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山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(エネルギー回収施設)に関する詳細、および諸問題について

上山市清掃工場用地造成工事 公金差止請求住民訴訟事件:昨日の裁判について | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 昨日の平成28年12月6日に山形地方裁判所において上山市川口の公称「エネルギー回収施設」敷地造成工事公金支出差し止めを求める裁判(住民訴訟弁論準備)が行われました。

 この裁判(平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件)のこれまでの経緯:

 昨年(平成27年7月1日)山形広域環境事務組合は、敷地造成工事に関する入札を行い、上山市の羽陽建設・堀川土建建設工事共同体が落札。7月3日に請負代金額3億7098万円で工事請負契約を結び、 7月24日の組合議会で承認後、本契約となりました。 しかし、これに対し守る会は、

  1.  契約内容が不明確である。
  2.  河川法に違反した計画である。
  3.  談合が行われていたと考えられる

として、組合監査委員に対し平成27年10月28日、住民監査請求を行いました。その後同年12月3日、守る会代表3人が意見陳述したものの、 12月28日に棄却されたため、翌平成28年1月27日敷地造成工事公金支出差止住民訴訟を提起しました。

 12月6日まで守る会は、第1から第4準備書面と書証を山形地方裁判所に提出。それに対し組合は、第1から第4までの準備書面と書証を提出しています。

 「河川法に違反した計画である」を証明するために、守る会はこれまで河川工学博士に現場検証と分析を依頼し、組合の計画が多方面で河川法に 違反する主旨の論文を提出して参りました。12月6日に提出された甲58号証を、下記に公開致します。この論文では、組合の行った敷地からの排水量計算に誤りがあるため、下流の忠川や前川に対して組合の計画以上の水が流れるため、水害の被害を助長することを述べています。


*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年11月19日

組合の清掃工場用地造成工事は 忠川、前川に重大な負荷を与える

博士:河川工学
技術士:総合技術監理(建設)
技術士:河川、砂防及び海岸 建設コンサルティング経歴30年
第一種情報処理技術者

1.造成地雨水排水量の確率年別試算(造成地開発後の10年確率流出量の比較)

 組合の用いている雨水排水計画における、流出係数、流達時間を用いて、山形県の河川整備計画で用いる確率別短時間雨量により造成地雨水排水量の確率別試算を行い、組合排水計画が、一級河川忠川及び前川における現状の流下能力に対し過大であることを述べる。

 組合は造成地の排水計画を、余裕をもたせた計画としているが、それは敷地内の安全性を優先とした意味での余裕に過ぎない。組合の示す「安全性」とは、敷地に接する山や敷地に降った雨水を迅速に忠川に排出することである。そして、敷地内の安全を確保するあまり、排出先の忠川・前川の現流下能力にとって過大かつ負荷を与える計画になり、現在でも余裕のない前川下流域に悪影響を与えることを、ここに示す。

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山形県:降雨強度曲線の係数表
県でのホームページに公開されている“山形地域における河川整備計画”に準拠する。

r=a/(t^ n + b) (mm/hr)

n, a, b = 確率年により代入する

t:降雨の継続時間(分): 組合の計画値(kervey式)を用いて試算する

 近年「気候変動に伴う」とも言われている集中豪雨は、毎年のように“過去最大”と表現され、全国に被害をもたらしている。そのような現状において、流下能力が50年確率に満たない忠川、前川や造成地においても超過降雨に配慮する必要がある。

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■ 流出量計算書
 造成地開発後(河川整備計画における降雨強度式を用いた場合、ほか流出係数、到達時間、排水面積の条件は組合計画と同様)

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造成地開発後の10年確率流出量の比較をおこなう。
  Q=1.357+2.645 =4.002m3/s(県河川確率雨量強度式10年確率による)
  Q=1.498+2.923 =4.421m3/s(組合計画値)(造成地排水能力5.12m3/s)

※ 造成地開発後の排水量は、山形県河川整備計画の降雨強度式の考え方を用いると、 組合が道路土工要綱で計画した流量より余裕を見込んで10%大きく見積もられているため、排出先の河川にとっては過大となってしまう。さらに、組合の計画する排水施設能力(計画+余裕2割=5.12m3/s)と比較すれば、10年確率規模を超える降雨の場合には、28%増となった排水量が忠川、前川に流入するため、河川の大幅な負担増となる。また、組合の排水施設計画は、河川の降雨強度式を用いた場合、計算表から30~40年確率相当規模の降雨をも忠川へ排水する施設としている。このような排水計画では、未だに改修されていない前川の流下能力を超えてしまい、下流域の洪水氾濫被害を助長するものである。

【付設】上記計算による10年確率の開発後流出量は、4.002㎥/sである。 組合は、これを5.12㎥/sとしているが、この数字の差は以下の違いである。

5.12㎥/s
 組合の10年確率における道路土工要領準拠、及び計画排水量4.421㎥/sに対する排水施設計画を行った場合の、余裕も含めた“施設排水能力”である。この流量は、造成地が浸水されることなく、忠川に順調に排水されることを目的とした流量と考えられる。

・4.002㎥/s
 県が公表している河川整備計画における“山形”地域の10年確率降雨強度式(組合の道路土工要領とは異なる)を用いた数字である。組合は、道路土工要領の降雨強度式による到達時間、流出係数、排水域面積の値を用いている。

※つまり、河川計画で考える降雨外力では、同じ10年確率では4.002㎥/sであるが、道路土工要領を用いて計算すると、4.421㎥/sとなってしまう。その結果、流出量は約10%増えるため、河川にとって流入過剰となる。さらに、造成地の排水施設能力が5.12㎥/sであれば、10年確率を超える降雨でも、この量まで排水されることも考えられる。そうなれば、さらに過大放流が見込まれ、下流域に甚大な被害をもたらすこともあり得るのである。

 

2.前川氾濫推定容量と水位上昇量の推定(忠川流出量による前川への影響)

 忠川の前川ダムを含めた計画流量配分は、山形県ホームページによると0㎥/sである。現在改修されていない前川が満杯となり、危険な状況において、忠川からの合流量が重なれば、すなわちその流出量は、洪水氾濫を起こすものとなる。

 ここでは上記で算出した確率年別忠川流量に、図‐1に示す合理式の単一ハイドログラフ(流出波形)を想定し、その容量を推算して前川へ合流後の氾濫容量として算定する。また、それを想定できる氾濫面積で除し、忠川流出による氾濫水深として推算する。

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氾濫容量(V㎥)= Q㎥/s × t 分×2 × 60秒 / 2

 Q :忠川流出流量: 合理式による
 到達時間内降雨強度: 合理式においては到達時間内は一定の降雨強度としている
 t : 到達時間(流達時間と同義)

前川氾濫水深(Hm) = V ㎥ / Am2(氾濫面積)

 氾濫面積は、前川の忠川合流点付近の河川幅:およそ5m程度、氾濫原延長:およそ1km(忠川と前川の合流地点から跨線橋下まで)として5m×1000m=5000m2 と想定した。つまり、現在でも未改修で流下能力の不足している前川が、1km下流の跨線橋下までの間で、護岸崩落や橋桁等への流木などによる閉塞等により満杯となる洪水状況を想定する。そこに忠川の排出容量が流入した場合、5m幅×延長1kmにおいて、平均的に水位Hがどの程度護岸を超えて上昇するかを試算した。

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  • 10年確率においては7200㎥、前川計画40年確率(未整備)の降雨においては、約1万㎥もの排水容量が想定される。また、流出容量としては、雨量ピークの前後にも降雨流出があるので、実際はさらに大きな排水容量となる。
     
  • 想定する10年確率の排水量において、前川の洪水氾濫に対する影響は、その河川氾濫水深1.4m程度に達する。
     
  • 近年の集中豪雨の増加、増大傾向を考えれば、30年から100年確率規模の降雨を当然想定すべきであるが、造成地の排水は、前川氾濫水位に対して、2m程度の水位上昇が推定され、この程度の堤内地(河川外民地)への洪水氾濫被害が助長されることは容易に考えられる。すなわち、前川と忠川合流点より下流の上山市道、及び橋などが冠水することにより、この上方に住む市民の唯一の避難路さえ途絶され、重大な被害が生じることが想定される。
    通常、水深50cm程度で歩行避難は困難となり、自動車も動けず避難には使えない。市道の上流側では、平成26年豪雨の際に道路が大規模に崩落し、通行不能となったことは周知の事実である。
     

3. 造成地開発前後の雨水流出量の比較

① 造成地開発前後のピーク流出量の比較(10年確率)

組合の計画(10年確率の雨が降った場合)に従った場合、造成地開発後の排水量が、造成前と比べてどれだけ増えるかについて、検証する。ここでは、10年確率の雨が降った場合においての造成前の流出量を、河川整備計画の降雨強度式を用いて計算し、組合の雨水排水計画(10年確率)との比較を行う。

  •  造成地開発前の10年確率流出量
    降雨強度式は、山形県が公開している“山形地域における河川整備計画” (道路土工要綱とは異なる)に準拠する。降雨強度rは下式による。
    r=a/(t^ n + b) (mm/hr)
         10年確率での降雨強度式係数 n = 0.84
          a = 1721
          b = 10.2
    :降雨の継続時間(分): 組合の計画値(kervey式)を用いて試算する。
         t1 = 25.1分 : 基準点1
         t2 = 33.9分 : 基準点2

    基準点1   r1 = 1721 / (25.1^0.84+10.2) = 68.3mm/hr
    基準点2   r2 = 1721/ (33.9^0.84+10.2) = 58.4mm/hr

    流出量Q㎥/sは合理式を用いて計算する(道路土工要領、河川整備計画とも合理式)
       
    Q =1/3.6× f・r・A


     ここで、造成地開発前の流出係数 f(現況、計画)は、河川砂防技術基準より以下の地目による平均値とする。(河川砂防技術基準同解説 計画編(国土交通省河川局監修)“2.7.3洪水流出モデルの定数の決定“より)

       密集市街地:0.9      
       一般市街地:0.8     
       畑原野  :0.6      
       水田   :0.7      
       山地   :0.7

    基準点1:造成地については、ほぼ元休耕田であったため畑原野f1=0.6とする
    基準点2:ほぼ山地として、f2=0.7 を用いる。
    造成地開発前の流出量(10年確率) Q㎥/s

    ■基準点1(造成地):t=25.1分
    r1 = 1721 / (25.1^0.84+10.2) = 68.3mm/hr
    Q1 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.6×68.3×9.30ha/100 = 1.059㎥/s

    ■基準点2(山地含む):t=33.9分
    r2 = 1721/ (33.9^0.84+10.2) = 58.4mm/hr
    Q2 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.7×58.4×23.20ha/100 = 2.634㎥/s

    ■合計の排水量
    Q=Q1+Q2=1.059+2.634 = 3.693㎥/s

【付設】ここで行った造成地開発前の10年確率の流出量計算結果3.693㎥/sが、 本論P2の計算表の10年確率の合計Q=4.002㎥/sと異なるのは、流出係数の違いである。造成地建設前の建設地を河川砂防技術基準相当の値としており、後者は造成地開発後雨水排水計画の組合が示す流出係数を用いたものである。

これより、造成地開発前後の10年確率の流出量を比較すると
□ 造成地開発後 組合排水計画(10年:道路土工要綱による)Q=4.421 ㎥/s
■ 造成地開発前 河川計画の考え方               Q =3.693 ㎥/s

造成地開発による増加量は、10年確率の降雨時に、

4.421-3.693=+0.728㎥/s 増 となる。

また、増加率は、4.421 / 3.693 = 1.197倍 となり、約20パーセント増加することとなる。

 ここでは造成地開発前の到達時間(流域上流最遠点から排水地点までの流下時間)を、組合のコンクリート排水路が整備された状況の速い流速で試算しているが、本来造成前の流出速度は開発後より遅いため、洪水の集中も分散されて、到達時間も長くなり、造成地開発前の流出量がさらに小さかったことは容易に想定できる。

 

② 造成地開発前後のピーク流出量の比較(40年確率)

 前川や忠川の治水計画(H9河川法改正以降、河川整備計画・河川整備基本方針は未策定であり、河川法上の正式なものではないという前提)は、40年確率の流出量を算定している。一方、組合は10年確率の計画を立てたうえで、40年確率の前川の流量と比較しており、造成地雨水排水量と比較して過小評価をしている。実際40年確率の流出量について、前川にどのくらい負荷を与えるか、という計算をしてみる。

・本論での40年確率流出量:5.298㎥/s(本資料P2計算表)
・造成前の40年確率の想定流出量は以下に計算する。

造成地開発前の流出量(40年確率) Q㎥/s

■基準点1(造成地):t=25.1分
r1 = 2875 / (25.1^0.89+14.2) = 90.4mm/hr
Q1 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.6×90.4×9.30ha/100 = 1.401㎥/s

■基準点2(山地含む):t=33.9分
r2 = 1721/ (33.9^0.89+14.2) = 77.3mm/hr
Q2 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.7×77.3×23.20ha/100 = 3.487㎥/s

■合計の排水量
Q=Q1+Q2=1.401+3.487 = 4.888㎥/s

【付設】この造成地開発前の流出量計算結果である4.888㎥/sが、本論P2の計算表の40年確率の合計Q=5.298㎥/sと異なるのは、流出係数の違いである。そして、造成前の建設地を、河川砂防技術基準相当の値としている。後者は、造成地開発後の雨水排水計画における道路土工要綱に基づく最大値であり、組合が計画の流出係数を用いたことによる。

 これより、造成地開発前後の40年確率の流出量を比較すると

□造成地開発後 組合排水計画諸元(道路土工要綱の最大流出係数)Q=5.298㎥/s
■造成地開発前 河川計画の考え方(流出係数、降雨強度式)   Q =4.888㎥/s

造成地開発による増加量は、40年確率の降雨時に、

5.298-4.888=+0.410㎥/s 増であり

増加率は、5.298 / 4.888 = 1.084倍 となり、約8パーセント増加することとなる。  ここでは造成地開発前の到達時間(流域上流最遠点から排水地点までの流下時間)を組合のコンクリート排水路が整備された状況の速い流速で試算しているが、本来、造成前の流出速度は開発後より遅いため、洪水の集中も分散されて、到達時間も長くなり、造成地開発前の流出量はさらに小さかったことは容易に想定できる。

③ 造成地開発前の休耕田の貯留による流出抑制効果

 造成地開発前の状況において、山地も含む休耕田の流域の流出量は、一旦休耕田(造成地開発区域と同等)である低地に湛水し、忠川へ排水されると考えられる。この貯留する容量Vは、休耕田の深さを、あぜ道等と想定して平均的に30cmとし、組合の建設地面積(雨水排水計画P4)0.032+0.004=0.036 km2を用いると、

貯留V㎥/s=0.3m×(0.036×1000×1000)m2 = 10800 m3

この休耕田の湛水、貯留容量は、10800 m3程度を見込めることとなる。ここで前期記、表―4 忠川流出量による前川氾濫水深Hの推定表における氾濫容量(忠川への流出)と比較すれば、50年確率降雨での流出氾濫量 V=9905 m3は、全て貯留されるため、忠川及び前川への流出量は、0m3とできる効果がある。
 仮に平均的に20cmの湛水深と想定しても、貯留容量は

貯留Vm3=0.2m×(0.036×1000×1000)m2 = 7200 m3

となり、同じく表―4における氾濫容量Vは10年確率で7204 m3をほぼ貯留、調節できる効果を持っていたと推算できる。

このように休耕田における貯留効果は、少なくとも10年確率~50年確率を有しており、忠川、前川へのピーク排水量を0m3と出来ていたことがわかる。故に、造成地盛土、開発により、流出係数f=1.0(造成地への流出量を全て排水する)を想定した組合の計画は、この造成前の貯留効果を無にするものであり、同等の貯留容量を持つ雨水貯留施設を設置しなければ、忠川を通して流下能力の不足している前川で洪水氾濫を起こすことは明らかである。

※組合造成地の雨水排水施設の流下能力5.12m3/s(施設断面の余裕を含む:10年確率)は、本来忠川の流量が0m3/で計画されているので、仮に前川合流河川の計画流量170m㎥/s (40年確率)との比較をするとしても3.0%となり、1.0%を超えるため、雨水貯留池などの流出抑制施設を設置しなければ、前川への氾濫被害を助長することになる。と共に「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策;第6条(調節地の設置基準)」によれば、1%を超過するため、この対策を行っていない組合の雨水排水計画は、前川へ重大な負荷を与えるものである。

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