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山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(エネルギー回収施設)に関する詳細、および諸問題について

平成28年(行コ)第19号前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件判決文の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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平成29年4月27日、仙台高等裁判所において標記「平成28年(行コ)第19号前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件(原審・山形地方裁判所平成28年(行ウ)第2号)控訴審の判決が言い渡されましたので、判決文を公開致します。

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平成29年4月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件(原審・山形地方裁判所平成28年(行ウ)第2号)
平成29年2月23日口頭弁論終結

判決
当事者の表示 別紙当事者目録のとおり

主文
1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用(補助参加費用を含む。)は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,市道前川ダム東線道路改良工事に関してH土建株式会社との間で締結した請負契約に基づく請負代金に係る公金を支出してはならない。
3 被控訴人は,被控訴人補助参加人に対し,5032万8000円及びこれに対する平成27年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をするよう請求せよ。
4 被控訴人は,H土建株式会社に対し,5032万8000円及びこれに対する平成27年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をするよう請求せよ。

第2 事案の概要
1 本件は,山形県上山市の住民及び上山市に事業所等を有する会社である控訴人(原告)らが,上山市がH土建株式会社(H土建)との間で市道前川ダム東線の一部の改良工事(本件工事)を目的とする請負契約(本件請負契約)は公序良俗に違反して無効であるから,本件請負契約に基づく代金の支払は違法である旨主張して,上山市の執行機関である被控訴人(被告)に対し,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,本件請負契約の未払代金の支出の差止めを求める(以下「本件1号請求」という。)と共に,同項4号に基づき,本件請負契約の代金の一部である5032万8000円を支出したこと(本件支出)について,本件支出当時の上山市の市長であった被控訴人補助参加人(以下「補助参加人」若しくは「横戸」という。)に対して損害賠償請求をすること及び堀川土建に対して不当利得返還請求をすることをそれぞれ求める(両請求 を併せて以下「本件4号請求」という。)住民訴訟である。
 原審は,本件請負契約を私法上無効と解すべき事情は認められないし,既にした代金の支払が違法とはいえない旨判示して,本件1号請求及び本件4号請求をいずれも棄却した。
 控訴人らは,原判決を不服として,本件控訴を提起した。

2 前提事実
 原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」2 (原判決3頁11行目から5頁9行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する(原判決中,「原告」とあるのは「控訴人」と,「被告」とあるのは「被控訴人」とそれぞれ読み替えられることになる。以下同じ。)。

3 争点
 本件1号請求は,本件請負契約の未払代金の支出の差止めを求めるものであるところ,契約に基づく債務の履行として行われる公金の支出について,地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止めを請求することができるのは,当該契約が私法上無効な場合に限られるというべきである(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻468 7頁参照)。
 また,本件4号請求は,本件支出について,補助参加人に対して損害賠償請求をすること及びH土建に対して不当利得返還請求をすることを求めるものであるところ,本件支出は,支出負担行為である本件請負契約の債務の履行の一部としてされているのであるから,本件請負契約が私法上無効というべき場合には,補助参加人が,本件請負契約に基づく本件支出を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負い,また本件支出が不当利得となるというべきである。
 したがって,本件の争点は,本件請負契約が私法上無効というべきか否かである。

4 争点に関する当事者の主張
控訴人らの主張)
 本件工事を目的とした本件請負契約は,次のとおり,公序良俗に違反し,無効である。
(1) 通行権等侵害等
ア 通行権等侵害
(ア) 本件市道前川ダム東線道路のうち,①国道13号から本件市道前川ダム東線道路に進入して間もない場所にあるカーブ箇所,②前川に架かる五反田橋を渡る直前のカーブ箇所,③五反田橋を渡り切った後のカーブ箇所,④奥羽本線の下をくぐる前のカープ箇所及び⑤新橋梁と交差するカーブ箇所において,大型車両同土の対面通行及び緊急車両の通行が困難であるところ(以下,これらのカーブ箇所をそれぞれ「本件カーブ箇所①」などといい,これらを併せて「本件各カーブ箇所」という。),本件工事後も,本件カーブ箇所①及び本件カーブ箇所②における大型車両同士のすれ違いが不可能なままであり,本件カーブ箇所③,本件カーブ箇所④及び本件カーブ箇所⑤における大型車両同士の対面通行は不可能である(控訴人らが,福2.39 mから2.49m, 全長11.26 mから11.95mのトラックを用いてすれ違い実験を行ったところ,本件カープ箇所③については,著しい徐行を行い,極めて慎重に運転を行えば辛うじてすれ違うことは可能であったが,橋の間際を通過しなければならないのであるから,社会通念上はすれ違いが困難であると判断されるものであったし,本件カーブ箇所④については,カーブを曲がるた めにはセンターラインを越えなければならないため,すれ違いは不可能であった。)。そして,本件工事及び本件工事の目的である本件エネルギー回収施設の建設によって,従前は道路幅の問題で物理的に通行できなかった大型車両の通行が増加すると共に,道路の改良により利便性が向上することで,交通量が多くなる。
(イ) 山形広域環境事務組合作成の平成29年2月1日付け「エネルギー回収施設(川口)建設だより」に本件市道前川ダム東線道路において工事車両の増加が予定されている旨記載されているとおり,本件工事により,工事車両の交通量が増加する。
(ウ) 本件エネルギー回収施設には防災拠点機能が付加されることとなっており,災害が発生した場合,本件市道前川ダム東線道路に大型の緊急車両や避難用のバス等が出入りすることとなり,十分なすれ違いもできない本件市道前川ダム東線道路は,渋滞を来たし,元来本件市道前川ダム東線道路を利用してきた控訴人Aの車両の通行の妨げとなるし,控訴人Aの従業員らが本件市道前川ダム東線道路を利用して避難することが困難になる。
(エ) 本件工事は本件エネルギー回収施設の利便性の向上を目的として行われるものである。すなわち,本件エネルギー回収施設の建設がなければ本件工事もなかったはずのものであり,両者は表裏一体のものである。したがって,本件エネルギー回収施設の建設によって交適量が増加することも,本件工事を原因とするものというべきである。
(オ) このように,本件市道前川ダム東線道路は,化学消防車などの緊急車両を含む大型車両の相互通行が不可能なままであるにもかかわらず,逆に本件工事によって本件エネルギー回収施設へ出入りする大型車両の通行が増加することで,円滑な通行は困難になり,日常的に本件市道前川ダム東線道路を大型車両の通行のために利用してきた控訴人Aを含む多くの通行者の通行権が侵害されると共に,現在にもまして緊急車両の通行が困難な事態が生じ,控訴人Aやその従業員らの平穏生活権が侵害される。
 また,本件工事対象道路には歩道が設置されていないことから,歩行者や軽車両の道路通行の安全が妨害され,歩行者らの通行権が侵害される。
 本件工事が無駄な公共事業であること
上記のとおり,本件工事によっても,本件市道前川ダム東線道路の大型車両同士のすれ違い困難箇所は,いずれの地点においてもその困難さが全く解消されていない。
また,本件市道前川ダム東線道路は,冬季においては積雪により有効道幅が他の季節より狭くなり,とりわけ五反田橋や奥羽本線ガード下の地点では交通が困難となるが,本件工事は五反田橋や奥羽本線ガード下を対象としていないから,本件工事は中途半端なものとなっている。
このように,本件工事には何の意味もなかったのであって,全く無駄な公共事業であったということである。このような無駄なことに公金を支出すること自体が公序良俗に反する。

(2) 本件工事の経緯の不当性及び談合
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」4 (原告らの主張) (2)及び(3) (原判決6頁13行目から8頁17行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
 原判決7頁5行目の「すり替えた」の次に「(被控訴人は,本件市道前川ダム東線道路では直線部分で大型車同土の対面通行が可能であるから本件大型車両対面通行可能条件は満たされていると主張するが,国道13号との交差点から本件エネルギー回収施設の入り口に架けられた新橋梁に至るまでのそれほど長くない距離の間に5か所もの大型車のすれ違い困難な箇所があるのであるから,単に直線部分では大型車同士の対面通行が可能であるというだけで本件大型車両対面通行可能条件が満たされていると評価することは一般常識と相容れないものである。したがって,道路とのアクセス条件は,本件大型車両対面通行可能条件とは別の条件として定められたものでなく,本件大型車両対面通行可能条件をすり替えるものとして設定されたものと認めるべきである。)」を加える。
 原判決7頁14行目の「選定したのである」の次に「し,前述のとおり,本件工事は本件大型車両対面通行可能条件を満たすための工事であって,本件エネルギー回収施設の建設と本件工事,ひいては本件請負契約とは強い関連性を有するものであり,また上山市は山形広域環境事務組合の構成団体の一つであり,全く別の団体というわけでもない」を加える。

(被控訴人及び補助参加人の主張)
 原判決8頁18行目の「被告の主張」を「被控訴人及び補助参加人の主張」に改め, 9頁1行目末尾の次に改行の上次のとおり加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」4 (被告の主張)(原判決8頁18行目から10頁11行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
「また,本件工事は,本件市道前川ダム東線道路の道路改良,拡幅を行ってその利便性の改良を行うという工事であって,控訴人らが通行権等侵害の原因として挙げる大型車両の通行量増加は,本件エネルギ一回収施設の建設に伴うものであり,本件工事によって生じるものではないから,本件工事によって本件市道前川ダム東線道路における大型車のすれ違いの困難さが解消されたか否かという間題を論じるまでもなく,そもそも,本件工事について通行権等の侵害が問題となるものではない。」

第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,本件請負契約が無効であるとはいえず,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

1  通行権等侵害等について
(1) 通行権等侵害について
 控訴人らの主張は,前記第2の4(控訴人らの主張)(1)のとおりであり,その要旨は,①本件工事は本件エネルギー回収施設の建設に伴う本件市道前川ダム東線道路の利便性の向上を目的とするものであるにもかかわらず,本件工事によっても本件各カーブ箇所のいずれにおいても大型車両のすれ違い通行は不可能のままである一方,本件エネルギー回収施設の建設によって大型車両の通行は増加する,②本件工事により,工事車両の交通量が増加する,③本件エネルギー回収施設には防災拠点機能が付加されるため,災害時には大型の緊急車両や避難用バス等が出入りすることにより,本件市道前川ダム東線道路は渋滞を来し,控訴人A等の車両の通行の妨げや災害時の避難等を困難にする,④このように,本件工事は,控訴人Aやその従業員らの平穏生活権を侵害するものであると共に,控訴人Aを含む多くの通行者の通行権を侵害するものである,というものである。
 しかしながら,まず,前記前提事実によれば,本件工事は,本件工事対象道路の掘削,盛土による道路改良,消雪施設設置及び直線部を中心とした拡幅等を内容とするものであるというのである。この事実によれば ,本件工事には本件市道前川ダム東線道路における大型車両の通行量を増加させ,同道路の渋滞を促進させる要素はない(控訴人らも,本件工事によっても本件各カーブ箇所においては依然として大型車両同士の対面通行が不可能であること等を主張するのみで,本件工事によって本件前川ダム東線道路の通行条件それ自体が悪化することを主張するものではない。)と認められるのであって,控訴人A等の平穏生活権や通行権に対する関係 で,本件工事が権利侵害行為と評価されるべき点は全くないというべきである。
 この点,控訴人らは,要旨,本件エネルギー回収施設の建設により本件市道前川ダム東線道路における大型車両の通行量が増加するところ,本件工事は本件エネルギー回収施設の利便性の向上を目的とするものであって,本件エネルギー回収施設の建設がなければ本件工事もないのであるから,本件市道前川ダム東線道路の交通事情の悪化は本件工事に起因するものと認めるべきである旨主張する。しかしながら,上記のとおり,本件工事の内容には本件市道前川ダム東線道路の交通事情を悪化させる要素は認められないのであるから,仮に,本件工事竣工後に本件市道前川ダム東線道路における大型車両の交通量が増加するとしても,そのことと本件工事との間には何らの事実的因果関係も認められない。したがって,本件エネルギー回収施設の建設と本件工事の間に,その目的において関連性があるとしても,上記大型車両の交通量の増加が本件工事に起因するものであると認めるべき根拠はないというべきである。
 なお,本件工事を施工するに当たり,本件市道前川ダム東線道路において工事車両の交通量が増加することは認められるが,それが控訴人A等の平穏生活権を侵害する態様又は程度のものであると認めるに足りる証拠はない。また,本件市道前川ダム東線道路は,上山市民各自が日常生活上欠くことのできない要具であるから,上山市民は,他の市民が本件市道前川ダム東線道路に対して有する利益ないし自由を侵害しない程度において,自己の生活上必須の行動を自由に行うという法律上の利益を有するというべきであるが(最高裁判所昭和35年(オ)第676号同39年1月16日第一小法廷判決・民集18巻1号1頁参照),この利益は,上山市長が市道として認定し,上山市が管理して一般交通の用に供している(道路法2条1項,8条1項,1 6条1項参照)ことの反射的利益というべきものであって,上山市による管理行為としての本件工事のための工事車両が本件市道前川ダム東線道路を通行することが上記利益の侵害行為に当たると解することはできない。
 したがって,本件工事が控訴人Aの平穏生活権又は通行権等の侵害行為であるために本件請負契約が公序良俗に違反する旨の控訴人らの主張は理由がない。

(2) 本件工事が無駄な公共工事であることについて
 控訴人らは,本件工事によっても,本件市道前川ダム東線道路の大型車両同士のすれ違い困難箇所は,いずれの地点においてもその困難さが解消されていないし,五反田橋や奥羽本線ガード下の地点では積雪期の通行が困難となるのに本件工事は上記地点を対象としていないなど,本件工事は何の意味もない無駄な工事である旨主張する。
 しかしながら,既に説示したとおり,本件工事は,本件工事対象道路の掘削,盛土による道路改良,消雪施設設置及び直線部を中心とした拡幅等を内容とするものであるから,本件市道前川ダム東線道路の車両通行条件の改善につながるものであることは明らかであって,上記アのような控訴人らの主張事実をもって無駄な工事であるとはいえないことは明らかである。この点に関する控訴人らの主張は理由がない。

2 本件工事の経緯の不当性について
 原判決13頁19行目から26行目までを次のとおり改めるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点(本件請負契約に基づく支出の違法性の有無)に対する判断」1 (1)イ(原判決12頁26行目から14頁1行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
「(ウ) また,控訴人らは,上山市が選定条件のすり替えをしたと主張するが,上山市が清掃工場候補地検討委員会に提示した条件が本件大型車両対面通行条件を満たすものであるか否かないしその程度,更には本件エネルギー回収施設の所在地を建設予定地に選出するか否かは最終的に上記検討委員会又は山形広域環境事務組合が検討し,判断する事項であり,その検討・判断の過程において上山市が違法又は不当な特為をしたと評価すべき事情が見当たらない以上,本件請負契約が公序良俗に反すると評価すべき理由はない。」

3 談合について
 原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点(本件請負契約に基づく支出の違法注の有無)に対する判断」1(1)ウ(原判決14頁3行目から20行目まで)のとおりであるから,これを引用する。

4 結論
 以上によれば,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

仙台高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官 古久保 正人
裁判官坂本浩志
裁判官 杉森洋平は転補のため署名押印できない。
裁判長裁判官 古久保 正人

別紙
当事者目録
(一部省略)
山形県上山市河崎1丁目1番10号
控訴人 上山市長 横戸長兵衛
同訴訟代理人弁護士 内藤和暁
同 古澤茂堂
同 小野寺弘行
同 指定代理人 鈴木英夫
同 鈴木亨
同 鏡順
同 木村昌光
同 近埜 伸二
同 須貝 信亮
山形県上山市河崎1丁目1番10号
控訴人補助参加人 横戸 長兵衛
以上

これは正本である。
平成29年4月27日
仙台高等裁判所第2民事部
裁判所書記官 直井克哲

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