山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

敷地造成工事差し止めを求める仮処分申し立てについて:仙台高等裁判所

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敷地造成工事について
 山形広域環境事務組合が計画する上山市川口の公称「エネルギー回収施設」敷地造成工事は「開発行為」に該当するため、山形県に対し許可を申請する必要はありません。
 この敷地は一級河川に接しており、雨水や雑排水は新しく設置される排水樋管と排水口を通してこの川に排水される計画です。そのため、組合は一級河川「忠川(前川ダムの放水路)」に対し、排水樋管と排水口を設置するための許可を申請しました。造成工事の許可は不要でも、排水に関する点で、組合は平成27年5月14日山形県に対し、工事のための河川占用許可を求める申請を行いました。それに対し県は「許可するもやむを得ない」というコメントを付けて、同年7月23日に河川占用許可を出しています。これにより組合は、同年8月中旬から造成工事を開始しました。

敷地造成工事差し止めを求める仮処分申し立てについて
 しかし守る会は、複合的な観点で造成工事には不適切かつ違法と思われる点があるとして、同年10月28日に組合に対し、造成工事の差し止めを求める「仮処分申立書」を提出致しました。また同時に同日の日付けで、組合監査委員に対し、契約内容が不明確であり、かつ河川法に違反しており、人格権や財産権等を侵害するものとして住民監査請求を行いました。
 造成工事に関する2件の法的請求のうち仮処分は、山形地裁において平成28年5月12日却下されたため、守る会は不服として同年5月23日仙台高裁に即時抗告致しましたが、抗告状に対する反応はありませんでした。しかし、即時抗告より1ヶ月以上経過した同年6月29日付けで、組合より守る会弁護士に対し「答弁書」が届きました。平成28年5月31日の工期を過ぎているため、無効であるとも言える内容です。
 守る会は、この組合の答弁書に納得できないため、仙台高裁宛に同年7月19日付けで「準備書面(1)」及び証拠甲38号証、並びに甲39号証を提出致しましたので、準備書面を公開致します。

敷地造成工事に関する住民訴訟について
 住民監査請求につきましては、組合監査委員より棄却されたため、守る会は平成28年1月27日付けで組合に対し住民訴訟を提起。裁判は現在も継続しています。

裁判と工事進捗状況について
 現在守る会は、組合、山形県上山市に対し5件の訴訟を行っております。これらはいずれも結審しておりませんが、組合は一方的に工事を進め、8月上旬には安全祈願祭を行う予定です。


平成28年(ラ)第91号  造成工事禁止仮処分命令申立即時抗告事件

準備書面(1)

抗告人   **** 外5名
相手方   山形広域環境事務組合

平成28年7月19日

上記抗告人ら代理人
弁護士 坂本 博之

仙台高等裁判所第1民事部 御中

第1 はじめに
 本書面は、相手方の平成28年6月29日付答弁書に対して、認否・反論を行うものである。

第2 相手方の答弁書に対して
一 同第1に対して
 「2 理由」に書かれた内容は不知。
 第一に、相手方は、工事終了を示す裏付けとして、乙2,3を提出しているが、本件清掃工場予定地の造成工事が終了したことが、これだけでは必ずしも明らかとは言えず、証拠として十分ではない。寧ろ、工事終了後と言われているが、現場は、亀裂が多く存在し、雨が降ればぬかるみ、さらに排水も十分になされていない状況にある(甲38)。しかも、現場は、平成28年7月3日の雨の後、排水が十分にできず、沼地のようになってしまっていた(甲38の写真5~7)。同日、上山中山観測所では、1時間当たり最大でも6.5㎜の雨しか降っていない(甲39の2)にも拘わらず、排水能力はこのような体たらくである。従って、本件工事が終了したとは到底言えない状態にある。
 第二に、以下に述べるような本件仮処分手続の経緯から、相手方には、工事終了を抗弁として主張する資格がない。即ち、抗告人らが本件仮処分申立を行ったのは、平成27年10月28日であった。同年12月4日に第1回審尋期日が開かれたが、その日に相手方から提出されたのは、簡単な答弁書であり、詳細な反論が提出されたのは、平成28年2月26日に開かれた第2回審尋期日の直前の同年2月24日であった。仮処分申立から約3か月後のことであった。そして、同年4月26日に第3回審尋期日が開かれて、申立人らは準備書面(1)を提出して、相手方に反論を行った。同日、原裁判所は証拠調べを終了し、同年5月12日に原決定を出した。この世な経緯に徴すれば、相手方は、申立書に対する反論を著しく遅延させることにより、本件工事の終了までに、本件手続を終わらせないようにしたものと言わざるを得ない。相手方の訴訟態度は、著しく正義に悖るものであり、本件において、工事が終了したという主張をすることは、信義則上許されないものと言わざるを得ない。

二 同第2に対して
1 同2に対して
(1) 同(1)に対して
ア 同アに対して
 争う。
 相手方の主張が「本件雨水排水計画によれば本件造成工事後の前後における排水量の増加はわずかしかない」というものであったとしても、本件の争点は、本件土地からの雨水排水が忠川及び前川の治水計画にどのような影響を与えるか、という点でなければならないのであり、本件雨水排水計画が合理的であるかどうかを本件の争点とするのは誤りである。
イ 同イに対して
 争う。
 抗告人らの主張は、独自の見解などではない。抗告人らの生命・健康・財産は、前川及び忠川の治水計画によって守られるのであるから、治水計画を前提として、本件工事の安全性が議論されなければならないのである。
ウ 同ウに対して
 争う。
 時間雨量R10=45㎜/hという数値は、降雨強度の例示などではなく、この数値を基準として、相手方が用いた降雨強度式I=4000/(t+28)の「4000」という数字を導き出しているのである。原決定を書いた裁判官竹田は、この点を全く理解していなかった。相手方もこの点を理解していないのか、理解していても白を切っているのか不明であるが、ここでの相手方の主張は完全な誤りである。
エ 同エに対して
 争う。
 乙1・別紙9の河川断面図は、実際の前川の河川の状況と全く異なっている。相手方がマニング式を用いて計算したかどうかは不明であるが、仮にその通りであったとしても、相手方が用いたマニング式は、現実を反映することができない、誤った計算方法であったということになる。
オ 同オに対して
 争う。
 抗告人らの主張は、事実に基づくものであり、何ら誤ったものでなどない。
(2) 同(2)に対して
ア 同アに対して
 争う。
 債務者は、上流側の排水工のバランスウェイト式フラップゲートは僅かな水位差でも自動的に開閉する、などと主張しているが、フラップゲートに係る水の圧力は単に水位だけではなく、流れる力も加わるのであり、同ゲートが忠川の水位の下になった場合、忠川側は、濁流が奔流となって流れ下る状態になるのであり、造成地側の水位が上がっただけで簡単に開くとは考えられない。
イ 同イに対して
 争う。
 造成地側に降った雨は、浸透係数を超えた分が流下してくるのであり、その場合、造成地側の地盤は、雨水で飽和状態になっているものと考えられる。また、忠川の護岸コンクリートに水抜き穴があることは事実であるが、フラップゲートが忠川の水位の下になってしまうような場合、多くの水抜き穴も忠川の水位の下になってしまうことになると思われるから、十分な排水はできない。そもそも、水抜き穴だけで十分な排水ができるとは考えられない。さらに、相手方は、護岸コンクリートが水よりも比重が重いから上に持ち上げられることはない、などと述べているが、噴飯ものの主張である。戦艦大和は建造されて以来、昭和20年4月7日に鹿児島県坊ノ岬沖で沈没するまでの間、海の上に浮いていたが、これは、水よりも比重が軽かったからだったのであろうか?また、同艦が上記の日に沈没したのは、水よりも比重が重くなったからだったのであろうか?
ウ 同ウに対して
 争う。
 忠川のコンクリート護岸に経年変化のクラックが入っていることを相手方は認めるようであるが、これは、同護岸が劣化しているということに他ならない。
 また、相手方は、コンクリートがその内部を水が透過するものである、などと述べているが、コンクリートはそもそも水を透過してはならないものである。相手方は、コンクリートの構造や敷設目的を全く理解していない。このようなことは、一般常識に属するものであるが、行政側がこのような誤ったことを言うと、これに乗って誤った判決や決定を平気で書く裁判官がいるから困ったものである。
(3) 同(3)に対して
 争う。
(4) 同(4)に対して
 争う。

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