山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (2) | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 昨日に引き続き、平成29年2月8日、山形県に郵送した公開質問状 に添付した図説(2)を公開致します。

 2月9日公開の図説(1)は、公称エネルギー回収施設の建設予定地の現状を伝える内容でした。敷地は、山と川に接しており、上流には前川治水ダムが存在する、という観光資源に恵まれた土地ですが、豪雨の場合は、下流域での氾濫を想定すべき地形です。平成26年に上山中心市街地を襲った水害を繰り返すべきではありません。

 今日公開する図説(2)は、上流部の前川治水ダムが完成する以前の自然地形と、昭和57年に前川ダムと放水路(忠川)が完成した後との比較を行っています。また、それまでの前川氾濫状況に対応すべく、 昭和48年に「前川治水ダム事業計画書」が策定され、前川ダムと前川ダム放水路は建設されました。

 この計画書には、前川ダムと前川、忠川の果たすべき役割が記載されており、その中に「ダム洪水設計量図」があります。この場では、 それを分かりやすく図解して説明致します。

 前川と、忠川はともに一級河川であり、その管理は山形県に移管されているわけですが、山形県はその河川整備計画を立て、そのデータを各市に提供します。各市はデータに基づき、「洪水避難地図(洪 水ハザードマップ)」を制作することになります。前川上流部の中山地区から、川下の川口地区にかけては、前川と国道13号線、JR奥羽本線 (山形新幹線)が並行して走っている上に、ハザードマップ上では、周辺は氾濫域に指定されています。

 このような条件に考慮すると、ガス化溶融炉という危険施設を立地させるべきではないことが、読み取れます。建設予定地として、十分に検討されたとは言い難い結果でした。また、前川ダム計画時に構造計算された、前川ダム放水路コンクリート護岸の連続性を破壊するような排水樋管、排水口設置を、山形県は認めるべきではなかったと思います。

[ 図説2 ]
2.前川治水ダム事業によって起きること(山間狭隘部を170m3/s の大断面で改修したこと)
→ ダム直下流~狭隘部の氾濫水を直接前川へ放流し、前川の氾濫を増長し人命・財産を脅かしている

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ダム設計洪水流量(東北地域での過去最大の豪雨想定)が起きた場合

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[ ダム事業前 ] 忠川流域の平地は、周囲の山地から忠川に集 まる水流により形成され、長い間田畑として利用されて来ました。前川ダム完成以前は、自然の忠川池(前川ダムの前身)流域に田畑が広がっており、雨水の貯留・浸透機能をもっていました。忠川池は、池の真ん中に島をもつ景勝地だったと言われています。

[ ダム事業前 ] かつての忠川流域に広がっていた田畑は、山地の樹木による雨水浸透機能と共に、山から雨水が流れ出ることを抑える効果をもっていました。 しかし、前川治水ダム完成後、自然河川忠川は、コンク リート三面張りの人工的な放水路となり、忠川流域をも変更させ、次第に川としての浸透能力を失いました。

 

ダム設計洪水量模式図

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山形県の「前川治水ダム計画」に記載されている「ダム設計洪水量図」です。豪雨による洪水時、前川上流では400m3/s の水量を想定しており、前川ダムの決壊を避けるためにダム方面へ160m3/s 分流し、すぐに前川へそのまま戻します。

上山市洪水避難地図にもとづく中山地区浸水想定・浸水想定水深

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40 年確率の前川計画流量に基づいて、現況の前川の流下能力に照らして氾濫解析を行い(県)、その解析結果をもとに上山市洪水避難地図が作成されました。平成25 年の豪雨時の氾濫実績を配慮し、平成26 年3 月に改定されており、以前よりも浸水域が広く、深くなっています。


今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

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