山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第3号 2013.9.27(金)発行

平成25年9月18日(水)守る会代表の結城玲子と会員1名が、首都圏のガス化溶融炉施設を見学しました。通常、一般市民の見学は、ガラスの外から見るだけのコースですが、今回は設備間近で説明を受け、質疑を行いながら現場に密着した見学となりました。
今回山形広域環境事務組合が建設するガス化溶融炉は、「流動床式ガス化溶融炉」と呼ばれており、山形市立谷川と上山市川口の2カ所に設置される予定です。一日あたりのゴミ焼却能力は、それぞれ150トンと発表されているので、合計300トンのゴミが処理可能になります。
見学した施設は「流動床式ガス化溶融炉」で、山形市上山市で導入予定の溶融炉と同じ様式です。また1日あたりの焼却能力は207トンで、平成16年から稼働し、9年目になるとのことでした。69トン溶融炉が3基で、炉内は1300°~1400°の高温で燃焼しているため、周囲は大変な熱気でした。建屋は地下2階、地上5階に相当し、メッシュ状の狭い階段と床でつながっており、安全に気を配る必要があります。

運ばれたゴミは、流れ作業により破砕→焼却→排ガス処理→廃熱ボイラー→バグフィルター→排ガス洗浄塔→触媒反応塔を通り、煙突から排ガスとして大気中に排出されます。工場の中は、ゴミ焼却場というよりは、さながら配管だらけの化学プラント工場といった感じでした。超高温を発する溶融炉や化学薬品のタンクが林立し、稼働させるためには相当の神経を使わなければなりません。勤務する人の安全管理や健康管理には、とても気を遣うとのことでした。ヘルメットを被り、防塵マスクを付けて見学を終了すると、大変息苦しく、マスクの表面はだいぶ汚れていました。
この規模の設備に対し、敷地面積は4.4haで、煙突の高さは120mとのことです。

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写真:ガス化溶融炉

これに対し上山市川口の150トン処理工場は2.4ha。煙突の高さは59メートルと広報されているので、かなり狭い敷地に建ち、拡散する排ガスは低空をさまようことになります。さらに敷地は両側を里山で挟まれているため、上空に拡散せず、里山の谷部(羽州街道沿い)を上山温泉方面へ流れて行くことが予想されます。
流動床式ガス化溶融炉は、ガス化溶融炉の中でも初期投資額やランニングコストが高額であると言われています。また、稼働中の事故も多いため、管理上相当の配慮が必要であり、日本全国で不採用の方向にある焼却炉です。流動床式に限らず、一般的にガス化溶融炉はシステムが複雑なため、運転が非常に難しい施設です。専門の高度な知識と技術をもったエンジニアが必要であり、さらにその業務を管理する二重三重の監視機関を設置することが望ましいとのことでした。
また、バグフィルターや排ガス洗浄塔を通っても、排出されるガスの有害物質を完全に除去できるわけではありません。大気中に排出される排ガスには、ダイオキシンアンチモンヒ素カドミウム、クロム、鉛、マンガン、水銀等々の重金属が含まれることは、全国の松葉調査によって確認されています。特にプラスチック類を燃焼すると発生するアンチモンは多くの深刻な問題を抱えています。ガス化溶融炉を導入することにより、市民のゴミ分別意識が希薄になることで、有害物質の発生率が上昇するものと考えられます。

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 写真:化学薬品を用いた排ガス洗浄塔

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写真:集塵装置としてのバグフィルター。1炉につき1基2000万円で、交換が必要

エネルギー回収施設と言われていますが、実際焼却するためには助燃剤として灯油が使われており自治体の財政を圧迫しているのが現状です。(ガス化溶融炉専門家の論評)

 


環境省へ申し入れ書を提出致しました

平成25年9月20日(金)守る会代表と、守る会弁護士1名が霞ヶ関の環境省の担当部署を訪問し、山形広域環境事務組合の進めるエネルギー回収施設建設事業交付金として適切であるか、相談を行いました。環境省によりますと、この事業は「循環型社会形成推進交付金」として申請されているとのことです。この交付金は、市町村が廃棄物の3R(リデュース・リユース・リサイクル)を総合的に推進するため、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設整備を計画し、計画に位置づけられた施設整備に対し、交付金を交付するものです。
私たちは、超高温で何でも焼却、溶融してしまうガス化溶融炉を大規模に整備することが、その目的にかなうものか、ご検討をお願いし、環境大臣宛の「申し入れ書」を提出して参りました。

 


上山市川口の建設予定地で、生活環境影響調査が行われています。

期間   平成25年6月28日~平成27年3月27日まで
受託者  株式会社日建技術コンサルタント
委託者  山形広域環境事務組合(山形市上山市・山辺町・中山町)
調査項目 上層気象・一般環境大気質・騒音・振動・交通量・動物・植物(10月中の秋期調査項目)
詳細について  http://www.yamagata-koiki.or.jp/

 

・生活環境影響調査とは
日本に於いて廃棄物分野では、環境アセスメントではなく、生活環境影響調査を行います。
事業者が民間の場合は、厳しい事前指導等が行われますが、事業者が一部事務組合や、自治体の場合は、許可のプロセスが原則なくなり、行政内部の意思決定により決定されます。しかし、ガス化溶融炉が環境に与える影響の大きさを考えれば、公告、縦覧等を行い、住民の意見を尊重すべきと考えます。

 

3度目の情報公開を求めました

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平成25年9月17日、私たちは山形市役所に対し3度目の情報公開を求めました。
現在稼働している山形市半郷焼却場と、山形市立谷川焼却場に関するゴミ処理計画と焼却炉の機能に関する過去10年分の資料です。この書類は5年間保管後、破棄されるというので、約5年分に匹敵する書類が、9月27日手渡されました。これから人口減少の進む山形市周辺で、どのような処理方式が適切か専門家に分析をお願いします。

 


 かみのやま市市長と語る車座ミーティングが行われます。

日時  平成25年10月9日(水)19:00~20:30
場所  高松集会センター
問い合わせ先  上山市庶務課 行政・防災グループ
        023-672-1111  内線216
市のメッセージ:多くの市民の皆さまのご意見を伺い、市政に反映させるために、上記日程で「市長と語る車座ミーティング」を開催します。日ごろ感じていることや、故郷「かみのやま」の将来について、市長と膝を交えながら、話し合いをしていただきます。
10月27日(日)13:00から山形市において、ゴミ焼却と環境についてのシンポジウム開催。

 


 <紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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