山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第19号 2015.1.15 (木) 発行

山形県の環境と観光産業を守る会活動趣旨について

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 私たちは、山形県のこれからの環境、景観、観光、健康、食品の安全性等について検討、提言する市民団体です。まず当面の大きな課題として山形広域清掃工場(エネルギー回収施設)建設に伴う様々な問題を提起していきます。これらを良い方向に進めて行けば、山形県が示す「観光立国山形」及び「食産業王国やまがた」を実現できると考えています。

 現在山形市上山市、山辺町、中山町の二市二町で進められている「エネルギー回収施設計画」は、15年前に着手した計画が、根本的な見直しをしないまま推進されており、特に半郷焼却場に代わる施設は、山形市志戸田→山形市半郷→上山市柏木→上山市大石陰と候補地を転々とし、それぞれの地区での反対運動等により挫折を繰り返しました。組合は、何故市民の反対運動が起こるのかを検証せず、さらに計画の根本解決を模索努力せず、老朽化という期限を迎えて旧態依然の計画を実行しようとしています。特に人口の8割を擁する山形市は、溶融炉建設が市民の生活に密着する事業であるにも拘わらず、市報等の広報誌に掲載する内容は、溶融炉による大気汚染や操業上の困難への具体性に乏しく、説明責任を果たしているとは言えません。それ故私たちは、人口減少や市民の環境意識向上によるごみ排出量減少、環境や健康への負荷、全国で頻発する事故等々を鑑み、平成25年4月1日「脱焼却」を目指す団体設立に至りました。そして、専門知識のあるスタッフを充実させ、ネットワークを広げながら日々活動を続けております。

 

山形広域環境事務組合に対し住民監査請求を行いました

 平成24年4月、二市二町のエネルギー回収施設候補地として上山市川口の地名が報道されて以降、私たちは地道な活動を続けて参りました。横戸上山市長、市川組合管理者、吉村県知事宛の嘆願書、御提言書、反対署名、公開質問状、担当職員の刑事告発(民意をねじ曲げた検討委員会資料を作成として告発し受理されましたが、住民全員の意見を聴く必要はないとのことで不起訴)、度重なる情報公開請求、各部局や組合管理者、山形県副知事環境省、山形河川国道事務所、東北地方整備局等々との話し合い、専門家を招いての研修会、見学会、環境調査等々を続け、会報を発行して参りました。しかし、組合の事業の進め方はあまりに強引かつ不条理に満ちているため、この度の住民監査請求に至りました。今回の請求人は、代表の結城玲子を含む会員6名となっております。
 住民監査請求は、平成26年12月25日に私共「山形県の環境と観光産業を守る会」の坂本博之弁護士(つくば市)より書面6種類を添えて、山形広域環境事務組合(以下組合とします)宛に郵送されました。以下その全文を公開致しますが、書面の関係で署名部分を割愛させて戴きます。 


山形広域環境事務組合職員措置請求書

平成26年12月25日
請求人ら代理人
弁護士 坂 本 博 之

山形広域環境事務組合 監査委員 殿
                   

第1 請求の対象者
山形広域環境事務組合 管理者 市川昭男
同          会計管理者

第2 監査対象事項
山形広域環境事務組合(以下「組合」という)管理者市川昭男(以下「管理者」という)は、山形市土地開発公社をして、平成25年12月12日、地権者A外15名との間で、山形県上山市大字川口字五反田又は堂ノ前所在の畑、田又は原野(以下まとめて「本件土地」という)合計2万9332㎡について、それぞれ土地売買契約を締結させてその利益を享受する旨の意思表示を行い、同年12月26日、上記16名に対して、同公社をして、売買代金合計金1億4945万6518円の残金として合計金1億2087万3618円を支払わせた。組合は、同金額について自ら負担し、支出する予定であるが、未だ支出はされていない。この売買価格は、本件土地の通常の取引価格を遥かに超えた非常識な金額であり、違法な契約に基づくものであり、無効であるというべきである。
従って、組合は、上記予定されている支出は、違法なものであるから、その支出の差止がなされるべきである。

第3 違法の理由
1 本件土地について
本件土地は、上山市大字川口の字五反田又は堂ノ前に所在する田、畑、又は原野である。本件土地周辺は、市街化区域でも市街化調整区域でもない、「その他の区域」とされる地区に所在する。そしてまた、本件土地は、果樹栽培等が盛んにおこなわれている農村地帯に所在するものであり、「農用地区域外」に所在するものである。

2 本件土地の売買契約の経緯
本件土地は、組合が「エネルギー回収施設建設事業に係る用地を確保する」という目的のために、山形市土地開発公社が、組合に代わって買取を行った。因みに、「エネルギー回収施設」などと謳っているが、これはわが国の行政が頻繁に行う悪質なレッテル詐欺であり、真実は、一般廃棄物焼却施設のことである。
契約は、まず、平成25年6月4日(一部の地権者との間では7月22日)に仮契約が締結された。売買代金全額としては、総額1億4945万6518円であり、このうち金2858万2900円は、仮契約の後、6月21日(一部地権者に対しては、8月9日)に支払われている。また、一部地権者の中には、仮契約の締結をしなかった者もいる。
そして、平成25年12月12日に、地権者16名全員との間で本契約が締結され、売買代金の残金合計金1億2087万3618円が、同年12月26日に支払われた。
組合は、上記本契約が締結された同じ日の12月12日に、本契約に関する契約の利益を享受する旨の意思表示を行った。
本件土地売買契約の売買代金は、山形市土地開発公社から、売主である地権者に支払われたが、組合が同公社に対して今後支出する予定のものである。ただ現在ではまだ支払われてはいない。

3 土地売買価格が異常に高額であること
本件土地の面積は、合計2万9332㎡であり、売買代金総額は金1億4945万6518円である。売買契約書によると、売買代金の単価は、1㎡あたり4800円、5200円、5300円の3通りの区別がなされているが、単純に平均すると1㎡あたり5095円となる。

しかし、本件土地周辺の農地は、「その他の区域」に属する「農用地区域外」の農地であることを前提とすれば、平成24年度において、10a(=1000㎡)あたり金78万8000円というのが時価相場である。これは、1㎡あたりの価格にすれば、金788円ということになる。そうすると、2万9332㎡の時価相場は、金2311万3616円ということになる。この金額は、仮契約の後に支払われた金額よりも僅少であり、本契約の後に支払われた金額は、その全額が時価相場を超えて支払われたものということになる。

また、上記の時価相場と比べると、本件売買における売買代金額は、6.47倍もの金額となっており、異常に高額な売買代金額であるというほかはない。

なお、組合は、本件売買契約の売買代金を決めるに当たり、不動産鑑定評価書2通を参考にしているようである。それらの鑑定書によると、類似の取引事例を参考にして、1㎡あたり4800円~5400円程度の価格が相当であろうとされている。しかし、それらの不動産鑑定評価書において参考とされた類似の取引事例というのがどのような取引なのか明らかではなく、しかもそれらの取引事例の金額は明白に上記の時価相場からかけ離れた金額が示されており、正当な評価がなされたものとは到底考え難い。

4 本件土地売買契約の残代金支払いの違法性
本件土地売買契約は、売買代金が時価相場よりも異常に高額であり、契約自体が違法であり、無効であるというべきである。即ち、地方公共団体は、「その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」(地方自治法2条14項)、「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努め…なければならない」(同法2条15項)という義務を負っている。時価相場を遥かに超える売買代金を規定した契約を行うことは、この義務に違反する行為である。地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならないのであり同法2条16項)、その義務に違反して行った地方公共団体の行為は無効となる(同法2条17項)。

また、民法上も、本件のように、時価相場の6.47倍もの高額な売買代金を定めた契約は、公序良俗に違反するものとして無効となるものというべきである(民法90条)。

従って、本件契約は無効であり、その契約に従って支払われた売買代金は違法な支出となる。

仮に契約自体は有効であったとしても、有効な売買代金額は仮契約後に支払われた金額で尽きており、本契約後に支払われた金額は、適正な売買代金を超える金額であって、その範囲において契約は無効となるものというべきである。

5 まとめ
従って、組合は、上記の通り、違法な支出となるため、山形市土地開発公社に対して、本件土地に関する売買代金1億2087万3618円について、支出すべきではなく、その支出の差止がなされるべきである。

上記請求人ら代理人
弁護士 坂本博之

上記、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添えて必要な措置を請求します。

以上

注: 請求書は平成26年12月25日に郵送されましたが、組合から現段階でまだ支出されていない金額が認められたため、平成27年1月15日に一部修正を行い、補正書を提出した内容となっています。


 

 現在組合は川口地区建設予定地において、敷地内に入るための忠川(前川ダム放水路である一級河川)に対する架橋工事を行っています。しかし、ごみ溶融施設は明らかにプラントを含む建築物(鉄筋コンクリート造+鉄骨造・建築面積4320㎡+煙突高59m予定)であり、建築確認申請が必要な建物です。施工者が確定し、建築設計図が完成した後建築確認申請を行い、正式に認可された後に着工するのは当たり前のことで、事前に橋梁工事に取りかかるのは拙速であると考えます。組合によりますと、本体及び関連施設工事は平成27年3月23日に入札公告を行う予定とのことで、落札者の決定は同年12月予定とのことです。総事業費試算額は223億5800万円という巨大公共事業故、慎重な対応が求められるのではないでしょうか。特に二市二町において、すでに2カ所の工場を建設する意義は薄れており、川口に予定されている二百数十億円の支出は無駄になる可能性を秘めています。山形市を含め「地方消滅」と言われている今こそ、このような公共事業を見直すべきではないでしょうか。


※会報「澄んだ空気と水」は、「ゴミ弁連」HPに掲載されています。どうぞご一読下さい。
ゴミ弁連とは「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす100人の弁護士の連絡会」です。

 

 <紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

 

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