山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

上山市職員措置請求に係る監査結果について

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 山形県の環境と観光産業を守る会会員である企業1社(上山市道東線に接する)と上山市民4人は、平成27年10月29日付けで上山市監査委員宛に、建設地に至る上山市道拡幅工事に関する住民監査請求を行いました。

 住民監査請求に伴い12月3日には、代表3名が組合監査委員に対し意見陳述をしております。(12月4日のブログをご覧下さい)その監査請求に対する結果が12月28日、守る会の弁護士宛郵送されましたので、公開致します。

 監査の結果、「本件請求を棄却する」また「請求人のうち企業Aについ ては、請求人の住所要件に欠けるので、これを却下する」と結論付けられ ていますが、守る会はこの結果に到底納得することはできないため、組合と同様に次の手段を講じたいと思います。住民の不安に誠意をもって審議され ているとは思えない内容です。


※結果のみの掲載とさせて戴きます。

 上山市職員措置請求に係る監査結果について(通知)

上山市監査委員 大和 啓
上山市監査委員 川崎朋巳

 平成27年11月2日に提出のあった、地方自治法242条第1項の規定による上山市職員措置請求書について、同条第4項の規定に基づき監査を行ったので、その結果を別紙の通り通知いたします。

 

監査結果

第1 請求の受付(省略)
第2 監査の実施(省略)
第3 監査の結果

 本件請求については、監査委員の合議により次のとおり決定した。

本件請求を棄却する。

 なお、本請求書は有効に成立しているものの、請求人のうち企業A(以下「企業A」という。)については、請求人の住所要件に欠けるので、これを却下する。
以下、その理由を述べる。

1 事実関係
監査対象課の監査から、請求人が主張する本件工事契約の「違法の理由」を、それぞれに区分して検証する。

(1)「本件工事の問題点」について
ア 山形広域環境事務組合(以下「組合」という。)の生活環境影響調査書によれば、エネルギー回収施設(以下請求書に合わせ「清掃工場」と表示する。)完成後、廃棄物運搬車両・一般車両の合計で1時間当たり50台前後がピーク時の通行台数と見込まれており、その車両が往復すると考えれば1時間当たり最大100台前後が市道前川ダム東線(以下「本件道路」という。)を通行することになる。この台数は大型車・小型車の合計であり、エネルギー回収施設(川口)施設整備基本計画書によれば、廃棄物運搬車両は4t・2tパッカー車が主となる。台数は少ないが8tロングダンプ車も通行する。一般的に4tパッカー車の全幅は2.2m前後、全長は7~8mであり、2tパッカー車はさらに小型になる。
 清掃工場稼働後は上記の台数であるが、土地造成、工場建設工事においては一定期間15t・10tトラックのような大型車が通行する可能性はある。なお、大型トラックでも一般に全幅2.5m、全長12mの規格内で製造されており、これを超える大きさの車両が公道を通過する場合は、特殊車両通行許可を受ける必要がある。請求人が例示している2,940mm×11,990mmのトラックはこの特殊車両に該当する。

イ 通行権として通常使用されているのは他人の土地を通らなければ公道に出られない場合の囲繞地通行権のことである。企業Aの事業所は市道である本件道路に接しており、通行権の問題は発生しないが、ここでは安全・快適に通行する権利、という意味合いで使用しているものと解釈する。本件道路は市道であり、法令に違反しない限り誰でも自由に通行することができる。

ウ 本件工事においては歩道の設置計画は無い。本件道路は、上山市市道の構造の技術的基準等を定める条例の第3種第4級の区分による規格で改良工事が行われており、この区分では、歩道設置は道路管理者の判断によるものとされている。

エ 道路交通法第40条により、一般の車両は緊急自動車を優先させる義務がある。なお、上山市消防本部が保有する緊急自動車で全幅及び全長が大きいものは、水槽付消防ポンプ自動車(全幅2,330mm×全長7,400mm)及び救助工作車(全幅2,320mm×全長7,670mm)である。

(2)「本件工事に至る経過の問題」について
ア 清掃工場の建設予定地選定に当たり市は「清掃工場候補地検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置し、検討・評価を行った。
 候補地選定・評価に関しては、検討委員会である候補5地区を評価し、市に答申した。評価点1位は須刈田、2位は川口である。市は組合に上位2地区を推薦し、他市町からの候補と併せ、判断は組合に委ねたものである。

イ 候補地選定に当たって組合は、敷地面積、土地利用上の制限の有無、公道への接続及び幅員、といった基本となる3条件を示した。川口地区の場合、接する公道の幅員に関しては、本件道路は市道認定されており、現に大型車の通行もあることから組合の3条件に沿うとの判断により候補5地区の一つに選定されたものである。
 この3条件を満たした5地区について評価するため、検討委員会では「住宅との近接性」など新たに8条件を設定した。

(3)「談合の疑い」について
ア 本件工事に係る入札執行については、地方自治法施行令、上山市財務規則等に基づき適正に行われている。なお、予定価格は、平成27年度から国、県に準じて原則事後公表としている。

イ 土木工事の設計における、労務単価、資財単価、歩掛、公共工事の土木積算基準書など、その多くは公表されているものであることから、建設業者において汎用ソフト等の活用により、一定以上の精度の積算は可能である。
 また、建設工事の入札においては、公共工事の品質確保の促進に関する法律等に基づき低入札調査基準価格制度を採用していることから、入札業者が極端に低い額による入札を防止している。
 近年の市における予定価格1千万円以上の工事落札率を調べると、次の通りである。

年度平成27年度(10月末)平成26年度 平成25年度 
平均落札率 96.8%   96.6%   95.9%  
落札率 件数 構成比 件数 構成比 件数 構成比
99%以上 7件 22.6% 10件 22.7% 5件 10.2%
98%台 10件 32.3% 7件 15.9% 6件 12.3%
97%台 1件 3.2% 10件 22.7% 3件 6.1%
96%台 5件 16.1% 5件 11.4% 7件 14.3%
96%未満 8件 25.8% 12件 27.3% 28件 57.1%
総計 31件 100.0% 44件 100.0% 49件 100.0%

 

2 監査委員の判断
事実関係及び請求人の主張を監査した結果、次のとおり判断する。
(1)工事契約の違法性について
法第242条第1項に規定する住民監査請求の対象となる行為は、財務会計上の行為又は怠る事実とされている。また、財務会計上の行為の原因となる先行行為については、密接な直接の原因と認められれば監査を要すると解される。
請求人が主張する本件工事契約の「違法の理由」の中で、清掃工場の建設予定地選定に当たり市が設置した検討委員会での候補地の選定過程に係る行為については、財務会計上の行為とは認められず、さらに、その行為は一連の行政行為であり本件工事契約の直接の原因とは認められないため、監査の判断はしない。

ア 道路の通行について
 請求人は本件道路の幅員が狭く5箇所のすれ違い困難箇所があり、本件工事によっても解消されず、清掃工場稼働後は交通量が増加するので、請求人らの通行権及び平穏生活権を侵害し公序良俗に違反し無効である、と主張している。
 市は道路管理者として清掃工場稼働による交通量の増加を予想し、交通の安全を確保するため本件道路改良工事を施工したことが認められる。本件道路は特定の個人・法人の専用道路ではなく、公道である以上、施設、道路等周辺の状況の変化により交通量の変動は起こりうる。請求人は15tトラックという大型の車両を例示してすれ違いの困難性を主張するが、廃棄物運搬車両同士では該当せず、また大型車と廃棄物運搬車とが対向しても請求人の主張するほどのすれ違い困難は発生しないと考えられる。
 また、歩道の設置については、本件工事による道路拡幅や消雪施設、側溝有蓋化等により安全面での改善が見られることから、歩道の無いことをもって直ちに歩行者の安全を侵害するとは言い難い。
 よって、対向車との交互通行の可能性をもってのみ通行の安全が侵害され、民法第90条の公序良俗に違反しているとの主張については、理由がないものと判断する。

イ 談合について
 請求人は談合の具体的事実を書面で証しているわけではなく、事実証明書の入札執行表から判断し、単なる憶測により談合があったと疑っている。
 事実関係から、汎用ソフト等の活用により入札額が予定価格に近づく可能性は十分に想定され、予定価格の事後公表により入札額が予定価格を上回ることも想定される。実際本入札においても、予定価格の99%~105%の範囲内で入札額が接近しているが、入札額は業者の規模・実績、工事の内容、経済情勢など様々な要因で各々積算され、結果的にその中から落札額が決定している。市の1千万円以上の工事落札率をみても、本件落札率が特別に高いとは言い難く、落札率をもって直ちに談合の存在を推定できるものではない。
 さて、談合は刑事事件に係わることから情報取扱いには慎重を期す必要があるが、今回市には入札前、入札後とも談合に関する情報は寄せられていない。また、請求人からは具体的に認められる証拠の提出もない。
 よって、請求人の談合疑いは根拠がないものと判断され、本件入札において、民法第90条の公序良俗に違反する行為があったとは認められない。
以上のことから、本件工事契約が違法又は不当な契約の締結とは認められず、適正に締結されたものと判断される。

(2)市の損害と公金の支出について
 本件の工事契約について、違法、不当な事由がない以上、契約による市への損害は成り立たない。また、契約に伴う予算の支出は契約書、上山市財務規則に従い適正に執行されており、違法又は不当な公金の支出は認められない。
 以上のことから、請求人が求めている市の損害賠償請求ないし不当利得返還請求及び支出差止には理由がないものと判断される。

(3)請求人の住所要件について
 請求人のうち企業Aは、登記上の本店は山形市であるが、実質的な会社の業務は本社・工場のある上山市で行っており、上山市の住民であると主張している。
 本請求に当たり、法第242条第1項の「住民」の定義は法第10条第1項に規定されており、法人についての住民要件は更に会社法第4条の規定により、本店の住所が上山市の区域内に所在することを要する。会社法第4条の本店の定義は、登記上の会社の本拠であり、会社法第27条の定款の絶対的記載事項として法律の権利を有するものとされる。
 以上のことから、企業Aは、本請求において請求者の法廷要件を欠いていると判断される。

以上

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