山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第30号 2015.11.3 (火) 発行 (後編・世田谷清掃工場ダイオキシン漏れの現状報告)

特別寄稿

世田谷清掃工場ダイオキシン漏れの現状報告

植田靖子(前世田谷区議会議員)

 昨年11月2日当会の講座で、世田谷区の川崎重工製の流動床式ガス化溶融炉の稼働実態について話した直後、新たに炉室から高濃度のダイオキシン漏れが確認され、改修工事を実施し、何とか年末年始に間に合い稼働していました。しかし2015年1月5日、労働法規で定められた作業環境のダイオキシン類測定が実施され、2月12日結果が出ると作業員が毎日作業している炉室内が再び高濃度のダイオキシン漏れによって危険レベル最高の「第3管理区域」であることが判明しました。これはエアラインマスク装着が義務づけられているレベルです。しかも結果がでるまでの約1か月間、現場作業員は無防備だったため工場で働く全職員57人のダイオキシン類の血中濃度検査が実施され、幸いにも全員異常がなかったことが確認されホッとしました。これ以降、測定結果が出るまで炉を止め、結果も約2週間で出るようになりました。
 その後、ダイオキシン漏れを止める改修工事と確認のダイオキシン類の測定が毎月のように繰り返されていますが、その度に新たなダイオキシン漏れがある状況です。9月に実施された改修工事の確認となる試験操業によるダイオキシン類の最新の測定が10月20日過ぎに行われ、結果は11月初旬に判明する予定とのことです。この炉室からのダイオキシン漏れは煙突ではなく、焼却炉を覆っている建屋屋上の換気口から大気に拡散します。清掃工場のすぐ目の前にはマンションや都立公園、国道の向かいには戸建住宅が立ち並び周辺環境への影響も心配されます。そのため作業環境のダイオキシン類調査の時に建屋屋上でも測定する事を東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)に強く求めることを議会でも求めています。
 さらに世田谷清掃工場は、2月から現在まで繰り返される改修工事のため稼働していません。その分の可燃ごみを23区の他の清掃工場に運ぶため運搬費用等が膨大になり、9月の区議会に2億円を越える補正予算が提案されました。区議会でも廃炉を含めた抜本的対策を求める意見が出され、世田谷区も清掃一組に対して廃炉も含めた抜本的対策を求め、さらに23区の区長会に対しても、このような炉の機種の瑕疵ともいえる原因で区だけがごみの運搬費を負担することについて問題提起すると区長が答弁しました。
 清掃一組でも、世田谷清掃工場の川重製流動床式ガス化溶融炉の抜本的対策を考える検討会が設置され、世田谷区もメンバーに入り9月26日第1回検討会が開催され2017年の予算に反映できるように来年夏までに結論を出すと聞いています。この世田谷清掃工場の現状については、建替え計画の機種選定段階から流動床式ガス化溶融炉は未熟な技術だとして不安や懸念を訴え、十分実績ある機種への再検討を求めてきた区民の声を無視した当時の専門家による検討委員会、行政、議会の責任は重いと言えます。
 未来は、ムダなごみを出さない省資源の循環形社会をつくれるかに懸かっています。新たな焼却炉を造るのではなく、温暖化を加速しCO2や有害物質を出すごみの焼却処理を最小限度にするために、ごみ減量で既存の焼却炉を減らす取り組みが何より今必要です。そして大事な税金は、環境といのち健康を守り社会保障を充実させるために当てるべきです。

以上

今後の予定 (於:山形地方裁判所)

12月4日(金) 11:30~山形県行政訴訟
  13:15~造成工事仮処分(組合)第1回審尋

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

 

 

写真:拡幅工事前の上山市道直線部
f:id:mamorukai:20151104215305j:plain

© 山形県の環境と観光産業を守る会, All rights reserved. 当ブログへのリンクについてはこちら。