山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

<上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件>山形広域環境事務組合からの答弁書公開

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 昨年8月から、上山市川口の敷地造成工事が始まりました。
敷地に入るためには、国道13号線から上山市道を通り、一級河川「前川」と「忠川」2つの川を渡らなければなりません。現在この架橋工事と、市道改良工事について訴訟を行っております。

 敷地造成工事については、敷地自体は3.6haであるものの、雨天時には、隣接する里山から大量の雨水が敷地に流下し、その雨水が忠川に排水されることを問題視しています。

 実際平成25・26年の7月豪雨の際、前川は氾濫して川口周辺の前川護岸が崩壊しただけではなく、下流域の上山市内でも夜中に避難を余儀なくされました。その際、建設予定地はまだほとんどが水田だったため、保水力をたもっていました。造成工事が進むにつれ、地面は締め固められて、敷地から流出する雨水は増えます。組合が作成した雨水排水計画による排水量は、過少であるというのが、守る会の主張です。前川に流入する雨水がこれ以上増えると、増水して前川に架かる「五反田橋」が冠水する可能性があり、周辺の人は避難路を失います。逆に上流では、一昨年大規模な土砂崩れが起きて、市道の一部を流失しました。

 これらの安全性に関し、守る会17人は、昨年10月28日に組合委員に対し住民監査請求を行い、同時に仮処分命令申立書を山形地方裁判所へ提出致しました。その後意見陳述を行いましたが、棄却されたため、平成28年1月21日付けで住民訴訟を提起しました。

 守る会の訴状に対する組合側の答弁書を受理し、3月29日山形地方裁判所において第1回口頭弁論が行われましたので、守る会の訴状と組合側の答弁書の一部を公開致します。

 

※ 訴状、答弁書、証拠書類共に長文のため、わかりやすく内容を編集しています。
※ 守る会の提出した訴状の各項目に対して、山形広域環境事務組合がそれぞれ回答しています。訴状の内容は「黒」で表現し、組合の回答を「赤」で各項目に挿入しています。


訴  状

平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件
原告 山形市上山市市民9名
被告 山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘

 

請求の趣旨

  1. 被告は、エネルギー回収施設(川口)の敷地造成工事に関し、平成27年7月3日A建設・B建設工事共同企業体との間で締結した工事請負契約に基づく請負代金3億7098万円のうち、金2億3084円を支出してはならない。
  2. 被告は、市川昭男及びA建設・B建設工事共同企業体に対し、金1億4014万円及びこれに対する平成27年8月20日から支払済まで年5%の割合による金員の損害賠償請求をせよ。
  3. 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

<組合の答弁書より>
第1 請求の趣旨に対する答弁
1.原告らの請求をいずれも棄却する
2.訴訟費用は原告らの負担とする
との判決を求める

 

第3 本件造成工事の問題点
1 本件土地と公道との間には、忠川という川が流れている。忠川は、上記建設予定地のすぐ近くで前川と合流し(甲12、15、16・3p)、前川はさらに須川に合流し、須川は最上川と合流する。最上川一級河川であり、忠川、前川はその支川であり、やはり一級河川である。しかし、忠川や前川の管理は、国土交通省ではなく、山形県が行っている。

<組合の答弁書より>
1について
 第1文は認める。但し、公道は忠川右岸側の上山市道である。
 第2文のうち、忠川が前川と合流していること、前川はさらに須川に合流し、須川は最上川と合流していることは認め、「上記建設用地のすぐ近くで」との点は否認する。忠川と前川の合流地点は、エネルギー回収施設の建設予定地進入路から100m以上離れているものである。
 第3文のうち、最上川、忠川、前川が一級河川であることは認め、その余は否認する。忠川は前川の支川であり、前川は須川の支川である。
 第4文は認める。

 

2  組合は、本件工事完了後、本件土地に降った雨水及び本件土地の南側の丘陵に降り、本件土地に流下してくる雨水については、排水樋管を通して、1か所(忠川上流)から、雑排水(建設予定地内雨水及び一部南側丘陵雨水及び生活排水)についてはその北側の1か所(忠川下流)から、合計2か所において、忠川の左岸側に排水する予定としている(甲16・20p等)。即ち、忠川の上流側の地点は口径1000mmの排水樋管により、下流側の地点は1200mm×800mmのU型水路により、それぞれ忠川に排水するものとされている(甲16・21p等)。

<組合の答弁書より>
2について
  第1文のうち,被告が本件工事完了後,本件土地の一部及び本件土地の南側の山地に降って流下してくる雨水については排水樋管を通して忠川上流側の1か所から,本件土地の一部及び本件土地の南側の山地に降った雨水,生活排水についてはその北側の1か所(忠川下流側)から,合計2か所において忠川左岸側に排水する予定であることは認め,その余は否認する。
 第2文は認める。

 

4 組合は、本件工事により、低湿地の状態の本件土地を、清掃工場を建設し、管理運営することができるように造成し、総開発面積3万5886㎡のうち、約1万8600㎡を、建物その他の設備の建設用地や道路等として利用する予定であるとしており(甲16・8p)、それらの土地部分の開発総面積に対する割合は、約52%となる。これらの土地においては、雨水は地下に浸透することはなく、流出することになる。また、それ以外の土地の多くについても、現在の低湿地のような状態ではなく、清掃工場用地として造成されるから、雨水が地下に浸透する割合は、現在の状態よりも大幅に減少するものと思われる。

<組合の答弁書より>
4について
 第1文のうち,被告が本件工事により本件土地を,清掃工場を建設し,管理運営することができるように造成し,総開発面積3万5886㎡のうち,約1万8600㎡を建物その他の設備の建設用地や道路等として利用する予定であること,それらの土地部分の開発総面積に対する割合は約52%であることは認め,その余は否認する。但し,開発総面積は平成26年に策定した施設整備基本計画における想定面積である。
 第2文,第3文は否認する。

 

5 組合は、雨水が地下に浸透せずに流出する割合(この割合を表す数値を「浸透係数」という)を、本件工事完了後を0.9、現在の状況を0.7とそれぞれ想定している(甲16・8p、20p)。また、組合は、10年に一度の大雨を想定するとして、45.0mm/hの雨が降るということを想定している(甲16・11p)。そして、組合は、上記のような雨が降った場合、本件工事完了後は、上流側の排水樋管から2.923㎥/s、下流側のU型水路から1.498㎥/s、合計4.421㎥/sの水が排出される、ということを想定している(甲16・20p)。 なお、組合は、本件工事前の状態では、上記のような雨が降った場合、上流側の排水樋管から2.923㎥/s、下流側の水路から1.358㎥/s、合計4.281㎥/sが流出することになるとして、本件工事後の流出水量の増加量は、僅か0.140㎥/sにしか過ぎないとしている。そして、組合は、この程度の増加量では、忠川の計画高水流量170㎥/sの僅か0.08%の増加でしかなく、洪水調整池を必要としない、などとしている(甲16・20p)。

<組合の答弁書より>
5について
 第1文,第2文は否認する。
 第3文のうち,被告が,甲第16号証の雨水排水計画の20頁において,本件工事完了後に忠川上流側の排水樋管から2.923㎥/s,下流側のU型水路から1.498㎥/s,合計4.421㎥/sの水が排出される,との計算を行っていることは認め,その余は否認する。
 第4文のうち,被告が,甲第l6号証の雨水排水計画の20頁において,本件工事前の状態について,忠川上流側の排水樋管から2.923㎥/s,下流側のU型水路から1.358㎥/s,合計で4.281㎥/sが流出する,本件工事後は0.140㎥/sの増加となる,との計算を行っていることは認め,その余は否認する。
 第5文は認める。

 

6 しかし、上記の組合による想定や計算には、以下のような問題点がある。
(1)  本件工事前と後とで、用いた10年確率の雨の降雨時間が異なっている(本件工事前は上流部で33.9分、下流部で25.1分[甲16・20p]、本件工事後は10分[甲16・11p])、集水面積が異なっていると思われる(本件工事前は上流部で23.20ha、下流部で9.30ha[甲16・20p]、本件工事後は不明)、といった、計算に用いた数値に問題がある。

<組合の答弁書より>
6について
(1)について
否認する。

 

(2)  組合の想定では、10年確率の大雨を45mm/hとしているが、過去10年を振り返ってみても、気象庁・上山中山観測地点において、2010年9月14日に47mm/h、2014年7月9日に54mm/hという、組合の想定を超える大雨が降っている(甲17の3、5)。その他、2006年7月15日に43㎜/h、2008年7月6日に44mm/h、2013年7月18日に45mm/h、7月27日に44mm/hという、組合の想定の数値ないしそれに近い大雨が降っている(甲17の1~4)。近時、わが国では、それらの数値を上回る大雨が降ることも見られる。組合の大雨の想定は過小であると言わざるを得ない。

<組合の答弁書より>
(2)について
 第1文のうち,気象庁・上山中山観測地点において,2010年9月14日に47mm/h,2014年7月9日に54mm/hという降雨が記録されていることは甲第17号証の3,5に記載の限度で認め,その余は否認する。
 第2文のうち,2006年7月15日に43mm/h,2008年7月6日に44mm/h,2013年7月18目に45mm/h,7月27日に44m/hという降雨が記録されていることは甲第17号証の1乃至4に記載の限度で認め,その余は否認する。
 第3文は一般論としては認める。
 第4文は否認する。

 

(3) 組合が想定している忠川の計画高水流量の対象降雨と、本件工事に架かる対象降雨が符合しているかどうか不明である。
<組合の答弁書より>
(3)について
不知。

 

(4) そもそも、忠川の「計画高水流量」とされているが、忠川には河川法本来の意味での河川整備計画はなく、従って「計画高水流量」は存在しない。寧ろ、「前川治水ダム事業計画書」によると、忠川の計画高水流量は0㎥/sとなっている(甲18)。即ち、忠川の上流には治水を目的とした前川ダムがあり、洪水の際はこの前川ダムに貯水して、忠川には放流しないというのが、前川ダム建設の基本思想となっているのである。一方、170㎥/sという数字は、単に、忠川の河道の流下能力を示しているに過ぎない。 従って、忠川及び前川の治水、流域の水害からの安全という観点から考えた場合、本件造成地から排出される雨水に関して参照されるべき忠川の「計画高水流量」は、170㎥/sなどではなく、0㎥/sでなければならないはずである。

<組合の答弁書より>
(4)について
 第1文は、否認する。
 第2文は,甲第18号証の25頁の計画高水流量配分図においては,忠川が0となっていることは認め,その余は不知。
 第3文は不知。
 第4文,第5文は否認する。

 

(6)  しかし雨水は、平成25年7月の大雨の時には、さらに土地の貯留浸透能力を超えて忠川護岸より越水し、忠川に流出したのであり、それにより前川は、川口地区のみならず下流域広範囲で氾濫したのである。このような大雨が降った場合には、造成前における組合の想定した排水能力を超える量の雨水が忠川に排水されることになっていたことが判る。このことは、本件造成工事が行われた場合、組合が想定している水量を遥かに超える水量が忠川に流入することになるということである。

<組合の答弁書より>
(6)について
 第1文のうち,平成25年7月に雨水が忠川護岸から忠川に流入したことは甲第19号証の1の1枚目の写真の限度で認め,その余は否認する。
 第2文,第3文は否認する。

 

(7) 本件工事が完了した場合、若し組合が想定する合計4.421㎥/sの水が忠川に流れ込むのだとした場合、それは、現状において本件土地から忠川に流れ込む水量を遥かに超える量であると言わねばならない。

<組合の答弁書より>
(7)について
 否認乃至不知。

 

8 従って、本件工事が行われると、大雨が降った時、想定外の水量が忠川に流入することになり、さらにそれが前川、須川に流れ込むことになる。前川は、最大流下能力が計画流量を下回る箇所が随所にある(甲23)。そのような場所は、前川の流下能力に近い大雨が降った場合、本件工事がなされたために、溢水してしまうことになる。 平成26年7月9日から10日に掛けて上山市を襲った豪雨は、前川の護岸を破壊し、川沿いの水田や畑に浸水し、上山市中心市街地の道路も濁流となった(甲24)。7月10日の真夜中に避難勧告が出されている。現在ですら豪雨になるとこのような危険な状況になるにも拘わらず、造成工事によりさらに多くの雨水や工場排水が忠川、前川に流入することは看過できない。

<組合の答弁書より>
8について
 第1文は,否認する。
 第2文,第3文は不知。
 第4文は,平成26年7月9日から10日にかけての降雨により,上山市において,護岸の崩壊,水田や畑,市街地への浸水があったことは甲第24号証の写真の限度で認める。
 第5文は認める。
 第6文は否認する。

 

9 また、本件工事が行われた場合、忠川への排水口のうち、上流部に設置される方は、計画高水位よりも低い位置に樋管が設置されるようである(甲16・20p)。この場合、その樋管から排水されない水が樋管や本件土地の敷地内に滞水し、樋管や忠川左岸の護岸に対して非常な水圧を加えることになる。忠川左岸の護岸コンクリートは、強度が不明な上に既にいくつものクラックが生じて劣化しており、このような水圧が加えられたとき、崩壊する危険性が高い。

<組合の答弁書より>
9について
 第1文は認める。
 第2文,第3文は否認する。

 

7 上記のような原告らの権利侵害が発生することは杞憂ではなく、平成26年夏の豪雨の時には、忠川及び前川の流域で溢水し、周辺の土地が水浸しになり、流域の護岸は流失している(甲26)。このような大雨が降った時には、地盤も緩くなるから、護岸が崩壊する可能性が通常の場合に比べて高くなる。そのような大雨の際に護岸が崩壊すれば、大きな災害が発生することは必至である。

<組合の答弁書より>
7について
 第1文のうち,平成26年7月9日から10日にかけての降雨により,前川の流減で,護岸の崩壊,水田や畑,市街地への浸水があったことは甲第24号証の写真の限度で認め,その余は否認乃至不知。
 第2文,第3文は否認する。

 

8 さらに、既に述べたように、本件造成工事が行われる土地からの排水は、忠川に流される予定であるが、洪水時に忠川から前川に流される予定の流量は0㎥/sであるが、本件造成工事が完成すると、大量の水が忠川に流され、さらに前川に流れ込む。そして、前川は、現在においても、計画高水流量の水が流れると溢水する箇所が何カ所もある。本件造成工事は、このような溢水の可能性をさらに高めるものである。

<組合の答弁書より>
8について
 第1文のうち,本件造成工事が行われる土地からの排水は忠川に流される予定であることは認め,その余は否認する。
 第2文は不知。
 第3文は否認する。

 

9 以上のように、敷地造成工事が完成すると、原告らばかりではなく、多くの市民の人格権、職業遂行権、会社経営権、営農権、農地の所有権、農業水利権が侵害される危険性が高い。
10 このように多くの市民の多くの権利を侵害することになる工事を目的とする契約は、公序良俗に違反して無効である(民法90条)。

<組合の答弁書より>
9, 1 0について
 争う。

 

 第6 住民監査請求
1 原告らは、平成27年10月28日、本件訴訟の内容と同様の内容の住民監査請求を、組合の監査委員に対して提起した(甲29)。

<組合の答弁書より>
第6について
1について
 原告らが平成27年10月28日に山形広域環境事務組合監査委員に対して甲第29号証の請求書による住民監査請求を行ったことは認め,その余は不知。

 

2 ところが、組合の監査委員は、平成27年12月24日、上記住民監査請求を棄却する決定を行った(甲30の1、2)。同決定は、同年12月25日に原告ら代理人の下に到達した。なお、組合の監査委員は、以下の(1)~(4)の全部について、「理由がないので棄却する」と言いつつ、(1)~(3)の点については、地方自治法242条1項の要件を満たしていないから監査の対象としなかった、(4)の点については監査の対象としたが棄却した、という言い方をしている。

<組合の答弁書より>
2について
 第1文は認める。
 第2文は不知。
 第3文は甲第30号証の2の監査結果報告に記載の限度で認め,その余は不知。

 

3 組合の監査委員が上記住民監査請求を棄却した理由は以下のようなものである(甲30の2)。
(1) 本件工事が河川法等に違反して違法であるとの点については、組合が行った財務会計上の行為との関連性を示しておらず、地方自治法242条1項の規定には該当しない。
(2) 原告らの人格権・財産権等を侵害するとの点については、地方自治法242条1項に規定する組合が被った損害を述べていない。
(3) 本件工事の入札は談合がなされたものであるとの点については、原告らが示している証拠は、入札結果を示しているものであり、談合が行われたことを客観的に示しているものではなく、単なる憶測や主観を述べたものに過ぎない。
(4) 本件工事の契約内容が不明確で無効であるとの点については、敷地造成工事共同企業体協定書が存在しないという主張であると捉えたうえで、組合から提出された書類の中にそのような協定書は存在するから、本件工事は有効である。

<組合の答弁書より>
3について
 甲第30号証の2の監査結果報告に記載の限度で認め,その余は不知。

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