民というのは、川口地区会だけである。しかし、地元住民の中には、****をはじめとして、川口地区会に所属していない者も存在するが、組合は何らの対策も講じてはいない。組合の交付する補助金交付金は、その看板に掲げられている目的を達成することはできない無意味な支出である上、公平を欠くものであると言わざるを得ない。

2 同3に対して
(1) 同(1)に対して
 第2段落の第2文以下は争う。
 第3段落の第2文以下は争う。
 まず、被告は、本件清掃工場からは、「有害物質の排出はない」と主張しているのではなく、ダイオキシン類対策特別措置法等の法令等によって定められた基準以上のダイオキシン類、ばいじん、……が排出される蓋然性は認められない」という主張をしているということである。もし被告の言う通りであるならば、川口地区の住民に対しては、法令上許されない負担をかけないことになるのであり、やはり、原告らの準備書面(1)において述べたように、川口地区の住民には負担はないはずであるし、他の地区との不公平ということもないはずである。このような川口地区に対して、交付金補助金を交付する理由は何もない。
 次に、被告は、浦和地裁昭和60年3月25日判決を引用して、清掃工場からの排ガス中の有害物質が法令及び新ガイドラインの基準内のものであったとしても、廃棄物処理施設の建設について住民の理解と協力を得るためには何らかの措置が必要であることには変わりがないなどとして、廃棄物処理法9条の4に規定する周辺地域の生活環境の保全及び増進を図るとともに、川口地区の地元住民の負担感の解消等を図ることを目的として交付金及び補助金の交付を行っているのだ、などと述べている。しかし、もし清掃工場からの排ガス中の有害物質が法令及び新ガイドラインの基準内のものであったとしたならば、地元住民らに対して理解と協力を得るために金銭の交付が何故に必要となるのか、不明である。被告が指摘する浦和地裁判決は、「これら住民に対し予想される又は現に生じている環境悪化に伴う損害の補償をなし、あるいは、右のような損害を受忍する代償として何らかの措置を講ずることが必要となってくることは、ある程度不可避というべき」と述べているが、本件清掃工場はまだ建設中であるから現に環境悪化は生じていないし、完成後も法令等で規定された基準内の有害物質しか出ないのであれば、環境悪化が生じることは予想されない。浦和地裁判決は、且つダイオキシン類対策特措法も制定されておらず、焼却炉に対する規制も不十分であり、清掃工場からの環境汚染が必然的であった昭和60年のものであり、本件事件について当てはまるものではない。本件において組合が川口地区に対して補償金を支払う理由は何もない。
 寧ろ、組合が川口地区に対して何らかの措置を講ずるとするならば、環境保全協定を締結する等の措置が考えられるが、組合と同地区との間で環境保全協定は平成30年5月11日に至ってようやく締結された(甲21)。本来であれば、交付金補助金を支出するというようなことを検討する前にこのような協定を締結することが行われるべきであったと言わねばならない。そして、このような協定が締結された以上は、補助金交付金が交付される理由は全くなくなったものというべきである。


平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金支出差止等請求住民訴訟事件 原告側第三準備書面  

※「禁無断転載」
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