山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

7月18日の裁判について4 :公開質問状に対する山形県からの回答の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 山形広域環境事務組合(山形市上山市山辺町・中山町)が行っている公称 「エネルギー回収施設」の敷地造成工事は、山形県に対し「開発許可申請」は必要であるものの、取り立てて造成工事の許可を申請する必要はありません。

 しかし、この敷地の特殊性として東側が「前川ダム放水路(一級河川忠川)」 に接していることが挙げられます。そして、この放水路を管理しているのは山形県 です。さらに、この放水路は敷地直下で一級河川前川に合流しており、この川を管理しているのもまた山形県です。

 それ故、組合は造成工事を行うにあたり、まずこの放水路に搬入路としての新橋を架ける必要がありました。この放水路は上流の前川ダム完成と同時に、コンクリート三面張りの放水路として昭和56年に竣工し、現在36年目を迎えています。特に造成工事が始まって以降、この敷地に接する護岸壁には多くのクラック(亀裂)が 入るようになり、架橋工事訴訟ではその安全性について組合と山形県の両方を相手に裁判が行われ、守る会は敗訴しました。

 引き続き造成工事に関する訴訟を、組合を相手に継続中ですが、造成工事に関連して、この劣化した放水路左岸を組合は大きく切り欠く計画を立て、あろうことか、 放水路に排水する計画を立てました。この計画を許可したのは山形県です。

 山形県はいったいどのような見識で、この無謀と思える計画を許可したのか問うため、山形県知事に対し公開質問状を提出し、回答を得ましたので公開致します。 回答は異常なほど簡単で、河川管理者として責任ある回答であると到底思えず、非常に残念に思います。

 いずれにしても、山形地裁における敷地造成工事裁判は、去る7月18日結審しましたので、11月の判決を待ちたいと思います。

関連リンク:
2017-02-09 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-10 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (2) | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-11 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (3) | 山形県上山市川口清掃工場問題
2017-02-12 清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (4) | 山形県上山市川口清掃工場問題


※内容はブログ用に一部編集しておりますので予めご了承ください。

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平成29年3月14日

山形県の環境と観光産業を守る会
*****様

山形県
県土整備部参事(兼)河川課長
村山総合支庁建設部長

「公開質問状」に対する回答について

 平成29年2月7日付けで提出された「公開質問状」について、別紙のとおり回答いたします。

 

(別紙)
質問1
1. 造成工事の際、忠川左岸壁の排水樋管、及び排水口が新たに設置されたこと により、忠川左岸のコンクリート護岸壁が一部切り欠かれた結果、天端高は、 計画護岸高に対し低く不揃いとなりました。これは河川法上、危険で由々しき 事態であると考えますが、貴殿は組合に対し「護岸天端高の復旧指示」を出される予定はございますか。

回答1
 予定はありません。

 

質問2
2. 造成工事着手以前雨水貯留、及び雨水浸透機能維持のため、「造成前の貯留、 及び浸透能力をもつ調整池を造成地内に設置する指示」を、組合に対して出さ れる予定はございますか。現状のままでは、敷地及び里山から流出された雨水 が、忠川排水樋管及び排水口を通して直接前川へ排水されることにより、一級 河川前川下流域での更なる洪水氾濫の助長が予想されます。豪雨時における前 川の堤防洗掘による破堤の危険、及び前川の忠川合流点より下流域での氾濫は ご存知の通りで、上山市民の安全上看過できません。

回答2
 予定はありません。

 

質問3
3. 造成地における本体建設工事の差し止め、もしくは造成・開発区域計画や設 計の変更要求を行う予定はございますか。 ※山形県の環境と観光産業を守る会(以下“守る会”とする)は、平成9年河 川法改正に基づく一級河川前川、忠川の具体的な河川整備基本方針、河川整備 計画は、不存在と認識しております。現状は名目のみで内容を伴わず、施設維 持のみを行う計画であり、これにより洪水被害を防止することはできません。 また、平成9年の河川法改正による環境の内部目的化がなされておらず、本来、開発、造成にあたっては、事前に前川の状況、及び流下能力、河川整備計 画の公表及びパブリックコメントを経た上で、進捗状況に照らして初めて「許可」されるべきものであり、排水先の河川の整合、能力を無視した造成、開発、 排水施設工事の許認可を行えるものではないと考えます。

回答3
 山形広域環境事務組合が行うエネルギー回収施設本体建設工事並びに造成、開発区域の計画及び設計に係る許認可については所管事項外ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問4
4. 昭和48年8月に山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」のダム設計流量配分において、前川上流より160㎥/ s分派したものを前川へ戻す施設の水路は、どのようなものか、またどのような施設管理がなされているのか、お示し下さい。またその際のリスクをどの様に市民へ周知徹底されているかをお示し 下さい。

回答4

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 導水路の能力を超過した水は、導水路の切り欠き部をとおり本川に戻る構造になっているため、特別な管理は行っておりません。
 また、この際のリスクについての公表資料はございません。

 

質問5
5. 平成27年5月、組合が山形県に対し申請した敷地に接する忠川護岸壁への排 水樋管、排水口の設置を許可した経緯、及び確認事項等を詳細にお示し下さい。 許可に当たり「許可するもやむを得ない」とコメントした理由も、具体的に明 らかにして下さい。

回答5
平成27年5月13日付け山広環第99号により許可申請があり、「河川敷地占用 許可準則」及び「工作物設置許可基準」等の基準(以下、「審査基準」という。) に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、「許可するもやむを得ない」との表現の意図については、既に平成27年 9月8日付の公開質問状で質問いただいており、これに対し平成27年9月18日 付文書で回答しております。

 

質問6
6. 敷地造成工事により、これまで休耕田であった貯留浸透機能を無にし、造成 地からの雨水を、排水樋管及び排水口から直接(流出係数100%を忠川に)排 水し、さらに里山から休耕田に貯留・浸透していた流出抑制機能(これについ て検討されているか疑問)を無にして水路により雨水を集め、樋管排水口によ り直接忠川へ排水することは許可できるものでしょうか。改めて見解をお示し 下さい。

回答6
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱」(以 下、「指導要綱」という。)の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要は ありません。

 

質問7
7. 護岸天端の高さについて、排水樋管部、及び排水口部では、従来の連続した コンクリート護岸壁を、こともあろうに大きく切り欠いています。従来は、護 岸壁に遮られて、休耕田に一旦貯留・浸透した雨水が直接忠川に越流すること はなかったことを考えると、現計画は著しく貯留・浸透効果を欠いています。 にもかかわらず、何故組合に設置許可を与えたのか、その理由をお示し下さい。

回答7
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行 う必要はありません。

 

質問8
8. 組合は、敷地造成設計に際し作成した雨水排水計画において、開発・造成後 に増加する排水量は、忠川の設計洪水流量170㎥/sと比して1%以下である としています。しかし現状は、本来の河川整備基本方針、河川整備計画が具体 的に策定されておらず、忠川の計画高水流量も定められていない状態です。山 形県が策定した「前川治水ダム事業計画」では、前述の通り「洪水時の前川ダ ム設計洪水流量170㎥/s」及び40年確率での計画高水流量0㎥/s」と定め られています。敷地造成により排水量がわずかでも増えれば、分母がゼロであ るため流量の増加する比率は無限大となります。これは、「山形県河川流域開 発に伴う雨水排水対策指導要綱」に反するものと考えます。以上により、洪水 に対し無策の排水樋管等設置に係る計画を何故許可できるのか、その根拠をご 回答ください。

回答8
審査基準に基づき審査した結果、問題ないと判断したため許可しております。 なお、本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行 う必要はありません。

 

質問9
9. 前川本川の計画(前川治水ダム事業計画)と、敷地からの排水との整合性は、 確認されているのでしょうか。 ※流出係数は、平地で0.6, 山地で0.8ですが、造成地排水区域として接する 山地も含むべきと考えます。また、初期損失雨量は、流量観測資料を基に20 ~30mm としているものの、計画に反映されていません。さらに、流出計算手法 は、山形県が単位図法を採っているのに対し、組合は合理式、及び道路土工要 綱による計算をしており、双方に齟齬が見られます。また、降雨強度式は、 山形県河川整備計画で用いるものと異なっているため、計画自体に整合性が見 られず、造成前の安全性が担保できていません。

回答9
本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要 はありません。

 

質問10
10. 前川の忠川合流点から下流の水量について、造成・開発前後の10年確率(造 成地の排水計画降雨時)、40年確率(河川の計画降雨時)、また超過洪水(ダム の設計外力)において、前川の洪水量や被害を解析、確認をしておられますか。 忠川(前川ダム放水路)を、既にダム設計流量170㎥/sまでの流下能力で 改修していることは、本支川バランスを著しく欠いており逆転していると考え ますが、これについての見解をお示し下さい。 ※この計画では、一級河川として前川の支川である忠川の流下能力が大きくな り過ぎ、下流である前川への過負荷となっています。この計画は、本来前川ダ ム上流部及びダム直下流地狭溢部まででの間で氾濫していた洪水被害を、前 川下流部に位相、集中させる行為であって、前川の忠川合流点下流の河道が未 改修の現状においては、極めて危険な計画であると言えます。さらにダム設計 流量時(東北地域での記録的降雨による超過洪水時)には、本来自然と忠川上 流で氾濫していた被害を、前川ダム放水路としてそのまま前川下流へ170㎥/ sまでの洪水として移し、下流市街地での被害を増大・集中させる構造となっ ており、極めて不適切であると考えます。

回答10
本件造成工事は、指導要綱の対象外であるため、流出量増加の検討を行う必要 はありません。 また、忠川(前川ダム放水路)の整備は、ダムの安全性を確保するために実施 されたものであり、本支川のバランスを考慮する施設ではありません。

 

質問11
11. 管理用通路幅員(排水樋管上部、他の地点)について ① 申請当初の図面では3.0mで設計されていたものの、実施図面では2.0m に変更されています。完成時に、すべての区間で2.0m確保できているか、ま た現状では雑草が茂り、人も歩けないような状況で放置されており、造成工事 を優先されていることに疑問を感じざるを得ませんが、その現状確認をなさい ましたでしょうか。 ② すでに造成工事は終了していますが、組合は忠川沿いの管理用通路として 幅員を連続させずに放置しています。これを、河川管理者としてどのように考 えておられますか。 ③ 河川管理用通路の幅員は、設計当初図面通り通常の3.0mでしたが、実施 設計時2.0mに設計変更した経緯をご存知でしょうか。幅員が1.0m も狭まっ たことについて、許可された際どのように解釈されましたか。さらに用地境界 杭からの造成地までの蝠員は2mに欠けている現状をいかに解釈されておられ ますか。 ④ 現在造成地の左岸に、2.0mの管理用通路が確保されておりますか。たとえ 工事中であっても、安全上、河川管理・監視の観点で管理用通路は、いつでも 利用できる状態であるべき、と考えます。

回答11
①~④について
当該区間の河川管理用通路については、現状で河川管理上問題ないものと認識 しております。

 

質問12
12. 忠川に旧橋梁を残置したことにより、旧橋と新しく架設された橋が連続し、 一級河川忠川の河川上空を余分に占用する結果となりました。橋梁が連続して 2ケ所存在することは、河川管理、治水機能、河川環境、景観上望ましいこと ではありません。これについて、旧橋残置を許可する理由をお示し下さい。ま た新橋(しんちゅうかわ橋)の河川占用を、造成地通行のみへの占用とされて いる理由についてもお示し下さい。

回答12
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問13
13. 新橋(しんちゅうかわ橋)の河川管理用通路としての部分について、河川管 理時、及び平常時に造成地への車両通行止めとする措置がとられているか、ご 回答ください。

回答13
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問14
14. 河川区域、河川保全区域を如何に設定されているか、またそれが造成工事に 反映されているか、をお示し下さい。

回答14
造成工事にあたり境界確認により河川区域を確認した上で、必要な範囲につい て河川占用許可を行っております。なお、河川保全区域は設定しておりません。

 

質問15
15. 忠川の造成地区間、特に橋梁架設付近の現状点検結果については、錆の流出 及び表面に目視できる変状について、河川管理者としていかに評価し、補修の 必要なし、異常なしと判断されたのでしょうか。お示し下さい。

回答15
係争中の事案に関する事項ですので、回答は控えさせていただきます。

 

質問16
16. 現在上山市が発行している洪水避難地図は、防災上の観点から前川、忠川流域を含む村山圏域として、貴県が氾檻解析を行った結果(基データ)をもとに作成され、公開されています。この氾濫解析は「前川ダム事業完成時の河道条件として、40年確率の洪水に対し河川が改修されていない状況において、同年確率計画の洪水が起こった場合の氾濫区域、氾濫水深を想定した」ものです。 この上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)について、お尋ね致します。

 

  1. 上山市内を流れる前川、及びその上流に位置する前川治水ダム放水路 (旧忠川)の治水安全度は、支川である忠川が高く、本川である前川で低 いため、前川下流域での氾濫が増幅されています。この安全度が、本支川 で逆転している現状をどのように説明されますか。ちなみに、平成29年 1月13日に山形県において情報公開請求文書を受理予定でしたが、前川 上流部の「前川危険水位流下能カ一覧表」は「不存在」との回答でした。
  2.  洪水避難地図により、県民(40年確率計画を想定条件)と国民(100~ 200年確率)に危険度を周知し、その対策を講じていることは、防災上、 かつ治水安全上の蔑視であると思います。同じ国民として平等であるはず の市民の命、財産に対する防災対策の格差についてご説明をお願い申し上 げます。国でも県でも市でも、洪水に対する危険度の見積もり方、周知の 仕方、及び防災上の安全対策(避難の仕組み、避難路、避難所の設定等)、 同じ確率年で計画を立てるべきではないでしょうか。
  3.  前川、忠川において、添付資料―2にある通り造成地の直接排水が、前川 ダム及び忠川において40年確率の計画高水量を増やし、前川においては その数値計画すらないというような造成工事を、何故許認可できたのか、 その理由をお伺い致します。
  4.  村山圏域の氾濫解析については、“想定外を想定する“という防災上の 条件として、上流から溢れながらも集まる最大流量(現況河道、下水道整 備状況、地目、造成地等、地形状況のトレンドも含み)を見直し、改定し て、データを上山市へ渡され、市の防災対策として反映、見直すよう指示 される予定はございますか。また隣接する南陽市等も含め公助としての防 災対策を、市単独ではない県として、避難路及び避難所等の防災対策につ き、関連市町村へ指導なさる予定はございますか。

回答16

  1. 忠川(前川ダム放水路)の整備は、ダムの安全性を確保するために実施され たものであり、本支川のバランスを考慮する施設ではありません。
  2.  確率年を同じにすることが、必ずしも同じ水準の安全性を担保することには なりません。
  3.  造成工事に係る許認可は所管事項外であり、回答は控えさせていただきます。
  4.  氾濫解析については、今後見直しを予定しています。 なお、避難路及び避難所等の防災対策に係る関連市町村への指導は所管事項 外であり、回答は控えさせていただきます。
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