山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(エネルギー回収施設)に関する詳細、および諸問題について

控訴しました! 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟(被告:上山市長 横戸長兵衛氏) [前編] | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 国道13号線のかみのやま高架橋を越えて上山市道に入ると、突然道幅が狭くなり、カーブが続きます。市道は奥羽本線(山形新幹線)と一級河川前川に挟まれていますが、上山市は交通の利便性を図るため、ガス化溶融炉建設地までの一部区間の改良工事を行いました。すなわち一部道幅を広げ、ガス化溶融炉の排熱を利用して冬期融雪を行い、側溝の蓋を掛ける工事です。

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 しかしそれらの工事は、国道から敷地入口までの全区間で行われるわけではなく、前川に沿った直線部のみで行われる工事です。この工事を行っても、他のカーブでの拡幅は行われず、いわゆる工事用の大型車や、隣接企業の大型車、竣工後に利用が見込まれる大型の消防車、見学者用大型バス等の通行に支障をきたし、歩行者や軽車両の安全を阻害することが想定されます。このため守る会は、上山市長 横戸長兵衛氏に対し、現在進められている一般ごみ焼却場に至る「前川ダム 東線道路改良工事」に支出した公金の返還を求める訴訟を提起しました。
 
 この経緯として、守る会は上山市に住民監査請求を求めた後、平成28年1月27日付で上山市山形地方裁判所に提訴(平成28年 (行ウ)第2号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件(松下貴彦裁判長))しましたが、同年8月16日に口頭弁論において突然裁判長から結審が告げられ、その結果10月18日に「棄却」されました。

 守る会は準備書面を2度提出したのみ(他の裁判では、少なくともこれ以上の準備書面を提出し継続されています)で、被告からの守る会の主張に対する反論らしい反論もない中、何の説明もないままなぜ急に結審となったのか、不満と謎の残る裁判となりました。

 裁判に関する専門的知識を持たない一般市民とすれば、裁判のプロセスは全く不透明で、裁判所と市民との感覚の違いを実感せざるを得ません。

 守る会として到底納得できる内容ではなく、この判決に対し反論したい事項が多々あったため、10月24日仙台高等裁判所控訴を申し立てました。そして、平成28年12月27日には控訴理由書を提出致しました。

 当記事では、まず10月18日付山形地方裁判所の「判決文」を公開致します。明日は、引き続き12月27日に仙台高裁に対し提出した「控訴理由書」を公開する予定です。

 


※内容はブログ用に一部編集しておりますので予めご了承ください。

 

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平成28年10月18日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成28年(行ウ)第2号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件
口頭弁論終結日 平成28年8月16日

判決

原告 上山市市民
被告 上山市長 横戸長兵衛

(中略)

主文

1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1 請求の趣旨

  1.  被告は,市道前川ダム東線道路改良工事に関してA土建株式会社との間で 締結した請負契約に基づく請負代金に係る公金を支出してはならない。
  2.  被告は,横戸長兵衛に対し,5032万8000円及びこれに対する平成2 7年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をするよう請求せよ。
  3.  被告は,A土建株式会社に対し,5032万8000円及びこれに対する 平成27年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をする よう請求せよ。

第2 事案の概要

1 本件は,山形県上山市(以下「上山市」という。)の原告らが,上山市がA土建株式会社(以下「A土建」という。)との間で市道前川ダム東線の一部の改良工事(以下「本件工事」 という。)を目的とする請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結したことについて,本件工事の内容が原告らの通行権や平穏生活権を侵害するも のであること,本件請負契約と一連の行為である上記道路に隣接する清掃工場の建設予定地選定行為が不当なものであること,及び本件請負契約の入札が違法な談合によるものであることから,公序良俗に違反し無効であり,本件請負契約に関する公金の支出等が違法である旨主張して,上山市の執行機関である 被告に対し,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,本件請負契約の請負代金の未払分である7549万2000円の支出の差止めを求めるとともに, 同項4号に基づき,本件請負契約の請負代金の一部である5032万8000 円を支出したこと(以下「本件支出」という。)について,本件支出当時の上山市の市長であった横戸長兵衛(以下「横戸」という。)に対して損害賠償請求をすること及びA土建に対して不当利得返還請求をすることを,それぞれ求める住民訴訟である。

2 前提事実(証拠等の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)

(1) 当事者

ア 原告B(*以下、個人情報のため非公開)。

イ 被告は,上山市の執行機関である(弁論の全趣旨)。

ウ A土建は,上山市との間で本件請負契約を締結し,本件工事を実施し た工事業者である(甲1,弁論の全趣旨)。

エ 横戸は,本件支出当時,上山市の市長の職に在った者である(弁論の全趣旨)。

(2) 市道前川ダム東線について

 国道13号から山形広域環境事務組合がエネルギー回収施設という名称の施設(以下「本件エネルギー回収施設」という。)の入口に架けた橋梁(以 下「新橋梁」という。)に至るまでの区間の市道前川ダム東線(以下「本件 市道前川ダム東線道路」という。)につき,本件工事完了前の全幅は,7. 4メートルから9.3メートルであり,直線部分は,おおむね大型車両同土のすれ違い及び対面通行が可能であったところ,4つのカーブ箇所においては,大型車両同士のすれ違いが困難であった(乙2の1ないし2の4,弁論 の全趣旨)。

(3) 本件工事について

 上山市は,市道前川ダム東線の五反田橋南側から新橋梁の先までの284. 4メートルの区間の道路(以下「本件工事対象道路」という。)について, 工期を平成27年6月1日から平成28年3月18日として,掘削や盛土による道路改良,消雪施設設置及び直線部を中心とした拡幅等を目的とした本 件工事を行うこととした(乙1)。

 上山市は,平成27年5月29日,入札(以下「本件入札」という。)を 実施し,A土建が1億1650万円(税抜)で落札したことから,同年6 月1日,A土建との間で,本件請負契約を1億2582万円(税込)で締結し,同月25日,A土建に対し,本件工事の請負代金額のうち5032 万8000円を前払金として支出した(甲1,13) 。  本件工事は,平成28年3月18日に完成し,請負代金額は最終的に1億 3113万360円となった(乙3)。

(4) 原告らによる監査請求及び本件訴訟の提起

 原告らは,上山市監査委員に対し,平成27年10月29日付けで,本件請負契約が公序良俗に違反し無効であることなどを理由に,本件請負契約に 基づく公金の支出等が違法であると主張して,被告に対して,横戸及びA土建に対する本件支出相当額の損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権を行使する措置を求めるとともに,本件請負契約に基づいて予定されている支出を差し止める措置を求めて住民監査請求をした(甲15)。 上山市監査委員は,前記監査請求について,平成27年12月25日付け で,請求人のうち原告Bについて,住所要件に欠けるとして却下し, その余の請求人については,本件請負契約について違法不当な事由がないと して,棄却する旨の決定をし,同月28日,原告らはその旨の通知を受けた (甲16の1,16の2)。 原告らは,平成28年1月26日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著 な事実)。

 

3 争点

本件請負契約に基づく公金支出の違法性の有無

 

4 争点に関する当事者の主張

(原告らの主張)

 本件工事を行うことを目的とした本件請負契約は,以下のとおり公序良俗に違反し無効であるから,本件請負契約に基づく公金支出は違法である。

(1) 通行権等侵害

 本件市道前川ダム東線道路のうち,①国道13号から市道前川ダム東線に進入して間もない場所にあるカーブ箇所,②前川に架かる五反田橋を渡る直前のカーブ箇所,③五反田橋を渡り切った後のカーブ箇所,④奥羽本線の下をくぐる前のカーブ箇所及び⑤新橋梁と交差する箇所において,大型車両同 士の対面通行及び緊急車両の通行が困難であるところ(以下,これらのカー ブ箇所をそれぞれ「本件カーブ箇所①」などといい,これらを併せて「本件 各カーブ箇所」という。),本件工事後も,本件カーブ箇所①及び本件カー ブ箇所②における大型車両同土のすれ違いが不可能なままであり,本件カー ブ箇所③,本件カーブ箇所④及び本件カーブ箇所⑤における大型車両同士の 対面交通は不可能である 。そして,本件工事及び本件工事の目的である本件エネルギー回収施設の建設によって,従前は道路幅の問題で物理的に通行できなかった大型車両の通行が増加するとともに,道路の改良により利便性が向上することで,交通量が多くなる。 したがって,本件市道前川ダム東線道路は,化学消防車などの緊急車両を含む大型車両の相互通行が不可能なままであるにもかかわらず,逆に本件工事によって本件エネルギー回収施設へ出入りする大型車両の通行が増加する ことで,円滑な通行は困難になり,日常的に本件市道前川ダム東線道路を大 型車両の通行のために利用してきた原告Bを含む多くの通行者の通行権が侵害されるとともに,現在にも増して緊急車両の通行が困難な事態が生 じ,原告Bらの平穏生活権が侵害される。 また,本件工事対象道路には歩道が設置されないことから,歩行者や軽車 両の道路通行の安全が妨害され,歩行者らの通行権が侵害される。

(2) 本件工事の経緯の不当性

 山形広域環境事務組合は,エネルギー回収施設の建設予定地を選定するために,「敷地が大型車両の対面通行可能な公道に接しており,又は接す ることが容易な場所であること。(進入道路が必要となる場合は,公道から敷地に容易に接続できる場所であること。)」という条件(以下「本件 大型車両対面通行可能条件」という。)を選定条件の一つとして抽出して いた。そのため,本来,拡幅工事を行わなくとも大型車両の対面交通が可能な道路に接した場所をエネルギー回収施設建設予定地に選定すべきであ った。

 そして,上山市が,本件エネルギー回収施設の建設予定地がある川口地区(以下「川口地区」という。)を含む5つの地区を上山市内における候補地として選定し,上山市が設置した清掃工場候補地検討委員会の委員が,8つの選定条件について点数をつけ,いずれの候補地が適当であるか検討した際,「道路とのアクセス」に関する選定条件(以下「道路とのアクセス条件」という。)は重要な選定条件とされた。

 しかし,上山市は,道路とのアクセス条件について,幹線道路との接続が容易であるか等の観点をもって調査することで,本件大型車両対面通行可能条件という本来の条件から,幹線道路との接続が容易であるという条件にすり替えた。その結果,川口地区は,原告らの主張(1)にあるとおり, 本件エネルギー回収施設の敷地進入口に架かる新橋梁の手前の公道でのすれ違いが不可能であり,本件大型車両対面通行可能条件を満たさず,エネルギー回収施設建設予定地に合致しない土地であったにもかかわらず,道路とのアクセス条件において,5地区中2番目の高得点を獲得し,総合得 点も5地区中2番目となり,最終的にエネルギー回収施設建設予定地に選 定された。

 また,上山市は,山形広域環境事務組合から,上山市内にエネルギー回収施設を建設したいので,その候補地を選定する作業をするよう要請され, 川口地区を候補地として選定したのであるから,実質的には,上山市が川口地区をエネルギー回収施設建設予定地として決定したといえる。

 したがって,上山市が,エネルギー回収施設建設予定地とするには不適当であった川口地区を,実質的に不当な方法で建設予定地として選定した のであり,上山市による上記不当な選定行為と本件譜負契約あるいは本件工事は,一連の行為であり,全体として公序良俗に反するものである。

 清掃工場候補地検討委員会は,その評価集計表の付帯意見において,アクセス道路を近隣会社と完全に共有しなければならないと考えると道福が狭く,新たなアクセス道路を通すことを提言したい旨述べるなど,本件大型車両対面通行可能条件を満たしているという認識を共有しておらず,山形広域環境事務組合や上山市は,川口地区の景観と環境を守る会の意見書により,川口地区が,大型車両同士の対面交通が因難であることを認識し ていた。そのため,本件工事は,本件エネルギー回収施設が,本件大型車両対面通行可能条件を充足させることを目的とするものであり,本件市道前川ダム東線道路の全域において大型車両同士の対面交通を可能にする必要があった。しかし,本件工事は,本件市道前川ダム東線道路のうち一部直線部のみを拡幅するだけで,本件工事対象道路ですら,そのカーブ箇所 の対面通行を確保せず,また,五反田橋から本件エネルギー回収施設入口 までの一部のみ融雪工事を行うなど冬季における車両のすれ違いは困難なままにしているから,本件エネルギー回収施設は本件大型車両対面通行可能条件を満たしてはいないのであり,本件工事は相当ではない。

(3) 談合

 本件入札は,1億1650万円(税抜)から1億2300万円(税抜)の わずかな価格差の範囲内で行われ,予定価格を下回って入札したのが予定価格の99パーセントで入札したA土建だけであるところ,本件工事のような工事は,多数の費目を積算して入札価格を決定するから,複数の業者がほとんど同じ価格になることや,1社だけが予定価格を下回るなどということは考えられない。よって,本件工事の入札は,違法な談合が行われていたものであるといえ,公序良俗に違反して無効であり,少なくとも,本件請負契約の代金額の10パーセントの範囲では公序良俗に違反して無効である。

 

(被告の主張)

 本件工事について,以下のとおり上山市長の判断に裁量権の逸脱又は濫用が あるといった特段の事情となるべき問題点は全く認められず,本件請負契約に 基づく公金支出は違法ではない。 

(1) 通行権等侵害

そもそも平穏生活権や通行権に対する侵害があるからといって,本件請負契約が公序良俗に違反し,無効となるわけではないし,原告らの平穏生活権 通行権は,以下のとおり,本件工事によって侵害されるものではない。

 原告らには,道路上のカーブ箇所という個別の部分ごとに無制限な通行権や平穏生活権が認められているものではない。

 国道13号から原告Bに至るには,本件市道前川ダム東線道路以外にも迂回路が存在する。

(ア)本件市道前川ダム東線道路の幅員は,7.4メートルから9.3メー トルあり,カーブ前後の直線部分では容易に大型車両同士のすれ違いが 可能である。
(イ)そして,本件市道前川ダム東線道路のカーブ箇所のうち,本件工事対象道路に含まれているのは,本件カーブ箇所③,本件カーブ箇所④及び 本件カーブ箇所⑤の各箇所であるところ,本件工事完成後は,これらのカーブ箇所において,車体全幅3. 1メートル,車両全体の長さ8. 16メートルの大型ダンプ車同士が支障なくすれ違い通行することが可能 である。
(ウ)また,本件市道前川ダム東線道路を大型車両が多く通行することになるのは,本件工事によるものではなく,エネルギー回収施設の建設によ るものである。さらに,国道13号から本件エネルギー回収施設の敷地には,市道前川ダム東線を利用するほかに迂回路によっても進入できる。
(エ)そのため,本件市道前川ダム東線道路において,大型車両の対面通行 に支障はない。

(2) 本件工事の経緯の不当性

 被告の主張(1)ウ(ア)にもあるとおり,本件市道前川ダム東線道路において,直線部分で大型車両同士がすれ違うことにより大型車両同上の対面通特を行うことが可能であるから,本件エネルギー回収施設の建設予定地は, 本件大型車両対面通行可能条件を満たしている。

 そして,道路とのアクセスについての調査評価は,本件大型車両対面通行可能条件を満たしていることを前提に行ったもので,原告らが主張するような条件のすり替えを特ったものではない。

 また,清掃工場候補地検討委員会は,道幅が狭い箇所については舗装幅員の拡幅により対応可能であることから,付帯意見を踏まえつつ,川口地区を候補地として選定したのであるし,上山市は,エネルギー回収施設の 候補地を選考したにすぎないのであるから,上山市が,エネルギー回収施設建設予定地とされるには不適当であった川口地区を実質的に不当な方法 で建設予定地として選定としたという事実はない。

 被告の主張(1)ウ(イ)にあるとおり,本件エネルギー回収施設の建設予定地は,本件工事後も本件大型車両対面通行可能条件を充足している。

(3) 談合

本件入札において談合を行ったことの根拠は一切示されていないため,そのような事実は認められない。

 

第3争点(本件請負契約に基づく支出の違法性の有無)に対する判断

1 地方自治法242条の2第1項4号請求について

 原告らは,本件請負契約が公序良俗に違反し無効であるから,本件支出が違 法である旨主張しているところ,本件支出は,支出負担行為である本件請負契 約の債務の履行の一部としてされているのであるから,本件請負契約が私法上無効といえる場合には,横戸が,本件請負契約に基づく本件支出を行ってはな らないという財務会計法規上の義務を負うことになるものというべきである。

(1) そこで,本件請負契約が公序良俗に反し私法上無効といえるか否かについて検討する。

ア 通行権等侵害について

(ア)原告らは,本件工事及び本件エネルギー回収施設の建設によって本件市道前川ダム東線道路を通行する大型車両が増加するにもかかわら ず,本件工事によっては本件市道前川ダム東線道路における大型車両 のすれ違いの困難さを完全に解消できない旨主張する。

(イ)しかし,前記前提事実(3)のとおり,本件工事は,本件工事対象道路について,工期を平成27年6月1日から平成28年3月18日とし て,掘削や盛土による道路改良,消雪施設設置及び直線部を中心とし た拡幅等を目的とする工事であるところ,本件工事により大型車両の通行量が継続的かつ大量に増加することを認めるに足りる証拠はない。 また,本件エネルギー回収施設には,8トンのロングダンプの出入りが予定されていることは当事者間に争いがないから,本件市道前川ダム東線道路において,今後一定の大型車両の通行量の増加が見込まれるものの,今後見込まれる大型車両の通行量の増加は,本件工事によ る本件市道前川ダム東線道路の利便性の改良等に伴うものではなく, 飽くまで本件エネルギー回収施設の建設に伴うものであると認められ る。

 そうだとすると,今後,本件エネルギー回収施設の建設に伴い大型 車両の通行量の増加が見込まれ,本件工事によっては本件市道前川ダム東線道路における大型車両のすれ違いの困難さを完全に解消できないとしても,それだけで本件工事が公序良俗に反するとはいえない。

(ウ)かえって,証拠(乙5の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件工事完了後の本件市道前川ダム東線道路について,本件カーブ箇所①及び 本件カーブ箇所②は,そもそも本件工事対象道路に含まれていない結果,大型車両同上のすれ違いの困難さは解消されていないことが認められるものの,本件カーブ箇所③及び本件カーブ箇所④は,それらの カーブ箇所付近において車両全体幅3.1メートル,車両全体の長さ 8.16メートルの大型車両同士が容易にすれ違うことができることが認められるから,本件請負契約は,大型車両のすれ違いについて従前以上の対策を講じたものであるといえる 。なお,原告らは,本件力 ーブ箇所④において,車両全体幅2. 7メートルの大型車両のすれ違いが困難である旨主張し,これを裏付ける証拠として甲第23号証を提出しているものの,同号証によっても原告らの主張を認めることは できない。

(エ)よって,原告らのかかる主張には理由がない。

(オ)なお,原告らは,本件工事が,本件エネルギー回収施設の建設と連結した工事であるから,本件エネルギー回収施設の建設による通行量の増加を一体的に捉えるべきである旨の主張をしているところ,仮に原告らのかかる主張を前提としても,原告Bらの大型車両の通行及び緊急車両の通行が困難となったり,歩行者や軽車両の道路通行の安全が妨害されるといった程度にまで,本件市道前川ダム東線道路を通行する車両の通行量の増加があると認めるに足りる証拠はないか ら, 原告B及びその従業員らの平穏生活権並びに歩行者らの通行権が侵害されるとはいえない。また,原告らは,本件工事によって 本件市道前川ダム東線道路の全ての箇所において大型車両のすれ違いが可能とならなければ,本件市道前川ダム東線道路における大型車両のすれ違いの問題は解消されず,違法な通行権等の侵害となる旨の主 張をしているところ,本件市道前川ダム東線道路全ての箇所において大型車両がすれ違うことができなければ原告Bらの大型車両等 の通行が不可能ないし困難になるほどの,本件市道前川ダム東線道路 における通行量の増加があると認めるに足りる証拠はないし,仮に原告らに,本件市道前川ダム東線道路の大型車両の通行等に関 する何らかの権利があるとしても,本件各カーブ箇所において大型車両がすれ違うことに関する権利があるとまで認めることはできない。 よって,原告らのかかる主張は,上記結論に影響を及ぼすものではな い。

イ 本件工事の経緯の不当性について

(ア)原告らは,上山市が設置した清掃工場候補地検討委員会の本件エネルギー回収施設の建設予定地選定行為と上山市の本件請負契約締結行為は 一連の行為であるところ,上記選定行為は,実質的に不当な方法で行わ れているから,本件請負契約あるいは本件工事を含む全体として公序良 俗に反する旨主張する。

(イ)しかし,証拠(甲6ないし11)及び弁論の全趣旨によれば,上山市は,清掃工場候補地検討委員会を設置し,エネルギー回収施設の上山市内の候補地の選考及び調査評価を行い,これを受けて,山形広域環境事務組合が,他の市町の候補地と併せてエネルギー回収施設の建設予定地を検討した結果,川口地区を選定したものであり,本件エネルギー回収施設の建設予定地選定行為の主体は山形広域環境事務組合であることが認められる。このように,本件請負契約は,本件エネルギー回収施設の建設予定地選定行為と主体を異にするものであり,また,本件エネルギ 一回収施設の建設を事実上の契機として行われた本件工事を目的とする 請負契約にすぎないのであって,本件エネルギー回収施設の建設予定地 選定行為とは独立したものであると認められるから,仮に原告らの主張どおり,本件エネルギー回収施設の建設予定地選定行為に何らかの違法性があったとしても,そのことをもって,本件請負契約が直ちに公序良俗に反し私法上無効となるとまではいえない。

(ウ)また,原告らが主張するような,上山市が選定条件のすり替えを行ったと認めるに足りる証拠はなく,前記1(1)ア(ウ)及び前記前提事実(2)か らすると,本件市道前川ダム東線道路が,本件工事前及び本件工事後に 本件大型車両対面通行可能条件を満たしていないとまでは認められない。 そして,本件工事の内容が,本件市道前川ダム東線道路の全ての箇所に おいて大型車両のすれ違いを可能にするものでなければ ,本件工事が公序良俗に反するものとなるわけではないことは,前記1(1)アのとおり である。 (エ)よって,原告らのかかる主張には理由がない。

 

ウ 談合について

(ア)証拠(甲13)によれば,上山市は,平成27年5月29日,本件工事について,予定価格を1億1763万5000円(税抜)とする入札 を行い,A土建を含む10社が参加したところ,最高入札額は,1億 2300万円(税抜)で,最低入札額は,1億1650万円(税抜)で あったことが認められ,本件工事のような類型の工事における入札においては,工事業者が多数の費目を積算して価格を決定することは当事者間に争いがない。

(イ)原告らは,前記(ア)の認定事実によって本件入札における談合が推認される旨主張するが,前記(ア)の認定事実は,飽くまで入札結果にすぎず, 談合の具体的内容について明らかにするものではなく,他にA土建を 含む本件入札参加工事業者による具体的な談合の事実を認めるに足りる 証拠はない。

(ウ) よって,原告らの談合に係る主張には理由がない。

 

 したがって,本件請負契約が公序良俗に違反し私法上無効となる旨の原 告らの主張はいずれも採用できず,他に,本件請負契約が私法上無効とな ったり,本件請負契約を締結した市の判断に,裁量権の範囲の著しい逸脱又はその濫用があるといった事情も認められないから,本件請負契約が私法上無効であるとはいえない。

(2) したがって,本件請負契約に基づく上山市の義務の履行として,横戸が本件支出をしたことに財務会計法規上の義務に違反する違法な点はないというべきであるから,横戸が上山市に対して損害賠償責任を負うということはで きない。

(3) また,上記検討のとおり,本件請負契約が私法上無効であるとはいえない から,上山市は,A土建に対して不当利得返還請求をすることができない。

 

2 地方自治法242条の2第1項1号請求について

 契約に基づく債務の履行として行われる公金の支出について地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止めを請求することができるのは,当該契約が私法上無効である場合に限られると解される(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照)と ころ,前記1(1)アで判示したとおり,本件請負契約が私法上無効であるとい う事情は認められないから,原告らのかかる主張は認められない。

 

第4 結論

 以上のとおり,原告らの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

 

山形地方裁判所民事部
裁判長裁判官 松下貴彦
裁判官 曽我 学
裁判官 菅原光祥

 


 

 ※ 以下、判決のスキャンデータ

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