山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第30号 2015.11.3 (火) 発行 (前編・山形地方裁判所からの決定通知について)

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山形地方裁判所より「却下」決定通知がありました

 山形県の環境と観光産業を守る会(以下守る会と略す)が、平成27年4月14日に山形地方裁判所へ申し立てた「橋梁建設等禁止の仮処分命令申立事件」 についての決定文書が、去る10月26日、守る会弁護士宛郵送されましたので、公開致します。債権者は、守る会代表を含む会員6名であり、債務者は、山形広域環境事務組合(以下組合と略す)代表者管理者佐藤孝弘山形市長です。
 争点は、組合が上山市川口に建設予定の公称「エネルギー回収施設」敷地に入るための新橋架設工事が、河川法上正しいか否かです。守る会は、新橋「新忠川橋」が架かる一級河川「忠川」のコンクリート護岸壁に多数の亀裂が入る等劣化しており、工事開始後の頻繁な車両往復により護岸壁崩壊の危険性があると訴えて来ました。しかし、危険性を具体的に示すためには、おそらく昭和57年頃、上流の前川ダムと共に竣工したと思われる忠川護岸の構造計算書が必要です。構造計算書を分析すれば、新たに護岸に加わる土圧等の圧力を計算することができます。少なくとも護岸壁完成時よりは自然劣化していること、架橋工事により余分な土盛りがされ、必要以上の土圧が掛かることは明白です。忠川を管理する山形県に対し、護岸竣工当時の図面及び構造計算書の情報公開を求めましたが、構造計算書は保管期限を過ぎているとのことで、すでに破棄されていました。
 それ故守る会は、具体的な余計な圧力を数字で示すことはできませんでした。また同様に組合側は、架橋工事及びその後の車両通行による「安全性の保証」について、根拠を示すべきだと思いますが、示すことなく、裁判所は守る会の申し立てに対し「却下」の結論を下しました。以下、山形地方裁判所の決定文です。(債権者、債務者を略します)


 

平成27年(ヨ)第5号 橋梁建設等禁止の仮処分命令申立事件

決定

債権者らの申立てをいずれも却下する。
申立費用は債権者らの負担とする。

理由

第1 事案の概要

  1.  本件は、債務者が、新たに清掃工場を建設するため、清掃工場建設予定地と公道の間を流れる忠川に橋梁を架け、その上に進入路を通す計画を立てたことに対し、清掃工場建設予定地付近で稼働する債権者らが、橋梁の建設又は使用により、忠川のコンクリート護岸が崩壊する具体的危険性があり、その場合,債権者らの生命や身体等に著しい損害が生じるとして、人格権、身体権、職業遂行権、会社経営権、営農権、農地の所有権、農業水利権(以下「人格権等」という。) に基づき、債務者に対し、別紙物件目録記載の橋梁(以下「本件橋梁」という。) を建設又は使用してはならない旨命ずることを求めた仮処分命令申し立の事案である。
  2. 債権者らの主張
     債権者らの主張は、主として、以下のようなものである。
     債権者らは、清掃工場建設予定地付近で日常的に稼働している。忠川のコンクリート護岸には、多数のクラックが生じている。そして、土圧や水圧、本件橋梁自体の重み、本件橋梁上を走行する車両の重みや振動などで、これらのクラックが拡大するなどし、コンクリート護岸が脆弱化して崩壊する具体的危険性があり、その場合、上流からの土砂や流木が堆積して忠川の流れが阻害され、あふれた忠川の水が付近の債権者らの稼働場所に流入したり、鉄砲水が発生するなどして、債権者らの生命や身体等が侵害される。
  3. 債務者の主張
     これに対し債務者は、主として、債権者らが主張する上記コンクリート護岸崩壊の機序は抽象的な可能性を指摘するにとどまる旨主張する。

第2 当裁判所の判断

  1. 争いのない事実及び疎明資料から容易に認定できる事実
    1. 本件橋梁の建設
       債務者は、山形市上山市東村山郡山辺町及び同郡中山町をもって組織された、地方自治法284条2項で定められた一部事務組合であり、ごみを処理するための中間処理施設の設置,管理,及び運営に関する事務を処理すること等を目的として設立されたものである(甲2)。
       債務者は,山形県上山市川口字五反田地区において,「エネルギー回収施設という名称の清掃工場を建設するため,同清掃工場建設予定地と公道の間に流れる忠川に橋梁を架け、その上に進入路を通す計画を立てた(甲3~8)。 平成27年3月20日、本件橋梁の建設工事は完成した(乙1)。本体橋梁は、忠川左岸に約1.1メートルの盛土をして、基礎杭を打設して、その上に設置されている。
    2. 本件橋梁が建設された場所の前後のコンクリート護岸の状況
       忠川は,本件橋梁が建設された場所の前後にわたり、三面コンクリート張りとなっており、左右両岸は,垂直のコンクリート護岸となっている(以下「本件コンクリート護岸」という。)。本件コンクリート護岸には,本件橋梁の設置箇所付近及びその上流から下流にわたって,複数のクラックが生じている(甲18,25)。
  2.  上記の通り、本件コンクリート護岸には複数のクラックが生じている。また、
    本件コンクリート護岸には、左岸盛土による圧力が加わることは否定できない。
    しかし、本件コンクリート護岸に対する圧力等の程度やその影響については、具体的数値は明らかではない。
     したがって,債権者らが主張する本件コンクリート護岸崩壊の機序は、抽象的
    な可能性を指摘するにとどまる。
  3.  そうすると、債権者らの主張する権利関係はさておき、債権者らに著しい損害
    又は急迫の危険性が生ずるとは認められないのであるから、債権者の主張は理
    由がない。

第3 結論

 以上の通りであり、本件申立てには理由がないから、主文の通り決定する。

 

平成27年10月22日
山形地方裁判所民事部
裁判官 竹田 奈未

(物件目録を略します)

以上


 守る会は、上記山形地方裁判所の決定を受け、改めて10月28日付けで同敷地造成工事の差し止めを求める仮処分申し立てを行いました。これは決定を受けた忠川に架かる橋梁だけの問題のみならず、約3.6ヘクタールという広大な敷地造成が、忠川や上山市内を貫く前川の洪水に結びつき、危険であるという内容です。これにより守る会は、上記橋梁工事の差し止め訴訟に関し、控訴は行わないことに致しました。

 

後編に続きます。
トップ写真:拡幅工事前の上山市道直線部

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