山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第29号 2015.10.30 (金) 発行 (前編)

山形広域環境事務組合に対し川口エネルギー回収施設造成工事差止仮処分命令申立を行いました

 山形広域環境事務組合は、平成27年8月中旬より上山市川口のエネルギー回収施設敷地造成工事を開始致しました(会報27号に詳細掲載済)。しかし私共は、その経緯に到底納得できるものではなく、10月28日、守る会弁護士を通して山形地方裁判所宛に「仮処分命令申立書」を提出致しました。債権者は、守る会会員6名。債務者は、山形広域環境事務組合の新管理者となられた佐藤孝弘山形市長です。

 申立書では、敷地造成工事が行われることの問題点を9点指摘し、仮処分により保全すべき権利、即ち人格権、職業遂行権、会社経営権、営農権、土地所有権、農業水利権に基づき、造成工事を行ってはならないとしています。申立書の問題点をここに公開致します。


仮処分命令申立書

(申立の趣旨、申立の理由Ⅰ被保全権利の第1及び第2を省略します)

第3 本件造成工事の問題点 

1.
 本件土地と公道との間には、忠川という川が流れている。忠川は、上記建設予定地のすぐ近くで前川と合流し(甲12、15、16・3p)、前川はさらに須川に合流し、須川は最上川と合流する。最上川一級河川であり、忠川、前川はその支川であり、やはり一級河川である。しかし、忠川や前川の管理は、国土交通省ではなく、山形県が行っている。

2.
 債務者は、本件工事完了後、本件土地に降った雨水及び本件土地の南側の丘陵に降り、本件土地に流下してくる雨水については、排水管を通して、1か所(忠川上流)から、雑排水(建設予定地内雨水及び一部南側丘陵雨水及び生活排水)についてはその北側の1か所(忠川下流)から、合計2か所において、忠川の左岸側に排水する予定としている(甲16・20p等)。即ち、忠川の上流側の地点は口径1000mmの樋管により、下流側の地点は1200mm×800mmのU型水路により、それぞれ忠川に排水するものとされている(甲16・21p等)。

3.
 本件土地の大部分は、本来が水田であった。しかし、本件清掃工場の建設計画が持ち上がった数年前から耕作は行われておらず、低湿地のような状態となっている。

4.
 債務者は、本件工事により、低湿地の状態の本件土地を、清掃工場を建設し、管理運営することができるように、宅地として造成し、総開発面積3万5886㎡のうち、約1万8600㎡を、建物その他の設備の建設用地や道路等として利用する予定であるとされており(甲16・8p)、それらの土地部分の開発総面積に対する割合は、約52%となる。これらの土地においては、雨水は地下に浸透することはなく、流出することになる。また、それ以外の土地の多くについても、現在の低湿地のような状態ではなく、宅地として造成されるから、雨水が地下に浸透する割合は、現在の状態よりも大幅に減少するものと思われる。

5.
 債務者は、雨水が地下に浸透せずに流出する割合(この割合を表す数値を「浸透係数」という)を、本件工事完了後を0.9、現在の状況を0.7とそれぞれ想定している(甲16・8p、20p)。
また、債務者は、10年に一度の大雨を想定するとして、45.0mm/hの雨が降るということを想定している(甲16・11p)。そして、債務者は、上記のような雨が降った場合、本件工事完了後は、上流側の樋管から2.923㎥/s、下流側のU型水路から1.498㎥/s、合計4.421㎥/sの水が排出される、ということを想定している(甲16・20p)。
 なお、債務者は、本件工事前の状態では、上記のような雨が降った場合、上流側の樋管から2.923㎥/s、下流側の水路から1.358㎥/s、合計4.281㎥/sが流出することになるとして、本件工事後の流出水量の増加量は、僅か0.140㎥/sにしか過ぎないとしている。そして、債務者は、この程度の増加量では、忠川の計画高水流量170㎥/sの僅か0.08%の増加でしかなく、洪水調整池を必要としない、などとしている(甲16・20p)。

※内容が長いので後編に続きます。

参考画像:山形県上山市洪水ハザードマップ
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