山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

仮処分命令申立書に対する山形広域環境事務組合からの答弁書公開 [後編]

f:id:mamorukai:20151215190505j:plain

この記事は「仮処分命令申立書に対する山形広域環境事務組合からの答弁書公開・前編」の続きです。

答弁書には重複した記述など誤りと思われる箇所が見られますが、原文そのままを掲載します。

オ. 5について

5 債務者は、雨水が地下に浸透せずに流出する割合(この割合を表す数値を「浸透係数」という)を、本件工事完了後を0.9、現在の状況を0.7とそれぞれ想定している(甲16・8p、20p)。
 また、債務者は、10年に一度の大雨を想定するとして、45.0mm/hの雨が降るということを想定している(甲16・11p)。
 そして、債務者は、上記のような雨が降った場合、本件工事完了後は、上流側の樋管から2.923㎥/s、下流側のU型水路から1.498㎥/s、合計4.421㎥/sの水が排出される、ということを想定している(甲16・20p)。
 なお、債務者は、本件工事前の状態では、上記のような雨が降った場合、上流側の樋管から2.923㎥/s、下流側の水路から1.358㎥/s、合計4.281㎥/sが流出することになるとして、本件工事後の流出水量の増加量は、僅か0.140㎥/sにしか過ぎないとしている。そして、債務者は、この程度の増加量では、忠川の計画高水流量170㎥/sの僅か0.080%の増加でしかなく、洪水調整池を必要としない、などとしている(甲16・20p)。

補則:甲16は提出の証拠方法「甲第16号証・雨水排水計画」を指します。

 第1文は否認する。
 第2文は否認する。
 第3文のうち、債務者が、甲第16号証の雨水排水計画の20頁において、本件工事完了後に忠川上流側の排水樋管から2.923㎥/s、下流側のU型水路から1.498㎥/s、合計4.421㎥/sの水が排水される、との計算を行っていることは認め、その余は否認する。
 第4文のうち、債務者が、甲第16号証の雨水排水計画の20頁において、本件工事前の状態について、忠川上流側の排水樋管から2.923㎥/s、下流側のU型水路から4.281㎥/sが流出する、本件工事後は0.140㎥/sの増加となる、との計算を行っていることは認め、その余は否認する。
 第5文は認める。

カ. 6について

 (ア) ➀について

6 しかし、上記の債務者による想定や計算には、以下のような問題点がある。
① 本件工事前と後とで、用いた10年確率の雨の降雨時間が異なっている(本件工事前は上流部で33.9分、下流部で25.1分[甲16・20p]、本件工事後は10分[甲16・11p])、集水面積が異なっていると思われる(本件工事前は上流部で23.20ha、下流部で9.30ha[甲16・20p]、本件工事後は不明)、といった、計算に用いた数値に問題がある。

補則:甲16は提出の証拠方法「甲第16号証・雨水排水計画」を指します。

否認する。

 (イ) ➁について

② 債務者の想定では、10年確率の大雨を45mm/hとしているが、過去10年を振り返ってみても、気象庁・上山中山観測地点において、2010年9月14日に47mm/h、2014年7月9日に54mm/hという、債務者の想定を超える大雨が降っている(甲17の3、5)。その他、2006年7月15日に43mm/h、2008年7月6日に44mm/h、2013年7月18日に45mm/h、7月27日に44mm/hという、債務者の想定の数値ないしそれに近い大雨が降っている(甲17の1~4)。近時、わが国では、それらの数値を上回る大雨が降ることも見られる。債務者の大雨の想定は過小であると言わざるを得ない。

補則:甲17は提出の証拠方法「甲第17号証の1~5・上山中山の月別日ごとの雨量」を指します。

 第1文のうち、気象庁・上山中山観測地点において、2010年9月14日に47mm/h、2014年7月9日に54mm/hという降雨が記録されていることは認め、その余は否認する。
 第2文のうち、2006年7月15日に43mm/h、2008年7月6日に44mm/h、2013年7月18日に45mm/h、7月27日に44mm/hという降雨が記録されていることは認め、その余は否認する。
 第3文は一般論としては認める。
 第4文は否認する。

 (ウ) ➂について

③ 債務者が想定している忠川の計画高水流量の対象降雨と、本件工事に架かる対象降雨が符合しているかどうか不明である。

不知

  (エ) ➃について

④ そもそも、忠川の「計画高水流量」とされているが、忠川には河川法本来の意味での河川整備計画はなく、従って「計画高水流量」は存在しない。
 寧ろ、「前川治水ダム事業計画書」によると、忠川の計画高水流量は0㎥/sとなっている(甲18)。即ち、忠川の上流には治水を目的とした前川ダムがあり、洪水の際はこの前川ダムに貯水して、忠川には放流しないというのが、前川ダム建設の基本思想となっているのである。一方、170㎥/sという数字は、単に、忠川の河道の流下能力を示しているに過ぎない。
 従って、忠川及び前川の治水、流域の水害からの安全という観点から考えた場合、本件造成地から排出される雨水に関して参照されるべき忠川の「計画高水流量」は、170㎥/sなどではなく、0㎥/sでなければならないはずである。

補則:甲18は提出の証拠方法「甲第18号証・前川治水ダム事業計画書」を指します。

 第1文は、否認する。
 第2文は、甲第18号証の25頁の計画高水流量配分図においては、忠川が0となっていることは認め、その余は不知。
 第3文は不知。
 第4文、第5文は否認する。

 (オ) ➄について

⑤ 2013年7月18日の大雨の時、本件土地に既に設置されていた樋管や排水路は役に立たず、それらの施設を通さずに、本件土地に湛水した水が直接忠川に滝のように流れ落ちていた(甲19の1、2)。一方、その時、本件土地は耕作放棄された水田であり、低湿地となっていて、相当量の雨水を湛水しており、殆ど流下することなく留まっていた。
 即ち、本件造成予定地は、総開発面積3万5886㎡であるところ、その殆どが本来は田であったのであり、忠川左岸の堤防よりも約50㎝(=0.5m)低くなっている。従って、この造成予定地は、本来、3万5886㎡×0.5=1万7943㎥の貯水容量があったものということができる。造成予定地の中には、高い所もあるかもしれないので、実際の貯水容量はこの数値よりも若干低くなるかもしれない。仮に貯水容量を、この数値の7割と考えると、1万2560.1㎥ということになる。一方、債務者は、農地の浸透係数を0.7と考えているので、若し貯水容量が1万2560.1㎥/sであったとしても、本件農地には、この容量の3割増しの貯水能力(=1万7943㎥)があるということになる。債務者は、造成前の本件造成予定地から排出される水量を4.421㎥/sと想定しているが、この水量を前提とすると、債務者が想定する10年確率の大雨が降った場合、4058秒分(=約1時間8分)の雨量を貯水することができる。債務者の上記想定は、このような造成前の本件土地の貯水能力を全く考慮していないものである。
 従って、債務者が、本件工事前に本件土地から流出する水量として想定した水量は、過大であるということができる。
 本件造成工事が行われると、このような貯水を行うことは不可能となり、造成地に降った雨は、その殆どが忠川に流れ込むことになる。

補則:甲19の1は提出の証拠方法「甲第19号証の1・写真撮影報告書」、2は「甲第19号証の2・写真撮影箇所図」を指します。

 第1文のうち、平成25年7月18日に雨水が本件土地から忠川に流入したことは甲第19号証の1の1枚目の写真の限度で認め、その余は否認する。
 第2文は否認する。
 第3文のうち、本件造成予定地が総開発面積3万5886㎡であること、そのほとんどが以前において田であったことは認め、その余は否認する。
 第4文乃至第11文は否認する。

 (カ) ➅について

⑥ しかし雨水は、平成25年7月の大雨の時には、さらに土地の貯留浸透能力を超えて忠川護岸より越水し、忠川に流出したのであり、それにより前川は、川口地区のみならず下流域広範囲で氾濫したのである。このような大雨が降った場合には、造成前における債務者の想定した排水能力を超える量の雨水が忠川に排水されることになっていたことが判る。このことは、本件造成工事が行われた場合、債務者が想定している水量を遥かに超える水量が忠川に流入することになるということである。

 第1文のうち、平成25年7月に雨水が忠川護岸から忠川に流入したことは甲第19号証の1の1枚目の写真の限度で認め、その余は否認する。
 第2文、第3文は否認する。

  (キ) ➆について

➆ 本件工事が完了した場合、若し債務者が想定する合計4.421㎥/hの水が忠川に流れ込むのだとした場合、それは、現状において本件土地から忠川に流れ込む水量を遥かに超える量であると言わねばならない。

  否認乃至不知。

キ. 7について

7 ところで、山形県は既に述べたように、最上川水系須川について、管理者となっており、平成15年9月24日、須川水系を含む最上川水系村山圏域について、河川法16条の2に基づく河川整備計画を策定している(その後平成25年と平成27年に一部改訂)。この河川整備計画では、須川の支流である前川及びさらにその支流である忠川については、河川整備計画が策定されておらず、計画高水流量は存在しない。そして、この河川整備計画では、須川の計画高水流量は、前川の合流点前後において、750㎥/sとなっている(甲20・29p)。
 ところが、山形県は、昭和48年12月に作成された「前川治水ダム事業計画書」によって、忠川の計画高水流量を170㎥/sとしている(甲21)。この流量がどの程度の対象降雨を想定したものなのかは不明である。また、この計画においては、本件土地から流入する水量は全く考慮されていない。
 それから、山形県は、前記「前川ダム事業計画書」において、前川について、「計画流量」というものを定めており、それによると、忠川との合流点前後(「五反田橋」が合流点のすぐ上流である)を通して、175㎥/sとされている(甲21、23)。この流量は、1/40の対象降雨(40年に1度の雨量を想定しているということである)に基づくものであるとのことである(甲22)。このことは、山形県は、須川に関しては前川からの洪水の流入を想定しておらず、前川に関しては忠川からの洪水の流入を想定していない、ということを意味している。

補則
甲20は提出の証拠方法「甲第20号証・一級河川最上川水系 村山圏域河川整備計画[変更] (知事管理区間)」
甲21は「甲第21号証・公開質問状について」
甲22は「甲第22号証・洪水ハザードマップ整備事業 倉津川外浸水想定区域 検討業務委託 報告書」」
甲23は「甲第23号証・前川危険水位流下能力一覧」

 第1文は、認める。
 第2文のうち、前川が須川の支川であること、忠川が前川の支川であることは認め、その余は否認する。
 第3文は、否認する。
 第4文については、甲第21号証に、忠川の計画高水流量170㎥/sについて「これは『前川治水ダム事業計画書』・・・に記載されています」との記載があることは認め、その余は不知。
 第5文、第6文は、否認乃至不知。
 第7文乃至第9文は、否認乃至不知。

ク. 8について

8 従って、本件工事が行われると、大雨が降った時、想定外の水量が忠川に流入することになり、さらにそれが前川、須川に流れ込むことになる。
 前川は、最大流下能力が計画流量を下回る箇所が随所にある(甲23)。そのような場所は、前川の流下能力に近い大雨が降った場合、本件工事がなされたために、溢水してしまうことになる。
 平成26年7月9日から10日に掛けて上山市を襲った豪雨は、前川の護岸を破壊し、川沿いの水田や畑に浸水し、上山市中心市街地の道路も濁流となった(甲24)。7月10日の真夜中に避難勧告が出されている。現在ですら豪雨になるとこのような危険な状況になるにも拘わらず、造成工事によりさらに多くの雨水や工場排水が忠川、前川に流入することは看過できない。

補則
甲23は「甲第23号証・前川危険水位流下能力一覧」
甲24は「甲第24号証・大雨の被害、再び(上山市ホームページ)」

 第1文は、否認する。
 第2文、第3文は不知。
 第4文は、平成26年7月9日から10日にかけての降雨により、上山市において、護岸の崩壊、水田や畑、市街地への浸水があったことは甲第24号証の写真の限度で認める。
 第5文は認める。
 第6文は否認する。

ケ. 9について

9 また、本件工事が行われた場合、忠川への排水口のうち、上流部に設置される方は、計画高水位よりも低い位置に樋管が設置されるようである(甲16・20p)。この場合、その樋管から排水されない水が樋管や本件土地の敷地内に滞水し、樋管や忠川左岸の護岸に対して非常な水圧を加えることになる。忠川左岸の護岸コンクリートは、強度が不明な上に既にいくつものクラックが生じて劣化しており、このような水圧が加えられたとき、崩壊する危険性が高い。

補則:甲16は提出の証拠方法「甲第16号証・雨水排水計画」

 第1文は認める。
 第2文、第3文は否認する。

(4) 第4について
 ア. 1乃至4について

(「第4 債権者らの権利侵害」における1から4の申立書の内容については個人情報が含まれるため掲載しません。)

否認乃至不知。

 イ. 5について

5 あるいは、護岸崩壊によって忠川の流れが阻塞され、忠川が溢水し、上山市道を越えて隣接企業敷地内に侵入する可能性がある。実際に、平成26年7月の豪雨の際には、前川ダムより忠川に放水されており(甲26)、前川ダム直下の市道及び崖が崩落し、土砂が忠川に流れ込んでいる(甲26)。平成25年にも、清掃工場予定地が浸水するような水害が発生している(甲19の1、2)。この場合にも、債権者らの財産権、人格権が侵害される。

補則
甲19は提出の証拠方法「甲第19号証の1・写真撮影報告書」
甲26は「甲第26号証の1・建設地位置図」、「甲第26号証の2・公図」

 第1文は否認乃至不知。
 第2文は認める。
 但し、崩落は忠川のコンクリートの護岸ではなく、市道及び崖であり、これにより忠川の護岸崩壊の危険性が認められるものではない。
 また、これにより忠川の河道に流入した土砂の量もごくわずかに過ぎない。
 第3文のうち、平成25年にエネルギー回収施設の建設予定地が浸水したことは認める。
 但し、これは東側の山の斜面から雨水が流下したものであるところ、エネルギー回収施設の建設においては、本件工事において排水路を設置することから、同施設完成後に同様の浸水が生じることは考え難いものである。
 第4文は否認乃至争う。

 ウ. 6について

6 上記3、4に記載したように、溢水又は鉄砲水となった忠川又は溢水した前川の水は、債権者らの農地をも浸水する可能性がある。この場合、それらの農地の農作物が被害を蒙ることになるばかりか、その時に当該農地に同債権者らがいて農作業をしていることもあり得るのであり、この場合は、同債権者らの生命・身体も侵害されることになる。

 否認乃至不知。

 エ. 7について

7 上記のような債権者らの権利侵害が発生することは杞憂ではなく、平成26年夏の豪雨の時には、忠川及び前川の流域で溢水し、周辺の土地が水浸しになり、流域の護岸は流失している(甲26)。このような大雨が降った時には、地盤も緩くなるから、護岸が崩壊する可能性が通常の場合に比べて高くなる。そのような大雨の際に護岸が崩壊すれば、大きな災害が発生することは必至である。

補則
甲第26号証の1・建設地位置図
甲第26号証の2・公図
甲第26号証の3・エネルギー回収施設建設事業用地取得状況
甲第26号証の4・エネルギー回収施設建設事業用地支払価格一覧

 第1文のうち、平成26年7月9日から10日にかけての降雨により、前川の流域で、護岸の崩壊、水田や畑、市街地への浸水があったことは甲第24号証の写真の限度で認め、その余は否認乃至不知。
 第2文、第3文は否認する。

補則:甲第24号証は 「甲第24号証・大雨の被害、再び(上山市ホームページ)」

(5)第5について

第5 まとめ
 以上のように、敷地造成工事が完成すると、債権者らの人格権、職業遂行権、会社経営権、営農権、農地の所有権、農業水利権が侵害される危険性が高い。

  争う。

2 II保全の必要性について

Ⅱ 保全の必要性
 債権者らは、現在、本件造成工事の差止を求める本案訴訟の準備中であるが、本件造成工事の建設工事の工期は、平成28年5月31日であり、工期の到来が間近に迫っている。
 従って、本案訴訟の提起、その結果を待っていては、造成工事が完了してしまい、上記のような債権者らの権利侵害の危険性がいつ発生してもおかしくない状態となる。
 そのような事態を避けるためには、本件仮処分手続により、速やかな決定を得る必要がある。

 第1文のうち、本件工事の工期が平成28年5月31日であることは認め、その余は不知。
 第2文、第3文は否認乃至争う。

3 III結論について

Ⅲ 結論
よって、債権者らは、請求の趣旨記載の判決を求める。

 争う。

第3 債務者の主張
 次回審尋期日までに、債務者の具体的主張及び反論を準備書面にて提出する。
 本件工事には、債権者らが主張するような前川の溢水、忠川の護岸崩壊等の具体的危険性は認められないものであり、債権者らの本件申立ては却下を免れないものである。

以上

 

© 山形県の環境と観光産業を守る会, All rights reserved. 当ブログへのリンクについてはこちら。