山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第25号 2015.6.29 (月) 発行

第1回住民訴訟 及び第2回弁論準備を行いました

 上山市川口地区が一般ごみ焼却場候補地として名前が挙がったのは、平成24年5月31日の新聞紙上でした。それまでは地区の人を含むほとんどの市民が、その計画を知りませんでした。事前の説明もなく、その後の話し合いも十分とは言えませんでした。それにも拘わらず、わずか半年後の同年12月6日組合管理者による突然の決定宣言 !

 当時の「川口地区の景観と環境を守る会」の申し入れも、反対署名もすべて無視されました。その後、私たち「山形県の環境と観光産業を守る会」は、この出来事を「単なる上山市で起きたこと」として捉えるのではなく、山形県内でも全国どこでも起こりうることして捉えつつ活動を続けて参りました。組合は守る会の論理を全く無視して計画を進めています。私たちは、法に訴える以外に術はないと判断致しました。

【 経緯概略 】

平成25年 5月21日
山形県上山警察署へ、上山市役所担当者が候補地選定関係書類に虚偽の事実を記載したとのことで刑事告発(虚偽公文書作成及び行使)

平成26年10月 9日
上記、すべての住民の意見を聴く必要はないとの理由で不起訴

平成26年12月25日
第1回住民監査請求 (組合監査委員宛に土地代金支出の差止請求)

平成27年 2日17日
山形地方裁判所訴状と仮処分命令申立書提出 (架橋許可取消請求)
第2回住民監査請求 (組合監査委員へ橋の新設と使用の差止請求)

平成27年 2月23日
第1回住民監査請求棄却 (法外に高いとは言えないとの理由)

平成27年 3月20日
第2回住民監査請求棄却 (橋はすでに架かっているとの理由)

平成27年 3月23日
第1回審尋 (第2回住民監査請求棄却に対する忠川橋架内容)

平成27年 4月14日
第1回口頭弁論 (山形県に対する架橋許可取り消し請求)

平成27年 6月 3日
第2回審尋 (架橋が護岸崩壊に与える影響について)

平成27年 6月12日
第1回住民訴訟 (組合に対し、新橋使用差し止めを求める内容))
第2回弁論準備 (山形県に対し河川占用許可取り消しを求める内容) 

 私たちは山形広域環境事務組合(管理者/市川山形市長)や山形県に対し、情報公開請求及び公開質問状提出等を続けて参りました。情報公開請求をしてから公開までの期限は2週間ですが、期限を過ぎても公開書類を受理できないことや、公開請求文書が「不存在」であることも多々あり、市民側としてもスムーズに話を進めることができない苛立ちを感じています。存在すべき書類を公開するだけと思いますが、何故このように時間が掛かるのでしょうか。

 現在の訴訟及び仮処分で焦点になっているのは、上山市川口の建設予定地へ入るための架橋工事の是非です。予定地へ入るためには、手前の「忠川」(前川ダム放水路/山形県管理)」を渡らなければなりません。川口エネルギー回収施設事業の入札は平成27年9月予定とされていますが、架橋工事はすでに昨年(平成26年)上山市事業者に発注されていました。果たしてこの橋の安全性は、確保されているでしょうか。 また、山形県のこの事業に対する認可は、拙速過ぎなかったでしょうか。周辺には2年続けて氾濫している前川がある状況下、住民の安全性は十分に検討されたのでしょうか。私たちはまずそれらを明らかにして行きたいと考えています。これら一連の仮処分審尋や住民訴訟取消訴訟で提出された証拠書類(反論書)の一部を掲載致します。

 

忠川護岸崩落のメカニズムについての考察

博士(河川工学)/ 技術士;建設(総合技術監理、河川砂防及び海岸)

今回の忠川新橋架橋工事における 
① 左岸盛り土
② 新橋基礎パイル打ち込み
による忠川護岸崩壊の危険性が増している。現状クラック及び漏水、土砂流出が観られる状況で、補修も手当もされていない。

  1. 門型ラーメン橋とは言うものの、忠川左岸に盛土施工されており、その土重増による安全性が示されていない。
  2. 基礎パイルに掛かる水平の土荷重や常時土圧、地震時水平荷重については、パイルの水平バネによる耐力によるものであり、少なくとも変位を生じ、忠川護岸へ伝播されるものであるため、負荷増となる。

  3. 平成9年の河川法改正による環境に考慮された河川整備計画が示されておらず、河道計画がなされないまま架橋することは、その河道形状を制限することであるため許容できるものではない。
  4. 近年、前川で水害が起きているが、計画図面には対象地域2か所の樋門が記載されている。樋門設置許可の経緯、想定雨量、その断面規模の計算根拠などについてご説明いただきたい。忠川合流後の前川で浸水被害が頻発している状況下で、流量増は許容できるものではない。

  5. 河川管理者である山形県として水質の管理はいかにされるか示されたい。

 

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1 新橋架橋による忠川老朽化コンクリートに対する悪影響

(1)忠川左岸盛土施工の悪影響

 現況忠川コンクリート構造に対し、忠川左岸盛土(約1.1m)をされていて護岸高さを大きく超えており、さらに基礎杭は3500mmピッチで打ち込まれているが、パイル部分については水平の土圧が現況忠川護岸に伝達されると共にパイル間の地中部には常に土圧と水圧が掛かり、垂直方向のみならず、水平方向にも負荷を与える。

 さらに完成した橋の左岸側は新たに盛り土されており、さらにその圧力も付加されなければならない。つまりイージーラーメン工法を用い、長大なコンクリートパイルを打ち込んでも、パイル周囲の土圧、水圧は変わりなく忠川老朽化擁壁に圧力を掛け続ける。土圧として鉛直荷重しか掛からないとの答弁は、水平土圧、水圧の無視であり、回答するに当たらない。さらに新橋架橋によりパイルに与える死荷重、活荷重、地震時荷重によりパイルからの土圧、剪断応力により忠川護岸に与える負荷が、当初設計よりも大きいのは明らかである。(以上抜粋)

 

会員の声ご紹介

 5~6年前から土木工事の現場担当になって以来、少し離れた里山に不法投棄のごみを目にすることが度々あり、自分が働いている業界自体が無責任な行動をとっていることに改めて気づかされました。産業廃棄物の処分については、法律がどんどん厳しくなっているのに、現状がいまだ改善されていないのは何故なのか。行政はごみ問題に本気で取り組んでいるのでしょうか。依然として、燃やすか埋めるか、要するに自分たちの視界に入らなくなれば、それでゴミ問題は解決だとでもいうような安易な考えが、まだまだはびこっているのかもしれません。そして今回、産業廃棄物を適正に処分せずにやり過ごしてきた業界が、はたまた広域事務組合発注の久々の大型清掃工場建設で巨大な利益を手にしようとしている構図を思い浮べてしまうのは、私だけでしょうか。

 ゴミ問題については「地球に棲む生物の生態系の一部として恐ろしくはびこってしまった人間の傲慢が、やがて禍になってしまった」事態が次々と押し寄せて来ている気がします。レイチェル・カーソンは著書「沈黙の春」で地球環境の危機について警鐘を鳴らしてきたのに、利益優先の強欲な経済活動が止むことはありません。経済優先は、果たして人間にとっての確実な利益でしょうか。安全性や環境に対する負荷を考えれば、イエスとは言い難い。

 行政の良識とは、すべからく住民の安全を確保し人権を守ることと思います。健康被害や環境を懸念した反対意見を無視し、ゴリ押ししようとするこの清掃工場建設に、明らかな利権の気配を感じる人は少なくないと思います。感じたとしても声を上げないのは、他人事であり我が身に直接受ける被害がないと思っているからなのか。建設予定地の住人間でも当然賛否が分かれ、多数派は少数派に圧力をかけてしまいがちです。多数派の意見が少数意見を組み伏せるのが民主主義だとすれば、それはもはや民主主義ではなく暴力であり、今回の清掃工場建設の強引さは暴力そのものだと思います。(山形市/女性)

今後の予定 (於:山形地方裁判所):
7月28日(火)11:00~第2回住民訴訟の口頭弁論(傍聴可)
7月28日(火)11:15~第3回取消訴訟の弁論準備(傍聴不可)

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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