山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

川口の造成地で掘削工事が始まりました!| 山形県上山市川口清掃工場問題

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 山形広域環境事務組合は、去る8月4日に安全祈願祭を行い、8月26日より清掃工場の建設予定地に資材等の搬入を開始しました。現在は敷地全周囲は塀で囲われ、掘削工事が始められています。

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上山市道から見た敷地全体状況

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敷地奥の本体建設エリアでは、掘削工事が行われているようです。

 以上の経過から守る会は、9月12日、組合に対し新たに情報公開請求を行いました。請求の内容は掘削に必要な基礎の図面と、基礎数量表です。8月22日に山形県から公開された白塗りの図面からは、掘削の深さや、基礎の形状を知ることはできません。

 折しも、東京都の豊洲市場では本体が完成してから、基礎に関する不明瞭な点が発覚し、問題となっております。基礎は本体を支える上で重要な役割を果たしますが、本体が建ってしまうと、地下の内部を調査することは、非常に困難です。まして、ガス化溶融炉工場は超高温を発する建物であり、各地で事故も起きています。住民が安全を確認したい気持ちは、当然のことと思います。

 前回の図面に関する情報公開請求時には、「第三者に関する情報が含まれているため、公開できない」という理由で、一部公開の上、数値は白塗りでしたが、基礎に関してはプラントに関する企業秘密は含まれていないと、守る会は考えております。

 9月12日に請求した情報については、通常2週間以内(9月26日)までに公開すべきですが、またも公開日延長という通知書が届きましたので、公開致します。プラントに関する図面ではなく、あくまで基礎のみに関する情報公開請求です。期限を延長する理由を理解す ることは、非常に困難です。図面も示さずに、掘削を続けるという ことでしょうか。

   延長された10月6日までの公開日を待ちたいと思います。

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本体建設に関する「設置届」書類が情報公開されました

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 山形広域環境事務組合が、上山市川口の造成地に公称「エネルギー回収施設」を設置しようとする際は、山形県に対し「設置届」を提出しなければなりません。この設置届がいつ山形県に提出されるか分からないため、守る会は平成27年12月10日に株式会社神鋼環境ソリューションが落札して以降、組合や山形県に対し情報公開請求を行って参りました。
 まず守る会は、組合に対して設計図の情報公開を求めましたが、「企業の秘密情報保護」との理由で、公開されたのは簡略な立面図4枚とパースのみであり、図面上の数値は「黒塗り」状態でした。これは、図面というよりは「絵」に近いといえます。これら組合の不誠実な情報公開の姿勢に、守る会は山形県に「設置届」の情報公開請求を行うことになりました。
 しかし、本体工事に関する設置届出書類写しの公開は困難を極め、公開日の延長を繰り返した結果、先月8月22日にようやく開示されましたので、その一部を公開致します。

本体建設工事の情報公開請求に関する山形県との経緯は以下の通りです。

平成28年07月08日(金) 山形県村山総合支庁(担当窓口)に対し情報公開請求。
「一般廃棄物処理施設設置届出書」はまだ届出されていない。
意思形成過程情報に該当しているため、不開示になる可能性が非常に高いとのこと。
平成28年07月12日(火) 山形県は、組合が提出した「設置届」を受理。
守る会は、山形県に対し「設置届出書」に関する書類のすべてを情報公開請求。公開までの期限は通常2週間であるため、7月26日までに情報公開されるべきであった。しかし、 届出を受け付けた日より30日間は検討が必要であるとの理由により公開までの期間が延長された。(8月12日まで)設置届に関し、印影を除く書類すべてを公開する予定とのこと。
平成28年07月13日(水) 山形県に対し「設置届出書」に関するデータ1項目を追加情報公開請求
平成28年08月05日(金) 設置届に関する審議会が開催され決定された
平成28年08月09日(火) 山形県循環型社会推進課より電話があり、公開日を8月19 日まで延長したいとのこと。守る会は県庁にて「開示決定期間延長通知書」を受理
平成28年08月22日(月) 7月12日に情報公開請求した「一般廃棄物処理施設設置届 出書」写しを受理。しかし、県と組合、企業との合議により公開されない書類あり。一部公開された図面の数値部分のほとんどは「白塗り」の上、ハッチングが掛けられた状態で、市民が施設の概要を知ることはほとんど不可能な状態。

以下、8月22日に公開された図面の一部を公開致します。数値のほとんどが「白塗り」されているため、建物の大きさや深さを知ることはできません。住民が施設の安全性を知る権利はないのでしょうか。何故、数値を隠す必要があるのか、まったく理解できません。

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外構工事が始まりました | 山形県上山市川口清掃工場本体建設工事

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山形広域環境事務組合は、去る8月4日に造成された川口の敷地で「安全祈願祭」を行いました。その後、おそらく8月26日頃から資材の搬入が始まり、外構工事に着工したと思われます。
 裁判は現在も5件継続されている状態で、来る9月13日(火)には敷地に入るための架橋工事に関する裁判が、2件行われます。この裁判に関し、守る会はすでに準備書面と新たな証拠を提出致しました。

■ この裁判(平成28年9月13日山形地裁)について
11:00~ 山形県に対する河川(忠川)占用許可取消請求行政訴訟
11:10~ 組合に対する架橋工事公金差止請求住民訴訟

 上山市川口に造成された敷地に入るためには、必ず敷地東側に接する一級河川忠川を渡らなければなりません。この忠川の上流には、 山形県が管理する「前川ダム」があり、増水時には忠川に放水する ことも想定されています。そして、平常時の水量は0㎥/sと定められ ています。前川ダム工事に伴い昭和57年に竣工した忠川整備工事により、忠川はコンクリート三面貼りとなりました。ごみ焼却場建設予定地は、かつて田畑であり、当時の忠川護岸はその用途に応じた設計になっています。忠川を渡り農作業をするために、当時農業用の橋が架けられました。
 しかし平成24年、敷地はゴミ焼却場建設予定地となったため、 多くの車両に対応できる橋が必要となり、組合は平成26年に新たな架橋工事を計画しました(平成26年9月山形県へ河川占用許可申請)。 両岸に長いコンクリートパイルを打ち込む「イージーラーメン橋」です。 この新橋は平成27年3月に竣工しましたが、この架橋工事が適切であ ったかどうか、現在組合に対し訴訟を継続中です。また、この架橋工事に際し、忠川を管理する山形県が忠川の河川占用許可を出したこと についても、訴訟が継続されています。  
 もし、この「しんちゅうかわばし」工事が不適切となれば、工事トラック等が敷地に入ることは不可能となると思われます。

f:id:mamorukai:20160905230819j:plain忠川左岸沿いに組まれた鋼管

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掲げられた工事用看板(工期は平成28年2月17日~平成30年11月30日)

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忠川上流部から見た「しんちゅうかわばし」

澄んだ空気と水 第50号 2016.08.27 (土) 発行

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49号の続き

ごみ弁連が 上山市川口の予定地等を視察しました

 平成28年8月1日(月)午前中、ごみ弁連(たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会) は総会を行い、次年度の開催地を東京都に決 定致しました。今回の集会では、福島県由来 の放射能ごみに関連した事例が多く、その深刻な状況が発表されました。放射性ごみが、 福島県のみならず、全国的な問題になっていることは、今後の大きな課題です。その後希望者は、流動床式ガス化溶融炉建設が予定されている上山市川口へ向かい、 高さ400m程度の里山と、一級河川忠川(前川ダム放水路)、JR山形新幹線(奥羽本線)に囲ま れた造成済みの敷地を視察。河川の専門家より、敷地と河川の複雑な関係について説明を受けました。敷地造成工事が、忠川やその下流の前川に与える影響について、様々な意見が 出されました。このような議論を、上山市市民検討委員や組合、議会がかつて行い、検討したことがあったでしょうか。はなはだ疑問に思われます。敷地選定の初歩的なミスではないかという意見も聴かれました。

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造成された敷地を視察する参加者

長井市レインボープラン視察について

 ごみを焼却すること自体に大きな問題があることは、ごみ弁連では共通の認識ですが、ごみを安全に処理する方法について考えることは、非常に重要なことです。前日、青山氏の講 演ではカナダの事例が示されましたが、県内での独自の取り組みを視察させて戴くため、山形県長井市へ向かいました。
 長井市は、上山市から車で約1時間弱の人口27,745人、9,687世帯(平成28年3月)の町 です。自然と共生しながら関わり合いを続けてきた長井市は、平成元年に「不伐の森条例」 を制定し、市民が未来永劫巨木と森の自然を育む聖域づくりに取り組む決意を世界に発信しました。そのような長井市では、土・農・食という「いのちの根幹」への危機感が募る現代 において、食といのちの安全を未来につなげる地域循環づくりに「官」「民」の隔てなく、市民 一体となって「レインボープラン」に取り組んでいます。長井市では、このプランを「ごみ処理事業」として捉えていません。昭和30年代以降の「大量消費社会」により、疲弊した土や低い自給率を背景にして生まれた「循環型社会実現のためのプラン」だということでした。
 レインボープランに関する基本的なレクチャーを受けた後、説明を伺いながら、たい肥化工場を視察しました。工場は、住宅が散らばる田園風景の中に、複数棟建っていました。
 生ごみは、各家庭でよく水切り後、分別して、 週2回集荷所のコンテナへ出し、コンポストセンターへ運ばれて、たい肥化されます。完成した堆肥は、長井市内で使われ、それによってできた作物も、長井市で消費されるという地産地消を実行しています。
工場は非常に開放的で、通風に配慮されています。プラントはアナログ式で、自然の力を借りて稼働している様子が分かります。驚いたことにこのプラントは、ガス化溶融炉を製作しているメーカーのものでした。自治体は、どちらの方式でも選ぶことが可能な訳ですが、小さな自治体は費用負担と維持管理費の少ないコンポスト方式を採用する方が得策だと思えました。特に、難しい高度な技術は必要がないので、地元の方でも働くことができます。こちらの工場は海外からの視察も多いということですが、納得できました。

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コンポストセンター

コンポストセンターの概要
工期 平成8年着工竣工 約8ヶ月間
工費 3億8522万円(税込)
処理量 2,400トン/年 (9トン/日)
敷地 9,690㎡
建物面積 2,008.8㎡(平屋建)
請負業者 (株)荏原製作所
補助事業 地域資源リサイクル推進整備事業
(農林水産省補助)

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内部は非常に開放的

 一方人口25.42万人の山形市は、山形県の県庁所在地であり、隣接する上山市、山辺町、中山町と二市二町合同でゴミ処理を行っています。山形市上山市にそれぞれ150トン/日の流動床式ガス化溶融炉を建設し、焼却するとしていますが、その山形市もすでに「生ごみの資源化」を行っています。都市部では生ごみの収集は難しい点もありますが、これらの処理システムを拡充することで、対応が可能かと思えます。現在、生ごみの処理を各家庭で行う場合、住民であれば市から費用の2分の1が補助されますが、その補助率を上げることはできないでしょうか。焼却場で処理する場合、個人負担はゼロですが、焼却場(公称エネルギー回収施設)の建設費や周辺整備費、運営費等に莫大な費用が掛かり、結局国民の税負担となります。生ごみの各家庭処理を拡大することにより、これらの税負担を軽減し、安全に処理することが可能です。行政は現在行っている政策を推進すればよく、決して難しいことではありません。広域処理に頼る時代ではないと思います。

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山形市の「ごみ減量・分別大百科」より抜粋

 現在山形市では、きちんとゴミの分別が行われており、生ごみは焼却するものの、他のゴミはそれぞれリサイクルされています。現在の燃えるゴミを、各家庭で処理できるようになれば、焼却場はほとんど不要になります。焼却することのデメリットは、これまで再三述べてきたので割愛しますが、市民も行政もここまで分別の努力を重ねながら、何故焼却場の規模を変更しようとしないのでしょうか。
 溶融炉が完成すれば、生ゴミだけではなくプラスチックごみも混焼してしまう危険性があります。さらに、これまでストーカ式炉では焼却できなかった粗大ゴミ等も、溶融できることになります。溶融炉の導入により安易に焼却物の幅を広くし、これまでの努力を無にすることは、ごみ削減政策と矛盾することになると思えます。

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 現在、これだけの分別が行われ、リサイクルを推奨しています。ごみの8割を占める燃えるごみが、家庭内処理やリサイクルされれば、焼却炉も、排出される厄介な焼却灰も削減され、最終処分場を探す必要も無くなるはずです。それは、決して困難なことではなく、これまで進めてき た政策を拡大すればよいのです。多額の税金を要し、安全性に疑問が残るガス化溶融炉政策 を是非見直して戴きたいと、守る会は考えております。これまで、何故このような話し合い に応じて戴けなかったのか、裁判に至ったことを非常に残念に思います。

次回裁判予定

平成28年 9月13日(火)11:00~ 山形県に対する河川占用許可取消請求行政訴訟(山形地裁)
平成28年 9月13日(火)11:10~ 組合に対する架橋工事公金差止請求住民訴訟(山形地裁)
平成28年10月17日(月)13:30~ 組合に対する造成工事公金差止請求住民訴訟(山形地裁)

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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澄んだ空気と水 第49号 2016.08.21 (日) 発行

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上山市でごみ弁連総会が開催されました !

 平成28年7月31日(日)から翌8月 1日(月)の2日間に渡り、山形県上山市に おいて おいて、ごみ弁連(たたかう住民とともに ゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会) の集会及び総会が開催されました。 昨年は、岡山県において火葬場問題、 産廃処分場問題について話し合われましたが、 たが、今年は東北山形での開催となり、上山市川口に建設が予定されている「ガス化溶融炉」問題や、福島県を起点とする、いわゆる 「放射能ごみ」について多面的に話し合いが行われましたので、その概要について報告致し ます。 初日7月31日(日)は、13:00 に集会が始まりました。全国から集まられた「ごみ(一般ご み、産廃放射能ごみ等々)」に関する問題を抱えていらっしゃる住民の方、議員、企業、その裁判に関わってこられた弁護士さんたちが次々に登壇し、講演と事例発表を行いました。

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13:00 から始まった集会の様子


セッションⅠ 山形市上山市での山形広域環境事務組合の現状について

基調報告 上山市川口地区に建設予定の清掃工場をめぐる問題
     ごみ弁連事務局長 坂本博之

これまでの経緯(詳細説明概要)
平成11年 新清掃工場用地選定に着手
平成18年03月 上山市柏木地区を候補地に選定
平成22年08月 上山市柏木地区を断念、2 工場方式に転換を表明
平成22年11月  2 カ所の候補地として山形市立谷川、上山市大石陰を選定
平成23年11月  1 か所を山形市立谷川に決定
平成24年02月 上山市大石陰地区への建設を断念
平成24年05月 上山市市民検討委員会発足
平成24年06月 上山市市民検討委員会第5回会合にて市長に報告書提出
平成24年08月 組合臨時総会にて上山市川口を含む最終3候補地を発表
平成24年09月 上山市川口にて反対運動開始
平成24年10月 建設反対署名簿を 組合管理者及び議長に提出
平成24年12月 組合管理者が「建設地を上山市川口に決定」と公表
平成25年02月 組合の全員協議会の席で上山市川口に決定
平成25年04月 虚偽公文書作成罪で上山市職員を上山署に刑事告発
平成26年12月 予定地土地買入価格に関し、住民監査請求(翌年2月棄却)
平成27年02月 組合に対する新橋架橋建設住民監査請求(3月棄却)
平成27年02月 山形県に対する河川占用許可取消訴訟提起
平成27年04月 組合に対する新橋架橋建設住民訴訟提起(訴訟係属中)
平成27年01月 組合に対する敷地造成工事差止仮処分申立
平成27年10月 組合に対する敷地造成工事住民監査請求
平成27年10月 上山市に対する市道拡幅工事住民監査請求
平成27年12月 組合に対する敷地造成工事住民監査請求 棄却
平成27年12月 上山市に対する市道拡幅工事住民監査請求 棄却
平成28年01月 組合に対する敷地造成工事住民訴訟提起(訴訟継属中)
平成28年01月 上山市に対する市道拡幅工事住民訴訟提起(訴訟継属中)
平成28年05月 組合に対する敷地造成工事差止仮処分申立 却下
平成28年05月 上記仙台高等裁判所宛即時抗告
平成28年06月 上記組合が仙台高裁宛答弁書提出

以上


基調講演 ガス化溶融炉・妄想と時代錯誤の所産

ごみ弁連会長 / 理学博士 梶山正三

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 1997年5月28日付の旧厚生課長通知 により、ごみ処理の素人である官僚が 「ごみ処理広域化が必要」と断言し、「広域化計画の策定」を地方自治体に命じた。 「これに従わなければ、補助金を交付しない」また、「処理量は300トン以上が望ましい」という通達は、既に「ゴミ不足」の時代 を迎えているのに、正に時代錯誤そのものであった。 

溶融炉開発の動機と経緯について

  1. 焼却灰・ばいじんの無害化 (ガラス化して重金属の溶出を抑える)
  2. 焼却灰・ばいじんの減容化 (溶融固化により減容する)
  3. 溶融スラグ再資源化 (溶融スラグを路盤材、建築資材などにリサイクルする)
  4. 廃棄物最終処分場の延命化 (最終処分場が「枯渇する」という伝統的な嘘)

 1981年までは試験導入期であったが、上記通達に基づき、各社が溶融炉開発に次々に参 入し、表面溶融炉、電気溶融炉、旋回溶融炉、直接溶融炉(熱分解炉)、コークスペッド、 内部溶融炉等々が開発された。しかし、これらガス化溶融炉における無数の問題点の1つ として、金属元素の挙動がある。

  1. 原則として、単体で存在することはない。
  2. 塩素化合物になると、揮発しやすくなる。(例外として水銀、アルカリ金属、Na、 K、Cs など)
  3. ガス化溶融炉で排出される重金属類は、単体として利用価値がない。
  4. 溶融排ガス中の重金属は、測定されない。
  5. スラグ溶出試験(環告46 号)では、リスクが不明。

 国のダイオキシン規制は、突如年間数千億円規模の市場を生み出したが、未熟な技術を導 入させて、維持管理費、補修費で収益を上げるやり方であった。想定以上に経費がかかるガ ス化溶融炉を自治体に押しつけた環境省は「あくまで自治体の責任において決めたこと」と にべもない対応。ガス化溶融炉は、現在も多くの問題をはらんだシステムである。

以上


セッションⅡ 行政の手続きの問題と、あるべきごみ処理の姿

講演 カナダ・ノバスコシア州ハリファックス市の廃棄物資源管理
   ~「脱」焼却を実現、「脱」埋立に向けて~
   環境総合研究所顧問 / 東京都市大学名誉教授 青山貞一氏

 カナダの最東端、北大西洋に面するノバスコシア州は、人口94万人。全部で7つの地区 から成り立っている。ハリファックス州は4つのまちが統合してできたノバスコシア州最大 の町で、人口は36 万人である。

 ハリファックス州が中心になって1995年に行った廃棄物資源管理(ゴミゼロ提案)は、何ら難しいことではない。それは、ゴミとされる資源の有効利用を最大化し、同時にごみの量を削減することに他ならない。最終処分場に行っているゴミを、排出段階で資源分別、収集する。デポジット制度を導入し、徹底して容器の回収に努めると共に、他の一般廃棄物についても①有機性廃棄物(生ごみ) ②資源化可能ゴミ ③有害廃棄物に収集段階、処理段階でも徹底分別することにある。

 この戦略の目標は、ごみの減量化、家庭内有害廃棄物の適正処理、家庭での生ごみのたい 肥化と共に、教育や普及計画も含まれる。

ハリファックス方式の効果

  1. 「脱」焼却によるダイオキシン、重金属はじめ、有害化学物質がもたらす様々なリスク の低減。
  2. 1000人規模の雇用の創出、NPO 及びNGO 地域企業の参加による地域経済への貢献
  3. 連邦や州政府の補助は、限定的。持続可能な経済システムの確立。資源物廃棄規制導入による施策効果。
  4. スチュワードシップの徹底による市民の自己責任、自治意識の向上。

以上

講演 市民参加型環境監視活動 山形発 !
   松葉ダイオキシン類調査の結果からわかること
   環境行政改革フォーラム副代表 / 環境総合研究所顧問 池田こみち氏

 山形広域環境事務組合(山形市上山市・山辺町・中山町)には、現在ストーカ式炉が稼働している「現山形市立谷川工場」と、「現山形市半郷工場」がある。立谷川工場に隣接して、現 在流動床式ガス化溶融炉(150t)が建設中。さらに上山市川口にも、同様の流動床式ガス化溶融炉(150t)が計画されており、これにより半郷工場は閉鎖予定である。

 大気中のダイオキシン類を測定するため、調査地点の松葉を採取し、カナダの検査機関に 分析を依頼した。サンプリングは、2014 年10 月26 日、守る会会員により行われた。上山 市川口地区は、建設予定地周辺の農家や企業、里山等5地点で採取。半郷地区は長年稼働し ている焼却場周辺6地点で採取。

 調査結果としては、いずれの地区とも国の基準値は下回ったものの、建設されていない川口地区は非常に良好な状態。稼働している半郷地区は、川口に比べて明らかに(3倍以上)高い数値が計測され、焼却由来の特徴が示されている。2014 年度には、全国11 箇所で調査が行われたが、川口地区は最も環境がよかった。特に焼却炉近傍の調査では、PCDFが高い濃度で検出された。川口地区に溶融炉が建設されると、数値は上昇する可能性が高い。

以上


セッションⅢ 各地からの報告

  1. 福島県南相馬市 原町処分場事件勝訴報告
  2. 福島県における指定廃棄物の問題 (放射性廃棄物クリアランスレベルのダブルスタンダード)
  3. 岩手県一関市の大東清掃センターにおける「8000 ベクレル超の汚染牧草焼却」の報告
  4. 東京都世田谷区清掃工場流動床式ガス化溶融炉の稼働実態
  5. 東京都日の出町エコセメント製造工場周辺と南相馬市の大気汚染の類似点、大気汚染予測
  6. 岡山県高梁・佐与谷産廃安定型処分場反対の取り組み
  7. 東京都除染ごみ焼却「再資源化」の問題と放射能汚染の監視
  8. 栃木県塩谷町指定廃棄物処分場問題について
  9. 岡山県岡山火葬場問題その後~現地からの報告~
  10. 秋田県米代川放射性物質を含む焼却灰」の受け入れについて

以上

次回訴訟

平成28年10月17日(月)13:30~ 組合に対する造成工事公金差止請求住民訴訟山形地裁
平成28年10月18日(火)13:15 上山市に対する市道改良工事公金差止住民訴訟 判決
*判決は守る会弁護士宛郵送予定

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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澄んだ空気と水 第48号 2016.07.26 (火) 発行

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造成工事仮処分の組合答弁書に対し、守る会は準備書面を提出

*会報47号よりつづく
 上山市川口に建設予定の公称「エネルギー回収施設」敷地造成工事に関する、仮処分命令 申立事件(平成27年(ヨ)第16号)は、平成28年5月23日付けの守る会弁護士による即 時抗告により、造成工事禁止仮処分命令申立即時抗告事件(平成28年(ラ)第91号)となり ました。守る会は、同年7月19日、弁護士を通じて仙台高等裁判所に対し、準備書面(1) 及び、証拠説明書(5)、証拠甲第38号証並びに甲第39号証を提出致しましたので、準備 書面を公開致します。(紙面上一部省略されておりますのでご了解ください)

平成28年(ラ)第91号 造成工事禁止仮処分命令申立即時抗告事件

準備書面(1)

抗告人 6名
相手方 山形広域環境事務組合

平成28年7月19日
上記抗告人ら代理人
弁 護 士 坂 本 博 之

仙台高等裁判所第1民事部 御中

第1 はじめに
 本書面は、相手方の平成28年6月29日付答弁書に対して、認否・反論を行うものである。

第2 相手方の答弁書に対して
一 同第1に対して
 「2 理由」に書かれた内容は不知。
 第一に、相手方は、工事終了を示す裏付けとして、乙2,3を提出しているが、本件 清掃工場予定地の造成工事が終了したことが、これだけでは必ずしも明らかとは言え ず、証拠として十分ではない。寧ろ、工事終了後と言われているが、現場は、亀裂が多く存在し、雨が降ればぬかるみ、さらに排水も十分になされていない状況にある(甲 38)。しかも、現場は、平成28年7月3日の雨の後、排水が十分にできず、沼地のように なってしまっていた(甲38の写真5~7)。同日、上山中山観測所では、1時間当たり最大 でも6.5㎜の雨しか降っていない(甲39の2)にも拘わらず、排水能力はこのような体た らくである。従って、本件工事が終了したとは到底言えない状態にある。
 第二に、以下に述べるような本件仮処分手続の経緯から、相手方には、工事終了を抗弁として主張する資格がない。即ち、抗告人らが本件仮処分申立を行ったのは、平成27年10月28日であった。同年12月4日に第1回審尋期日が開かれたが、その日に相手 方から提出されたのは、簡単な答弁書であり、詳細な反論が提出されたのは、平成28 年2月26日に開かれた第2回審尋期日の直前の同年2月24日であった。仮処分申立から約 3か月後のことであった。そして、同年4月26日に第3回審尋期日が開かれて、申立人ら は準備書面(1)を提出して、相手方に反論を行った。同日、原裁判所は証拠調べを終了し、同年5月12日に原決定を出した。このような経緯に徴すれば、相手方は、申立書に対する反論を著しく遅延させることにより、本件工事の終了までに、本件手続を終わ らせないようにしたものと言わざるを得ない。相手方の訴訟態度は、著しく正義に悖 るものであり、本件において、工事が終了したという主張をすることは、信義則上許 されないものと言わざるを得ない。

二 同第2に対して
1 同2に対して
(1) 同(1)に対して

ア 同アに対して争う。
 相手方の主張が「本件雨水排水計画によれば本件造成工事後の前後における排 水量の増加はわずかしかない」というものであったとしても、本件の争点は、本 件土地からの雨水排水が忠川及び前川の治水計画にどのような影響を与えるか、 という点でなければならないのであり、本件雨水排水計画が合理的であるかどうかを本件の争点とするのは誤りである。

イ 同イに対して
 争う。
 抗告人らの主張は、独自の見解などではない。抗告人らの生命・健康・財産は、 前川及び忠川の治水計画によって守られるのであるから、治水計画を前提として、 本件工事の安全性が議論されなければならないのである。

ウ 同ウに対して
 争う。
 時間雨量R10=45㎜/hという数値は、降雨強度の例示などではなく、この数 値を基準として、相手方が用いた降雨強度式I=4000/(t+28)の「4000」という 数字を導き出しているのである。原決定を書いた裁判官竹田は、この点を全く理解していなかった。相手方もこの点を理解していないのか、理解していても白を切っているのか不明であるが、ここでの相手方の主張は完全な誤りである。

エ 同エに対して
 争う。
 乙1・別紙9の河川断面図は、実際の前川の河川の状況と全く異なっている。相手方がマニング式を用いて計算したかどうかは不明であるが、仮にその通りであ ったとしても、相手方が用いたマニング式は、現実を反映することができない、 誤った計算方法であったということになる。

オ 同オに対して
 争う。
 抗告人らの主張は、事実に基づくものであり、何ら誤ったものでなどない。

(2) 同(2)に対して
ア 同アに対して
 争う。
 債務者は、上流側の排水工のバランスウェイト式フラップゲートは僅かな水位差でも自動的に開閉する、などと主張しているが、フラップゲートに係る水の圧力は単に水位だけではなく、流れる力も加わるのであり、同ゲートが忠川の水位 の下になった場合、忠川側は、濁流が奔流となって流れ下る状態になるのであり、 造成地側の水位が上がっただけで簡単に開くとは考えられない。

イ 同イに対して
 争う。
 造成地側に降った雨は、浸透係数を超えた分が流下してくるのであり、その場合、造成地側の地盤は、雨水で飽和状態になっているものと考えられる。また、 忠川の護岸コンクリートに水抜き穴があることは事実であるが、フラップゲートが忠川の水位の下になってしまうような場合、多くの水抜き穴も忠川の水位の下になってしまうことになると思われるから、十分な排水はできない。そもそも、 水抜き穴だけで十分な排水ができるとは考えられない。さらに、相手方は、護岸 コンクリートが水よりも比重が重いから上に持ち上げられることはない、などと 述べているが、噴飯ものの主張である。戦艦大和は建造されて以来、昭和20年4 月7日に鹿児島県坊ノ岬沖で沈没するまでの間、海の上に浮いていたが、これは、水よりも比重が軽かったからだったのであろうか?また、同艦が上記の日に沈没 したのは、水よりも比重が重くなったからだったのであろうか?

ウ 同ウに対して
 争う。
 忠川のコンクリート護岸に経年変化のクラックが入っていることを相手方は認めるようであるが、これは、同護岸が劣化しているということに他ならない。 また、相手方は、コンクリートがその内部を水が透過するものである、などと述べているが、コンクリートはそもそも水を透過してはならないものである。相手方は、コンクリートの構造や敷設目的を全く理解していない。

(3) 同(3)に対して
 争う。
(4) 同(4)に対して
 争う。

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次回裁判予定

即時抗告事件に関する裁判の予定はありません
平成28 年9 月13 日(火)11:00~山形県に対する河川占用許可取消請求行政訴訟(山形地裁)
平成28 年9 月13 日(火)11:10~組合に対する架橋工事公金差止請求住民訴訟(山形地裁)

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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澄んだ空気と水 第47号 2016.07.25 (月) 発行

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造成工事仮処分の即時抗告に対し 組合が答弁書を提出

上山市川口に建設予定の一般ごみ焼却施設(公称 エネルギー回収施設)敷地造成工事 差し止めを求める仮処分命令申立事件について、これまでの経緯

 敷地造成工事期間は、平成27年の契約移行日から、平成28年5月31日までとされています。(着工は平成27年8月中旬と思われます)。守る会は、平成27年10月28日付けで山形地方裁判所に対し、敷地造成工事の仮処分申し立て(平成27年(ヨ)第16号)を行いました。その後2回の審尋を経て、平成28年4月26日の裁判で結審し、同年5月12日付けで山形地方裁判所により訴えは「却下」されました。それに対し守る会は、不服として5月23日付けで仙台高等裁判所へ即時抗告状及び証拠説明書(4)、証拠甲33~37号証を提出致しました。
 その後、5月31日という敷地造成工事の工期は過ぎたものの、守る会に対し何の連絡もないまま、6月29日付けで組合側弁護士より「答弁書」が仙台高等裁判所宛に提出されましたので、その答弁書を公開致します。答弁書が提出されたのは、工期を1ヶ月近く過ぎてからのことです。(紙面の関係で一部省略します)


平成28年(ラ)第91号 造成工事禁止の仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

抗告人 6名
相手方 山形広域環境事務組合

答弁書

平成28年6月29日

仙台高等裁判所 第1民事部 ア係 御中

第1 本案前の答弁
1 本案前の答弁
(1) 抗告人らの申立をいずれも却下する
(2) 申立費用は抗告人らの負担とするとの決定を求める。

2 理由
 抗告人らは,仮処分命令申立書において,相手方のエネルギー回収施 設の敷地造成工事 について,「敷地造成工事が完成すると,債権者らの 人格権,職業遂行権,会社経営権,営農権,農地の所有権,農業水利権 が侵害される危険性が高い。」(仮処分命令申立書I第5 《7頁》)旨を 主張し,「債権者らは,現在,本件造成工事の差止めを求める本案訴訟 の準備中であるが,本件造成工事の建設工事の工期は,平成28年5月 3 1日であり,工期の到来が間近に迫っている。」「従って,本案訴訟の 提起,その結果を待っていては,造成工事が完成してしまい,上記のような債権者らの権利侵害の危険性がいつ発生してもおかしくない状懲 となる。」(仮処分命令申立書Ⅱ 《7頁》)との理由により,相手方はエ ネルギー回収施設の造成工事を行ってはならないとの工事差止めの仮 処分命令を求める申立てを行っているものである。
 しかしながら,上記のように抗告人らが工事差止めを求めている相手方のエネルギー回収施設の敷地造成工事は,平成28年5月27日に既に完了したものである(乙第2号証 完成通知書,乙第3号証 目的物 引渡書)。
 従って,抗告人らの本件申立は,訴えの利益を欠く不適法な申立となっており,却下を免れないものである。

第2 本案の答弁
1 抗告の趣旨に対する答弁
(1) 抗告人らの抗告を却下する
(2) 抗告費用は抗告人らの負担とする との決定を求める。

2 抗告の理由に対する答弁
(1) 前川の逸水を悪化させる危険性の不存在について
ア.本件の争点について
 即時抗告状第2の三の1(5頁)は,原決定第3の1(4頁)が「本件の争点は,本件雨水排水計画が不合理であるか否かである」としたことが不相当であり,「本件土地からの雨水排水が,忠川及び前川の治水計画にどのような影善を与えるか,が問題とされなければならないのである」旨を主張している。
 しかしながら,原審においては,抗告人らは,本件造成工事の施工後は大雨が降った後に想定外の水量が忠川に流れ込むことになり,これにより前川の逸水を悪化させる危険があると主張していたものであるが,その理由については,何らの根拠を示すことなく,水田の面積×50cmの貯水能力があった,現在の忠川に想定されている流量が0㎥/ sであることから想定外の水量に流れ込むことになる等の事実と異なる主張をしていたに過ぎなかったものである(相手方第1準備書面第2を参照)。
 このため,原審においては,相手方が主張していた,本件雨水排水計画によれば本件造成工事後の前後における排水量の増加はわずかしかないとの主張について,本件雨水計画が合理的であるか否かが争点となっていたものである。
よって,原決定第3の1(4頁)が「本件の争点は,本件雨水排水計画が不合理であるか否かである」としたことは相当なものであり、上記抗告人ら主張には理由がないものであ る。

イ.雨水排水計画の降雨確率年について
 即時抗告状第2の三の2 (5頁,6頁)は,相手方の雨水排水計画が降雨確率年10年としたことを不相当とし,降雨確率年を40年とし,40年に1度の大雨を想定しなければならない旨を主張している。
 しかしながら,上記抗告人ら主張は,雨水排水計画の降雨確率年について独自の見解を示すものに過ぎず,また,本件造成工事により前川の逸水を悪化させる危険があるとの抗告人ら主張の具体的根拠を示しているものでもなく,理由がないものである。

ウ.雨水排水計画における降雨強度について
 即時抗告状第2の三の3(6頁,7頁)は,原決定第4の1(5頁)が「本件雨水排水計画によれば,各集水域における降雨強度は,最小でも64. 62ミリメートル/時の数値となっているのだから.依権者らが主張する54ミリメートル/時よりも高い降雨強度を前提としているので、債権者らの主張を前提としても,債務者の計算が不合理であるとはいえない」としたことが不相当であり,その理由として,相手方の雨水排水計画が10年確率降雨強度式において時間雨量(R10)を45mm/hとしていること(甲第16号証の11頁)を挙げている。
 しかしながら,相手方第1準備書面第1の3(2) (5頁,6頁)において詳述したように,甲第16号証の雨水排水計画1l頁の降雨強度式は,I=4000/(t+28)というものであり,時間雨量(R10) 45mm/hとの記載は,同降雨強度式による降雨強度の具体例として,降雨継続時間60分の降雨強度が45mm/hであることを例示したに過ぎないものである。  従って,原決定の上記判断を不相当なものとする上記抗告人ら主張は,雨水排水計画の降雨強度式の理解を誤っているものであり,理由がないものである。

エ.前川の河川断面図の出所について
 即時抗告状第2の三の4 (7頁)は,相手方提出の報告書(乙第1号証)の別紙9の前川の河川断面図の出所が不明である旨を主張している。
 しかしながら,乙第1号証の報告書の21頁に記載があるように,同報告書の別紙9は,忠川と前川の合流点から下流側の五反田橋付近における災害復旧時の河川横断面及び河川勾配(別紙8)をもとに,断面積,勾配からマニング式を用いて現況流下能力の計算を行ったものであり,別紙9の断面図の出所が不明であるなどとする上記抗告人ら主張には理由がないものである。

オ.原決定の相当性について
 即時抗告状第2の三の5 (7頁)は,「道路土工要綱に忠実に策定された計画であったとしても,その立地条件,河川への排水の方法,排水先の河川の状況等の如何によっては,当該河川沿川の住民らに被害を与えることがあるのである」旨を主張し,原告らの申立てを却下した原審の判断が不相当であるとしている。
 しかしながら,抗告人らからは,本件造成工事により前川の逸水を悪化させる危険があるとの 控訴人ら主張の理由としては,水田の面積×50cmの貯水能力があった,現在の忠川に想定されている流量が0㎥/ sであることから想定外の水量に流れ込むことになる等の事実と異なる主張がなされていたに過ぎず(相手方第1準備書面第2を参照),前川の逸水が悪化する旨が相当な根拠に基づいて具体的に主張されることはなかったものである。 従って,原告らの申立てを却下した原審の判断は相当なものであり,上記抗告人ら主張には理由がないものである。

(2)忠川のコンクリート護岸崩壊の危険性の不存在について
ア.バランスウェイト式フラップゲートについて(省略)
イ.水圧,浮力について(省略)
ウ.忠川のコンクリート護岸の状況について(省略)

(3) 原審の進行について
 即時抗告状第2の二(4頁,5頁)は,原審の第3回審尋期日において提出された抗告人らの準備番面(1)と甲第29号証乃至甲第32号証に対し,相手方が反論を行わなかったことから.抗告人らの申立てを却下した原決定は不相当である旨を主張している。
 しかしながら.既に上述しているように本件造成工事により前川の逸水が悪化する危険性がある,忠川のコンクリート護岸が破壊される危険性があるとの抗告人ら主張には全く理由がないものであり,相手方において抗告人らの準備書面(1)、甲第29号証乃至甲第32号証に対する反論を行うまでもなく,抗告人ら主張に理由がないものであることは既に明らかになっていたものである。
 よって、上記抗告人ら主張にも理由がないものである。

(4) 結論
 以上より.原決定を不相当とする抗告人ら主張にはいずれも理由がないものであり,本件即時抗告は却下を免れないものである。

以 上

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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