山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第4号 2013.11.17 (日)発行

現在計画されている山形市立谷川と、上山市川口のゴミ焼却施設(エネルギー回収施設と呼ばれています)が、適正な計画であるか否か市民の目で検討するシンポジウムが、山形市で行われました。主催はゴミ弁連。環境行政改革フォーラム及び、私共山形県の環境と観光産業を守る会が共催しての開催となりました。タイトルは「ゴミ焼却が与える影響と環境」。この第4号通信はその報告書です。

平成25年10月27日(日)13:30よりゴミ弁連会長の梶山正三氏と、事務局長の坂本博之氏をお招きし、前半は梶山氏による山形市周辺のゴミ処理状況の分析結果をお聞きしました。後半は坂本氏による候補地選定に関わる経緯説明と、参加者との質疑応答です。「ゴミ弁連」とは、全国約100名の環境・廃棄物関連弁護士で結成される組織で、梶山氏は多くの廃棄物訴訟、公共事業関連訴訟を熟知した弁護士でいらっしゃり、理学博士です。

また坂本弁護士は、環境問題の専門家・弁護士・NPOで組織される「環境行政改革フォーラム」の司法担当幹事でもいらっしゃいます。


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写真:説明を行う梶山会長と坂本事務局長

山形広域環境事務組合が管轄する地域は、山形市上山市、山辺町、中山町の二市二町で、各自治体が排出するゴミの量は山形市がほぼ8割、上山市が1割、山辺町と中山町合わせて1割となっています。これらのゴミは現在、山形市蔵王半郷と山形市立谷川のゴミ清掃工場で焼却処理されています。私たちは9月17日山形市に対し、過去10年分のゴミ処理工場に関する情報公開を求め、9月27日にはこの二つの工場の「山形市ゴミ処理基本計画」並びに「精密機能検査報告書」を受理しました。この資料を、分析がご専門の梶山氏にお送りし、今後の人口やゴミ排出量の予測を行って戴きました。

梶山氏の講演は「山形市一般廃棄物処理計画の何が問題なのか」と題して100分、パワーポイント72枚にわたる説明が行われました。「ゴミとは何か」に始まり、私たちにとって身近な問題でありながら、何も分かっていなかったことに気づかされる講演でした。

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まず、現在山形市において排出される一般ゴミ総量が極めて多いということです。
それに伴い、平成9年より29年に向けて計画されているゴミ削減目標も現時点で達成されておらず、まだまだ削減の余地が多いということでした。( 上記表参照 )つまり家庭系ゴミの市民一人あたりの排出量(排出原単位)は減少傾向にあるとはいえ、平成18年度において、692g/人・日となっています。しかし、他の都道府県における原単位最頻値は200~300gということですので、山形市では2~3倍量のゴミを排出していることになります。
何故でしょうか? この問題をきちんと分析し、根幹からゴミ削減に取り組む必要がありそうです。

 

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また山形市における一般ゴミの組成に問題があり、水分が異常に多いとのことでした。
通常は20%だそうですが、山形市のゴミ水分量は60%を越えており、焼却に適さない状態で燃やしているということです。これもまた原因を追及する必要があります。
これらの分析により、山形市のゴミは今後大幅削減が可能だと言うことでした。下の表は現在稼働している半郷清掃工場と立谷川清掃工場における焼却量の推移です。少子化による人口減少と高齢化、環境意識の向上により、焼却量はなだらかに下降しています。これにより、立谷川新工場が竣工予定の平成29年には、現在のゴミ量の3分の2程度までの減少が見込まれます。さらに事業系ゴミが一般ゴミに混入している可能性があり、これらの問題を解決することにより、半減可能であるとのことでした。(下表参照)

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東京都では、不況やリサイクルが進むことによって焼却炉の休止が続出しており、稼働させるためにゴミが足りない状況に陥っているとの報道が行われています。山形広域環境事務組合による新工場建設問題は、14年前に遡り計画されたものです。その間、日本経済は失速し、国民のエコ意識も高まりました。ゴミ焼却施設に限らず、大規模事業は見直しを迫られています。導入予定のガス化溶融炉も、その巨額な投資額、ランニングコスト、運転時の危険性、発生する排ガスの成分等々に配慮し、無駄を無くす努力が必要と思われます。
「決まったことだから」という安易な言い訳は通用しないのではないでしょうか。
今後は、山形県が推進する「循環型社会推進」について具体的に考えて行きたいと思います。
この分析を快くお引き受け下さった梶山氏、募金に応じられた皆さまに感謝申し上げます。

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全国的に問題が多いガス化溶融炉。多くのメーカーが製造から撤退し、現在日本では数社が製造するのみとなった。安定稼働するための人材や助燃剤の確保も課題で、専門性の高さも求められる施設である。部品交換時の高コストも問題にしなければならない。

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 <紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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