山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第11号 2014.6.10 (火) 発行

梶山正三氏による「廃棄物処理による健康被害」講演報告

 平成26年6月1日(日)、梶山正三氏(ゴミ弁連会長・弁護士・理学博士)を講師にお招きし、「廃棄物処理による健康被害」と題してご講演いただきました。講演では、日本の有害物質規制の問題点について詳しくお聞きしました。ゴミ焼却場の煙突から排出されるガスにはダイオキシン等の化学物質が含まれており、以下にその主題を抜粋します。

「アメリカでは発がん性物質に指定されたダイオキシン

 日本では、いまだにダイオキシン類が、発がん性物質と認められていません。しかし、アメリカ厚生省はダイオキシン類の中で最も毒性が強いものを発がん物質に指定しているとのことでした。ちなみにダイオキシンは、ベトナム戦争時に「枯れ葉剤の不純物として混入していた物質の一つ」として知られています。

「ほんとうに危険な物質は規制されない」ゴミ焼却場との関係

 ほんとうに怖い物質は規制されていないそうです。危険な物質はそもそも規制から外すとのことでした。以下は規制されていない物質の例です。

  • 類似毒性物質(毒性の強さはダイオキシン類を凌駕)
  • 重金属類(鉛、カドミウム、クロム、ヒ素、水銀)
  • 化学物質(有毒性の高い化学物質は未規制)

「廃棄物焼却炉の排ガス規制は少ない」「排ガス基準値がない有害物質」

 廃棄物焼却炉の排ガス規制は、硫黄酸化物、ばいじん、塩化水素、窒素酸化物、ダイオキシン類といったごく限られたものにしか設けられていないとのことです。

 規制されていない水銀については自主基準が設けられるようになったものの、いまだヒ素、鉛、クロム、アスベスト、塩素化芳香族炭化水素等の危険な物質には排ガス基準値が存在しないとのことでした。

 

「排ガス基準値の欺瞞性」

排ガスの測定方法にも問題があり、実質的にはあまり意味がないとのことでした。以下はその主な理由です。

  • 排ガスの測定義務は年に1回のみで、しかも4時間という短時間限定である。
  • 溶融炉の立ち上げ、立ち下げ、埋火時ではなく、安定運転時だけ測定する。
  • 基準を超えた場合は、測り直して低い値を報告する。
  • 何を燃やしているときの測定でもよい。(基準を超えない質のゴミを燃やしている。)
  • 誰の立ち会いの義務もない。 

ダイオキシン類、ダイオキシン類類似毒性物質の毒性」

ダイオキシンは動物に対して以下の有害性を発揮する。

  • 遅延性致死毒性、胸腺委縮、脾臓委縮、肝臓障害、造血機能障害、生殖障害(不妊・オスのメス化)。

また、限定した動物に認められる症状で、ヒトにも認められる症状として以下のものがある。

  • クロルアクネ、色素沈着、水腫、眼脂漏

ダイオキシン類類似毒性物質は以下の有害性を発揮する。

[塩素化芳香族炭化水素(ポリ塩化フェノール、塩化ベンゼン、塩化ナフタレン)]

  • 強い毒性、肝臓障害、腎臓障害、生殖毒性

[脂肪族有機塩素化合物]

[有害な重金属]

  • 発がん性ヒ素、クロム、ニッケル)、発熱、食欲不振、肝臓障害、腎臓障害(鉛、ヒ素など)、神経毒(鉛) 

廃棄物処理が環境や健康に与える影響についての実例」

・桜美園焼却炉事件
湘南の新興住宅街に隣接する4つの焼却炉と1つの最終処分場による住民健康被害の問題。大気移動による煙の流れは予測が難しく、実際に試さないとわからないとのこと。

杉並病
杉並病とは、東京都杉並区にあった不燃ごみ中継施設の近隣住民に現れた健康被害のこと。プラスチックから化学物質が飛散したことで、半径約2kmの一部住民に化学物質過敏症が発生した。

化学物質過敏症
一旦過敏状態になると、その後極めて微量の同系統の化学物質に対して過敏症をきたす。

 新しいゴミ処理場は「エネルギー回収施設」とされていますが、名前は変わっても実態は何も変わりません。ゴミ処理場の建設は近隣に大きな影響を与える可能性があり、全国各地で問題が起きています。難しい問題だからこそ、一人一人が真剣に考え、議論を尽くさなければならないのではないでしょうか。自分自身や家族の生活環境は、私たち自身が率先して守っていく必要があると思います。

 

会員の意見コーナー

■ 梶山氏の「ゴミ焼却と環境汚染」についての貴重な講話を伺い、改めてダイオキシン放射能による健康被害の恐ろしさを学ぶ事ができた。今後、山形市等を相手にどのように反対運動を進めていったら良いのか?自然保護や環境保全を訴える政党や団体との連携を図ると共に、マスコミや一般市民へのアピールなども行っていく必要があると思われます。

 それでも最終的には裁判に訴える事にならざるを得ないのではないかとも思っています。それにしても何故このように危険且つ巨額な費用の掛かるゴミ処理工場を建設しようとしたのか、行政や議会の感覚は全く理解できません。(山形市 60代男性)

■ ぼくは友人が山形に住んでいるので、よく訪ねる。東北自動車道から山形自動車道へ入るととたんに景色が変わり「ああ、山形へ来たなぁ」と、ほっとするくらいぼくは山形が好きだ。独特な山の形、あくまでも奥深い緑の森林。おもわずぼくは自動車の窓を開け胸いっぱいに空気を吸い込む。

 先日は上ノ山温泉に宿泊し、周囲を散策した。すると、山形新幹線沿いに「エネルギー回収施設建設地」という見慣れない文言の看板が。それはゴミ焼却場だという。え? ぼくは思った。東京をはじめとして各地から新幹線を使って山形へやってくる人びとは、山形へ入った途端に青々と茂った山形の森に忽然と姿を現すゴミ焼却場を目撃することになるわけだ。山形にとって観光は大事な産業だろう。ということは山形の自然は最も大事にしなければならないものの一つではないのか。こうした景観に対する配慮のなさは、やがて山形自身の首を絞めることに思えてならない。(東京都 60代男性)

■ 山形県在住の有志が「山形県の環境と観光産業を守る会」を立ち上げ、新しいゴミ焼却場に対する課題を行政に投げかけている。ゴミ焼却場は上山市を通る山形新幹線から見える故郷の里山を覆い隠すように建設されるとのことだ。現場には行ったことは無いが、送られてくる画像からは、隠れたさまざまな命を包み込んだ草木の美しさが伝わるばかりで、そこに建設されるであろう箱モノの無粋さは想像に難くない。さらに最新技術の処理施設とはいえ、いまだ不透明な排気ガスへの評価や、過疎化などの課題を同時に考えれば、このままの焼却場増設推進は失礼ながら一部の受益者への為なのかと勘繰りたくなる。

 東北全体の復興を考えれば、様々な機会に資金を落とすことは必ずしも悪いこととは思わないが、そこに平穏に暮らす人々のくらしが軽んじられ、さらに山形の自然を今以上に守る姿勢抜きでは都会と同じスクラップアンドビルドの空しい循環に陥ってしまうのではなかろうか。離れた雑踏からの感想なので無責任かも知れないが、地元を愛し、頑張る人々を応援したいと思う。(埼玉県 50代男性)

 

カナダ・ノバスコシア州から学ぶ脱焼却政策

 現在二市二町(山形市上山市・山辺町・中山町)では、山形市立谷川と山形市蔵王半郷の2カ所において、ストーカ式炉で一般ゴミを焼却処理しています。しかし、どちらも老朽化したという理由で、建て替えが行われる予定です。山形市立谷川(現在と同一場所)と、上山市川口(新規候補)の2カ所に、流動床式ガス化溶融炉が導入され、1300°~1800°という超高温でゴミを融かして処理すると言われています。しかしこのゴミ処理方式は、周辺住民の健康や環境に与える影響が大きく、全国で多くの問題を引き起こしていることを、私たちは学んで参りました。山形や日本だけではなく、世界中のゴミ処理はどうあるべきか、先進事例に学びます。これからの子どもたちに大きく影響することですので、どうぞご参加下さい。

日時:平成26年7月13日(日)13:30~17:00
場所:山形まなび館 交流ルーム7
演題:カナダ・ノバスコシア州から学ぶ脱焼却政策
講師:斉藤真実氏(環境行政改革フォーラム・国際担当幹事)
参加費:無料 (資料希望者500円予定)
主催:山形県の環境と観光産業を守る会 代表 結城玲子

 私たちはこの二年間、ゴミ処理、リサイクル、ガス化溶融炉、環境、景観、健康等の専門家を全国からお招きし、学習を続けて参りました。これらの政策提言を活動指針にしております。これらの活動にご賛同戴ける方は、下記講座に寄付をお願い申し上げます。主に講師謝礼や交通費、分析費用として使われます。また会員も、全国から随時募集しております。

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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