山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

「架橋工事に関する土圧計算への反論」について [ 平成28年4月26日裁判 / その5 ]

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 平成28年4月26日に行われた裁判3件のうち2件に対し、守る会は証拠書類として「架橋工事に関する土圧計算への反論」を山形地方裁判所へ提出致しました。

 前回の裁判において組合側から、平成28年2月22日付けの「報告書」及び、平成26年8月付けの「エネルギー回収施設(川口)建設事業敷地造成設計業務[一般構造物詳細設計]設計報告書」等が提出されました。これは、橋梁建設時及び完成後の共用時に発生する荷重及び振動の影響により、本件橋梁(上部写真の「新ちゅうかわ橋」)の橋桁下部に位置する忠川のコンクリート護岸の側壁部分(鉛直面部分)が崩壊される可能性の有無について、設計者が報告した文書です。

 本日ご紹介する「架橋工事に関する土圧計算への反論」は、この組合の提出した内容に反論するための文書で、作成者は、河川工学専門家と一級建築士との連名となっております。

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平成27年4月8日

架橋工事に関する土圧計算への反論


博士(工):河川工学
技術士:総合技術監理
技術士:河川、砂防および海岸
第1種情報処理技術者
一級建築士

1. 山形広域環境事務組合および山形県が提出した「乙8号証」に関する論述

1-1 構造計算書について
 乙8号証「報告書」15ページの忠川コンクリート護岸に関し「当時の構造計算書は現存しないものの、配筋がわかったので構造計算を新たに行った。その結果、護岸は新たに増加した土圧に対しても安全である。」と述べているが、提出された構造計算書は、「道路土工 擁壁工指針」に基づいたものであり、忠川のコンクリート護岸の安全性を示すものではない。
 当該コンクリート護岸は河川そのものであり、道路の護岸を目的に作られたものではない。計算のもとになるコンクリート強度(24N/mm2)と鉄筋(SD345)も、擁壁工指針で示している数値に過ぎず、忠川護岸に使われたものとは全く関連がなく、仮定の数値である。したがって、仮定の前提をもとにしたこの計算書は全く根拠のないものである。

1-2 許容応力度について
 増加した土圧に対してコンクリート護岸の安全性検証を行っているが、護岸の許容応力度(耐力)は仮定のものであり、上記同一理由から根拠がない。
(下記は乙8号証 P.16より引用)

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1-3 護岸壁に対する安全性の検証について
 乙8号証「報告書」12ページによると、「本件橋梁の水平方向の移動は、数mm程度(5mm以下)しか生じないということを意味しています」と記載されており、つまり基礎杭の許容水平変位量以下であると述べている。また13ページでは、「橋台と忠川コンクリート護岸は構造的に結合していないのみならず、全く接しておらず、両者の間には土砂が存在しています(最も近い箇所で88㎝の土砂)。従って、本件橋梁上の車両の通行や地震によって振動が生じたとしても、本件橋梁に生じることとなる数㎜程度の水平方向の変位は、忠川のコンクリート護岸と橋台、基礎杭の間にある土砂が圧縮されることにより吸収されるものであり、忠川のコンクリート護岸には応力が伝達されることは考えられません」と、述べられている。  
 しかし、基礎杭の杭頭変位が水平方向において5㎜以下で、許容水平変位量以下であるという記述は、基礎杭自体の安全性を確認しているに過ぎず、忠川コンクリート護岸の安全性には関連しないものである。
 また、乙第4号証で示された当該橋梁(新橋)設計報告書は、橋梁自体の構造の安全性を示しているに過ぎず、忠川コンクリート護岸への影響について、安全性への検討が全く行われていない。
 さらに、新橋は基礎杭の上部に1.5m高さのコンクリート橋台が載っている構造である。コンクリート護岸の天端位置は、橋台天端から0.5m程度下がった位置に相当すると見受けられるが、水平変位量は基礎部(支持層)から、高くなればなるほど大きくなる。
 次に、コンクリート護岸と橋台、基礎杭の間に土砂がありクッションの役目を果たし、橋台、基礎杭の水平変位は護岸に伝達されることは考えられないと記載されているが、現地の状況を見てみると、護岸との間の土砂は堅く締め固められたものであり、とてもクッション性があるとは考えられず、橋台、基礎杭の水平変位は、土圧と同様に護岸に伝達されると考えるのが相当である。仮に本当の意味でクッション性を持たせるのであれば、公園にあるような砂場の砂等に入れ替えて、雨等で締め固まらないように、護岸底板まで鍬等で常時耕す必要があると思料する。
  また、基礎杭は鋼管製で直径が500mmであり、左岸側が3.5mの間隔で4本、右岸側が3.3mの間隔で5本配置されている。杭と杭との隙間は左岸側で3.5m-0.5m=3.0m、右岸側で3.3m-0.5m=2.8mということになる。基礎杭の隙間部分(コンクリート護岸天端からマイナス1.1mより下の部分)には、盛土によって増加した土圧がかかることになる。
 故に、基礎杭の上の部分(コンクリート護岸天端からマイナス1.1mまでの部分)の護岸には、橋台部分および杭頭に発生する水平変位(少なくても4.7mm)が相当程度伝播する、と考えるのが妥当である。 乙第4号証・下部構造計算書・P24の(4)橋台の地震時慣性力には、地震時の橋台にかかる水平力が示されている。(乙第4号証より抜粋)

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 これによると、A1側(左岸側)の橋台にかかる地震時の水平力は50.813kN/mである。この水平力が、忠川コンクリート護岸に直接すべてかかるのか、それとも土壌のクッション性のお蔭で、全くかからないのか、あるいは軽減されてかかるかは不明である。それは衝撃荷重をやわらげる目的で用いられる、例えば、よく掘り起こした砂、木材チップ、ゴムマット等の材料以外の、一般的な土壌のクッション性の有無についての文献が、今のところ見当たらないからである。
 しかし設計思想として、特定できない、またよく分からない事項に関しては、安全側を見るというのが本来の考え方であろう。先に述べたように、当該橋梁の下部構造計算書(乙第4号証)においては、橋梁のみの単独の安全性を検証しているにすぎず、一級河川である忠川のコンクリート護岸の安全性への配慮が欠落していると言わざるを得ない。
 さらに、冬期間の土壌の凍結を考慮すれば、事態はさらに深刻になる。一般的に寒冷地では水道管の敷設深度が地域ごとに決められている。これは冬期間の水道管の凍結を防ぐためである。上山市の凍結深度は設定されてないが、隣接する山形市の凍結深度は307mmである。(甲第○○証 国土交通省東北地方建設局・東北地方多雪・寒冷地設備設計要領)
 また、当該エネルギー回収施設における凍結深度は450mmとなっている。冬期間、土壌が凍結すれば、土壌は氷の塊に等しい。すなわち凍結した土壌には全くクッション性は期待できず、橋台にかかる水平力がコンクリート護岸頭頂部に100%かかるというのが妥当な考え方である。護岸底辺部にかかる曲げモーメント(曲げる方向に働く力)にコンクリート護岸が耐えうるものか、計算を行ってみた。(別記1~4根拠参照)

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2.【甲37号証 構造計算書について】

 甲37号証の計算書は、橋梁の自重と積載荷重の計に、地震時の横力(水平力)を乗じて算定したものである。乙8号証P.18の後段に「また、一般的な建築、構造関係の文献においても、橋梁の重量の3割をもって水平力とするなどといった考え方を示したものはありません。」とあるが、下記に示すように建築基準法の施行令および告示に、0.2以上および0.3以上という表記がある。
 建築基準法施行令第88条において、地震力の標準せん断係数は0.2以上としなければならないと表記がある。また、「建築基準法に基づく主要な告示」政令第3章(平19国交告593)には、「小規模の鉄骨造の建築物の場合、標準せん断係数を0.3以上として計算して安全を確認した場合、水平方向の変形を把握する必要がなくなる」という表記が有る。
 甲37号証では、上記の小規模鉄骨建築物の規定にのっとり、当該橋梁が、高さ11.22m(<13m)、階高数1(<3)の構造物のほとんどの部分が地下に潜ったものとして、単純モデル化して作成したものであり、小規模鉄骨建築物ではよく用いられる手法であり、一般的なことである。また、乙4号証においても

1.7設計水平震度 1) 設計水平震度の標準値(躯体):kh0=0.20

という表記で、記載されている。
 建築物であっても土木構造物であっても、荷重の考え方と地震時の水平力の考え方は基本的には一緒である。また外部からの力に耐えうる安全な構造物の設計に関する考え方は同一であり、ゆえに使用されるコンクリート、鉄筋、鋼管等の強度、性能は、土木、建築とも共通である。

一般的なラーメン構造(概要)
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以上

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