2017年5月22日提出の被告・第1準備書面の公開(1) | 山形県上山市川口清掃工場問題
今回は、今年の5月23日におこなわれた「平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件」の第二回・口頭弁論で、被告の山形広域環境事務組合より提出された第1準備書面を公開いたします。この事件は、特に書面の量が多いため数回に分けて公開します。(全文一括でPDFでも公開します。)
この書面に対して、平成29年9月5日(火)におこなわれた第三回・口頭弁論では原告が「第1準備書面」で反論しました。
(リンク)平成29年9月5日・原告提出第1準備書面 ※「禁無断転載」
(リンク)平成29年9月5日・原告提出の証拠説明甲 9~18 ※「禁無断転載」
守る会の弁護士によれば、具体的根拠等が一切述べられておらず、数十年前にも廃止された法律を持ち出したりと法令や環境問題の知識が陳腐で、饒舌なわりに中身のない”欠陥だらけ”の書面だとのことです。(詳しい説明は、長文になりますが原告提出の第1準備書面をご覧下さい。)
この裁判を担当されている「たたかう市民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会(ゴミ弁連)」の梶山弁護士・坂本弁護士は、ごみ問題を中心とした環境問題に長年取り組んでおられるエキスパートの先生方です。
平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件
平成28年12月06日~第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長)
原告:地域住民
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人:梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士
※ Web公開用に一部編集を行っています。
平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件
原告 ****
被告 山形広域環境事務組合
第1準備書面
平成29年5月22日
山形地方裁判所 民事部 合議係 御中
被告訴訟代理人
弁護士 内藤 和暁
同 古澤 茂堂
同 小野寺 弘行
[目次]
第1 本件エネルギー回収施設の概要···6頁
1 本件エネルギー回収施設の建設に至った経緯(施設の必要性)···6頁
2 本件エネルギー回収施設の位置と周辺の状況···8頁
3 本件エネルギー回収施設の施設概要建・建築規模,工事工程···l0頁
(1) 施設概要···10頁
(2) 建築規模···10頁
ア.エネルギー回収施設処理棟・管理棟···10頁
イ,付属棟···10頁
ウ,付帯施設···10頁
(3) 工事工程···11頁
4 本件エネルギー回収施設のごみ処理方式(流動床式ガス化溶融炉とは)···11頁
5 本件エネルギー回収施設におけるごみ処理の工程···13頁
(1) ごみの受入からガス化炉への投入まで···14頁
(2) ガス化炉及び溶融炉におけるガス化,燃焼···15頁
ア.ガス化炉におけるガス化···15頁
イ,溶融炉における燃焼···16頁
(3) 廃熱ボイラ,エコノマイザ及び減温塔における燃焼ガスの冷却···18頁
(4) 排ガス処理設備における燃焼ガスの処理···19頁
ア.ろ過集じん器による塩化水素,硫黄酸化物,ダイオキシン類及びばいじん の除去···19頁
イ,触媒反応塔による窒素酸化物の還元除去···19頁
6 本件エネルギー回収施設の運転・維持管理の体制···20頁
第2 排ガスによる人格権侵害との原告ら主張の不相当性···22頁
1 排ガス中の有害物質による差止請求の要件···22頁
2 本件エネルギー回収施設の排ガスに対する法規制の状況···24頁
(1) ダイオキシン類···24頁
(2) ばい煙(硫黄酸化物,ばいじん,塩化水素,窒素酸化物)···25頁
ア.硫黄酸化物···25頁
イ.ばいじん···26頁
エ.窒素酸化物···27頁
(3) 一酸化炭素···28頁
3 本件エネルギー回収施設の法令及びガイドラインの基準への適合性···29頁
(1) ダイオキシン類の排出抑制対策···29頁
ア.ダイオキシン類の排出対策の考え方···29頁
イ.施設運営における対策···29頁
ウ.ごみの受入れ供給設備における対策···30頁
エ.燃焼設備における対策···31頁
オ.排ガス冷却設備における対策···34頁
カ.排ガス処理設備における対策···34頁
(2) ばい煙(硫黄酸化物,ばいじん,塩化水素,窒素酸化物)の排出抑制対策···36頁
(3) 排ガス中の有害物質等の停止基準···38頁
(4) 結諭(本件エネルギー回収施設の法令及びガイドラインの基準への適合性)···40頁
4 排ガスに関するその他の原告ら主張の不相当性···41頁
(1) 重金属について···41頁
(2) 塩素化芳香族炭化水素,多環芳香族水素,全有機ハロゲン化合物等について···43頁
(3) フライアッシュ,ボトムアッシュについて···44頁
(4) ダウンウォッシュ,ダウンドラフトについて···45頁
(5) 結論(排ガスに関するその他の原告ら主張の不相当性)···46頁
5 排ガスに関する生活環境影響調査···46頁
6 結論(排ガスによる人格権侵害との原告ら主張の不相当性)···47頁
第3 騒音・振動による人格権侵害との原告ら主張の不相当性···49頁
1 騒音・振動による差止請求の要件···49頁
2 建設工事に伴う騒音について···50頁
(1) 法令の定める基準···50頁
(2) 建設工事における騒音対策···51頁
(3) 建設工事における騒音レベルの予測···52頁
ア.建設機械の稼働による騒音···53頁
イ.工事用車両の走行による騒音···53頁
3 建設工事に伴う振動について···54頁
(1) 法令の定める基準···54頁
(2) 建設工事における振動対策···55頁
(3) 建設工事における振動レベルの予測···55頁
ア.建設機械の稼働による振動···55頁
イ.工事用車両の走行による振動···56頁
4 施設稼働に伴う騒音について···57頁
(1) 法令の定める基準···57頁
(2) 施設稼働における騒音対策···58頁
(3) 施設稼働における騒音レベルの予測···58頁
ア.施設稼働による騒音···59頁
イ.廃棄物運搬車両の走行による騒音···59頁
5 施設稼慟に伴う振動について···60頁
(1) 法令の定める基準···60頁
(2) 本件エネルギー回収施設における振動対策···61頁
(3) 施設稼働における振動レベルの予測···61頁
ア.本件エネルギー回収施設の稼働による振動···61頁
ィ.廃棄物運搬車両の走行による振動···62頁
6 結論(騒音・振動による人格権侵害との原告ら主張の不相当性)···63頁
第4 景観利益の侵害との原告ら主張の不相当性···64頁
第5 その他の原告ら主張の不相当性···69頁
1 道路の交通障害との原告ら主張の不相当性···69頁
2 忠川護岸の崩壊,市道の水没との原告ら主張の不相当性···70頁
第6 結論···70頁
[本文]
第1 本件エネルギー回収施設の概要
原告らは,訴状において,本件エネルギー回収施設からの排ガス,騒音・振動等 によって原告らの人格権が侵害される旨を主張し,本件エネルギー同収施設の建設 及び操業差止めを請求している。
原告らが主張する排ガス,騒音・振動等の個々の争点に対する反論を行う大前提として,まず,本件エネルギー回収施設の概要すなわち,建設に至った経緯(施 設の必要性),位置と周囲の状況,施設概要・建築規模,主事工程,ごみ処理方式(流 動床式ガス化溶融炉)の仕組み,ごみ処理の具体的な工程等について,概説する。
1 本件エネルギー回収施設の建設に至った経緯(施設の必要性)
被告は,山形市,上山市,山辺町及び中山町における,ごみを処理するための 中間処理施設の設置,管理及び運営に関する事務等を共同処理するために設立さ れた一部事務組合(地方自治法第284条2項)であり,被告構成団体の2市2 町のもやせるごみを山形市大宇蔵王半郷字八小路1738番乙所在の半郷清掃工 場(処理規模:180t/日,昭和53年稼働開始)及び山形市大字漆山字中川 原4019番7号所在の立谷川清掃工場(処理規模:180t/日,昭和57年 稼働開始)で処理してきた。
被告は,一般廃棄物処理施設の一般的な耐用年数が20年乃至25年程度とさ れていることから,将来的な半郷清掃工場及び立谷川清掃工場の老朽化による廃 止に備えて,平成10年以降、新清掃工場の候補地選定に着手した。 被告は,平成23年11月25日に,山形市大字漆山字中川原4019番7号 所在の立谷川清掃工場の隣接地に新清掃工場であるエネルギー回収施設(処理規 模:150t/日)を建設することを決定し,平成24年12月6日に,上山市 川口地区に本件エネルギー回収施設(処理規模:150t/日)を建設すること を決定した(乙第1号証の2被告ウェブサイト)。
被告は,本件エネルギー回収施設の建設工事について,株式会社神鋼環境ソリューション(以下,「神鋼環境ソリューション」という。)及び山形建設株式会社 により構成される工事施工者である神鋼・山形建設特定建設工事共同企業体との間で,平成28年1月27日,エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業建設工事請負仮契約を締結した(乙第14号証エネルギー回収施設《川口》建設 及び運営事業建設工事請負契約書)。この仮契約は,平成28年2月17日に山形 広域環境事務組合議会において契約を締結することについて議決されたことから, 特約条項により仮契約を本契約とみなすこととなった。当該契約上,本件エネル ギー回収施設の建設における詳細については,要求水準書の記載に従うこととし ており(乙第14号証エネルギー回収施設《川口》建設及び運営事業建設工事 請負契約書第15条),本件エネルギー回収施設の公害防止基準は,エネルギー 回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書設計・建設業務編第II編第1章第 3節1(乙第2号証)16頁乃至19頁によることとしている。
被告構成団体の2市2町のごみ処理基本計画においては,本件エネルギー回収 施設の計画目標年度とされる平成31年度には年間8万132tのもやせるごみ の排出が見込まれ,これを処埋するためには,一般廃棄物処理施設の稼働率を踏 まえると,300t/日の処理能力が必要な状況である(乙第15号証エネル ギー回収施設《川口》建設事業生活環境影響調査書1-6)。そうした中,被告 の半郷清掃工場及び立谷川清掃工場は一般廃棄物処理施設の一般的な耐用年数と される20年乃至25年を大幅に超えて稼働している(平成29年4月現在で3 8年,34年)ために老朽化による廃止が必須であること,平成29年10月稼 働予定の立谷川エネルギー回収施設の処理規模は150t/日であり,上記の300t/日の処埋能力を確保するためにはさらに150t/日の処理規模を確保 する必要があることから,本件エネルギー同収施設は,被告の構成団体である2市2町から排出されるもやせるごみを適正に処理するために必要不可欠の施設と なっているものである(乙第2号証エネルギー回収施設《川口》建設及び運営 事業要求水準書設計・建設業務編第I編第1章1-1)。
2 本件エネルギー回収施設の位置と、周辺の状況
本件エネルギー回収施設の建設地は,下図のとおり,上山市川口地内,前川ダムの北部に位置し(山形市の中心部から約16km,上山市の中心部から約4km),国道13号線,JR奥羽本線(山形新幹線)の南に隣接している(乙第15 号証エネルギー回収施設《川口》建設事業生活環境影響調査書2-1,甲第 2号証一般廃棄物処理設置届書別添1−2、1−3、別添2−3)。
(乙15号証エネルギー回収施設《川口》建設事業生活環境影響調査4.2−2より)
本件エネルギー回収施設の建設地は,都市計画区域外となっており,下図のように,直近民家から建設地敷地境界までの距離は約150mとなっている(乙第 15号証エネルギー回収施設《川口》建設事業生活環境影響調査書4.2- 1,4.2-9)
(乙15号証エネルギー回収施設《川口》建設事業生活環境影響調査4.2−9より)
3 本件エネルギー回収施設の施設概要·建築規模,工事工程
本件エネルギー回収施設の施設概要・建築規模は以下のとおりである。詳細や 完成イメージ図等は,別紙1「エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業工 事概要」記載のとおりである(乙第16号証エネルギー回収施設(川口)建設 及び運営事業工事概要,甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2- 3,2-4)。
(1) 施設概要
施設規模:150t/日(75t/日×2炉1日あたり24時間)
処理方式:流動床式ガス化溶融方式
燃焼溶融設備:神鋼環境ソリューション製
円筒形流動床式ガス化炉+旋回流式溶融炉
ボイラ蒸気条件:4MPa×400℃
余熱利用:蒸気タービンによる発電(3,220kW)
ロードヒーティング(構内道路・駐車場及び周辺道路)
(2) 建築規模
ァ.エネルギー回収施設処理棟・管理棟
主要構造:鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造,鉄骨造
階数:地下2階,地上6階建
建築面積:4,885.67㎡
延床面積:8.409.75㎡
軒の高さ:28.2m(煙突59m)
イ.付属棟
計量棟,スラグストックヤード棟
ゥ.付帯施設
こどもふれあい広場(大型遊具、幼児用遊具、トイレ,四阿),足湯
電気自動車急速充電設備
(3)工事工程
平成28年2月契約・着工
平成28年9月土木建築工事着工
平成29年7月プラント工事着工
平成30年6月受電
平成30年6月土木建築工事の建築工事完了
(外構・付帯施設工事除く)
プラント工事の機器据付工事,配管工事,
電気計装工事完了
平成30年6月乃至8月機器単体調整
平成30年8月ごみ受入
平成30年8月乃至11月実負荷試運転
平成30年11月竣工
平成30年12月供用開始
4 本件エネルギー回収施設のごみ処理方式(流動床式ガス化溶融炉とは)
全国の一般廃棄物処理施設(廃棄物焼却施設)では,各施設において,様々な ごみ処理方式が採用されているところであるが,本件エネルギー回収施設においてはごみ処理方式として,流動床式ガス化溶融炉の方式を採用しているもので ある。
ガス化溶融とは,ごみを熱分解(低酸素雰囲気で加熱することでごみ中の可燃 物を炭化水素,CO,H2などの可燃性ガス,未燃分に化学的に分解すること) して可燃性ガスと未燃分を生成し,高混で燃焼してごみ中の灰分を溶融するごみ 処理システムをいう。流動床式とは,ごみの熱分解を行うガス化炉が流動砂(空気が送り込まれて流動状態となっている砂層)状態となっている方式をいう。こ のような流動床式ガス化溶融炉は,高温燃焼によりダイオキシン類等の発生を抑制できる,低空気比のため排ガス量が少ない,溶融スラグ及び金属類の有効利用 により最終処分場負荷を軽減できる,ごみの保有するエネルギーを使って焼却, 溶融までを行うことから,エネルギー回収効率が高いなどといった特徴を有する方式である(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューションホームページ)。
現在の主なごみ処理方法には,ごみを最終処分場で直接埋立処分を行う方法と, 熱処理(焼却処理)を行う方法ガス化溶融を行う方法とがある。ごみの最終処分量は,直接埋立処分を行う方法と比して,熱処理(焼却処理)を行う方法によ ると10%程度まで,熱処理(焼却処理)に加えて灰溶融を行う場合,あるいは ガス化溶融を行う方法によると2-3%まで減量化される。焼却した後に焼却灰 の溶融を行う場合は,焼却炉に灰溶融炉を付帯することとなるが,灰を溶かすためには約1200℃以上の高温が必要なため,灰溶融炉では電気,燃料等のエネ ルギーが必要となる。他方,ガス化溶融炉は,ごみの保有するエネルギーを利用 するため,少ない投入エネルギーで灰溶融を行うことができる。現在日本では, もやせるごみを処理するごみ処理方式として主流となっているのは,ストーカ炉 (+灰溶融炉),流動床式ガス化溶融炉,シャフト炉式ガス化溶融炉の3方式となっている(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューションホームページ)。
日本においてガス化溶融炉が開発され,普及してきた経緯としては,1990 年代初めにごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類が問題となり,また,焼 却灰からの重金属類の溶出対策,最終処分場の逼迫の問題があり,国の施策とし て,焼却残渣中のダイオキシン類を低滅し,重金属類の溶出を抑制,滅容化,有 効利用が達成できる技術として,焼却灰の溶融が求められるようになった。そう した中,1990年代後半,高温処理でダイオキシン類を分解できごみの保有 するエネルギーを利用して溶融が行えるガス化溶融が注目され,メーカー各社が 実証施設を建設・開発し,2000年代に入って相当数の施設が稼働を開始し, 現在では,ストーカ式焼却炉と並んで主流のごみ処理方式として認知されている ものである(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューションホームページ)。
5 本件エネルギー回収施設におけるごみ処理の工程
本件エネルギー回収施設に搬入されたもやせるごみに対する具体的なごみ処理 の工程は,以下のとおりである(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューショ ンホームページ,乙第16号証エネルギー回収施設(JII口)建設及び運営事業 工事概要)。
(1) ごみの受入からガス化炉への投入まで
本件エネルギー回収施設に搬入されたもやせるごみは,まず,エネルギー回 収施設処理棟・管理棟内にあるごみピット(もやせるごみの保管場所)に投入 され,保管される。ごみピットにおいては,ごみ質を均ーにすることによって ガス化炉におけるガス化を安定して行えるようにするため,破砕されて細分化 される。
具体的には,まず,ごみ収集車によって搬入されたもやせるごみは,プラッ トホームのごみ投入扉から受入ごみピット(搬入されたごみをまず最初に保管 する場所)に投入され,受入ごみピットにおいて,ごみクレーンにより,ごみ 質を均ーにするために撹拌混合される。その後撹拌混合されたもやせるごみ は,ごみクレーンによりごみ破砕機の受入ごみ投入ホッパ(受入ごみの投入口) に投入され,ごみ破砕機で破砕される。
ごみ破砕機で破砕されたごみは,破砕ごみピット(破砕されたごみを保管す る場所)に貯留される。
破砕ごみピットに貯留された破砕ごみは,ごみクレーンにより破砕ごみ投入 ホッパ(破砕ごみの投入口)に投入され,給じん装置(破砕ごみをガス化炉に 供給するための装置)により,ガス化炉の燃焼状況に合わせて,ガス化炉内に 連続して投入される。
受入ごみピット,破砕ごみピットのごみ貯留状況やごみクレーンの運転状況 は,中央制御室において,モニター画面を通じて監視されている。また,必要 な場合にはごみクレーンを手動で操作して,受入ごみピットにおけるごみの撹 拌混合や受入ごみ投入ホッパヘのごみの投入,ごみ投入ホッパヘのごみの投入 を行うこととなっている(乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び 運営事業要求水準書設計・建設業務編第1I編第2章第2節6乃至9《53頁乃 至57頁甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3,2-6, 2-12乃至15,2-37《処理フロー図》)。
(2) ガス化炉及び溶融炉におけるガス化,燃焼
ごみピットにおいて破砕されて細分化されたごみは,以下のように,ガス化 炉内でガス化された後,溶融炉において燃焼される(乙第17号証株式会社 神鋼環境ソリューションホームページ,乙第16号証エネルギー回収施設 (川口)建設及び運営事業工事概要,甲第2号証一般廃棄物処理施設設置 届出書別添2-3,2-37《処理フロー図》)。
ア.ガス化炉におけるガス化
破砕ごみピットからごみクレーンで破砕ごみ投入ホッパに投入された破砕 ごみは,給じん装置を経てガス化炉に供給される。 本件エネルギー回収施設のガス化炉は流動床式であり,ガス化炉の底部は 流動砂(空気が送り込まれて流動状態となっている砂層)状態となっている。 給じん装置からガス化炉に供給されたごみは,流動する砂によって分散され る(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューションホームページ,甲第2 号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3,2-20,2-25《ガ ス化炉構造図》,2-37《処理フロー図》)。
分散したごみの中の可燃物は,ガス化炉で部分燃焼させることで未燃ガス (CO,H2,CH4等),未燃炭素(C《固体の煤》)と灰分(Cao,SI O2等)になり,ガス化炉上部から溶融炉に送られる。他方,ごみの中の不 燃物(ガラス,陶器等)と金属類は,砂よりも比重が重いことから,流動す る砂の中でガス化炉下部に移動し,流動砂と共に抜き出された後分離され, 鉄分とアルミは回収·再資源化され,不燃物の一部は粉砕処理後に溶融炉に 投入され,残った処理不遮物は埋め立て処分される(乙第17号証株式会 社神鋼環境ソリューションホームページ,乙第2号証エネルギー回収施設 (川口)建設及び運営事業要求水準書設計・建設業務編第II編第2章第3節 1乃至3《60頁乃至62頁》,甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書 別添2-37《処理フロー図》,別添8-9《8-3物質収支図〔排ガス〕》)。
イ.溶融炉における燃焼
溶融炉には燃焼用の空気(二次空気)が供給されており,ガス化炉から溶 融炉に送り込まれた未燃ガス(CO,H2,CH4等),未燃炭素と灰分(CaO,SIO2等)のうち,未燃ガス(CO,H2,CH4等),未燃炭素は1 200℃以上の高温で燃焼する。灰分(CaO,SIO2等)はこの120 0℃以上の高温で溶融されて溶融スラグとなり,溶融炉下部から連続して安 定的に排出される(甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3 《2-1施設概要》,2-21,2-26,別添2-37《処理フロー図》, 別添8-9《8-3物質収支図〔排ガス〕》。
溶融炉の二次燃焼室では,上記の工程で燃焼しきれなかった未燃ガス(C O,H2,CH4等),未燃炭素(C《固体の煤》)を完全燃焼させる。
このような溶融炉においては,二次燃焼室を含めて,燃焼によって発生した燃焼ガスが900℃以上の燃焼域に2秒以上滞留するよう調整されており, その後、燃焼ガスは廃熱ボイラに送られる(乙第17号証株式会社神鋼環 境ソリューションホームページ,乙第2号証エネルギー回収施設(川口) 建設及び運営事業要求水準書設計・建設業務編第II編第2章第3節4《62 頁,63頁》,甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添8-8《(7) 焼却条件》)。
` ガス化炉におけるガス化と溶融炉における燃焼の状況は,給じん装置から ガス化炉に供給されたごみの量(給じん量)と溶融炉に供給される二次空気 の量によって異なるものであり,自動制御機能により,自動で制御されてい る。中央制御室では,ガス化炉,溶融炉内の様子や燃焼温度,空気流量,燃 焼室酸素濃度,一酸化炭素濃度等を中央制御装置で監視及び制御し,燃焼室 酸素濃度が適正範囲になるよう空気量調整等を行い,安定燃焼を図ることと している(乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求 水準書設計・建設業務編第II編第2章13節1,2,5<134頁,135 頁139頁》)。
(3) 廃熱ボイラ,エコノマイザ及び減温塔における燃焼ガスの冷却
溶融炉での燃焼によって発生した燃焼ガスは廃熱ボイラに送られ,廃熱ボ イラにおいて熱を利用して水から水蒸気を生成し,冷却される。その後,エコ ノマイザ(煙道に水管を設け,排気の余熱で給水を加熱するもの)に送られ, 熱を回収され,さらに冷却される。
その後,燃焼ガスは,減温塔において水噴霧により約175度に冷却された 後排ガス処理設備に送られる(乙第17号証株式会社神鋼環境ソリューシ ョンホームページ,乙第16号証エネルギー回収施設(川口)建設及び運営 事業工事概要,乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業 要求水準書設計・建設業務編第II編第2章第4節《74頁乃至85頁》,甲第 2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3《2-1施設概要》,2 -7《3.1廃熱ボイラ》,2-15乃至19,2-26《燃焼溶融炉・ボ イラ構造図》,2-27《滅温塔構造図》,2-37《処理フロー図》)。
廃熱ボイラ,エコノマイザ及び減温塔によるこのような燃焼ガスの冷却につ いても,中央制御室において,ボイラ水位や減温塔の噴霧水量,ろ過集じん器 (バグフィルタ)入口温度等を中央制御装置で監視及び制御がなされている (乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書設計・建設業務編第II編第2章第13節134頁乃至141頁)。
(4) 排ガス処理設備における燃焼ガスの処理
ア.ろ過集じん器による塩化水素,硫黄酸化物,ダイオキシン類及びばいじんの除去
廃熱ボイラ,エコノマイザ及び減温塔において冷却された排ガスは,煙道 で消石灰及び粉末活性炭を吹き込まれたうえ,ろ過集じん器(バグフィルタ) に送り込まれる。燃焼ガス中の塩化水素と硫黄酸化物は消石灰との化学反応 により反応生成物(固体)を形成する。燃焼ガス中のダイオキシン類等の有害物質は粉末活性炭に吸着される。ろ過集じん器においては,排ガス中のば いじん,塩化水素及び硫黄酸化物と消石灰の反応生成物,並びにダイオキシ ン類等の有害物質を吸着した活性炭を,フィルターによりろ過集じんして除 去する(乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水 準書設計・建設業務編第II編第2章第5節《86頁乃至89頁》,甲第2号証 一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3《2-1施設概要》,2-4《表 -1エネルギー回収施設〔川口〕の仕様概要》,2-5《⑧環境保全設備の 概要》,2-15乃至17,2-19,2-27《滅温塔構造図》,2-28 《バグフィルタ構造図》,2-37《処理フロー図》,別添8-9《8-3物 質収支図《排ガス》)。
イ.触媒反応塔による窒素酸化物の還元除去
ろ過集じん器から送り出された排ガスは,煙道においてアンモニア水を噴霧して触媒反応塔を通過させることにより,窒素酸化物を還元除去する(脱 硝装置)。この触媒反応塔には,主目的ではないものの,ダイオキシン類等の 分解除去の効果もある(乙第2号証エネルギー回収施設(川口)建設及び 運営事業要求水準書設計・建設業務編第II編第2章第5節4《88頁,89 頁》,甲第2号証一般廃棄物処理施設設置届出書別添2-3《2-1施設 概要》,2-4《表ー1エネルギー回収施設(川口)の仕様概要》,2-5 《⑧環境保全設備の概要》,2-15,2-16,2-20,2-29《触媒 反応塔構造図》,2-32《アンモニア水貯槽構造図》,2-37《処理フロ ー図》,2-42《計装フロー図》,別添3-2《処理に伴い生ずる排ガス及 び排水〔1炉運転時〕,別添8-8《(6)設備方式》,別添8-9《8-3物質収支図《排ガス》)。
ア(前頁)で上述したろ過集じん器の前の消石灰及び活性炭の供給装置と 上記の触媒反応塔の前のアンモニア水の供給装置はいずれも自動制御されて おり,排ガス中の有害物質の濃度に応じて各薬剤の供給量の調整を行うこと となっている。本件エネルギー回収施設の中央制御室では,排ガス中のばいじん濃度,塩化水素濃度,硫黄酸化物濃度,一酸化炭素濃度,窒素酸化物濃 度を中央制御装置で常時監視及び制御することとなっている(乙第2号証 エネルギー回収施設(川口)建設及び運営事業要求水準書設計·建設業務編 第II編第2章13節2《135頁》)。
6 本件エネルギー回収施設の運転·維持管理の体制
本件エネルギー回収施設の運転,保守管理等は,被告から業務委託を受けた株 式会社かみのやま環境サービス(以下,「かみのやま環境サービス」という。)が 実施することとなっている。かみのやま環境サービスは神鋼環境ソリューショ ンが9割,同社の子会社である神銅環境メンテナンス株式会社が1割を出資して設立した,本件エネルギー回収施設の運営・維持管理等を事業目的とする特別目 的会社である。神鋼環境メンテナンス株式会社は,神鋼環境ソリューショングル ープにおいて,神鋼環境ソリューションからの技術的バックアップを受けて廃棄 物焼却施設の焼却炉,溶礁炉の運転,維持管理等を専門的に行っている関連会社 であり,神鋼環境ソリューションが建築した廃棄物焼却施設の焼却炉,溶紬炉の 運転,維持管理は同社が行うこととしているものである。 本件エネルギー回収施設の運転,保守管理等に当たるかみのやま環境サービス には,上記のように廃棄物焼却施設の焼却炉,溶融炉の運転,維持管理のノウハウを有する神鋼環境メンテナンス株式会社より,十分な専門知識と経験を有する 人材が派遣されることとなっており,本件エネルギー回収施設の運転,保守管理 等は,神鋼環境ソリューションからの技術的バックアップの下,神鋼環境ソリュ ーショングループの有する高度の専門知識,技術力と経験をもって行われる予定 となっているものである。 本件エネルギー回収施設のガス化炉等は,中央制御装置により自動運転される ため,運転員は,中央制御室で,監視用ITVのモニター画面に表示される各施 設の稼働状況や,中央制御装置に表示される燃焼温度,空気流量,排ガス中のば いじん濃度,窒素酸化物濃度,硫黄酸化物濃度,塩化水素濃度,一酸化炭素狼度, 酸素濃度等の連続測定データを集中監視し,異常が生じた場合には,改善作業や 設備の停止等必要な対応を行う態勢をとることとしている。
今後予定されている裁判:
平成29年11月 6日(月) 13:15-
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件
清掃工場(公称エネルギー回収施設)を建設するための造成工事(平成28年5月31日 工事終了)の建設計画や安全性などに多くの問題みられるため、すでに支出した公金の返還を求める訴訟です。守る会は、組合の監査委員に対し住民監査請求をおこないましたが、棄却されたため住民訴訟を提起しました。
平成29年11月28日(火) 15:00-
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件
平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。
平成29年11月28日(火) 15:30-
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件
清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。