山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第49号 2016.08.21 (日) 発行

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上山市でごみ弁連総会が開催されました !

 平成28年7月31日(日)から翌8月 1日(月)の2日間に渡り、山形県上山市に おいて おいて、ごみ弁連(たたかう住民とともに ゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会) の集会及び総会が開催されました。 昨年は、岡山県において火葬場問題、 産廃処分場問題について話し合われましたが、 たが、今年は東北山形での開催となり、上山市川口に建設が予定されている「ガス化溶融炉」問題や、福島県を起点とする、いわゆる 「放射能ごみ」について多面的に話し合いが行われましたので、その概要について報告致し ます。 初日7月31日(日)は、13:00 に集会が始まりました。全国から集まられた「ごみ(一般ご み、産廃放射能ごみ等々)」に関する問題を抱えていらっしゃる住民の方、議員、企業、その裁判に関わってこられた弁護士さんたちが次々に登壇し、講演と事例発表を行いました。

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13:00 から始まった集会の様子


セッションⅠ 山形市上山市での山形広域環境事務組合の現状について

基調報告 上山市川口地区に建設予定の清掃工場をめぐる問題
     ごみ弁連事務局長 坂本博之

これまでの経緯(詳細説明概要)
平成11年 新清掃工場用地選定に着手
平成18年03月 上山市柏木地区を候補地に選定
平成22年08月 上山市柏木地区を断念、2 工場方式に転換を表明
平成22年11月  2 カ所の候補地として山形市立谷川、上山市大石陰を選定
平成23年11月  1 か所を山形市立谷川に決定
平成24年02月 上山市大石陰地区への建設を断念
平成24年05月 上山市市民検討委員会発足
平成24年06月 上山市市民検討委員会第5回会合にて市長に報告書提出
平成24年08月 組合臨時総会にて上山市川口を含む最終3候補地を発表
平成24年09月 上山市川口にて反対運動開始
平成24年10月 建設反対署名簿を 組合管理者及び議長に提出
平成24年12月 組合管理者が「建設地を上山市川口に決定」と公表
平成25年02月 組合の全員協議会の席で上山市川口に決定
平成25年04月 虚偽公文書作成罪で上山市職員を上山署に刑事告発
平成26年12月 予定地土地買入価格に関し、住民監査請求(翌年2月棄却)
平成27年02月 組合に対する新橋架橋建設住民監査請求(3月棄却)
平成27年02月 山形県に対する河川占用許可取消訴訟提起
平成27年04月 組合に対する新橋架橋建設住民訴訟提起(訴訟係属中)
平成27年01月 組合に対する敷地造成工事差止仮処分申立
平成27年10月 組合に対する敷地造成工事住民監査請求
平成27年10月 上山市に対する市道拡幅工事住民監査請求
平成27年12月 組合に対する敷地造成工事住民監査請求 棄却
平成27年12月 上山市に対する市道拡幅工事住民監査請求 棄却
平成28年01月 組合に対する敷地造成工事住民訴訟提起(訴訟継属中)
平成28年01月 上山市に対する市道拡幅工事住民訴訟提起(訴訟継属中)
平成28年05月 組合に対する敷地造成工事差止仮処分申立 却下
平成28年05月 上記仙台高等裁判所宛即時抗告
平成28年06月 上記組合が仙台高裁宛答弁書提出

以上


基調講演 ガス化溶融炉・妄想と時代錯誤の所産

ごみ弁連会長 / 理学博士 梶山正三

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 1997年5月28日付の旧厚生課長通知 により、ごみ処理の素人である官僚が 「ごみ処理広域化が必要」と断言し、「広域化計画の策定」を地方自治体に命じた。 「これに従わなければ、補助金を交付しない」また、「処理量は300トン以上が望ましい」という通達は、既に「ゴミ不足」の時代 を迎えているのに、正に時代錯誤そのものであった。 

溶融炉開発の動機と経緯について

  1. 焼却灰・ばいじんの無害化 (ガラス化して重金属の溶出を抑える)
  2. 焼却灰・ばいじんの減容化 (溶融固化により減容する)
  3. 溶融スラグ再資源化 (溶融スラグを路盤材、建築資材などにリサイクルする)
  4. 廃棄物最終処分場の延命化 (最終処分場が「枯渇する」という伝統的な嘘)

 1981年までは試験導入期であったが、上記通達に基づき、各社が溶融炉開発に次々に参 入し、表面溶融炉、電気溶融炉、旋回溶融炉、直接溶融炉(熱分解炉)、コークスペッド、 内部溶融炉等々が開発された。しかし、これらガス化溶融炉における無数の問題点の1つ として、金属元素の挙動がある。

  1. 原則として、単体で存在することはない。
  2. 塩素化合物になると、揮発しやすくなる。(例外として水銀、アルカリ金属、Na、 K、Cs など)
  3. ガス化溶融炉で排出される重金属類は、単体として利用価値がない。
  4. 溶融排ガス中の重金属は、測定されない。
  5. スラグ溶出試験(環告46 号)では、リスクが不明。

 国のダイオキシン規制は、突如年間数千億円規模の市場を生み出したが、未熟な技術を導 入させて、維持管理費、補修費で収益を上げるやり方であった。想定以上に経費がかかるガ ス化溶融炉を自治体に押しつけた環境省は「あくまで自治体の責任において決めたこと」と にべもない対応。ガス化溶融炉は、現在も多くの問題をはらんだシステムである。

以上


セッションⅡ 行政の手続きの問題と、あるべきごみ処理の姿

講演 カナダ・ノバスコシア州ハリファックス市の廃棄物資源管理
   ~「脱」焼却を実現、「脱」埋立に向けて~
   環境総合研究所顧問 / 東京都市大学名誉教授 青山貞一氏

 カナダの最東端、北大西洋に面するノバスコシア州は、人口94万人。全部で7つの地区 から成り立っている。ハリファックス州は4つのまちが統合してできたノバスコシア州最大 の町で、人口は36 万人である。

 ハリファックス州が中心になって1995年に行った廃棄物資源管理(ゴミゼロ提案)は、何ら難しいことではない。それは、ゴミとされる資源の有効利用を最大化し、同時にごみの量を削減することに他ならない。最終処分場に行っているゴミを、排出段階で資源分別、収集する。デポジット制度を導入し、徹底して容器の回収に努めると共に、他の一般廃棄物についても①有機性廃棄物(生ごみ) ②資源化可能ゴミ ③有害廃棄物に収集段階、処理段階でも徹底分別することにある。

 この戦略の目標は、ごみの減量化、家庭内有害廃棄物の適正処理、家庭での生ごみのたい 肥化と共に、教育や普及計画も含まれる。

ハリファックス方式の効果

  1. 「脱」焼却によるダイオキシン、重金属はじめ、有害化学物質がもたらす様々なリスク の低減。
  2. 1000人規模の雇用の創出、NPO 及びNGO 地域企業の参加による地域経済への貢献
  3. 連邦や州政府の補助は、限定的。持続可能な経済システムの確立。資源物廃棄規制導入による施策効果。
  4. スチュワードシップの徹底による市民の自己責任、自治意識の向上。

以上

講演 市民参加型環境監視活動 山形発 !
   松葉ダイオキシン類調査の結果からわかること
   環境行政改革フォーラム副代表 / 環境総合研究所顧問 池田こみち氏

 山形広域環境事務組合(山形市上山市・山辺町・中山町)には、現在ストーカ式炉が稼働している「現山形市立谷川工場」と、「現山形市半郷工場」がある。立谷川工場に隣接して、現 在流動床式ガス化溶融炉(150t)が建設中。さらに上山市川口にも、同様の流動床式ガス化溶融炉(150t)が計画されており、これにより半郷工場は閉鎖予定である。

 大気中のダイオキシン類を測定するため、調査地点の松葉を採取し、カナダの検査機関に 分析を依頼した。サンプリングは、2014 年10 月26 日、守る会会員により行われた。上山 市川口地区は、建設予定地周辺の農家や企業、里山等5地点で採取。半郷地区は長年稼働し ている焼却場周辺6地点で採取。

 調査結果としては、いずれの地区とも国の基準値は下回ったものの、建設されていない川口地区は非常に良好な状態。稼働している半郷地区は、川口に比べて明らかに(3倍以上)高い数値が計測され、焼却由来の特徴が示されている。2014 年度には、全国11 箇所で調査が行われたが、川口地区は最も環境がよかった。特に焼却炉近傍の調査では、PCDFが高い濃度で検出された。川口地区に溶融炉が建設されると、数値は上昇する可能性が高い。

以上


セッションⅢ 各地からの報告

  1. 福島県南相馬市 原町処分場事件勝訴報告
  2. 福島県における指定廃棄物の問題 (放射性廃棄物クリアランスレベルのダブルスタンダード)
  3. 岩手県一関市の大東清掃センターにおける「8000 ベクレル超の汚染牧草焼却」の報告
  4. 東京都世田谷区清掃工場流動床式ガス化溶融炉の稼働実態
  5. 東京都日の出町エコセメント製造工場周辺と南相馬市の大気汚染の類似点、大気汚染予測
  6. 岡山県高梁・佐与谷産廃安定型処分場反対の取り組み
  7. 東京都除染ごみ焼却「再資源化」の問題と放射能汚染の監視
  8. 栃木県塩谷町指定廃棄物処分場問題について
  9. 岡山県岡山火葬場問題その後~現地からの報告~
  10. 秋田県米代川放射性物質を含む焼却灰」の受け入れについて

以上

次回訴訟

平成28年10月17日(月)13:30~ 組合に対する造成工事公金差止請求住民訴訟山形地裁
平成28年10月18日(火)13:15 上山市に対する市道改良工事公金差止住民訴訟 判決
*判決は守る会弁護士宛郵送予定

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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