山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(エネルギー回収施設)に関する詳細、および諸問題について

平成28年5月23日付即時抗告状に対する組合の答弁書

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 上山市川口に建設予定の一般ごみ焼却施設敷地造成工事差し止めを求める仮処分命令申立事件について、山形地方裁判所は平成28年5月12日付けで、守る会の申し立てを「却下」しました。
 
 それに対し守る会は、5月23日付で仙台高等裁判所へ即時抗告状を提出致しましたが、公告状に対する反応はありませんでした。

 しかし、去る6月29日、山形広域環境事務組合弁護士より、守る会弁護士宛にFAXにて「答弁書」が送信されましたので、公開致します。答弁書には、乙2号証として「完成写真」と、乙3号証として「目的物引渡書」が添付されています。
 
 敷地造成工事の工期は、平成27年7月24日~平成28年5月31日となっていますが、答弁書は工期を29日過ぎた後、守る会に届いたことになります。

 山形広域環境事務組合が立案した敷地造成工事計画は、一般的な基準である「道路土工要綱」に基づいて策定したとしていますが、守る会はこの現場において、それを適用することは誤りであるとしています。さらに、「雨水排水計画」について、その対象面積の捉え方、降雨確率、河川 整備計画の有無等について見解の相違が著しいため、この問題について正しく判断されることを求めています。

*抗告状は一部をプライバシー等に配慮し、編集しています。

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平成28年(ラ)第91号 造成工事禁止の仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件

抗告人 *** 外5名
相手方 山形広域環境事務組合

答弁書

平成28年6月29日
(債権者・債務者の個人情報のためこの部分省略)

第1 本案前の答弁
1 本案前の答弁
(1) 抗告人らの申立をいずれも却下する
(2) 申立費用は抗告人らの負担とするとの決定を求める。

2 理由
 抗告人らは,仮処分命令申立書において,相手方のエネルギー回収施 設の敷地造成工事について,「敷地造成工事が完成すると,債権者らの 人格権,職業遂行権,会社経営権,営農権,農地の所有権,農業水利権 が侵害される危険性が高い。」(仮処分命令申立書I第5 《7頁》)旨を 主張し,「債権者らは,現在,本件造成工事の差止めを求める本案訴訟 の準備中であるが,本件造成工事の建設工事の工期は,平成28年5月 3 1日であり,工期の到来が間近に迫っている。」「従って,本案訴訟の 提起,その結果を待っていては,造成工事が完成してしまい,上記のよ うな債権者らの権利侵害の危険性がいつ発生してもおかしくない状懲 となる。」(仮処分命令申立書Ⅱ 《7頁》)との理由により,相手方はエ ネルギー回収施設の造成工事を行ってはならないとの工事差止めの仮 処分命令を求める申立てを行っているものである。
 しかしながら,上記のように抗告人らが工事差止めを求めている相手方のエネルギー回収施設の敷地造成工事は,平成28年5月27日に既 に完了したものである(乙第2号証 完成通知書,乙第3号証 目的物 引渡書)。 従って,抗告人らの本件申立は,訴えの利益を欠く不適法な申立とな っており,却下を免れないものである。

第2 本案の答弁
1 抗告の趣旨に対する答弁
(1) 抗告人らの抗告を却下する
(2) 抗告費用は抗告人らの負担とする
との決定を求める。

2 抗告の理由に対する答弁
(1) 前川の逸水を悪化させる危険性の不存在について
ア.本件の争点について
 即時抗告状第2の三の1(5頁)は,原決定第3の1(4頁)が「本件の争点は,本件雨水排水計画が不合理であるか否かであるJとしたことが不相当であり,「本件土地からの雨水排水が,忠川及び前川の治水計画にどのような影善を与えるか,が問題とされなけ
ればならないのである」旨を主張している。
 しかしながら,原審においては,抗告人らは,本件造成工事の施工後は大雨が降った後に想定外の水水量が忠川に流れ込むことになり,これにより前川の逸水を悪化させる危険があると主張していたものであるが,その理由については,何らの根拠を示すことなく,水田の面積×50cmの貯水能力があった,現在の忠川に想定されている流量が0㎥/ sであることから想定外の水量に流れ込むことになる等の事実と異なる主張をしていたに過ぎなかったものである(相手方第1準備書面第2を参照)。
 このため,原審においては,相手方が主張していた,本件雨水排水計画によれば本件造成工事後の前後における排水量の増加はわずかしかないとの主張について,本件雨水計画が合理的であるか否かが争点となっていたものである。
 よって,原決定第3の1(4頁)が「本件の争点は,本件雨水排水計画が不合理であるか否かである」としたことは相当なものであり、上記抗告人ら主張には理由がないものである。


イ.雨水排水計画の降雨確率年について
 即時抗告状第2の三の2 (5頁,6頁)は,相手方の雨水排水計画が降雨確率年10年としたことを不相当とし,降雨確率年を40年とし,40年に1度の大雨を想定しなければならない旨を主張している。
 しかしながら,上記抗告人ら主張は,雨水排水計画の降雨確率年について独自の見解を示すものに過ぎず,また,本件造成工事により前川の逸水を悪化させる危険があるとの抗告人ら主張の具体的根拠を示しているものでもなく,理由がないものである。

ゥ.雨水排水計画における降雨強度について
 即時抗告状第2の三の3(6頁,7頁)は,原決定第4の1(5頁)が「本件雨水排水計画によれば,各集水域における降雨強度は,最小でも64. 62ミリメートル/時の数値となっているのだから.依権者らが主張する54ミリメートル/時よりも高い降雨強度を前提としているので、債権者らの主張を前提としても,債務者の計算が不合理であるとはいえない」としたことが不相当であり,その理由として,相手方の雨水排水計画が10年確率降雨強度式において時間雨量(R10)を45mm/hとしていること(甲第16号証の11頁)を挙げている。
 しかしながら,相手方第1準備書面第1の3(2) (5頁,6頁)において詳述したように,甲第16号証の雨水排水計画1l頁の降雨強度式は,I=4000/(t+28)というものであり,時間雨量(R10) 45mm/hとの記載は,同降雨強度式による降雨強度の具体例として,降雨継続時間60分の降雨強度が45mm/hであることを例示したに過ぎないものである。
従って,原決定の上記判断を不相当なものとする上記抗告人ら主張は,雨水排水計画の降雨強度式の理解を誤っているものであり,理由がないものである。

エ.前川の河川断面図の出所について
 即時抗告状第2の三の4 (7頁)は,相手方提出の報告書(乙第1号証)の別紙9の前川の河川断面図の出所が不明である旨を主張している。
しかしながら,乙第1号証の報告害の21頁に記載があるように,同報告書の別紙9は,忠川と前川の合流点から下流側の五反田橋付近における災害復旧時の河川横断面及び河川勾配(別紙8)をもとに,断面積,勾配からマニング式を用いて現況流下能力の計算を行ったものであり,別紙9の断面図の出所が不明であるなどとする上記抗告人ら主張には理由がないものである。

オ.原決定の相当性について
 即時抗告状第2の三の5 (7頁)は,「道路土工要綱に忠実に策定された計画であったとしても,その立地条件,河川への排水の方法,排水先の河川の状況等の如何によっては,当該河川沿川の住民らに被害を与えることがあるのである」旨を主張し,原告らの申立てを却下した原審の判断が不相当であるとしている。
 しかしながら,抗告人らからは,本件造成工事により前川の逸水を悪化させる危険があるとの控訴人ら主張の理由としては,水田の面積×50cmの貯水能力があった,現在の忠川に想定されている流量が0㎥/ sであることから想定外の水量に流れ込むことになる等の事実と異なる主張がなされていたに過ぎず(相手方第1準備書面第2を参照),前川の逸水が悪化する旨が相当な根拠に基づいて具体的に主張されることはなかったものである。
 従って,原告らの申立てを却下した原審の判断は相当なものであり,上記抗告人ら主張には理由がないものである。

 

(2)忠川のコンクリート護岸崩壊の危険性の不存在について
ア.バランスウェイト式フラップゲートについて
 即時抗告状第2の四の1(8頁)は.上流側の排水口のバランスウェイト式フラップゲートの「排水口が忠川の水位の下になった時,・・・自動的に開くのか疑問である」としている。
 しかしながら.甲第l6号証の雨水排水計画29頁,乙第1号証の報告書19頁にあるように,上流側の排水口のバランスウェイト式フラップゲートは「2~3 cm程度のわずかな水位差でも自動的に開閉する」ものであることから,忠川の水位が排水口より上になったとしても水位差で自動的に開閉し,排水がなされるものである。
 よって,上記抗告人主張には理由がないものである。

イ.水圧,浮力について
 即時抗告状第2の四の2 (8頁)は,原決定が「仮に河川水位が上昇して排水ができず,忠川のコンクリート護岸に水圧や浮力が加わる場合があったとしても,その水圧等の影響については,具体的機序が明らかではない。」としたことを不相当であるとしたうえで,その理由について,
「・・・忠川への排水が十分にできない場合は.排水路から雨水が流れ.
本件土地に滞留することになる。この場合,本件土地に降った雨水は,
本件土地に十分に浸透し,その土中に飽和状態となっており,しかも
護岸コンクリートに多大な水庄が加わることになるし,土中に没透し
た雨水が忠川のコンクリートの河床の下部に入ることによって,浮力
も生じる。このようなことは,常識的にすぐわかることである。」
と主張している。
 しかしながら,雨水が土地に浸透したとしても飽和状態になるものとは限らず,また,忠川のコンクリート護岸には地下水を排水するための水抜き穴が設けられており(このような水抜き穴は一般的に設けられているものである),地下水はこの水抜き穴を通して河道に排水されることから,地下水により「護岸コンクリートに多大な水圧が加わること」とはならないものである。そして,地下水による浮力との点についても,そもそも,水よりも比重の重い忠川のコンクリート護岸が上に持ち上げられることとなるものではないものであり,浮力が原因となってコンクリート護岸が崩壊するとの機序はそもそも考え難いところである。
 よって,控訴人らの上記主張にも理由がないものである。

ゥ.忠川のコンクリート護岸の状況について
 即時抗告状第2の四の3 (8頁, 9頁)は,忠川のコンクリート護岸に亀裂(クラック)が見られること,クラックから鉄分が滲出していることから,鉄筋に錆が生じているか,エネルギ一回収施設側の地下水が河川側に滲出しているものであり,コンクリート護岸が著しく劣化しており,水圧,浮力が加わった場合に崩壊する危険性が高い旨を主張している。
 しかしながら,エネルギー回収施設付近の忠川のコンクリート護岸のクラックは,一般的に見られる,コンクリート収縮に起因する経年劣化に伴うクラックに過ぎないものである。
 また,相手方としては抗告人らによる滲出物の分析結果は不知であるが,クラックからの滲出物に鉄分が含まれていたとしても地下水に含まれていた鉄分とも考えられるものであり,これをもってコンクリート護岸内部の鉄筋に錆が生じたとすることはできないものである。また,コンクリートはその内部を水が透過するものであることから,コンクリート護岸に鉄分を含む地下水が滲出していたことをもってコンクリート護岸が箸しく劣化したなどとすることもできないものである。

 そもそも.イで上述したように,水圧,浮力で忠川のコンクリー卜護岸が崩壊するとの抗告人主張の機序が全く不明といわざるを得ないものであり,上記の抗告人ら主張にも理由がないものである。

(3) 原審の進行について
 即時抗告状第2の二(4頁,5頁)は,原審の第3回審尋期日において提出された抗告人らの準備番面(1)と甲第29号証乃至甲第32号証に対し,相手方が反論を行わなかったことから.抗告人らの申立てを却下した原決定は不相当である旨を主張している。
 しかしながら.既に上述しているように本件造成工事により前川の逸水が悪化する危険性がある,忠川のコンクリート護岸が破壊される危険性があるとの抗告人ら主張には全く理由がないものであり,相手方において抗告人らの準備書面(1)、甲第29号証乃至甲第32号証に対する反論を行うまでもなく,抗告人ら主張に理由がないものであることは既に明らかになっていたものである。
 よって、上記抗告人ら主張にも理由がないものである。

(4) 結論
 以上より.原決定を不相当とする抗告人ら主張にはいずれも理由がないものであり,本件即時抗告は却下を免れないものである。

 

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