山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

前川ダム東線道路改良工事について、山形県の環境と観光産業を守る会が上山市長 横戸長兵衛 氏に対し提訴

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 平成27年10月29日、山形県の環境と観光産業を守る会会員7名は、 上山市監査委員に対し、住民監査請求を行いました。
 現在進められている公称エネルギー回収施設(川口)に至る「前川ダム東線道路改良工事」に於いて、不適切な行為があるとの監査を求めたものですが、 請求人の意見陳述を経た結果、12月25日付けで棄却されました。

 守る会は、この結果を不服とし、平成28年1月25付けで山形地方裁判所宛に訴状を提出致しました。
 問題の上山市道は幅員が狭く、現在行われている拡幅工事を行っても、大型車や緊急車両の相互通行に支障が出る他、歩行者等の安全が確保できないとい う点が、主眼です。


※ 訴状原文は長文のため、ブログ上では内容の一部を変更・省略しております。また個人情報等に該当する箇所は掲載しておりません。一部の箇所ではブログ独自に、図説による補足を行っている場合があります。

 


訴 状

原告  5名(上山市
被告 上山市長 横戸長兵衛


前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件

 

請求の趣旨

  1. 被告は、前川ダム東線道路改良工事に関し、平成27年6月1日にA社との間で締結した工事請負契約に基づく請負代金1億2582万円のうち、金7549万2000円を支出してはならない。
  2. 被告は、横戸長兵衛及びA社に対し、金5032万8000円及びこれに対する平成27年6月25日から支払済まで年5%の割合による金員の損害賠償請求をせよ。
  3. 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

第1 本件道路改良工事計画の概要

  1.  上山市を含む2市2町が構成員となっている一部事務組合・山形広域環境事務組合は、上山市川口地区において、新たに清掃工場(同組合は、清掃工場と言わず、「エネルギー回収施設」などという事実を隠ぺいするための事実にそぐわない名称を用いている)を建設する計画を有している。国道13号線から同清掃工場の敷地に入るためには、市道である前川ダム東線(以下「本件道路」という)を利用するほかないが、同道路は幅員が狭く、清掃工場建設工事に関わる大型車、もしくはゴミを搬入するための車両と、後述のとおり本件道路を利用している原告B社(以下「原告B」という)に出入りする大型車とのすれ違いが困難な状態にある。
  2.  そのため、上山市は、「現況の舗幅員を拡幅し、通行の利便性を図り、また無散水消雪施設により、冬期間の通行障害を緩和します」という目的を掲げて、市道前川ダム東線の、国道13号線との交差点から奥羽本線の下を抜けて、清掃工場予定地に入るために新たに組合が忠川にかけた橋梁(以下「新橋梁」という)に至るまでの間について、拡幅工事を行うこととし、A社(以下「A」という)に対して、工事請負契約を締結して工事(以下「本件工事」という)を発注している(甲1)。
  3.  本件工事の請負契約は、平成27年6月1日、締結された(甲1)。
    本件工事の工期は、平成27年6月1日~平成28年3月31日となっている。
    本件工事の内容は、別紙工事目録記載のとおりである。
    本件工事の工事代金は、金1億2582万円とされており、このうち、平成27年6月25日、金5032万8000円が既に前払金として支出されている(甲1)。

第2 当事者(個人情報に関わるため省略)
第3 本件工事の問題点~通行権侵害 (*ページ最後の図1,2を参照)

  1.  本件道路は幅員が狭く、国道13号線から、新橋梁に至るまでの間に、5カ所ほど、大型車同士のすれ違いが困難な場所がある(国道13号線から本件道路に侵入して間もない場所にあるカーブ箇所、②本件道路が前川に架かる五反田橋を渡る前のカーブ箇所、③本件道路が五反田橋を渡り切った後のカーブ箇所、④本件道路が奥羽本線の下をくぐる前のカーブ箇所、⑤本件道路から新橋梁に入る箇所[甲5])。このうち、本件工事によって拡幅されるのは、上記のうち、④の手前の直線部だけであり、その他の場所について拡幅工事がなされる予定はない。
  2.  しかし、本件工事によっても、④の箇所は大型車同士のすれ違いが可能になるということではなく、①~③及び⑤は、本件工事によっても改良されることはない(甲12)。
  3.  本件道路は、清掃工場に関し、新橋梁の建設工事や清掃工場敷地の造成工事が始まるまでは、大型車は、原告Bの車両以外は殆んど通らなかった。ところが、清掃工場の造成工事及びその建設により、本件道路を大型車が頻繁に通ることとなったし、それらの工事が完成すればこれまでにも増して数多くの大型車が通ることになる。本件工事は、これまでにも増して大型車の通行を多くするために行われるものである。
  4.  ところが上記のとおり、本件工事によっても、大型車同士のすれ違いが困難な箇所が5カ所も残ることになる。そして、本件工事によって大型車がより多く通ることになれば、大型車同士のすれ違いが困難な場面が数多く出来することとなり、本件道路の円滑な通行は困難となる。特に原告Bは、日常的に本件道路を大型車の通行のために利用してきたのであり、その通行権が侵害されることは明らかである。
  5.  本件工事によって拡幅される上記④の箇所は、直線部において拡幅がされるものの、他の箇所に歩道を設置する余裕はなく、上山市長の裁量で歩道は設置しないとしている(拡幅した直線部のみ歩道設置は可能と思われる)。
     このような工事のやり方は、それまで比較的安全に本件道路を通行してきた歩行者や軽車両の道路通行の安全を妨害し、その通行権を侵害するものである。
  6.  さらに、本件道路は、上記のように、大型車両の対面交通が不可能であるため、清掃工場や原告Bの工場において火災などがあった場合、緊急車両の通行が困難となる。即ち、消防車や救急車のような緊急車両のうち、特に特殊消防車は大型車両並みの幅がある。清掃工場に団体の見学者がいるような場合には、大型バスで避難することもありうる。
     しかし、本件工事によっても、上記のような緊急車両の相互通行が可能になることはなく、逆に、本件工事によって清掃工場出入りする大型車の通行が増えるということになると、現在にもまして緊急車両の通行が困難な事態となる。
    これは、原告Bやそこに勤務する従業員らの平穏生活権を侵害するものである。
  7.  このように、本件工事は、原告Bをはじめとして、多くの者の通行権等を侵害するものである。このような結果を招くことは、本件道路の現場を見れば一目瞭然である。本件工事は、このように、原告Bをはじめとして前川ダム周辺の観光客等多くの人たちの通行権を侵害するものである。本件工事を行うことを目的とした工事請負契約は、公序良俗に違反し、民法90条の規定に従って無効となる。

第4 本件工事に至る経過の問題点

  1.  上山市内における清掃工場の建設予定地を選定するにあたり、上山市は、平成24年4月10日、「清掃工場候補地検討委員会」を設置した(甲6)。そして、第1回検討会が同年5月9日に開かれた。その席上、組合が抽出した3つの選定条件を示した資料(甲6・資料3)が配られたが、その3つの条件の一つが「敷地が大型車両の対面通行可能な公道に接しており、又は接することが容易な場所であること。(進入道路が必要となる場合は、公道から敷地に容易に接続できる場所であること。)」というものであった(*引用箇所の下線は、原文のまま)。
    しかし、既にみてきた通り、本件清掃工場予定地は、市道直線部において大型車両の対面交通はかろうじて可能ではあるものの、敷地進入口に架かる橋手前の公道でのすれ違いは、不可能であり、大型車両の対面通行可能な公道に接しているわけでも、そのような公道に接することが容易な場所でもない。
  2.  上山市は、市内の中山地区、川口地区(本件予定地)、金谷地区、金瓶地区、須刈田地区の5つの地区を候補地とした。上記検討会では、①住宅との接近性、②直近地区の意見・声、③搬送効率、④道路とのアクセス、⑤土地の地形・地質、⑥電力・給排水整備の容易性、⑦地域振興策の可能性、⑧緩衝地帯の有無の8つの選定条件のそれぞれについて、「より優れている」が3点、「普通」が2点、「やや劣る」が1点とし、さらに最重要の条件は3倍、重要の条件は2倍の点数を配することとして、上記5つの地区のうち、どれが清掃工場用地として適しているかを判断することとした(甲7~9)。そして、検討会では、12名の検討委員がそれぞれ、上記8つの条件のそれぞれについて点数をつけ、それを集計することとされた(甲9)。④道路とのアクセスという条件は、重要な条件とされて、各得点数を2倍することとされた(甲8)。
     検討会の庶務を担当することとなった上山市市民生活課は、平成24年5月24日に開かれた第2回検討会までの間に、上記5地区のそれぞれについて、上記8つの選定条件に関する調査を行い、同検討会において報告した。その際、「道路とのアクセス」という選定条件の調査ポイントは、「幹線道路との接続が容易であるか。また、周辺の交通事情を把握する。」ということとされた。そして、川口地区についての調査結果は、「幹線との接続が容易」「交通量の多い国道交差点からの進入」ということになっていた(甲8)。上山市の検討委員会における選定条件の検討に当たっては、組合から示された道路アクセスに関する選定条件である「大型車両の対面通行可能な公道に面する」という条件が、なぜか「幹線道路との接続が容易」というような条件にすり替えられていた。また、上山市からは、川口地区の候補地付近の公道の幅員が狭いことなどは検討会に示されることはなかった。
  3.  平成24年6月6日に開催された第4回検討会の席上、検討委員から出された選定条件に関する点数評価が提出された。川口地区の道路とのアクセスという条件については、合計点数54点とされ、5つの地区のうち2位であった(1位は須刈田地区の62点)。12名の委員のうち、最高点の3点をつけた委員が4名いた。川口地区は、総合でも合計396点で2位であった(甲10、11)。ところが、最終的に、上山市は、なぜか、川口地区を清掃工場用地として選定したのである。
  4.  以上に述べたところから明らかなように、川口地区は、清掃工場用地として、組合が設定した選定条件に合致しない不適地であった。しかし、上山市は、自ら設置した検討会において、組合が設定した道路とのアクセスに関する条件を、川口地区が不適とされないようにすり替えを行って点数評価をするなどの欺瞞に満ちた操作を行って、川口地区を清掃工場用地として選定したものである。
  5.  本来、清掃工場建設のために、そのアクセス道路となる本件道路について、拡幅工事を行うことなど、本末転倒のことであり、本件道路は、拡幅工事を行わなくても、大型車両の対面交通が可能な道路でなければならなかったはずである。
    従って、清掃工場建設のために行っている本件道路の拡幅工事は、市民を欺いて、本来行う必要がなかったはずの工事を行っているものであって、その工事を行うに至った経緯が欺瞞性に満ちているものと言わねばならない。このような工事を行う契約は、公序良俗に違反して無効であるというべきである。

第5 談合の疑い

  1.  本件工事の入札に当たっては、落札者のA社を含めて、合計10社が入札した。各社の入札金額は、最低額が同社の1憶1650万円([税抜。以下の価格はすべて税抜価格]予定価格金1億1763万5000円の99.035%)であり、最高額がC社の1億2300万円(予定価格の104.5607%)であった(甲13)。この僅かの価格の範囲内に7社が犇めき合っていたと同時に、予定価格を下回ったのは、A社だけであったという、驚くべき結果であった。
    本件工事のような工事は、多数の費目を積算して入札価格を決めるのであり、上記のように複数の業者が殆ど同じ価格になるなどということは通常は考えられないし、1社だけが予定価格を下回るなどということも考えられない。ましてや、落札価格が予定価格の99%などということも通常では考えられない。このようなことが起こるのは、事前に価格を示し合わせていた場合以外には考えられない。
  2.  従って、本件入札に当たっては、違法な談合が行われていたものと判断される。このような契約は、公序良俗に違反して無効であるというべきである。少なくとも、請負代金額の10%の範囲では公序良俗に違反して無効であるというべきである。そして、本件では、既にこの金額を超える金額が本件企業体に支払われているから、その違法に支払われた金額について、損害賠償請求ないし不当利得返還請求がなされるべきである。

第6 住民監査請求

  1.  原告らは、平成27年10月29日、本件訴訟の内容と同様の内容の住民監査請求を、組合の監査委員に対して提起した(甲15)。
  2.  ところが、上山市の監査委員は、平成27年12月25日、上記住民監査請求を棄却する決定を行った(甲16の1、2)。同決定は、同年12月28日に原告ら代理人の下に到達した。
     上記監査結果は、①清掃工場の建設予定地選定に関する経緯に関しては財務会計上の行為とは認められないから監査の対象としない、②本件道路の通行については原告らが主張するほどのすれ違い困難は発生しないと考えられるし、歩道がないからと言って直ちに歩行者等の安全を侵害するとは言い難い、③談合については、原告らの談合疑いは根拠がないものと判断される、④会社の住民要件は本店の住所が上山市の区域内にあるということが必要であるが、原告Bの本店の登記は上山市にはないから、同原告は請求者の法定要件を欠いている、というものであった。
  3.  しかし、上記監査結果は、以下に述べる通り、何れも誤りである。
    (1) まず、上記①の点について言えば、上山市によって発注された本件工事は、同市によって設置された清掃工場候補地検討委員会における、接道要件に関する同市の欺瞞的な行為から直接に帰結されることであって、同委員会における審議から本件契約の締結までに至る、同市の一連の行為は、一つの行為と評価することができる。そして、この同市の一連の行為は、全体として、公序良俗に違反する行為であるということができるのである。
    (2) 上記②の点について言えば、本件清掃工場には8tのロングダンプが出入りするということであり、一方、原告Bには、日常的に10t、15t、20t超の大型トラックが出入りするのであり、本件道路において、これらの自動車のすれ違いは困難である。また、本件道路においては、上記のような大型車同士がすれ違う場合、歩行者の歩く余地は、拡幅部以外は、側溝の蓋を含めてないのである。平成18年6月に、「高齢者、障害者等の移動等の促進に関する法律」(「バリアフリー新法」とも呼ばれている)が制定・公布され、12月に施行されたが、同法は、道路計画等について、更なる少子高齢社会において、弱者に配慮した計画にするよう求めている。本件清掃工場は全くの新設公共施設であり、本件工事は、その新設施設へのアクセス改善のために行う工事であるから、このような法令にも適合した最新の計画であるべきであるが、そのようにはなっていない。
    (3) 上記③の点について言えば、原告らが示している証拠は、入札結果を示しているものであり、談合が行われたことを客観的に示しているものであり、談合が行われた事実を十分に推定させ得るものである。
    (4) 上記④の点について言えば、地方自治法242条の「住民」とは、同法10条1項に規定される市町村の区域内に住所を有する者」であるというのは監査結果に述べられているとおりであるが、「住所」の解釈は、「客観的事実を重視すべきである」とされている(逐条地方自治法第6次改訂版129p)。この解釈は、法人についても当てはまるものであり、法人に関していえば、形式的な登記簿上の本店所在地ではなく、客観的事実としての本店機能の所在地を以て、当該法人の住所とされるべきである。そして、原告Bの本店機能は、登記簿上記載されている山形市には全く存在せず、逆にそれは全て上山市に存在するのである。従って、同原告の請求人としての資格は十分である。

第7 まとめ
従って、上山市は、本件契約に基づいて既に支払われた金5032万8000円、あるいは少なくとも本件契約金額の1割の金1258万2000円について、横戸長兵衛及び堀川土建に対して、損害賠償請求ないし不当利得返還請求を行うべきである。そして、本件契約金額のうち、未だ支出されていない金額については支出を差し止めるべきである。

 

証拠方法

甲第1号証     工事請負仮契約書
甲第2号証     パンフレット(原告Bのもの)
甲第3号証     現在事項全部証明書(原告Bのもの)
甲第4号証     位置図
甲第5号証     20t超トラックの軌跡とすれ違い時の重なり
甲第6号証     第1回清掃工場候補地検討委員会
甲第7号証     第2回清掃工場候補地検討委員会 議事概要
甲第8号証     第2回清掃工場候補地検討委員会
甲第9号証     第3回清掃工場候補地検討委員会 議事概要
甲第10号証     第4回清掃工場候補地検討委員会 議事概要
甲第11号証     第4回清掃工場候補地検討委員会 配布資料
甲第12号証     市道前川ダム東線道路改良工事に関する資料について
甲第13号証     入札執行表
甲第14号証     固定資産税・都市計画税納税通知書兼課税明細書
甲第15号証     上山市職員措置請求書
甲第16号証の1   上山市職員措置請求に係る監査結果について(通知)
甲第16号証の2   監査結果

添付書類

一 甲号証     写し各1通
二 訴訟委任状   5通

 

 平成28年1月25日
         上記原告ら代理人弁護士  坂本 博之
             同   弁護士  松村 孝

山形地方裁判所 御中


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図1
「第3 本件工事の問題点~通行権侵害」で示された問題となる場所。本道路改良工事の対象区域内には5か所の大型車同士のすれ違いが困難な場所がある。そして、工事後も5か所のうち4か所は問題が解消されず、大型車同士のすれ違いが困難なままである。

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図2:
「④本件道路が奥羽本線の下をくぐる前のカーブ箇所」の実際の写真(南側から撮影)。線路のガード下では道路幅に余裕がなく、大型車同士のすれ違いが極めて難しいことがわかる。

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