山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第26号 2015.7.15 (水) 発行

岡山市で開催された「ごみ弁連総会」に参加致しました 

 去る6月28~29日の2日間、岡山県岡山市において「ごみ弁連総会(闘う住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会)」が開催され、私たち山形県の環境と観光産業を守る会も参加致しました。昨年は徳島県美馬市において地元で闘っている「拝原最終処分場建設反対同盟」の皆さんを交えて「拝原最終処分場建設」に関する議論が行われましたが、今年の岡山市には二つの問題がありました。巨大な火葬場建設と、産廃処理場建設です。一日目は議論。二日目は現地見学会でしたが、現場を見るといつも「何故こんな場所に処理施設を造るのか」という疑問をぬぐい去ることができません。火葬場は産廃処分場の跡地利用だそうですが、その地盤に問題はないものか、直下の住宅は安全なのか不安を感じました。岡山市の「富吉火葬場問題を考える会」「高梁・佐予谷反対会議」の皆さま、大変お世話になりありがとうございました。

 私たち「守る会」は、「各地から闘いの現場の報告」に参加しました。全国で所謂ごみ(一般ごみ・産廃放射能汚染ごみ等々)の処分場予定地にある日突然指定され、その理不尽と闘う方々は、全国に沢山いらっしゃいます。皆さんの発表を伺うと、全く納得の行かないことばかりです。何故人間はこんなにも膨大な量のごみを出すようになってしまったのか、何故ここを選ぶのか、つくづく考えさせられました。事例の発表は以下の通りです。

 問題の現場発表者
1 岡山県岡山市の火葬場建設問題 富吉火葬場問題を考える会(岡山市)
2 高梁・佐予谷産廃処分場問題 高梁・佐予谷反対会議(岡山市)
3 川越火葬場建設差し止め問題 川越火葬場建設差し止め訴訟原告(埼玉県)
4 東京三多摩日の出地町最終処分場問題 たまあじさいの会(東京都)
5 がれき受け入れから始まった産廃問題 水の会(愛媛県)
6 拝原最終処分場建設反対運動 徳島県廃棄物問題ネットワーク(徳島県)
7 羽賀台産業廃棄物最終処分場建設問題 萩・福栄 水と命を守る会(山口県)
8 日本が核のゴミ捨て場になる日 放射能ごみについて語り合うコミュニティ
9 山形広域ごみ溶融炉処理計画 山形県の環境と観光産業を守る会(山形県)
10 岡山市北区御津虎倉産廃処理施設問題 御津産廃阻止同盟(岡山県) 

 以上の深刻な現場からの発表と共に、基調報告としてゴミ弁連事務局長 坂本博之弁護士による「安定型産廃最終処分場の危険性~日弁連意見書以後の現状と問題点」を伺いました。さらにごみ弁連会長 梶山正三弁護士の講演「廃棄物処分場の廃止と跡地利用を巡って」を拝聴し、地元の方々とのパネルディスカッションに移りました。皆さんは、ほとんどの方が長い闘いを続けていらっしゃり、そのご苦労を思うとやはり、私たちも健康や自然環境を守って行かなければならないと、強く感じました。

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岡山市の旧産業廃棄物処分場跡地 → 巨大火葬場建設予定地となった場所を見学

 山形県の環境と観光産業を守る会は、現地の地形、これまで紆余曲折のあった経緯、建設費用、人権、環境汚染等の懸念される問題について報告致しました。守る会の趣旨である「焼却を止めて、循環型社会を推進する」ことは、共感を得られたように思います。少子高齢社会が進展する中、最初の候補地が選ばれてから16年の月日が流れました。行政や市民の皆さんには、焼却場は一つで済むことを是非考えて戴きたいと思います。 

山形市周辺一般ごみ焼却場これまでの経緯

平成11年 山形市志戸田地区に決定(400t/日)(反対運動で却下)
平成13年 山形市半郷地区に決定(反対運動で却下)
平成18年 上山市柏木地区に決定(反対運動で却下)
平成22年 2工場方式に変更(200トン×2工場)
山形市立谷川と上山市大石陰に指定
平成23年 1カ所を山形市立谷川に決定(150t/日)
平成24年 上山市大石陰 反対運動で却下
上山市川口地区を指定 反対運動を無視
川口地区に決定と記者会見で発表(150t/日)
以後一方的に計画を推進している
平成27年 山形広域環境事務組合を相手に審尋及び行政訴訟開始
山形県(架橋工事許可)を相手に口頭弁論開始

 

ごみ焼却場周辺の松葉ダイオキシン調査結果研修会報告

 7月4日(土)13:30から山形市内に於いて、株式会社環境総合研究所顧問の池田こみち氏をお招きし、松葉を用いたダイオキシン及び重金属類調査結果に関する研修会を行いました。守る会は昨年10月に、山形市蔵王半郷地区と上山市川口地区の2カ所に於いてアカマツの針葉を採取し、カナダの機関に分析をお願いしておりました。蔵王半郷地区では、昭和57年8月より処理能力180t/日のストーカ式炉が稼働しており、33年経過しています。また、上山市川口地区は現在流動床式ガス化溶融炉の建設が予定されているものの、現在は果樹や水田の広がる非汚染地区で、どちらの地区にも守る会会員が居住しています。  

 通常行政の排ガス調査は、特定の測定局での特定の日の測定値が公開されますが、松葉調査ではその松がその場所に年間を通じて呼吸した空気のデータを測定することができます。現在この松葉調査は、市民が自主的に行う調査として定着しつつありますが、山形県では初めての調査となりました。下記棒グラフの左が上山市川口地区、その右が半郷地区の数値です。また全国で調査を行った栃木県、埼玉県、福岡県のデータも記載されており、地域の下に付いている*印は焼却場周辺で測定したことを示しています。これを見ると、すべての調査地の中において上山市川口地区は、まだ排ガスに汚染されていないせいか最も低い数値となっています。ストーカ式焼却炉が稼働している山形市半郷地区は、ほぼその約3倍の数値です。他の地区を見ると、棒グラフ上部のPCDFの比率が高くなっていますが、PCDFは焼却場の影響を受けたことを示すダイオキシンであるとのことでした。

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図: 2014年度松葉ダイオキシン類調査結果(PCDD及びPCDFの毒性等量濃度比較)
注) *印の地域は発生源周辺、アカマツでの調査地域については、クロマツ換算値

 池田氏のまとめによりますと、山形市上山市のどちらも環境基準は下回っているものの、ごみ焼却場が稼働している蔵王半郷地区は、全国平均、山形市平均よりも明らかに高いことがわかったとのことでした。行政が大気を測定し、一般に公表されている2012年度における山形市ダイオキシン値は、0.016 pg-TEQ/㎥でしたが、2014年度の半郷地区松葉調査から推定した大気中のダイオキシン類濃度は、0.15 pg-TEQ/㎥と高い数値となっていました。

 一方で新しいごみ溶融炉の予定地である川口地区は、現在全国平均、山形市平均と同程度で、良好な状態であることが分かりました。今後焼却炉が建設された場合、川口地区においても半郷地区同様に周辺地区と比較して相対的に高いレベルとなる可能性があるということです。特に川口地区の建設予定地は南北を山に挟まれた谷間であるため、排ガスが拡散しにくいことも大きな要因となっているようです。またガス化溶融炉の場合、例えバグフィルターを付けてもダイオキシンや水銀等の排出を完全に防ぐことはできず、燃やすごみに廃プラスチックが増えると排ガスに含まれる有害物質の濃度を悪化させる可能性があるとのことでした。

 

研修会参加者の声ご紹介

 今回松葉調査報告会に参加して初めて、松葉中に含まれるダイオキシンの濃度が、ごみ焼却場付近は高い結果であることを知りました。予想していたことではありますが、焼却場周辺だけでなく、風向きによっては他地域にも環境汚染が及ぶことが懸念されるので、このことを多くの市民の方々に関心を持ってもらいたいと思いました。特に子どもたちは、環境汚染により傷つきやすいので、子育て中の親子さんにはぜひ耳を傾けて欲しいと思います。以上の理由により、不必要な清掃工場建設は中止で良いと思います。(山形市/女性)  

 行政の調査がサンプリング時のわずか一時の結果であることは、あまり意味がないと思っていました。呼吸して暮らしている人間と同じようなデータが、何とかして得られないものかと思っていたところ、私たちはこの松葉調査に出会いました。長く稼働している焼却場周辺では、何となく具合の悪い人がいることと関係があるのかもしれません。結果的には単純に3倍の数値が示され、焼却の影響があることが分かりました。しかし、日本の基準値は高いので、それでも基準値以下なのだそうです。山形市の市報には、建設が予定されている焼却場についての情報はほとんどありません。巨額な予算が投入される訳ですから、市民にきちんと分かりやすく説明すべきだと思います。(山形市/女性) 

 

今後の予定 (於:山形地方裁判所)

7月28日(火)11:00~第2回住民訴訟の口頭弁論(傍聴可)

7月28日(火)11:15~第3回取消訴訟の弁論準備(傍聴不可) 

 

<紙名〈澄んだ空気と⽔〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右 されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維 持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。 

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