山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

コンクリート護岸のクラック(亀裂)とエフロ(白華現象)について [ 平成28年4月26日裁判 / その6 ]

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 平成28年4月26日に行われた裁判において、守る会は証拠書類のひとつとして、コンクリート技士の方に作成して頂いた「コンクリート護岸のクラック(亀裂)とエフロ(白華現象)についての考察」を提出しました。当記事ではこの証拠書類を公開致します。

 前川ダムの放水路である一級河川・忠川は、コンクリート三面張りになっており、前川ダムが竣工した昭和57年に同時に施工されたと考えられます。このコンクリート護岸は、竣工からすでに33年経過していることになります。この左岸は、これまで水田と畑を支え、右岸上山市道を支える設計になっていました。コンクリートの耐久性から判断しても、劣化していることは明らかですが、造成工事開始後は特にこれまで水田だった場所で多くの重機が稼働し、客土して設計以上の加圧を繰り返しています。

 これらの新たな外圧が、この老朽化した護岸壁に悪影響を与えているか否かが争点の一つとなっています。事実として左岸壁には、壁を貫通する深い亀裂(クラック)が入っており、その亀裂からエフロ(白華現象)が数カ所で発生しています。亀裂が護岸壁を貫通すると、中に配筋されている鉄筋が錆びて膨張し、さらに亀裂が深まる危険性があります。守る会では、この茶色になったエフロを採取し、検査機関での客観的な結果を得ました。そして、このエフロに関する考察と、その検査結果を証拠として提出致しました。

 また、深い亀裂とは別に、護岸壁には無数の網目状の細いクラックが目に付くようになって来ました。この網目状のクラックと工事の因果関係は現在不明ですが、範囲は徐々に広がってきており、看過できない状況であると考えています。

 これらの深い亀裂と網目状のクラックが、老朽化したコンクリートにさらに負荷を与え、地震や豪雨の際、護岸崩壊に至るのではないかという住民の不安に対し、管理者である山形県と施工者である山形広域環境事務組合は、「安全である」という具体的根拠を示すべきだと思います。忠川護岸計画当時の構造計算書があれば、現在の土圧等との関係について計算することは可能ですが、すでにその構造計算書は廃棄されているということですので、安全性を証明することは不可能であると考えます。守る会は平成28年2月26日の裁判で示された相手方の証拠に対し反論しており、次回相手方の書面を待ちたいと思います。

 4月26日の守る会準備書面に対する組合と山形県の反論は、7月4日(月)に山形地裁で行われる予定です。


平成27年4月8日

コンクリート護岸のクラック(亀裂)とエフロ(白華現象)についての考察

コンクリート技士(*非公開)

1.水路護岸の変状について
 先に示したように忠川コンクリート護岸には、多くのクラック(亀裂)がある。(甲25,26,38,39,40号証写真参照)そのクラックからはエフロレッセンス(白華現象)が見られる。
 エフロレッセンス(白華現象)とは、コンクリートモルタルの表面部分に浮き出る白い生成物である。その原因は、コンクリートモルタルに含まれるセメント中の水酸化カルシウムが、侵入した雨水などに溶けて目地やクラックから滲み出し、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムになったものである。そして、エフロレッセンス(白華現象)は、外観上のクレームになることがあるが、構造上は無害とされている。
 一方、本来白色であるはずの滲出物が茶褐色である場合がある。本件の忠川コンクリート護岸でもクラックから茶褐色の滲出物が出ている個所が多く見られるが、茶褐色になる原因はコンクリート構造物のクラックなどから、雨水が侵入し鉄筋を腐食(さび)させ、その鉄分(さび汁)が出て汚したものであるため、コンクリートの耐久性を著しく損なう危険性がある。

 

2.調査内容 
 そこで、平成28年3月6日、忠川コンクリート護岸のクラックの滲出物を採取し、その成分分析を行った。滲出物が泥で汚れたために茶褐色になったのか、それとも鉄分(さび汁)によるものかを知るためである。
 滲出物の主成分は炭酸カルシウムである事は前述したように周知の事実なので、今回は滲出物の中に鉄分が存在するかどうかに絞って分析を行った。

採取箇所 (採取箇所および採取方法は、別紙1の写真で示す)

  • A地点 ―― 新忠川橋の真下の左岸部
  • B地点 ―― 新忠川橋の約2m上流の右岸部 
  • C地点 ―― 新忠川橋の下流部左岸部 (NO.101の約5m上流)
  • D地点 ―― 新忠川橋の下流部右岸部 (NO.102の約6m下流)

 

3.調査結果
 2の測定の結果、A.B.C.Dから採取したいずれの滲出物からも、鉄分が検出された。(別紙2分析結果票)
 本来、鉄筋コンクリート構造物は、圧縮強度は高いものの、引張強度が低いというコンクリートの欠点を補うため、引張強度の高い鉄筋を合体させた優れた構造物で、土木、建築業界で広く用いられている。また空気、水に触れると錆びやすい鉄筋を、強アルカリ性のコンクリートで被覆、保護することで、その耐久性を保っている。

 4か所から採取したクラックの滲出物から、いずれも鉄分が検出された。その鉄分の原因を考えてみると2点あげられる。1点目は、護岸内部鉄筋の腐食(さび)によるものであり、2点目は、地下水および土壌に含まれる鉄分である。

 今回検出された茶色のエフロが1点目の原因に由来するものであれば、護岸内部の鉄筋の腐食(さび)が進んでいる可能性が高い。鉄筋が腐食すると、その錆により鉄筋が約2.5倍に膨張し、クラックのさらなる拡大、及びコンクリートの中性化、脱落、そして崩壊を引き起こす危険な状態となる。

 また、2点目の地下水および土壌に含まれる鉄分に由来するものであれば、本来、水密性の高いコンクリートのクラックや空隙を通って、水路側のクラックに滲出したものと言える。これは、内部鉄筋が常に鉄分を含んだ水と接触していることを示しているものであある。いずれにしても、鉄筋の腐食、コンクリートの中性化、脱落、そして崩壊を引き起こす危険な状態であることに変わりはない。

 クラックの滲出物から検出された鉄分の原因が、2点のうちいずれかであると特定することは難しいが、どちらに由来するものであれ、昭和57年のコンクリート護岸完成時に見込まれた耐久性、構造的安全性は、もはや期待できないと考えるのが妥当であろう。

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