山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第23号 2015.4.17 (金) 発行

行政訴訟及び仮処分命令申し立ての経過について

 前号で、平成27年2月17日付の山形県に対する「行政訴訟」及び山形広域環境事務組合(以下、組合とする)に対する「仮処分命令申し立て」、さらに山形広域環境事務組合監査委員に対する「住民監査請求」を行った報告を致しました。それらの経過をまとめましたので、ご一読下さいますようお願い申し上げます。訴状内容につきましては、22号をご覧下さい。 

 これら3件の申し立てはすべて、一級河川「忠川」に架かる新橋建設に係わる内容となっております。上山市川口地区は先行している山形市立谷川地区と比べて、極めて立地が悪いことが特色です。建設予定地は前川ダム放水路に接しており、すぐ近くの前川(一級河川)は2年連続で洪水に見舞われて、護岸が崩壊しています。このような地域に、超高温を発する巨大施設が建設されることに対し、住民が不安になるのは当然のことだと思います。決定の経緯も地区住民の民意を十分に汲んだとは言えず、極めて拙速であったと言えます。 

 平成9年の河川法改正では、河川計画は治水、利水と共に環境に配慮し、住民と共に進めると明記されています。しかし、そうした河川整備に関する地域住民への相談は何もなく、一方的に工事が始まっていることは、市民、県民として到底納得できることではありません。

【忠川架橋に関する経過概略】*これ以前の経過は省略

平成26年9月10日
組合管理者が山形県知事に対し、河川法第24条及び26条第1項の許可(一級河川に対する架橋工事)を申請

平成26年9月12日
上記申請に対し、山形県村山総合支庁建設部が「許可指令伺」起案

平成26年9月26日
組合が新橋建設に関する一般競争入札実施を公告

平成26年10月7日
架橋工事許可指令伺に対する山形県の決済及び施行工事期間は許可日(10月15日)~平成27年3月20日まで

平成26年10月14日
山形市役所入札室にて一般競争入札(10社参加)
予定価格59,810,000円(税抜き)決定額57,700,000円(税抜き), 落札率 96.5%

平成26年10月15日
落札業者との契約 着手日 平成26年10月15日、完了日 平成27年3月20日

平成26年11月20日
山形県河川担当課と守る会との話し合い(4回目)及び情報公開請求(橋図面一式及び構造計算書/忠川・前川の浸水実績図)

平成26年11月21日
上山市危機管理室と守る会との話し合い(避難路の確保について)

平成27年1月5日
村山総合支庁建設課へ情報公開請求

平成27年2月17日
山形地方裁判所山形県宛の訴状、及び組合宛の仮処分命令申立書、組合監査委員宛の住民監査請求書提出

平成27年3月20日
第2回住民監査請求(架橋に関する2月17日)「却下」通知

平成27年3月23日
山形地方裁判所にて組合との第1回審尋

平成27年3月30日
村山総合支庁河川課へ情報公開請求

平成27年4月14日
山形県第1回弁論(山形地裁第3号法廷)
上山市忠川河川占用許可取消請求事件
組合管理者に対し「工事請負代金支出差し止め」訴状を提出

 

 以上により、次回組合との第2回審尋は平成27年6月3日、山形県との第2回口頭弁論は同年6月12日と決定致しました。私たちは過去3年に渡り、市民としての思いや、各分野に於ける専門家の論考を再三に渡り提出して参りましたが、行政に通じることはありませんでした。今後は市民、住民の立場で弁護士さんや専門家のご意見を伺いながら、法廷で議論を進め、司法の判断を仰ぎたいと思います。

 守る会はこれらの忠川河川占用許可に関し、山形地方裁判所に多くの証拠書類を提出して参りました。その中の一つに、河川工学的見地からの論考があります。それは「昭和58年に竣工して以降33年経過した忠川のコンクリート護岸に対し、建設予定地に渡るための架橋工事及び今後予想される橋の利用が、どのような影響を与えるか」という分析です。「影響はなく安全」とするのが、行政側の論理ですが、住民側は「影響はあり、忠川や前川の水害を引き起こす可能性がある」というものです。実際昨年、一昨年7月の水害では新橋から100メートル程度下流域で浸水し、護岸が崩れています。今後はこの辺りが焦点になるかと思われます。

 

河川工学専門家の論考 (抜粋)

【忠川護岸崩壊、さらなる新架橋、盛土による破壊の可能性】

要点:以下3点につき工学的観点、河川法の視点より評価、見解を述べる

  1. 山形県管理一級河川忠川下流部のコンクリート護岸につき、構造的に致命的な堤
    内地盤より貫通しているクラックが観られる。
  2. この現状に加えて新設架橋、擦り付けの左岸盛土による荷重増加による護岸構造の劣化に対する計画、検討、照査がなされていない。
  3. 環境に考慮した河川整備計画(H9.河川法改正)立案の必要性

 

はじめに

忠川の架橋工事が進むなか、2014年12月基礎杭打設が終わった時期に忠川両岸のコンクリート擁壁に、縦筋のクラック(ひび割れ)が数本観られ、そこより茶色い土砂、赤さびの染み出す様子が観られた。(写真省略コンクリート壁は忠川右岸護岸壁、壁上部より縦に、茶色、黒い水漏れ、土砂流出が観られる)

 

1.忠川コンクリート護岸の惨状と現状のクラックの工学的観方

・クラックより土砂の流出が観られるため、護岸を貫通している

 鉄筋コンクリートは、その外力、モーメント応力に対して引っ張り応力に対しては鉄筋が、剪断、圧縮応力に対してはコンクリートの面で対応する構造物であり、鉄筋とコンクリートのヤング係数(温度による収縮率)がほぼ同様であり、一体の構造物として成り立っている。

 圧縮応力がかかる場合には断面力として崩壊を招く。また鉄筋が外気や水分に露出された場合酸化、錆により断面の損失を招き設計時の応力に耐えられなくなり構造物の崩壊を招く。 

 現況の忠川の状況を観るに、縦方向(鉛直方向)にクラックが観られる。これは、土圧、水圧の過剰な負荷がかかっており、さらに水平方向の偏りの圧力がかかっていることが容易に想定できる。恐らく設計計算時(S57完成)に設計条件に見落としていたか、もしくは河床に近くの水抜き工からの地下水排出が観られないため地下水圧の設計水圧以上の負荷によるものと考えられる。

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降雨時の忠川護岸背後地盤水位状況(忠川沿いの市道より建設予定地を望む)
※水抜きが効いておらず、地盤高以上の水圧が護岸にかかっている

 河川施設維持管理の不備、構造物施工不良かが考えられる。 河床上50cm程度に堤内川の水圧低下を目的とした水抜き管を造っているが、それが機能せず詰まっている、維持管理されていない、すなわち堤内側の水圧は想定(設計常時水位)以上に高くなり負荷がかっている。(水深1mの水圧は1t/㎡)これが護岸構造物破壊の一因となっている。

 

2. 新設架橋及び盛土の与える影響

 現況忠川護岸を残置しながら、新しい橋梁を架けようとされている。新橋の設計は現在の忠川護岸を跨ぎ門型のパイルを基礎地盤まで打ち込む設計となっており、いかにも現況護岸にかける荷重、負荷増はないとみかけはなっている。

  • 基礎パイルに与える橋梁桁荷重、自動車荷重、活荷重については、基礎地盤への荷重による変動でこの護岸、土質を含む構造系の変形、荷重増となる
  • 忠側左岸に橋梁縦断の擦り付けによる盛土が生じる。現状でクラック崩壊されている護岸にさらに盛土による土圧、水圧の増加は、護岸の破壊に通じる。
  • クラックの貫通している現況護岸については、剪断応力に対する全くの耐力はない。架設橋梁の基礎パイルから通じて受ける応力、車両による活荷重、また地震などによる剪断応力は、忠川護岸の破壊は容易に想定できる。

 

3.河川整備計画;河川環境計画の必要性

 平成9年河川法改正から近く20年近く経過する。この河川法改正により、河川環境の内部目的化を考慮することとなり、河川整備基本方針、20~30年で出来る具体的な河川整備計画を立案し市民の意見を聞きながら進めることとなった。

 忠川、前川の河川整備計画、加えて環境整備計画はいまだに市民に示されていない。

 

終わりに

 忠川下流部左岸については用地を整理し、一案として、親水性をもつ公園として、防災の広域避難場所として活用されることを望む。この時、上流前川ダムの貯留水が災害時の重要な中水として利用できる。

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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