山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

2月23日の裁判(控訴審)について : 控訴人側(上山市民)提出の準備書面の公開

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*この記事は前回のブログのつづきです。

 平成29年2月23日に仙台高裁で行われた、敷地造成工事の公費返還及び損害賠償を求める控訴審で、守る会は控訴準備書面(1)と 証拠甲34~49号を提出致しましたので、準備書面を公開致します。

 この書面は、守る会が山形地裁の判決(棄却)を受けた後、仙台高裁への即時抗告時に提出した控訴理由書の内容を補完する内容です。

 平成29年2月17日付で、上山市が仙台高裁に提出した答弁書(前回のブログで文書を公開済み)は、守る会の控訴理由書に対する反論であり、控訴棄却を求める内容でした。通行権侵害に関する主な反論主旨として以下のように述べています。

  • 守る会が主張する通行権侵害が、問題となる余地はない。
  • 大型車や緊急車両の通行、歩行者等の安全が妨害されるほど、通行量が増加するとは認められない。
  • 市道すべての箇所で、大型車がすれ違うことができなければ、大型車の通行が不可能、困難になるとは認められない。
  • 守る会が提出した甲31号証のビデオでは、敢えてセンターラインを越え、ふくらませているに過ぎない。
  • すれ違いが困難になるほど多数の長さ12メートル程度の大型車が通行する根拠がない。

とされていますが、守る会では、この答弁書に対し証拠甲34~49号を添付し、控訴準備書面(1)で反論しています。

 被控訴人側(被控訴人 横戸長兵衛氏)は「市道前川ダム東線の交通量が増加することは、エネルギー 回収施設建設が原因ではなく、関連性がない」と述べていますが、これについて守る会は、甲34~47号証において、組合(上山市長は、組合の 副管理者の立場)が施設建設と道路工事との関連性を認めている各種書類 を提出しています。この市道改良工事は、明らかにエネルギー回収施設関連工事の一環であると考えられます。でなければ、税金を使って市道を拡幅する意義は、どこにも見当たりません。

 更に、冬期は市道に積雪があり、除雪をしても有効幅が狭まる様子を守る会が測定し、写真で説明しています。組合が、エネルギー回収施設稼働後に発生する熱エネルギーを利用して市道の融雪をしたとしても、 市道全長で融雪されるわけではなく(ロードヒーティング箇所は一部に過ぎません)、除雪した雪で狭まる箇所は必ず発生します。ただでさえ狭いカーブ箇所や、橋の上でのすれ違いは、ますます困難になります。新設 される公共施設へのアクセス道路として妥当と言えるでしょうか。

 また道路のカーブ箇所で、長さ12メートル程度の大型車が、センターラインオーバーする様子について、当初守る会はその軌跡を図示していましたが、図示では困難性を認められなかったため、実際のすれ違い動画 を提出した経緯があります。しかし、その動画に対しても、わざとセンタ ーラインを越えさせた画像であるとの指摘がありました。守る会は、証拠 甲49号としてさらなる動画を車内と車外の映像で表現し、提出しております。(後日動画を公開予定)

 これらの証拠すべてはデータ量の関係上公開できませんが、その概略の説明である証拠説明書を公開致します。

 また、2月23日の法廷において、守る会は「証拠申出書」において、控訴人代表1名(60分)と、元上山市役所職員1名(60分)、造成工事を請け負った企業代表者(30分)の人証を求めましたが、裁判官合議の上、申請は認められませんでした。更に追加証拠甲50~52号証が受理されることもありませんでした。

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*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年(行コ)第19号
前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

控訴審準備書面(1)

控訴人   上山市
控訴人  上山市長 横戸長兵衛 外1名

平成29年2月21日

上記控訴人ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

仙台高等裁判所第2民事部 御中

第1 はじめに

本書面は、控訴理由書に関して、控訴人らの主張の補充を行うものである。主張の補充の要点は、①本件工事と清掃工場建設計画とが密接な関連性を有すること、②清掃工場建設工事及びその稼働後に本件道路の交通量が増加すること、③本件工事によってもなお、本件道路は大型車同士のすれ違いが困難となっていること、の3点である。

第2 本件工事と清掃工場建設計画との密接な関連性

 本件工事と清掃工場建設計画との間には、密接な関連性がある。このことは、第一に、上山市平成27年度施政方針に、「エネルギー回収施設に係る前川ダム東線の道路改良工事を実施してまいります」「山形広域環境事務組合が川口地内に建設するエネルギー回収施設については、造成工事及び道路改良工事に着手し、平成30年12月の稼働に向け構成市として協力してまいります」などと述べてあることからも明らかである(甲34)。上山市は、本件工事が清掃工場建設及び操業のために行う道路整備であり、そのための協力工事であることを十分に認識しているのである。

 第二に、本件工事と清掃工場建設計画との間に密接な関連性があることは、山形広域環境事務組合の資料からも明らかに読み取ることができる。即ち、本件工事は、道路に消雪施設を設置する工事も含まれるものである(甲17)が、この道路に消雪施設を設置する計画を含む市道前川ダム東線道路改良工事は、清掃工場建設計画の当初からこの一部として計画立案、実施されている。例えば、次のような資料がある。

  1.  組合は、平成26年7月24日に、「エネルギー回収施設(川口)建設事業施設整備基本計画書」を策定したということであるが(甲35)、その際に作成されたリーフレットに、施設で発生する余熱を利用して市道前川ダム東線のロードヒーティングを実施する計画の記述がある(甲36)。
  2.  組合が同年7月に作成した「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」には、「…冬季の構内ロードヒーティングや市道前川ダム東線へのロードヒーティングといった温水供給を行う設備を設置…」(21p)という記載の他、「第3章 余熱利用計画及びエネルギー供給施設の検討について」という箇所の「I 余熱利用先・活用方法」の中の「(3)発電後のタービン排気熱の利活用)」の欄には、「③ 市道前川ダム東線のロードヒーティング」(33p)という記載がある(甲37)。
  3.  平成26年12月19日に公開された「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業実施方針」の中に「Ⅱ 事業の内容に関する事項」という箇所があるが、その中の「11 事業の対象となる業務範囲」には、「(2) 組合又は上山市が行う業務」との記載があり、その中の「ア 複合施設に関する業務」の「 (ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に、「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」という記載がある(甲38・7p)。本件道路は、清掃工場に付随する複合施設であり、上山市が行う本件道路改良工事は、組合の事業である清掃工場建設及び運営事業の一環であることが明記されている。また、この文書の8pにも、「Ⅱ 事業の内容に関する事項」の中の「18 余熱利用計画」という項目があり、そこでは、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。…」と書かれているし、「実施方針添付資料-4 役割分担概念図」の中にも、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記載がある。
  4.  同じく平成26年12月策定の「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書 設計・建設業務編(案)という文書の中の「第2節 計画主要目」の「5 余熱利用計画」という箇所には、「…発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う」、「(3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」という記載がある(甲39・14p)。この文書には、「第4節 設計・建設条件」の中の「2 建設工事」「(2) 建設工事基本条件」「ウ 復旧」という箇所には、「建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること」という記載がある(甲39・26p)ほか、77p、79p、95p、96p、97p等に、本件道路に設置するロードヒーティング設備に関する記載がある。この文書の添付資料-10には、本件道路のロードヒーティング計画図がある。本件道路工事が、清掃工場建設及び運営事業の中に含まれていることが分かる。
  5.  平成27年1月23日に発表された「実施方針等に関する質問・意見への回答」という資料の中には、「市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備の仕様として「ポンプ口径φ100」と記載がありますが、市道前川ダム東線部用ロードヒーティング設備側にポンプは無く、エネルギー回収施設内のポンプにて温水を循環し、取合い点の配管口径がφ100mmであると理解してよろしいでしょうか」という質問がなされ、組合から「御理解のとおりです」という回答がなされている(甲40・№48の質問)。
  6.  平成27年3月23日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 入札説明書」という書面の「Ⅲ 事業の概要」という部分の「12 事業の対象となる業務範囲」の中の「(2) 組合又は上山市が行う業務」という箇所には、「ア 複合施設に関する業務」のうち、「(ア) 複合施設の設計・建設に関する業務」の中に「⑤ 市道前川ダム東線改良工事(ロードヒーティング放熱管布設含む)」が含まれている(甲41・8p)。
  7.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 要求水準書 設計・建設業務編」には、前記甲39と同様の内容の記載がある(甲42)。
  8.  同日付「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 様式集」には、「要求水準に対する設計仕様書(様式5-4) 記入要領」という欄があり、そこには、「項番140 電力利用以外にも発電後のタービン排気熱等を利用して、構内道路、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング用の熱供給を行う。…」、「項番143  (3) 場外余熱利用 橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティングを行う。」、「項番326 ウ 復旧 建設事業者は、工事に伴って上水道設備、橋梁、市道前川ダム東線及びこれらのロードヒーティング放熱管、その他周辺道路や隣接する忠川、隣地などに、汚染や損傷などを生じさせた場合は、組合に報告するとともに早急に建設事業者負担で復旧すること。」、「項番854 …水冷式蒸気復水器は、冬季の構内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング、付帯施設への熱供給を行うための温水を回収する目的で設置する。」、「項番902 ロードヒーティングの範囲を事業提案書の中で図示すること。なお、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備(約2,000㎡)への温水等の供給についても考慮すること。」、「項番1436~1460 3 ロードヒーティング設備 …市道前川ダム東線部[ ]GJ/h 必要水量0.4L/min・m2 吐出し量801.0L/min 配管口径φ100 温水送水温度 約40℃ 温水戻り温度 約25.7℃ [中略] 市道前川ダム東線部[約2,000]m2 [中略] エ 橋梁及び市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備(要求水準書添付資料-10「余熱利用について」参照)への供給熱量や配管経路等を考慮し、設置すること。オ 組合にて市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備との取り合い点までの配管及びバルブ、ハンドホールの施工を行うこと。 [中略]カ 市道前川ダム東線に設置するロードヒーティング設備には環境負荷の低い不凍液を用いる。」、「項番1488 (5) 特記事項 ア 休炉時に事業実施区域内、橋梁及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備に必要な熱源を供給できるようにすること。」、という記載がある。また、同文書の「(様式6-5)1.設計・建設に関する事項 (1)機械設備に関する事項 エ 地球温暖化対策・エネルギー有効利用」という欄には、「【評価のポイント】」と書かれた箇所があり、そこには、「③余熱利用の安定性の確保」として、「・橋梁部及び市道前川ダム東線のロードヒーティング設備等(市道前川ダム東線は放熱管除く)の不具合への対応等について具体的な提案がなされているか。」という記載がある(甲43)。
  9.  平成27年5月8日に発表された「第1回入札説明書等に関する質問への回答」という文書では、「市道前川ダム東線部のロードヒーティング設備へ供給する温水の温度および水量は、供給熱量を遵守すれば事業者側での検討結果に応じて提案することは可能でしょうか。」という質問が出され、組合は、「原則として要求水準書に記載のとおりとしますが、概要説明会における提案は可能です。可否については別途判断します。」という回答を行っている(甲44・№38の質問)。また、この文書の「添付資料 1」として、「役割分担概念図」という資料が配布されているが、ここでは、「熱供給(ロードヒーティング)」の供給先として「市道」という記述がなされている。それから、この文書の「添付資料 2」として、「消雪計画平面図」という図面が配付された。これは、本件道路における無散水消雪範囲を示す図面であり、前記甲42添付の図面とほぼ同じものであるが、「消雪管取合い点」という記載が加筆されている(甲44)。

 以上のように、清掃工場の建設計画の段階から、本件道路の改良工事は、清掃工場計画の一環として考えられていたのであり、本件道路の改良工事は、清掃工場建設計画があって初めて計画されたものである。

第3 本件工事による本件道路の交通量の増加

 清掃工場建設工事の進捗に伴って、本件道路において工事車両の増加が予定されていることは、組合作成の平成29年2月1日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」第5号にも記載されている(甲47)。清掃工場建設工事が本件道路工事と一体のものであることは前述の通りであり、清掃工場建設工事のための工事車両の交通量が増加するというのは、本件道路工事の結果である。

 また、清掃工場計画の中に、本件清掃工場を防災の拠点とする、ということが盛り込まれている。これは、平成26年7月の「エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書(概要版)」17pに、「災害発生時、近隣住民等が避難すること等に対して、「上山市地域防災計画」との連係を図ります」と書かれているし(甲37・17p)、組合作成の平成28年3月15日付「エネルギー回収施設(川口)建設だより」創刊号にも「防災拠点としての機能強化」として、「東日本大震災で浮き彫りとなった「電力」、「水」、「燃料」不足を補うことができる防災拠点とします。300名×7日間の避難を想定した備蓄計画とし、地域の皆様の安全と安心に貢献します」(甲45)、同年9月1日付同だより第3号にも、組合管理者・佐藤孝弘が清掃工場に関して「防災拠点機能を付加」することを述べたことが書かれている(甲46)。 清掃工場用地が防災拠点とされるということは、災害が発生した場合、本件道路に緊急車両等が殺到することを意味する。当然のことながら、大型の緊急車両や避難用のバス等も殺到するということである。これは、単に、清掃工場に緊急車両が来るということだけではなく、ピストン輸送等のために、清掃工場から出て行く車両もあるということである。この場合、十分なすれ違いもできない本件道路は、渋滞を来たし、元来本件道路を利用していた控訴人の車両の通行の妨げとなるし、同控訴人の従業員等が本件道路を用いて避難することを困難とさせることにもなる。

 特に冬期は、積雪により、本件道路の有効道幅が、他の季節よりも狭くなり、交通が困難となる。本件工事は、国道13号線との交差点に近い五反田橋は、工事の対象となっていないため、消雪設備もないから(甲42、44)、積雪があると、道幅が著しく狭くなる。平成29年1月16日の積雪の際には、本件道路の道幅は、五反田橋で4.5m、奥羽本線のガード下で5.0mとなっていた(甲48)。五反田橋やガード下の地点を工事対象区間としなかった本件工事は、中途半端な意味のない工事となっていることを物語っている。

第4 本件工事によっても大型車両のすれ違いが困難となっていること

本件工事によっても、大型車両のすれ違いの困難性が全く解消されていないことは、既に控訴理由書において述べたところである。控訴人らは、近時の本件道路における大型車両の通行状況を調査した。その結果、大型車両は、奥羽本線のガード下においては、センターラインを越えて通過していることが分かった(甲49)。これは、この地点において、大型車同士のすれ違いは不可能であることを物語っている。

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今後予定されている裁判:

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

平成29年4月18日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

本日(2月23日)の裁判(控訴審)について : 被控訴人側(被控訴人 横戸長兵衛氏)提出の答弁書の公開

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 平成29年2月23日午後1時半より、仙台高等裁判所第402号法廷において、上山市長 横戸 長兵衛氏(公人と私人)に対する住民訴訟控訴審が行われましたので、ご報告致します。

■ これまでの経緯
 守る会は、平成27年10月29日付で、上山市の監査委員に対し、前川ダム東線道路改良工事 内容が極めて不公正であり、通行権を侵害するもので、談合が行われていたと考えられるため 住民監査請求を行いました。

 しかし、2か月後の平成27年12月28日に請求は棄却されたため、守る会は翌年1月27日 付で山形地裁に対し住民訴訟(前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件)を提 起しました。これは、この工事請け負ったH社の請負代金1億2582万円のうち、7549万2000 円を支出の差し止めと、上山市長及びH社に対し、5032万8000円等の損害賠償請求を求める ものです。

 この、平成28年 (行ウ)第2号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件は、 平成28年1月27日に提訴後、わずか7か月にも満たない裁判で、8月16日山形地裁の松下貴彦 裁判長により突然結審が告げられ、同年10月18日の判決で「棄却」されました。守る会は準 備書面を2度提出したのみで、それ以上の反論は認められませんでした。

 そのため守る会は、棄却6日後である平成28年10月24日、仙台高等裁判所へ即時抗告し (平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金差止請求住民訴訟控訴事件)、平成28 年12月27日には控訴理由書を提出致しました。

 それに対し上山市は、平成29年2月17日に「答弁書」を仙台高裁へ提出しました。控訴人は 守る会の法人1社と住民4名。これに対する被控訴人は、上山市長及び個人としての横戸長兵衛氏です。

 平成29年2月23日に行われた仙台高裁での控訴審口頭弁論では、守る会が「控訴審準備書面(1)」と、証拠説明書及び証拠甲第34~49号証(すれ違い不可能な状況を示す実験DVD)を提出。さらに法廷で、甲51~53号証と証拠申出書を提出しようとしたものの、認められませんでした。 上山市側は、証拠として乙3~6号証を提出したのみです。

 これにより控訴審は結審し、来る4月27日仙台高裁において13:15に判決が出ることになりま した。この控訴審に関し、まずは2月17日付で上山市及び市長個人から提出された答弁書を公開致します。

 

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*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

控訴人 上山市
被控訴人 上山市長 横戸長兵衛 外1名

答弁書

平成29年2月17日

仙台高等裁判所 第2民事部 い1係 御中

(送達場所)
〒990-0055 山形県山形市相生町6番56号
古澤・内藤法律事務所
電話 023-631-7507
FAX 023-631-7174
被告訴訟代理人
弁護士  内藤和暁
同  古澤茂堂
同 小野寺弘行

第1 控訴の趣旨に対する答弁
1 控訴人らの控訴を棄却する
2 第2審の訴訟費用は控訴人らの負担とする
との判決を求める。

第2 控訴理由書に対する反論

1  通行権侵害との控訴人ら主張の不相当性
(1) 本件工事について控訴人ら主張の通行権侵害が問題となる余地はないこと(大型車の通行量増加は本件工事によるものではないこと)
 控訴人らは,本件工事請負契約が公序良俗巡反により無効となることの理由として,山形広域環境事務組合のエネルギ一回収施設によって市道前川ダム東線道路(以下,「本件市道」という。)の大型車の通行量が増加すること.本件工事がこれに合わせて行われるものである ことを挙げたうえ,本件工事によっても大型車同士のすれ違いが困難な箇所が残ることから,本件工事が控訴人ら等の通行権を侵害している旨を主張している(訴状第3の3)。 かかる控訴人ら主張につき,原判決第3の1(1)ア(イ)(11頁)は,
「・・・本件市道前川ダム東線道路において、今後一定の大型車両の通行 量の増加が見込まれるものの,今後見込まれる大型車両の通行量の増加 は、本件工事によるによる本件市道前川ダム東線道路の利便性の改良等に伴うものではなく、飽くまで本件エネルギー回収施設の建設に伴うものであると認められる。」
「・・・今後,本件エネルギ一回収施設の建設に伴い大型車両のの通行量の増加が見込まれ,本件工事によっては本件市道前川ダム東線道路における 大型車両のすれ違い困難さを完全には解消できないとしても、それだけで本件工事が公序良俗に反するとはいえない。」
としている。これば控訴人らが通行権侵害の原因として挙げる大型車の通行量増加は,山形広域環境事務組合が行うエネルギー回収施設の建設に伴うもので,本件工事によって生じるものではないことから,控訴人らが縷々主張するような,本件工事によって本件市道における大型車のすれ逃いの困難さが解消されたか否かとの問題を論じるまでもなく、そもそも,本件工事について控訴人らが主張するような通行権侵害が問題となるものではない旨を判示したものである。
 この点,本件工事は本件市道の道路改良,拡幅を行ってその利便性の改良を行うという工事であり(通行を改善した点について,原判決第3の1(1)ア(ウ)〈(11頁》を参照),控訴人らが通行権侵害の原因として挙げる大型車の通行量増加が本件工事によって生じるものではないことから,原判決の上記判示内容は相当なものである。 控訴理由書第2の2(1) (3頁)は,これを争い,本件工事は「大型車両が国道13号線から清掃工場用地に出入りするための利便性を向上させるための工事であること」や「本件工事を行うことを前提としなかったならば,滑掃工場への大型車の出入は極めて不便であるから,その建設はあり得なかったものと思われる。」と主張している。
 しかしながら,本件工事がエネルギー回収施設への大型車の出入りの利便性を向上させるためのものであったとしても,本件工事によって大型車の通行量が増加することとなるものではなく,控訴理由書の上記主張が原判決の上記判断を覆す理由となるものではない。
 また,控訴人らは通行権侵害によって本件工事請負契約が公序良俗違反の無効になると主張しているが,そもそも,通行権侵害によって工事請負契約が公序良俗違反になるとの論理関係も全く不明といわざるを得ないものである。
 従って,いずれにしても,本件訴訟においては,控訴人ら主張の通行権侵害などが問題となる余地はないものである。

(2) 控訴人ら主張の通行権侵害の不存在
 原判決第3の1(1)ア(オ)(12頁)は,上記(1)の点を措いて,控訴人ら主張の通行権侵害の有無を検討するとしても,大型車及び緊急車両の通行が困難となり,歩行者,軽車両の道路通行の安全が妨害されるといった程度に車両の通行巌が増加するとは認められないこと,本件市道の全ての箇所で大型車がすれ違うことができなければ大型車の通行が不可能,困難になるとは認められないことから,控訴人ら主張のような通行権侵害などは認められない旨を判示している。
 本件においては,本件市道において大型車の通行困難を生じることや歩行者,軽車両の通行の安全が害されることの具体的な主張,立証 はなされておらず,原判決の上記判断は相当なものである。
 これに対し,控訴埋由啓第2の2(2)(3) (3頁乃至5頁)は,エネ ルギー回収施設では長さ12m程度のトラック,大型バスの通行が予 想されること,火災発生の場合に長さ11 m程度の消防車の通行が予 想されることを挙げ、さらに長さ12 m程度の大型車のすれ速い実 験を行ったとの甲第31号証のビデオを提出し,エネルギー回収施設 に出入りする大型車によって本件市道が通行困難になることや,消防 車のすれ違いができず災害救助が困難となること,多数の大型車の通 行により歩行者や軽車両の安全が十分に保たれないことを主張して いる。

 しかしながら,被控訴人の平成28年3月23日付答弁書の第3に おいて前述したとおり,本件市道は直線部分において大型車同士が容 易にすれ違うことが可能であり,甲第31号証のビデオはカーブ箇所 であえてセンターラインを超え,車体をふくらませているに過ぎない ものである(なお,控訴理由書4頁は,被控訴人の実験はカーブ箇所 ④では行われていないとしているが,乙第5号証の実験はカーブ箇所 ④においても行っているものである。)。
 また,上記控訴人主張においては、すれ違い困難となるほどの多数 の長さ12 m程度の大型車が本件市道を通行することとなる根拠も, 全く示されていないものである。
従って,控訴人らの上記主張にも理由がないものである。

(3)結論
 以上より,そもそも,控訴人ら主張の通行権侵害によって本件工事 請負契約が公序良俗違反となるものでもなく,また,実際にも控訴人 らが主張する通行権侵害となるような事実などは認められないもの であり,いずれにしても,本件工事請負契約の公序良俗違反は認められないとした原判決の判断は相当なものである。

 

2 エネルギ一回収施設の候補地選定行為に関する控訴人ら主張の不相当性

(1) 本件工事についてエネルギ一回収施設の候補地選定行為が問題と なる余地はないこと
 控訴人らは、本件工事請負契約が公序良俗違反により無効となるこ との理由として,山形広域環境事務組合が行うエネルギー回収施設の 建設予定地選定行為のために,上山市の清掃工場候補地検討委員会が 行った候補地選定行為が不当であったことを挙げている(訴状第4 《4頁乃至6頁》)。

しかしながら,原判決第3の1(1)イ(イ) (13頁)が判示するよう にそもそも,「本件請負契約は,本件エネルギー回収施設の建設予 定地選定行為と主体を異にするものであり」、「本件エネルギ一回収施 設の建設予定地選定行為とは独立したものであると認められるから」, 山形広域環境事務組合のエネルギー回収施設の建設予定地選定行為 のために行われた上山市の清掃工場候補地検討委員会の候補地選定 行為の当否によって,本件工事請負契約が公序良俗違反となるものではない。

 控訴理由書第3の2(1) (7頁)はかかる原判決の判断を不当とし て,エネルギー回収施設と本件工事が関連性を有することや,上山市 が山形広域環境事務組合を構成する地方公共団体の1つであること を挙げているが,かかる事情によっても,エネルギー回収施設の建設 予定地選定行為と本件工事が別個独立の行為であることに変わりは なく,控訴人ら主張には理由がないものである。
 従って,上山市の清掃工場候補地検討委員会における候補地選定行 為が不当であったとの控訴人ら主張についても,そもそも,かかる事 実の有無を検討するまでもなく,これによって本件工事諸負契約が公 序良俗違反となる余地はないものである。

(2) エネルギー回収施設の建設予定地選定行為における不当な選定行為の不存在
 なお,原判決第3の1(1)イ(ウ) (13頁,14頁)は,上山市の清 掃工場候補地検討委員会の候補地選定行為において控訴人ら主張の ような選定条件のすり替えは認められず,本件市道が大型車対面通行 可能条件を充たしていないとも認められず,候補地選定行為の不当な どは認められないとしているが,かかる判断は相当なものである。
 控訴理由書第3の2(2)はこれを不相当としているが,すれ違い因 難なカーブがあれば大型車の対面通行が可能とはいえない,などとい った独自の見解を述べるに過ぎず,全く理由がないものである。

(3) 結論
 以上より、いずれにしても,上山市の清掃工場候補地検討委員会に おける候補地選定行為の不当によって本件工事請負契約が公序良俗 違反となるとの上記控訴人ら主張には理由がなく,かかる主張は認め られないとした原判決の判断は相当なものである。

3 談合があったとの控訴人ら主張の不相当性
 控訴人らは,本件工事の入札において談合があったことから,本件工事請負契約は公序良俗違反により無効となる旨を主張している(訴状第 5, 控訴埋由書第4)。

 しかしながら,原判決第3の1(1)ウ(14頁)も判示するように,具体的な談合の事実を認めるに足りる証拠はなく,上記控訴人ら主張には理由がないものである。

4  結論
 以上より,原判決を不相当とする控訴人ら主張はいずれも理由がなく, 本件控訴は棄却を免れないものである。

以上


 

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今後予定されている裁判:

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

平成29年4月18日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

昨日(2月14日)の裁判について:守る会提出の第5準備書面の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 平成29年2月14日、山形地方裁判所において、上山市川口の清掃工場(公称エネルギー回収施設敷地)造成工事に関する住民訴訟が行われました。

これまでの経緯:
 この裁判(平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件)は、平成27年7月に開始された敷地造成工事が不適切として、守る会会員が、平成27年10月28日付で山形広域環境事務組合に対し、仮処分申し立て(平成27年(ヨ)第16号造成工事禁止の仮処分命令申立事件)をしたことに始まりました。始まった造成工事に対し、緊急で工事停止を求めるものです。

 しかし、平成28年5月12日、山形地方裁判所の竹田奈未裁判官により、 「本件申し立てには理由がないため」「債権者(守る会)らの申立をいずれも却下する」と決定されました。

 その後、守る会は、平成28年5月23日付で仙台高裁に即時抗告(平成28年(ラ)第91号造成工事禁止の仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件) しましたが、「本件造成工事は、手直しの余地はあるとしても、平成28年5月27日頃までの間に完成したことが認められるから、本件申立ての利益は失われたというべきである」とのことで、平成28年9月20日、仙台高等裁判所 小野洋一裁判長裁判官により、棄却されました。

 しかし守る会は、いかに工事の工期が終了したとはいえ、工事内容が不適切であることは変わらないと考え、平成28年1月21日改めて、山形地方裁判所宛に、 敷地造成工事に関する支出の差し止めと、公費返還を求めて提訴(平成28年(行ウ) 第1号上山清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟)しました。

 現在敷地造成工事は終了し、建設工事が行われているというものの、公費返還を求める裁判は継続され、2月14日の裁判では、組合側と守る会側の両方から準備書面及び証拠書類が提出されましたので、守る会が提出した準備書面(5)と証拠説明書(6)を公開致します。これらは、主に造成地から東側に接する前川ダム放水路に排出される雨水・雑排水に関する内容であり、排水樋管及び排水口設置を許可した山形県に対し、守る会は公開質問状を提出したところです。

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平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件

準備書面(5)

原告 守る会会員
被告 山形広域環境事務組合 管理者佐藤孝弘

平成29年2月13日
上記原告ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

山形地方裁判所 御中

第1 はじめに
 本書面は、被告の平成28年12月2日付第3準備書面及び同日付第4準備書面に対して認否・反論を行い、併せて原告らの主張の補充を行うものである。

第2 被告の第3準備書面に対して
一 同第1に対して
1 同1に対して
 認める。
2 同2に対して
 第1段落は否認する。
 第2段落は争う。
 第3段落は争う。
 第4段落は争う。
 甲20・13pには、山形県が平成15年9月24日に策定した「一級河川最上川水系村山圏域河川整備計画[変更]」の計画対象区間が書かれている。しかし、その対象となる河川が149河川、延長775㎞とあるが、忠川や前川がその対象河川に入っているのか、「延長775㎞」の中に含まれるのかについては、何の記載もないため、不明である。しかも、具体的に山形県が策定した最上川の支流・須川の河川整備計画の箇所を見ると、前川については計画流量の記載はなく、忠川に至っては記載すらない(甲20・29p)。従って、前川や忠川について、河川整備計画が策定されていないものと言うほかはない。
 また、河川法16条2項には、河川管理者は河川の水系ごとに河川整備基本方針を策定する、としているが、忠川や前川が最上川水系に含まれるとしても、実際に忠川や前川に関しては、考慮の対象外としているものと言うほかはなく、これは、河川管理者としての国土交通省山形県の懈怠である。

3 同3に対して
 争う。
 河川の流量に対して、従前よりも大きな負荷を与える工事が河川法に違反するというのは、次のような理由による。即ち、河川法1条は、「この法律は、河川について、洪水、・・・等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする」と定め、同法2条1項は、「河川は、公共用物であつて、その保全、利用その他の管理は、前条の目的が達成されるように適正に行なわれなければならない」と定めている。上記河川法2条1項の名宛人は、河川管理者に限られておらず、何人もこのような責務を負っているものと解される。従って、被告が河川管理者ではないとしても、忠川や前川に対して、河川の洪水等による災害の発生を防止できるように河川の利用(本件の場合は、排水路として利用することになる)を行わなければならないのである。
 被告は、原告らの主張によれば、一般の舗装工事等も全て河川法違反となりかねない、などと述べている。しかし、一般に、多くの河川では河川整備計画が策定されているものが多く、河川整備計画は、大雨が降った場合に道路や宅地等から排水される雨水も想定に入れたうえで策定されるものであるから、そのような河川整備計画に則った河川の流量に負荷を与えないように工事をすればいいだけのことである。本件では、忠川や前川においては、河川整備計画が策定されていないことがそもそも大きな問題であるし、本件工事によって、一般の道路工事等とは比べ物にならないような、従前と比較して大量の排水が生じる可能性が高いこともまた、大きな問題なのである。
4 同4に対して
 争う。

二 同第2に対して
1 同1に対して
 認める。
2 同2に対して
 第1段落は認める。
 第2段落は争う。
 この点については、既に原告らの準備書面(1)・4~5p、準備書面(2)・5~7pにおいて述べた通りである。原告らは、準備書面(2)・5pにおいて、被告がこの点について、反論らしい反論を行っていない旨指摘したものであるが、この度の第3準備書面3~4pにおける主張も、具体的な反論とは全くなっていない。
3 同3に対して
 第1段落は認める。
 第2段落は認める。
 第3段落は争う。
 第4段落は争う。
 第5段落は争う。
 第6段落は争う。
 甲57では、本件造成工事前の排水に関して、5年の降雨強度を用いた計算を行っているが、これは、河川に負荷を与えない、あるべき造成工事を想定した計算をしたものである。そして、ここでは、想定した降雨強度を超える降雨があった場合には、調整池を用いる(造成前を想定するのであれば、水田・休耕田の貯水効果があることを想定している)ことを前提としているため、10年の降雨強度の場合においても、それほど異ならない数値となるものと考えられる。
4 同4に対して
 争う。
 本件で原告らが問題としているのは、河川に対する負荷であり、河川が洪水等の水害を引き起こす可能性である。このような問題を考える場合、道路土工要綱に従った工事であったか否かなどということではなく、河川整備計画を策定するに当たって利用した資料に基づくことが合理的である。
5 同5に対して
 争う。
 本件造成工事は、実際に調整池を造ることが計画されていないのであるから、造成地からの排水は、忠川及び前川にそのまま排水され、その結果、忠川及び前川において水害等の災害を発生させ、開発区域の周辺や下流流域の住民に対して損害をもたらす恐れがある。本件工事請負契約は、このような結果をもたらす可能性が高いものであるから、契約自体が公序良俗違反となり、違法となる。
6 同6に対して
 争う。

第3 被告の第4準備書面に対して

1 同1に対して
  認める。
2 同2に対して
  認める。
3 同3に対して
 認める。
4 同4に対して
 不知。
5 同5に対して
 不知。
6 同6に対して
 不知。
7 同7に対して
 不知。
8 被告の主張を前提とした違法な財務会計行為について
(1) これまで原告らは、本件工事請負契約自体が公序良俗違反であり、無効である、という主張を行ってきた。これは、この契約締結行為自体が違法であるということであり、この違法な契約に従った公金の支出自体が違法な財務会計行為であるということになる。
(2) 従って、被告管理者市川昭男が平成27年8月20日に、羽陽建設・堀川土建建設工事共同企業体に対して、金1億4014万円の支出を行ったことは、違法な財務会計行為となる。
(3) 被告の主張によると、平成28年2月10日に請負代金を金974万0520円増額する旨の変更契約の仮契約が締結され、同年2月17日に被告議会定例会においてこの仮契約が議決されて本契約となった、ということである。但し、この仮契約が締結され、議決されて本契約になった時点において、被告の管理者は市川昭男ではなく佐藤孝弘となっていた。
 しかし、上記変更契約の仮契約及び本契約は、上記のとおり違法であった元の契約を前提としたものであり、その変更の内容は、違法な内容を全く変更するものではなく、違法を治癒するものでもない。
 従って、この違法な変更契約に基づく公金の支出もまた、違法な財務会計行為となる。
(4) 被告の主張によると、被告管理者佐藤孝弘は、上記の違法な変更契約に基づいて、平成28年4月28日に出来高払い分として金1億8343万8000円を、同年6月17日に完成払い分として金5714万2520円を、それぞれ支払ったということであるが、これは、違法な公金支出である。

第4 原告らの主張の補充

1 はじめに
 原告らは、準備書面(4)において、本件造成地の雨水排水計画に関して、河川の治水計画に即した本件造成地からの雨水排水量について、及び本件造成工事前の正確な排水量と被告が計画している10年確率の流出量について、それぞれ詳細な論述を行い、本件造成工事が忠川及び前川に対して与える負荷と、本件造成工事によってもたらされる水害等について述べた。
 その点に関して、以下に若干の補足を行う。

2 前川ダムの目的及び前川の河川整備の未了
 忠川の上流に作られた前川ダムは、前川の治水対策事業の一環をなすものである。その計画によると、前川ダムは、ダム地点で140m3/sの洪水を調節し、ダム下流(前川ダム放水路=忠川)への放流量を0m3/sとして、前川への洪水を調節するものである。また、前川治水対策事業は、40年確率の洪水を安全に流下させる計画としている。
 このように、前川治水ダム事業計画は、前川ダム及び忠川(前川ダム放水路)について、前川への洪水の影響に対して計画された計画内容であり、忠川においては、この計画に基づき、河川改修が行われ、170m3/s能力確保が先行された。ところが、前川については、忠川と同等の能力を持つ河道改修は行われていない。昭和48年に策定された「前川治水ダム事業計画書」の中の「1 事業の概要」中のの「2)事業の必要性」には、前川の小規模河川改良事業は、昭和34年度より45年度で一応完了したとされている。しかし、その改修中の昭和39年及び42年の豪雨により、対象洪水流域を上回る洪水被害を受けた、とされている。そのため、前川は、40年確率流量に対応する再改修を行う必要がありながら、未だに河川改修は行われていないのである。
 即ち、前川治水ダム事業計画に基づいた前川の整備は、実質的に実施途中で未整備なのである(以上、甲61・1~2p及び資料1)。
 前川の河川整備状況が上記のように未整備の状態である以上、そこに前川治水ダム事業計画においても想定されていなかったような大きな負荷を与える本件造成工事は、行ってはならない違法な工事であったというほかはない。

2 計画高水流量とダム設計洪水流量との違い
 前回の弁論準備期日において、裁判官から、甲18・25pの上下2つの図の見方について、説明する。
 第一に、甲18・25pの上の図(「図1-9 計画高水流量配分図」)は、前川の治水対策事業として、40年確率規模(40年に1回この数値を超えるという確率)での、忠川及びその周辺における前川の治水計画における、洪水ピーク時の流量配分が示されたものである。ここでは、40年確率の洪水が発生した場合、忠川よりも上流で前川から110㎥/sを分流させて前川ダムで140㎥/sを貯留し、同ダムからの放流量は0㎥/sとし、同ダムの下流(忠川)には基本的に放流しない、という計画とされている(甲61・3p、甲62・3丁目)。
また、この図では、忠川合流点における前川の計画高水流量は150㎥/sとされており、その下流の思川合流点に至るまでの間に25㎥/s増えて175㎥/sとなるという計画である。
 第二に、甲18・25pの下の図は、ダム設計洪水流量を示したものである。これは、万が一ダムが満杯となっても、壊れないように(ダム決壊による被害は甚大であるため)、当該ダムから、ここまでの大量放流を行うことができる構造物として設計する、という意味での流量である。
 ここでは、忠川の流量を170㎥/sとしているが、この流量は、前川ダム及びダム放水路(忠川)を設計するために、東北地方の記録的洪水規模を想定して、同放水路の流量を最大限大きく見積もって計画したものである。そして合理式ではなく、比流量(面積当たりの流出量)を用いている。ここでのダム設計流量はダムからの越流、破壊による壊滅的被害を防ぐためのもので、ダム放水路である忠川は、ダム付帯施設として170m3/sの能力を持つ大きな断面とされている。この170m3/sという流量は、あくまでダム及びダム放水路(忠川)の構造だけを守り、合流する前川の洪水流量や、河川氾濫には考慮されていない。この意味で、170m3/sという流量は、前川治水対策事業における計画流量とは別物であり、ダム設計のための大きな流量を対象としただけであると言える(甲61・2p、甲62・2丁目)。
 被告は、雨水排水計画において、忠川の計画高水流量を170㎥/sとして、本件造成地からの排水量との比較を行ったが、上記のとおり、170㎥/sというのは、忠川の計画高水流量ではないから、上記の被告の計算は完全に誤りである。

3 被告の雨水排水計画の誤り
 被告は、造成前の流出量は流出係数を0.7とし(根拠は不明)、直接忠川へ放流されていたとしている。しかし、原告らの準備書面(4)・7p~にも述べた通り、造成前の耕作放棄地の状況は、里山、鉄道盛土及び忠川護岸に囲まれた池状の形態を成していたため、造成前の雨水流出量は一旦この耕作放棄地に貯留・浸透していたものというべきである。従って、本件造成地の前川への洪水に対する影響は0となっていたものと考えられる。
 被告の雨水排水計画では、造成地から流出する水量の流出増分(基準点1)は0.140m3/sとしているが、上記のとおり、元々耕作放棄地に貯留・浸透されていたため、忠川への流出量はなかった。被告は、造成地の排水路を忠川護岸を大きく切り欠いて2か所設置したが、それによる造成地からの流出増は、造成工事後の基準点1からの排水量である、1.498m3/sと見積もるべきである。
 また被告は、造成地に隣接した里山から流れ落ちてくる流出量の増分を0m3/sとしているが、これも造成前には、耕作放棄地へ貯留・浸透していたものである。故に、造成地からの流出量増分は、排水樋管及び排水口を設置することにより、2.923m3/sが流出量増分となる。
 さらに、被告は、「忠川の計画流量高水流量170m3/s」を前提とし、流出量の増分と比較した結果、「1%を下回る」としている。しかし、前述のように、170m3/sは、あくまでダム設計洪水量であるため、忠川の計画高水流量は0m3/sとすべきである。そして、本件造成地からの排水量と比較すべき河川計画流量は、忠川合流後前川の計画高水流量150m3/sとなる(但し、この計画高水流量が40年確率のものである一方、前記の雨水排水量は10年確率の雨量を前提としているという齟齬があることに注意すべきである)。
 以上から、組合は、造成地開発後の流出量の増分を過小に見積もっていることは明らかである。また、忠川の設計流量を計画流量と置き換えて「影響なし」としているが、正しくは排水樋管及び排水口を設置することにより、1.498+2.923=4.412m3/sが直接排水され前川へ合流し、これが流出量増分となるのである。 この前川の計画高水への影響は、4.412/150=0.029となり、2.9%増となる。即ち、洪水調節池の検討を必要とする1%増を大きく超えるものとなる。
 造成地の、忠川、上山市道を挟んで隣接するクラフトは、自社敷地内に流量調整池を設け、緑地を2分の1以上確保して、前川への排水量に配慮している。さらに前川は、前述の通り、現在においても計画高水に耐えうる改修はなされていない。被告が行った雨水排水計画では、以上のような数字の取り違えが生じており、このままの計画では前川下流域での更なる洪水氾濫を増させるばかりであるため、この敷地造成工事は許可されるべきではなかったものである(甲61・3~4p)。

4 甲23の見方について
 また、前回の弁論準備期日において、甲23の見方について、裁判官から疑問が出されたので、それについて以下に説明する。
 甲23は、山形県村山総合支庁がパシフィックコンサルタンツ株式会社に対して委託して作成された、「平成17年度洪水ハザードマップ整備事業 倉津川外浸水想定区域検討業務委託 報告書」という文書に含まれたものである。この業務は、「・・・前川の水位情報周知河川指定のための浸水想定区域を作成するとともに、指定水位、警戒水位、…の設定と水位観測所の設置位置及び受け持つ範囲の検討を行う」という目的で行われたものである(甲63・1-1)。そして、前川に関しては、「明確な計画高水位の設定がされていない」としながらも、「本検討では、現況河道の危険水位を設定する目的から、現況堤防高から計画流量に見合う余裕高を差し引いた高さをその断面の危険水位として想定し、それに見合う流下能力を算出した」などとされている(甲63・13-62)。そして、この業務では、前川の南陽市に属する上流部から須川との合流点までが業務委託場所とされた(甲63・1-2)。
 しかし、甲23(=甲63・13-63)に危険水位や計画流量等の数値が示された場所の最上流部は、「№126+40」とされた場所である。なお、「№126+40」よりも上流部分に関する甲23に相当する表は、作成されていないようである。甲63・13-87の地図と照合すると、№127が忠川との合流点の直下のようであり、「№126+40」というのはそこからわずかに下流にあたる。この地点における計画流量は175㎥/sとされている。一方、現況流下能力図というグラフを見ると、忠川との合流点を境にして、前川の計画流量は、150㎥/sから175㎥/sに変わっているように見える(甲63・8-7)。このことは、恰も、忠川の計画流量が25㎥/sであるかのように見える。
 しかし、これは、前川に関する河道整備計画を、忠川との合流点を境にして、150㎥/sから175㎥/sに上げているということを意味しているに過ぎない。これは、前述したよう、前川ダム事業計画において、忠川との合流点から思川との合流点までの間に150㎥/sから175㎥/sとなるという計画がなされていることと整合性がある。即ち、この区間のどこで175㎥/sとなっても対応できるような河道整備計画がなされるべきであるということを意味しているものである。

提出証拠:(守る会はすでにこの裁判までで63点(甲第63号まで)の証拠資料を提出しています)

甲第61号証(写し): 造成地雨水排水計画の誤りと洪水調整池の必要性,河川工学博士,平成29年1月作成
甲第62号証(写し): 清掃工場(ガス化溶融炉工場)敷地造成工事・前川ダム事業が前川へ与える悪影響,河川工学博士,平成29年1月作成
甲第63号証(写し): 平成17年度洪水ハザードマップ整備事業倉津川外浸水想定区域検討業務委託,山形県村山総合支庁パシフィックコンサルタンツ株式会社,平成18年3月作成

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今後予定されている裁判:

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

平成29年4月18日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (4) | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 上山市川口に現在建設中の公称エネルギー回収施設の敷地は平成28年5月に造成工事が終了したとされています。しかし、その計画は危険で不当だとして、守る会は設置主体の山形広域環境事務組合を提訴し、現在も係争中です。

 組合は敷地造成工事に当たり、敷地の東側に接する県管理の前川ダム放水路に対し、山地及び敷地の雨水排水を行う必要性から、山形県に、排水樋管及び排水口設置の河川占用許可申請を行いました。

 この申請認可が、果たして正しいものであったか、未だに疑問が多いため、守る会は改めて山形県に対し、質問状を提出致しました。過去3日間に公開した図説1~3は、質問状に対する添付資料ですが、下記に質問状の本状を公開致します。

 この質問状に対する回答は、山形県より守る会代表に通知されるものと思います。

 組合が計画した「雨水排水計画」に誤りはなかったのか、山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」や「洪水ハザードマップ整備事業浸水想定区域検討業務報告書」との整合性は取れているか等々安全上の問題が解決したとは思えません。このまま建築工事を進めることに根源的な不安を感じるものです。

 守る会は、河川工学の専門家と相談の上、これらを分析し、とりまとめて公開質問状としました。行政側のご担当者は数年で異動してしまうため、詳細が分からなくなってしまう可能性も高いこと、また市民県民の皆さまにも知って戴くため、ここに公開致します。

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平成29年2月7日

山形県知事
吉村 美栄子殿

山形県の環境と観光産業を守る会

公開質問状


 日頃より当会(以下、守る会と略す)活動にご協力を賜り、有難うございます。

 設置主体である山形広域環境事務組合(以下、組合と略します)は、現在までに、上山市川口に建設中の公称エネルギー回収施設に係る周辺整備工事に於いて、山形県に対し2件の申請を行いました。

  1.   まず山形県は、建設用地東側に接して流れる一級河川忠川に新橋を架けるための「河川占用許可申請」を組合より受理して、平成26年9月12日に起案し、同年10月7日に許可されました。
  2.   更に、敷地造成工事に係る忠川左岸への排水口及び排水樋管設置に関する「河川占用許可申請」を同組合より受理して、平成27年5月14日に起案し、同年7月23日に許可されました。この許可にあたり、河川占用の目的は「エネルギー回収施設建設に伴う排水口、排水樋管の設置免除」とされています。この審査表において、行政事務的意見として「…公共的な目的で行われること及び河川管理上特に支障となるものではないことから、許可するもやむを得ない。…」とあり、技術的意見としても「許可するもやむを得ない」とされています。

 しかし、敷地造成工事において造成地に設置される排水口及び排水樋管から流出する雨水、雑排水は、排出先の忠川や前川の水量・水質に影響を及ぼすため、疑問点が多々存在しています。
 そこで、この工事及び許可に対する山形県の考え方を改めて伺いたいと存じます。これらの経緯につきまして、勝手ながら県民の皆さまにもご理解を得る為分かりやすいよう、公開質問状とさせていただきました。ご多忙中大変恐縮とは存じますが、3週間以内に回答を戴きたく、ご配慮のほど宜しくお願い申し上げます。

ご質問

 平成29年1月現在、組合は敷地造成工事及びそれに係る排水樋管等設置工事を終了していますが、一級河川前川は、洪水時の前川氾濫被害に更なる悪影響を与え、周辺住民の人命、資産、産業活動を脅かす状況にあると認識しております。故に、以下質問に対し早急に納得できる回答を下さるようお願い申し上げます。
 もし、即時に回答をいただけない場合、県民の安全性に関わる緊急を要する事項ですので、組合に対する応急的措置として改善工事のご指導、ご指示を下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

  1.  造成工事の際、忠川左岸壁の排水樋管、及び排水口が新たに設置されたことにより、忠川左岸のコンクリート護岸壁が一部切り欠かれた結果、天端高は、計画護岸高に対し低く不揃いとなりました。これは河川法上、危険で由々しき事態であると考えますが、貴殿は組合に対し「護岸天端高の復旧指示」を出される予定はございますか。
  2.  造成工事着手以前雨水貯留、及び雨水浸透機能維持のため、「造成前の貯留、及び浸透能力をもつ調整池を造成地内に設置する指示」を、組合に対して出される予定はございますか。現状のままでは、敷地及び里山から流出された雨水が、忠川排水樋管及び排水工を通して直接前川へ排水されることにより、一級河川前川下流域での更なる洪水氾濫の助長が予想されます。豪雨時における前川の堤防洗掘による破堤の危険、及び前川の忠川合流点より下流域での氾濫はご存知の通りで、上山市民の安全上看過できません。
  3.  造成地における本体建設工事の差し止め、もしくは造成・開発区域計画や 設計の変更要求を行う予定はございますか。※山形県の環境と観光産業を守る会(以下“守る会”とする)は、平成9年河川法改正に基づく一級河川前川、忠川の具体的な河川整備基本方針、河川整備計画は、不存在と認識しております。現状は名目のみで内容を伴わず、施設維持のみを行う計画であり、これにより洪水被害を防止することはできません。また、平成9年の河川法改正による環境の内部目的化がなされておらず、本来、開発、造成にあたっては、事前に前川の状況、及び流下能力、河川整備計画の公表及びパブリックコメントを経た上で、進捗状況に照らして初めて「許可」されるべきものであり、排水先の河川の整合、能力を無視した造成、開発、排水施設工事の許認可を行えるものではないと考えます。
  4.  昭和48年8月に山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」のダム設計流量配分において、前川上流より160m/s分派したものを前川へ戻す施設の水路は、どのようなものか、またどのような施設管理がなされているのか、お示し下さい。またその際のリスクをどの様に市民へ周知徹底されているかをお示し下さい。
  5.  平成27年5月、組合が山形県に対し申請した敷地に接する忠川護岸壁への 排水樋管、排水口(排水工とどちらか統一確認ください)の設置を許可した経緯、及び確認事項等を詳細にお示し下さい。許可に当たり「許可するもやむを得ない」とコメントした理由も、具体的に明らかにして下さい。
  6.  敷地造成工事により、これまで休耕田であった貯留浸透機能を無にし、造成 地からの雨水を、排水樋管及び排水口から直接(流出係数100%を忠川に)排水し、さらに里山から休耕田に貯留・浸透していた流出抑制機能(これについ て検討されているか疑問)を無にして水路により雨水を集め、樋管、排水口により直接忠川へ排水することは許可できるものでしょうか。改めて見解をお示し下さい。
  7.  護岸天端の高さについて、排水樋管部、及び排水口部では、従来の連続した コンクリート護岸壁を、こともあろうに大きく切り欠いています。従来は、護岸壁に遮られて、休耕田に一旦貯留・浸透した雨水が直接忠川に越流することはなかったことを考えると、現計画は著しく貯留・浸透効果を欠いています。 にもかかわらず、何故組合に設置許可を与えたのか、その理由をお示し下さい。
  8.  組合は、敷地造成設計に際し作成した雨水排水計画において、開発・造成後 に増加する排水量は、忠川の設計洪水流量170m3/sと比して1%以下であるとしています。しかし現状は、本来の河川整備基本方針、河川整備計画が具体的に策定されておらず、忠川の計画高水流量も定められていない状態です。山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」では、前述の通り「洪水時の前川ダム設計洪水流量170m3/s、及び40年確率での計画高水流量0m3/s」と定められています。敷地造成により排水量がわずかでも増えれば、分母がゼロであるため流量の増加する比率は無限大となります。これは、「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱」に反するものと考えます。以上により、洪水に対し無策の排水樋管等設置に係る計画を何故許可できるのか、その根拠をご回答ください。
  9.  前川本川の計画(前川治水ダム事業計画)と、敷地からの排水との整合性は、確認されているのでしょうか。 ※流出係数は、平地で0.6、山地で0.8ですが、造成地排水区域として接する山地も含むべきと考えます。また、初期損失雨量は、流量観測資料を基に20~30mmとしているものの、計画に反映されていません。さらに、流出計算手法は、山形県が単位図法を採っているのに対し、組合は合理式、及び道路土工要綱による計算をしており、双方に齟齬が見られます。また、降雨強度式は、山形県河川整備計画で用いるものと異なっているため、計画自体に整合性が見られず、造成前の安全性が担保できていません。
  10.  前川の忠川合流点から下流の水量について、造成・開発前後の10年確率(造成地の排水計画降雨時)、40年確率(河川の計画降雨時)、また超過洪水(ダムの設計外力)において、前川の洪水量や被害を解析、確認をしておられますか。 忠川(前川ダム放水路)を、既にダム設計流量170m3/sまでの流下能力で改修していることは、本支川バランスを著しく欠いており逆転していると考えますが、これについての見解をお示し下さい。 ※この計画では、一級河川として前川の支川である忠川の流下能力が大きくなり過ぎ、下流である前川への過負荷となっています。この計画は、本来前川ダム上流部及びダム直下流山地狭隘部まででの間で氾濫していた洪水被害を、前川下流部に位相、集中させる行為であって、前川の忠川合流点下流の河道が未改修の現状においては、極めて危険な計画であると言えます。さらにダム設計流量時(東北地域での記録的降雨による超過洪水時)には、本来自然と忠川上流で氾濫していた被害を、前川ダム放水路としてそのまま前川下流へ170m3/sまでの洪水として移し、下流市街地での被害を増大・集中させる構造となっており、極めて不適切であると考えます。
  11.  管理用通路幅員(排水樋管上部、他の地点)について ① 申請当初の図面では3.0mで設計されていたものの、実施図面では2.0mに変更されています。完成時に、すべての区間で2.0m確保できているか、また現状では雑草が茂り、人も歩けないような状況で放置されており、造成工事を優先されていることに疑問を感じざるを得ませんが、その現状確認をなさいましたでしょうか。
    ② すでに造成工事は終了していますが、組合は忠川沿いの管理用通路として幅員を連続させずに放置しています。これを、河川管理者としてどのように考えておられますか。
    ③ 河川管理用通路の幅員は、設計当初図面通り通常の3.0mでしたが、実施設計時2.0mに設計変更した経緯をご存知でしょうか。幅員が1.0mも狭まったことについて、許可された際どのように解釈されましたか。さらに用地境界杭からの造成地までの幅員は2mに欠けている現状をいかに解釈されておられますか。
    ④ 現在造成地の左岸に、2.0mの管理用通路が確保されておりますか。たとえ工事中であっても、安全上、河川管理・監視の観点で管理用通路は、いつでも利用できる状態であるべき、と考えます。
  12.  忠川に旧橋梁を残置したことにより、旧橋と新しく架設された橋が連続し、一級河川忠川の河川上空を余分に占用する結果となりました。橋梁が連続して2ケ所存在することは、河川管理、治水機能、河川環境、景観上望ましいことではありません。これについて、旧橋残置を許可する理由をお示し下さい。また新橋(しんちゅうかわ橋)の河川占用を、造成地通行のみへの占用とされている理由についてもお示し下さい。
  13.  新橋(しんちゅうかわ橋)の河川管理用通路としての部分について、河川管理時、及び平常時に造成地への車両通行止めとする措置がとられているか、ご回答ください。
  14.  河川区域、河川保全区域を如何に設定されているか、またそれが造成工事に反映されているか、をお示し下さい。
  15.  忠川の造成地区間、特に橋梁架設付近の現状点検結果については、錆の流出及び表面に目視できる変状について、河川管理者としていかに評価し、補修の必要なし、異常なしと判断されたのでしょうか。お示し下さい。
  16.  現在上山市が発行している洪水避難地図は、防災上の観点から前川、忠川流域を含む村山圏域として、貴県が氾濫解析を行った結果(基データ)をもとに作成され、公開されています。この氾濫解析は「前川ダム事業完成時の河道条件として、40年確率の洪水に対し河川が改修されていない状況において、同年確率計画の洪水が起こった場合の氾濫区域、氾濫水深を想定した」ものです。この上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)について、お尋ね致します。
     ①  上山市内を流れる前川、及びその上流に位置する前川治水ダム放水路 (旧忠川)の治水安全度は、支川である忠川が高く、本川である前川で低いため、前川下流域での氾濫が増幅されています。この安全度が、本支川で逆転している現状をどのように説明されますか。ちなみに、平成29年1月13日に山形県において情報公開請求文書を受理予定でしたが、前川上流部の「前川危険水位流下能力一覧表」は「不存在」との回答でした。
    ②  洪水避難地図により、県民(40年確率計画を想定条件)と国民(100~200年確率)に危険度を周知し、その対策を講じていることは、防災上、か つ治水安全上の蔑視であると思います。同じ国民として平等であるはずの市民の命、財産に対する防災対策の格差についてご説明をお願い申し上げます。国でも県でも市でも、洪水に対する危険度の見積もり方、周知の仕方、及び防災上の安全対策(避難の仕組み、避難路、避難所の設定等)、同じ確率年で計画を立てるべきではないでしょうか。
    ③  前川、忠川において、添付資料‐2にある通り造成地の直接排水が、前川ダム及び忠川において40年確率の計画高水量を増やし、前川においてはその数値計画すらないというような造成工事を、何故許認可できたのか、その理由をお伺い致します。
    ④  村山圏域の氾濫解析については、“想定外を想定する“ という防災上の 条件として、上流から溢れながらも集まる最大流量(現況河道、下水道整備状況、地目、造成地等、地形状況のトレンドも含み)を見直し、改定して、データを上山市へ渡され、市の防災対策として反映、見直すよう指示される予定はございますか。また隣接する南陽市等も含め、公助としての防災対策を、市単独ではない県として、避難路及び避難所等の防災対策につき、関連市町村へ指導なさる予定はございますか。

【質問16 ①~④に関する解説】

 昨今の気象状況や、気候温暖化等により、全国では洪水被害の頻度が増し、ますます増加傾向にあります。つまり危機管理上は、“想定外を想定しなければならない“というまでの状況に至っております。これに対し、前川治水ダム事業の想定外力は、算定に当たり「東北地方の過去最大規模(Creager‘s equationの係数C=34)」を用いており、かつて貯留機能を持っていた渓谷を流れる旧忠川を、前川治水ダム放水路として新たに構築し、Q=170m3/sという想定内(東北地方の過去最大規模)で改修しています。つまり、添付資料‐3中央図に示す通り、前川下流の洪水量増量分は、前川治水ダム設計洪水量(170m3/s)が、40年確率流量(150m3/s)に加算された結果、合計320m3/sの流量(40年確率計画改修後の150m3/s)の洪水が想定される、と読み取れます。同様に、国管理河川(最上川等)の氾濫想定は、河川の重要度において100~200年確率の洪水に対する解析が行われており、国管理河川の想定規模は、国民に対する氾濫規模及び危険度の周知であると言えます。それに対し県管理河川流域の想定規模は、山形県民に対する氾濫規模、危険度の周知を目的としており、国管理河川よりも危険である40年確率想定となっています。

 つまり、河川氾濫時における人命・財産の危険度は、県民イコール国民ではなく、県民を国民より甘く想定しているのが現状です。さらに、想定外を想定するためには、上流河川は氾濫しながらも、下流に流れてくるであろう最大流量を対象として、河道改修が進む度に解析し、改定されるべきものです。さらに、ダムの下流においては、その決壊も想定した危機管理対策、防災対策、洪水災害に対する平等な危険度周知が必要となります。

【防災について】

 防災上の避難勧告、避難指示などにつきましては、管理者の首長が行うことになっています。自然災害でも、洪水、津波地震災害、火災延焼等、様々であり、避難方法、避難情報の伝達手法等が異なっているのが現状です。そのため、国、県、市町村それぞれの状況判断が、市民への周知徹底に対する混乱を招いております。また防災情報を例にすれば、気象庁の発表する、”命を守る行動を”などを含めてLアラートや、民間防災情報、川の防災情報、地震速報等々実に多様であるため、まさに情報が洪水のごとく氾濫した状態になっています。市民、県民、国民は、何を信じて避難すべきでしょうか。 

 一人ひとりに適切かつ迅速かつ簡潔な情報発信が出来ていないのが現状において、山形県として、どのような防災対策の公助、共助、自助の分担を考えておられ、それを市民に周知徹底されるのか、また公助、共助のうち「公」が行うべき分担の防災対策事業を、どのように位置づけておられるのか、併せてお伺いできれば幸いに存じます。

 以上、ご多忙中大変恐縮ではございますが、3週間以内に回答下さいますよう宜しくお願い申し上げます。
                               

以上


参考とした図書
コンクリート構造物の診断と補修
※以下URLのコンクリートの変状と診断について記載されていたので参考としました。
http://www.ehimedoren.or.jp/11_sigen/kennsyuusiryou/okunai-siryou.pdf
01) 最上川水系 前川治水ダム事業計画書、昭和48年8月 山形県
02) 最上川水系 前川治水ダム事業計画書〔参考資料〕昭和48年12月 山形県
03) 村山総合支庁 村山圏域河川整備計画
04) 平成17年度洪水ハザードマップ整備事業倉津川外浸水想定区域検討業務委託報告書平成18年3月/山形県村山総合支庁/パシフィックコンサルタンツ株式会社
05) 前川治水ダム(パンフレット、山形県HPより)山形県村山総合支庁統合ダム管理課  年次不明
06) 上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)平成26年3月改定 :A4折A1両面
07) 前川氾濫解析図(山形県HP)
08) 前川定期点検結果:情報公開請求資料
09) 造成工事申請許可設計図面、2種類
10) 排水樋管、排水工、排水路設計図面
11) 雨水排水計画(組合より開示)年次、作者不明
12) 造成工事認可証明書
13) 現地撮影写真
14) 吉川秀夫著、改定河川工学、昭和55年2月1日pp.55-58

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (3) | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 昨日に引き期続き、平成29年2月8日、山形県に郵送した公開質問状に添付した図説(3)を公開致します。

 昨日公開した図説(2)は、昭和57年に前川ダムが完成したことによる 前川への影響についての説明です。山形県が作成した「ダム設計洪水量」、上山市が作成した「洪水避難地図(洪水ハザードマップ)」を参考にしています。

 図説(3)は、前川ダム及び前川放水路が完成した後、平成28年に公称エネルギー回収施設建設のため、敷地造成工事が行われてしまった後の、 前川への流量増という見込みを示しています。

 これまで、事業実施主体である山形広域環境事務組合(山形市上山市 ・山辺町・中山町で構成)は、造成工事に当たり「雨水排水計画」を作成 し、造成地から前川ダム放水路に排水するため、排水樋管、排水口の新設について、山形県許可申請しました。その際提出した書類に、この「雨水排水計画」は含まれていますが、この計算に誤りがある(計算に整合性がない)ことは、裁判において指摘済みです。

 山形県が作成した「前川ダム治水事業計画」の「計画高水(40年確率) 流量配分図」は、平常時の前川と前川ダムの流量を示した図ですが、前川ダム放水路へ流してよい流量は、0m3/sと指定されています。ここに、 造成地に接する山から流れ落ちる雨水や、敷地(3.6ha)に溜まった水、ま た工場で使用された雑排水などが排水されてよい訳がありません。明らかに計画高水流量ゼロを超えています。この行為による前川の流量増、そし て下流域での氾濫を具体的に示したのが、図説(3)となります。

 組合は、かつての田畑がもつ貯留効果を、ほとんど認めておりませんが、 忠川が巨大なコンクリート水路になり、保水力のある田畑が舗装されて、 貯留効果はほとんどない状態においては、敷地内にきちんと流量調整池を設置して、前川の氾濫を増幅させない計画にすべきでした。

3.造成工事によって起きること ~ 清掃工場(ガス化溶融炉工場)敷地造成工事による影響~
前川ダム放水路左岸・耕作放棄地の保水・浸透 貯水機能の喪失。 → 放水路合流後の前川の被害が増大し、人命・財産を脅かす

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計画洪水流量(40 年確率)が起きた場合

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[造成工事前] 山形広域環境事務組合が、上山市川口に計画実行している山形市上山市・山辺町・中山町の一般ごみ焼却( ガス化溶融炉) 施設建設用地は、すでに造成工事が終了しています。 この敷地は、前川ダム直下の平地で、以前は田畑だったため、山から流れて来る雨水 及び耕作放棄地への雨水を貯水する (3.6ha 分の) 効果を持っていました。市道 と放水路を挟んで隣接する企業は、敷地内に広大な芝生( 雨水浸透・ 貯留効果) と流量調整 池を保有しています。

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[造成工事後] 造成工事を行ったこ とで敷地の保水力 ( 貯留・浸透効果) が失われ、前川ダム 放水路に直接排水さ れる流量により、前川が危険な状態に なっています。これまで、敷地に接す る山から流れ落ちてきた雨水は敷地内にとどまらず、山際 と線路側に設けられた水路を通して前川ダム放水路にすべて排水され前川へ合流することになるためです。

計画高水(40年確率)流量配分模式図

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山形県の策定した「前川治水ダム事業計画」 では、40年確率の計画洪水時、前川上流部での流量配分は 135m3/s であり、前川ダム方面へ 110m3/s 分流するとしています。その時、前川ダム流入量は140m3/sであり、前川ダム放水路への放流量は0m3/s で、これが前川治水ダム事業計画における計画高水流量配分の姿です。

造成工事による流量増分(前川)と前川切断模式図

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造成工事による流量増分(40 年計画では0m3/sの前川ダム放水路が5.3m3/sになる)により、前川で氾濫する容量を見積もると、左図のグラフに示す流量変化となり、この赤い面積がすなわち前川下流の氾濫容量;約1 万m3 となります。これをイメージし易いように、前川河川幅5m、延長(放水路合流地点~下流袴橋下付近までの)約1kmと仮定した場合、氾濫水深は1.9mにも及び、この量が、 氾濫原である宅地、果樹園などに放流されることと推算できます。

今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (2) | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 昨日に引き続き、平成29年2月8日、山形県に郵送した公開質問状 に添付した図説(2)を公開致します。

 2月9日公開の図説(1)は、公称エネルギー回収施設の建設予定地の現状を伝える内容でした。敷地は、山と川に接しており、上流には前川治水ダムが存在する、という観光資源に恵まれた土地ですが、豪雨の場合は、下流域での氾濫を想定すべき地形です。平成26年に上山中心市街地を襲った水害を繰り返すべきではありません。

 今日公開する図説(2)は、上流部の前川治水ダムが完成する以前の自然地形と、昭和57年に前川ダムと放水路(忠川)が完成した後との比較を行っています。また、それまでの前川氾濫状況に対応すべく、 昭和48年に「前川治水ダム事業計画書」が策定され、前川ダムと前川ダム放水路は建設されました。

 この計画書には、前川ダムと前川、忠川の果たすべき役割が記載されており、その中に「ダム洪水設計量図」があります。この場では、 それを分かりやすく図解して説明致します。

 前川と、忠川はともに一級河川であり、その管理は山形県に移管されているわけですが、山形県はその河川整備計画を立て、そのデータを各市に提供します。各市はデータに基づき、「洪水避難地図(洪 水ハザードマップ)」を制作することになります。前川上流部の中山地区から、川下の川口地区にかけては、前川と国道13号線、JR奥羽本線 (山形新幹線)が並行して走っている上に、ハザードマップ上では、周辺は氾濫域に指定されています。

 このような条件に考慮すると、ガス化溶融炉という危険施設を立地させるべきではないことが、読み取れます。建設予定地として、十分に検討されたとは言い難い結果でした。また、前川ダム計画時に構造計算された、前川ダム放水路コンクリート護岸の連続性を破壊するような排水樋管、排水口設置を、山形県は認めるべきではなかったと思います。

[ 図説2 ]
2.前川治水ダム事業によって起きること(山間狭隘部を170m3/s の大断面で改修したこと)
→ ダム直下流~狭隘部の氾濫水を直接前川へ放流し、前川の氾濫を増長し人命・財産を脅かしている

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ダム設計洪水流量(東北地域での過去最大の豪雨想定)が起きた場合

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[ ダム事業前 ] 忠川流域の平地は、周囲の山地から忠川に集 まる水流により形成され、長い間田畑として利用されて来ました。前川ダム完成以前は、自然の忠川池(前川ダムの前身)流域に田畑が広がっており、雨水の貯留・浸透機能をもっていました。忠川池は、池の真ん中に島をもつ景勝地だったと言われています。

[ ダム事業前 ] かつての忠川流域に広がっていた田畑は、山地の樹木による雨水浸透機能と共に、山から雨水が流れ出ることを抑える効果をもっていました。 しかし、前川治水ダム完成後、自然河川忠川は、コンク リート三面張りの人工的な放水路となり、忠川流域をも変更させ、次第に川としての浸透能力を失いました。

 

ダム設計洪水量模式図

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山形県の「前川治水ダム計画」に記載されている「ダム設計洪水量図」です。豪雨による洪水時、前川上流では400m3/s の水量を想定しており、前川ダムの決壊を避けるためにダム方面へ160m3/s 分流し、すぐに前川へそのまま戻します。

上山市洪水避難地図にもとづく中山地区浸水想定・浸水想定水深

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40 年確率の前川計画流量に基づいて、現況の前川の流下能力に照らして氾濫解析を行い(県)、その解析結果をもとに上山市洪水避難地図が作成されました。平成25 年の豪雨時の氾濫実績を配慮し、平成26 年3 月に改定されており、以前よりも浸水域が広く、深くなっています。


今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 現在、山形県の環境と観光産業を守る会は、上山市川口に建設中の清掃工場(公称エネルギー回収施設(一般ごみガス化溶融炉工場))建設に至る過程 (架橋工事に関する河川占用許可の是非)において、山形県と係争中で す。

 その訴訟とは別に、守る会は、山形広域環境事務組合(施設設置主体) を相手に、敷地造成工事(既に工事終了)の公費返還を求める住民訴訟を 行っております。造成工事自体にたいしては、山形広域環境事務組合は山形県の認可は必要ありません が、敷地及び敷地に接する山(通称物見山)から排出される雨水について は、一級河川忠川(前川ダム放水路)へ排水されるため、忠川を管理する 山形県の許可を取る必要があります。守る会は、造成工事計画自体が危険で違法であるとして、計画実行した山形広域環境事務組合を提訴しています。

 平成27年5月14日、山形県は山形広域環境事務組合より忠川の河川占用許可申請を受理し、「許可するをやむを得ない」というコメント付きで、同年7月23日 に許可しました。この、山形県が認可した経緯、詳細については明らかではありません。守る会は訴訟以前より、山形県の河川課に対し、専門家と共に何度か話し合いに訪れていますが、未だに納得できる回答を戴いておりません。そこで守る会は、これまでの経緯を含めて資料を作成し、公開質問状に回答して戴くことに致しました。

 公開質問状は、河川法に関する複雑な内容が多いため、図を用いて分かりやすくしております。これらの図説は、専門的な資料に基づき、河川工学の専門家に分析して戴いた内容です。守る会は、この敷地造成工事を行ったことにより、豪雨時に下流域での水害が増幅されると主張しております。

 添付資料が多いため、数日に分割して公開して参ります。この記事では、公開質問状に添付した資料(全3枚)の1枚目を公開します。

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(*図中の説明文(左上から))

■ 観光資源  前川ダム湖での釣りや、かつて忠川の両岸に広がっていた自然景観、山地のトレッキング、物見山に祀られている岩屋観音、前川に架かる堅盤橋などがあります。高畠から上山に至る旧街道は、山形県アルカディア( 桃源郷) 街道と言われ、明治初期にイザベラ・バードも、この橋を渡りました。

■ 産業資源  山形ブランドとしての米( つや姫) に象徴される田園風景や、観光果樹園( 紅柿・サクラン ボ・ラフランス・ぶどう等) が、前川沿いに広がっています。

■ 前川ダム  治水ダムとしての完成により自然渓流であった忠川の豊 かな自然環境、景観、親水性、生態系を一気に破壊してしまいました。

■ 前川ダム放水路(一級河川忠川) 広がる田園を巨大なコンクリート水路で分断され、流量がコントロールされているため、常に水はほとんど流れていない( 流量配分は0m3/s) 状態にあります。

■ 結果として  前川ダム治水計画 は、それまでの豊かな自然や河川環境を、景観的、生態系的に破壊してしまったことがうかがえます。

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避難路寸断 上山市道谷部崩落 平成26 年7 月12 日

1.上山市道前川ダム東線一部崩落
 前川ダム堤頂及びダム管理所へ向かう上山市道前川ダム東線は、平成 26 年7 月の豪雨によりダム手前の 谷部が崩落し、長期間通行禁止となりました。山の谷部は、前川ダム周辺に数か所存在しており、今後も土砂崩れや道路崩落の危険性があり、 市道は災害時の避難路としては問題が残ります。

 

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前川氾濫により護岸が一部流出   平成26 年7 月12 日 

2.前川氾濫により護岸が一部流出
 前川ダム建設に伴い、昭和57 年に前川ダム放水路が整備されました。この計画は、かつて自然な山間を縫って流れる忠川としての渓谷美や、重要な 観光資源であった優美な忠川池をも無にし、自然な貯水効果をもつダムとしての役割を果たしていた山間の狭隘部を、巨大なコンクリート断面で貫いた ため、河道および沿河の田畑としての貯留効果も失いました。更にダムから の放水を直接前川へ流すようにしたため、改修の進まない一級河川前川への負担(洪水量)は大きくなり、その結果下流域での危険は増幅されることになってしまいました。

 

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耕作放棄田畑に溜まった雨水が前川に越流 平成25 年7 月18 日 

3.耕作放棄田畑に溜まった雨水が前川に越流
 平成25 年豪雨の際の雨水は、すでに耕作が放棄された建設予定地からあふれ出て、忠川へ直接滝のように流出しました。コンクリート護岸壁で遮られた水流は、土に浸透貯留することなく下流へ真っすぐに流れ下ります。
 更に、建設予定地の地面は、敷地造 成工事により保水力を失った(ほぼゼロになる) ため、前川への流入量は益々増大して、下流域での氾濫を増幅し、人口密集地での被害を拡大させると考えられます。実際、平成25 年、26 年と、 上山市は2 年連続で豪雨に襲われ、前川流域に被害を及ぼしています。

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*図中の絵を拡大


今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

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