山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(エネルギー回収施設)に関する詳細、および諸問題について

即時抗告状の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 上山市川口に建設予定の一般ごみ焼却施設敷地造成工事差し止めを求める 仮処分命令申立事件について、平成28年5月12日付けで山形地方裁判所 は、守る会の申し立てを「却下」しました。

 それに対し守る会は、5月23日付で仙台高等裁判所へ即時抗告状を提出致しましたので、公開致します。

 山形広域環境事務組合が立案した敷地造成工事計画は、一般的な基準である 「道路土工要綱」に基づいて策定したとしていますが、守る会はこの現場において、それを適用することは誤りであるとしています。さらに、「雨水排水計画」について、その対象面積の捉え方、降雨確率、河川 整備計画の有無等について見解の相違が著しいため、この問題について正しく判断されることを求めています。
*抗告状は一部をプライバシー等に配慮し、編集しています。

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原決定の表示

山形地方裁判所平成27年(ヨ)第7号 造成工事禁止仮処分命いついて、同裁判所が平成28年5月12日になした次の決定)
1 抗告人らの申立てをいずれも却下する。
2 申立費用は抗告人らの負担とする。

抗告の趣旨
1 原決定を取り消す。
2 相手方は、別紙物件目録記載の各土地において、別紙工事目録記載の造成工事を行ってはならない。
3 申立費用は相手方の負担とする。
との裁判を求める。

 

抗告の理由

第1 原決定の判断
1 本件事案の概要
 本件は、相手方が、別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」と言う)において、新たな清掃工場を建設する計画を立てたが、この計画のために本来水田であり、その後耕作が放棄されたことによって低湿地となっていた本件土地を造成し、透水性や保水力を低下させることになるため、忠川への排水量が増加して、忠川や前川の溢水の可能性を高めるとともに、現在においても十分な流下能力を有していない前川からの溢水の危険をより高めることとなり、或いは、本件土地からの排水を十分に行うことができなくなるために本件土地に雨水が滞留して忠川の護岸に想定外の圧力を加えることとなり、同川の護岸を崩壊させて同川を堰き止め、同川から溢水させ或いは鉄砲水が発生すること等によって、抗告人らを湖の水が襲う他、抗告人らの勤務先や農地等に浸水させ、非難するための道路や橋を浸水させて避難困難にさせる等の被害を及ぼし、以て抗告人らの人格権、会社経営権、営農権、土地所有権、農業水利権等の権利を侵害する蓋然性が高いため、その造成工事の差し止めを求めた事案である。
 原決定が摘示する事案の概要(2p)においては、上記のうち、現在においても十分な流下能力がない前川の溢水の危険をより高めること、忠川の護岸が崩壊して同川を堰き止め、同川からの溢水や鉄砲水が発生して、抗告人らの避難経路が失われることについての記載がない。
原決定を書いた裁判官竹田奈未が本件事案を十分に理解していなかった証左である。

2 原決定の判断
 原決定は、「本件の争点は、本件雨水排水計画が不合理であるかである」とした上、相手方が行った道路土工要綱に基づいて行った雨水排水計画の計算は、「造成工事における雨水排水計画策定の一般的な手法に基づいてなされており、不合理な点は見いだせない」、「債権者らが根拠とする計画高水流量に関する数値は、本件とは異なる場面であるから、直ちに債務者が採用した計算式や数値が不合理になるとは言えない」、「本件雨水排水計画によれば、…債権者らが主張する…よりも高い降雨強度を前提としているので、債権者らの主張を前提としても、債務者の計算が不合理とは言えない」、などと言う判断を行った(5p)。
 また原決定は、本件土地からの排水のために設置される排水ゲートからの排水が十分に行われないとの指摘に対しては、「排水ゲートは河川水位以上の雨水が滞留しない設計となっているし、仮に河川水位が上昇して排水ができず、忠川のコンクリート護岸に水圧や浮力が加わる場合があったとしても、その水圧等の影響については、具体的機序は明らかではない」、などと言う判断を行った(5p)。
 そして、原決定は、あっさりと抗告人らの申立を却下したのである。
 しかし、原決定は誤りであり、速やかに取り消されるべきである。

第2 原決定の誤り
一 はじめに
 原決定の誤りとして第一に挙げるべきなのは、原審における当事者の主張立証との関連で原決定は著しく偏頗な判断を行ったものといわざるを得ないという点である。
 第二に、原決定は、本件雨水排水計画が不合理ではないなどと述べているが、本件事案について殆ど理解していないという点である。
 第三に、忠川の護岸が崩壊する可能性について、原決定は具体的機序が明らかではない、などと述べているが、これは社会人としての常識を欠く浅はかな判断を言わざるを得ないという点である。
以下、順に述べる。

二 原審における抗告人及び相手方の主張立証と原決定
 原審は、3回の審尋期日を経て決定を行った。即ち、平成27年12月4日に第1回審尋期日が開かれ、この日には、相手方から簡単な認否が書かれた答弁書が提出された。平成28年2月26日に第2回審尋期日が開かれ、この日には、相手方から具体的な相手方の主張が書かれた第1準備書面と、とその裏付けとなる乙1が提出された。そして、同年4月26日に第3回審尋期日が開かれ、この日、抗告人らは、相手方の第1準備書面に対する反論を述べた準備書面(1)、及び乙1に対する反証という意味付けを有する甲29~32を提出した。
 そして、上記第3回審尋期日において、裁判官竹田が、「さらに補充することはあるか」「債権者らが新たに主張している数値を下にして検討する予定はあるか」と質問したのに対して、相手方代理人は、「これはそもそも債権者らの主張なので、特に反論する必要はない」と述べて、審尋が終了したものである。
 上記のような経緯によれば、抗告人らが相手方の抗弁に対して反論し、それを裏付ける資料も提出したのであるから、抗告人らは、抗告人らの権利が侵害される高度の蓋然性があることについて、一応の立証を行い、それに対して相手方は特段の反論を行わず、反証も行わなかったという判断を行わなければならない。この一点だけからしても、原決定は取り消され、抗告人らの申立が認容されるべきであることは明らかである。
 ところが原裁判所は、行政が行っている工事を差止めることに腰が引けてしまったのか、抗告人らの主張を十分に理解しないままに、上辺をなぞっただけのような極めて杜撰な判断を行ってしまったものである。

三 本件雨水排水計画の「合理性」について
 原決定は、本件の争点を、「本件雨水排水計画が不合理であるか」という点にある、と述べている。これは、本件事案を十分に理解した捉え方ではない。即ち、本件は行政訴訟ではなく、人格権等に基づいて工事差止を求めるものである。従って、本件では、本件造成工事によって、抗告人らの人格権等が侵害される蓋然性があるかどうか、が吟味されなければならないのであり、本件雨水排水計画が合理性を有するかどうかという問題は、本件事案の判断に当たり、少し焦点がずれているものといわねばならない。
 そして、本件では、抗告人らの人格権等の侵害をもたらす一端は、忠川及び前川の増水・溢水によるものであり、忠川及び前川の増水・溢水から河川流域の人命や財産を守るためにあるのは、河川の治水計画(一般に、河川整備基本方針及び河川整備計画がこれにあたるが、忠川及び前川については、両者とも存在しない)である。
 従って、本件では、本件土地の雨水排水計画が合理的であるかどうか、ということではなく、本件土地からの雨水排水が、忠川及び前川の治水計画にどのような影響を与えるか、が問題とされなければならないのである。
 この点、原判決は、「本件雨水排水計画によれば、本件造成工事後の雨水排水量は、…大雨が降ったとしても、本件造成工事によって忠川に流入する雨水排水量が著しく増加することにはならない」などと言う判断を行っている。
 しかし、相手方の雨水排水計画は、原審における抗告人らの準備書面(1)(以下単に「準備書面(1)」と言う)においても述べたように、10年確率60分間降雨強度(=10年確率時間雨量)45.0という数値を前提として策定されたものである(甲16・11p、甲29・3枚目)。しかも、相手方の雨水排水計画は、上記のような10年確率時間雨量の雨が降った場合に、予定地の各区画においてどれくらいの流量の排水が発生するか、その排水は最遠部からどのくらいの時間で流末まで到達するか、以て本件清掃工場予定地から的確に排水できるか、という点に主な関心があるものである。
 一方、忠川及び前川においては、河川整備計画等の河川法に基づく正式な治水計画は存在しないが、山形県が策定した防災計画等においては、40年に一度の大雨を想定して、前川の流下能力が考えられている(甲22、23等)。従って、抗告人らの人格権等の保護という観点からするならば、40年に一度の大雨を想定した出水を考えなければならないのである。この点、相手方は、本件造成工事に当たり、10年に一度の大雨しか考慮していない。相手方が想定する本件造成工事後の出水量の増加は、10年に一度の大雨を想定したものにしかすぎないのであるから、前川沿川の住民らの人格権等に対して十分な配慮をしていないことは明らかである。そして、前川は、現在においても、40年に一度の大雨に対して、十分な流下能力を有していない(甲22,23、32)。この流下能力は、本件土地からの出水を考慮に入れていない数字である。本件土地からの出水が加われば、前川からの溢水の危険性が高まると同時に、溢水した場合の被害を増悪させることが、定性的に(即ち、具体的な数値を検討するまでもなく、物事の性質上、ということである)明らかである。
 また、原決定は、本件雨水排水計画によれば、各集水域での降雨強度は、最小でも64.62㎜/hの数値となっているのだから、抗告人らの主張する54㎜/hよりも高い降雨強度を前提としているので、抗告人らの主張を前提としても、相手方の計算が不合理とは言えない、などと述べている(5p)。
 しかし、相手方の雨水排水計画に出てくる、「各集水域での降雨強度」と言うのは、あくまでも10年確率60分間降雨強度45.0という大雨が降った場合を想定し、この数値を前提として、各集水域からの排水能力を計算したものである。抗告人らが掲げた、近時実際に降った大雨の雨量である、54㎜/hという数値は、相手方の想定する数式(甲16・11p)の、R10という部分に関係するものである。従って、相手方が、抗告人らの主張する大雨の雨量よりも高い降雨強度を前提としているなどと言う事実はない。この点は、原審の裁判官竹田の理解不足による判断というほかはない。
 なお、相手方は、本件土地付近(五反田橋付近)の前川の流下能力について検討したと称しているが(乙1・21p、別紙9)、ここで掲げられた前川の河川断面図は、出所が不明であり、しかも、実際の前川の河川断面を反映したものではない。相手方の想定は、非常に杜撰なものというほかはない。
 原決定は、本件の「道路土工要綱に基づいた計算は、造成工事における雨水排水計画策定の一般的な手法に基づいてなされて」いるとし、道路土工要綱に基づく計算を行っていることの一事を以て、本件雨水排水計画に合理性がある、という判断を行っている。
 しかし、何度も繰り返すが、道路土工要綱は、工事によって造成される物を、的確な排水を行うことによって大雨から守るということに主眼が置かれたものである。これに対して、本件は、排水された後の水によって、周辺住民らが被害を受けることを問題としているのである。従って、道路土工要綱に忠実に策定された計画であったとしても、その立地条件、河川への排水の方法、排水先の河川の状況等の如何によっては、当該河川沿川の住民らに被害を与えることがあるのである。原判決は、このようなことを十分に理解せず、本件雨水排水計画と河川の防災計画との整合性等を考慮せず、おそらく、難しい数式等が出てきたのでよくわからないまま、「とりあえず行政のやっていることを正しいとする」と言う、低レベルの裁判官にありがちな馬鹿の一つ覚えのような決定を書くに至ったものと思われる。
このような決定は是正されなければならない。

四 忠川の護岸の崩壊の可能性について
 原決定は、忠川の護岸に関する問題について、第一に、忠川への排水ゲートは、河川水位以上の雨水が滞留しない設計となっている、などと述べている(5p)。
 しかし、本件土地の上流側に設置される予定の排水樋管の排水口は、忠川の計画高水位よりも低い位置に設置されており、忠川の水位がこの排水樋管の排水口よりも高くなることがあり得ることが想定されている。そして、忠川の水位がこの排水口よりも高くなった場合においては、「逆流防止」のためと称して、排水口は閉じられる。排水口が閉じられた後は、本件土地側にどんどんと水が滞留することになる。相手方は、この上流側の排水口のゲート形式として、バランスウェイト式フラップゲートを採用しており、このゲートは僅かの水位差でも自動的に開閉する、などとしている。しかし、この排水口が忠川の水位の下になった時、仮令本件土地側の水位が忠川の水位よりも高くなっても、自動的に開くのか疑問である。
 第二に、原決定は、排水樋管からの排水ができず、忠川の護岸コンクリートに水圧や浮力が加わる場合があったとしても、その水圧等の影響について、具体的機序が明らかではない、などと述べている(5p)。
 しかし、忠川への排水が十分にできない場合は、排水路から雨水が溢れ、本件土地に滞留することになる。この場合、本件土地に降った雨水は、本件土地に十分に浸透し、その土中に飽和状態となっており、しかも護岸コンクリートによって水みちが塞がれて行き先を失っていることになる。そのため、護岸コンクリートに多大な水圧が加わることになるし、土中に浸透した雨水が忠川のコンクリートの河床の下部に入ることによって、浮力も生ずる。このようなことは、常識的にすぐわかることである。「具体的機序が明らかではない」などと言えるのは、常識と公正な判断を行う能力を欠如した裁判官竹田にして初めて可能なことであろう。
 そして、現実に、忠川の護岸コンクリートには多数の亀裂が入っており、しかもその亀裂の多くは、護岸コンクリートの天端を超えて、河川側から本件土地側に至っている(甲33、34)。このことは、護岸コンクリートの劣化が著しいことを物語っている。また、護岸コンクリートの亀裂のうちには、茶褐色の滲出物が漏出している箇所がある(甲35~37の4)。この茶褐色の滲出物は、鉄分であった(甲36,37の1~4)。亀裂から鉄分が滲出しているということは、護岸コンクリート内の鉄筋に水分が接触し、錆が生じてその錆が滲出しているか、護岸コンクリートの本件土地側の地下水が河川側に滲出しているか、いずれかである(甲36)。その何れの場合であっても、護岸コンクリートが著しく劣化していること、今後その劣化がますます進むことを意味している。
 このような状態である以上、護岸コンクリートに大きな水圧が加わった場合にはこれが崩壊する危険性が高い。また、浮力が加わった場合も同断である。
 従って、忠川に対する雨水排水が十分にできなかった場合、同川の護岸コンクリートが崩壊する可能性が高く、その場合、忠川の流れが阻塞されて、抗告人の勤務先や、忠川右岸の市道が水没し、人格権や土地所有権等が侵害されると同時に、抗告人らの避難路が失われる可能性がある。また、崩壊した護岸コンクリートが決壊して鉄砲水が発生し、勤務先の敷地や前川周辺の農地や宅地に襲いかかり、抗告人らの生命・身体、抗告人らの土地所有権等が侵害される可能性もあるものといわねばならない。

第3 結論
 よって、原決定は取り消されるべきであり、抗告人らの申立は認容されるべきである。
 なお、本件造成工事は、平成28年5月末日が工期となっているから、本件申立は速やかに認容されるべきである。

以上


※以下省略

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