山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第21号 2015.2.22 (月) 発行

山形県の環境と観光産業を守る会がごみ焼却場建設を了承できない理由

 山形県の環境と観光産業を守る会は、今まで山形広域環境事務組合や山形県に対し、多くの質問書や意見書を提出して参りました。しかし、それらの内容が今まで真摯に検討され、事業計画に反映されたか全く疑問に思えます。ごみ焼却場建設は過去においても積年の課題であり、絶対必要とされて来ましたが、すでにそれは古い考え方に過ぎず、公共事業として改めるべきと考えております。その理由は以下の通りであり、これらには一つひとつ根拠があります。私たちは、それらの根拠も提出して参りましたが、組合の姿勢は未だに変わりません。是非ご一読戴きたく、ここに掲載致します。

 

1.山形県の環境と観光産業にとって致命傷となるから

  1. 県土の汚染拡大及び県民の健康被害拡大を懸念します。
  2. 採用予定の流動床式ガス化溶融炉は危険甚大と判断します。
  3. 観光産業にとって経済的にマイナスです。
  4. 上山市川口地区へのごみ焼却場建設は、いわば自殺行為です。

2.税金の無駄遣いであり、将来の負担増加となるから

  1. ごみは、確実に減少しています。
  2. 規模及び金額が大き過ぎます。

3.重大な人権無視が存在するから

  1. 上山市における建設予定地選定の経緯が、あまりにも非民主的です。
  2. 土地収用交渉も、行政の行為としてまったく不適切です。
  3. 候補地選定条件を理由不明で変更しています。

 

以上の詳細につきましては、以下の通りです。

1.山形県の環境と観光産業にとって致命傷となるから
(1)県土の汚染拡大及び県民の健康被害拡大を懸念します。

  1. 山形市半郷では、かつてごみ焼却炉による住民の健康影響調査を山形市にお願いしましたが、異常なしとの結果が出ました。しかしその対象は、周辺の住民全員ではなく一部の住民に限られ、真実を反映していないと判断せざるを得ない状況です。
  2. 平成26年10月25日、市民によるダイオキシン及び重金属(水銀、鉛、ヒ素カドミウム等々)調査を実施しましたが、ごみ焼却場とダイオキン等汚染の関連性が示された調査結果となりました。
  3. 上山市川口地区は里山に挟まれた細長い地形であり、1年を通じて強い西風が吹きます。地形を考慮した三次元的解析によれば「ごみ焼却場の煙突から排出されるガスは、この西風により「ダウンドラフト現象」を生じ、高濃度の排ガスは拡散することなく山の谷間を押し出される状態で上山温泉方面を直撃する」と予想されています。(組合は三次元的解析を行っておりません)
  4. EU(欧州連合)では、男子出生数の減少や不妊、先天性異常児発生数の高さも問題になっています。
  5. 横浜市で財政改善のためにごみ焼却場数カ所を廃炉にした結果、周辺のこどもの健康状態が改善したことは周知の事実です。
  6. 山形県でも子どもたちの健康に配慮してリサイクルを進め、脱・焼却(焼却規模縮小・廃炉)を推進すべきと考えます。

(2)採用予定の流動床式ガス化溶融炉は危険甚大と判断します。

  1. たとえ、バグフィルターを付けても、排ガス中にダイオキシンや重金属類が含まれることが判明しています。
  2. 採用予定の流動床式ガス化溶融炉を導入している東京都世田谷区、千葉県流山市について詳細にデータを分析すると、実に事故が多く、その対応に多額の税金が支出されていることが分かります。
  3. さらにガス化溶融炉は、燃えるごみとして何でも融かす能力を持っているため、分別がいい加減になりモラル低下を招きます。
  4. ガスが発生するため危険増大を同時に招く計画と知りながら、見て見ぬふりをすることは、絶対にできません。全国で爆発事故を含むトラブルが多数起こっています。

(3)観光産業にとって経済的にマイナスです。

  1. 上山市川口地区は、アルカディア街道の一部であり、慶長出羽合戦の合戦場でもあります。予定地のすぐ上には戦死者の首塚があり、イザベラ・バードも渡った堅磐橋(三島通庸の遺構、山形県近代化産業遺産群として認定された明治11年竣工の石橋)も現存するなど、JRと協働しているやまがたDCキャンペーンの目玉とも言える場所です。上山市が進める「クアオルト健康ウォーキング」において、大気への影響が出ることが懸念されます。
  2. 山形県の観光にとって、大きなダメージになる場所を何故わざわざ選ぶのでしょうか。景観や歴史遺産に全く配慮されない計画であることを非常に残念に思います。
  3. 観光産業にとってマイナスであることは明白であり、観光収入減少という形で、将来の長い期間にわたり跳ね返ってきます。

(4)上山市川口地区へのごみ焼却場建設は、いわば自殺行為です。

  1. 上述のとおり、ごみ焼却所建設は、環境・健康面でも、モラルの面でも、経済面でも、あらゆる面で、全く良いことがありません。
  2. 組合は、建設計画の中で浄化した工場廃水、及び敷地内雨水は一級河川忠川(山形県管理)へ排水することを求めています。しかし、忠川の計画水量はゼロとなっており、それらの排水量を忠川や前川に受け入れることは、さらなる一級河川前川の水量増加につながるため危険です。住民の安全性を無視した計画と言えます。事実平成25年及び26年連続で前川は氾濫し、周辺では土砂崩れが起こっています。
    何故組合は、敢えてこのような危険な場所を選ぶのでしょうか。
  3. 私たちの子孫が、健康被害に苛まれながら経済的困窮にも苦しむ事態が予想されることは明白であり、それを未然に防止するのが私たちの責務であると考えます。山形県でも脱焼却による子どもたちの健康を守るとりくみに配慮し、より一層分別とリサイクルを進め、県内各地の処理施設における焼却規模を縮小すべきです。

2.税金の無駄遣いであり、将来の負担増加となるから
(1)ごみは確実に減少しています。

  1. 川口のごみ溶融炉が竣工する平成30年までには、人口減少(ごみ排出数減少)、高齢化(排出原単位の減少)、3R推進によるゴミの減少が見込まれますが、これらは新工場建設に係る組合の排出原単位に見込まれていません。(排出原単位とは、一人が1日に出すごみの量)
  2. また、事業系ごみとして出すべきごみを、家庭系ごみとして排出していることも読み取れました。
  3. 過去10年に渡る半郷と立谷川の一般ごみ焼却資料を専門家に分析して戴いた結果、川口工場竣工時には燃やすべきごみはほとんど無くなっているとのことでした。
  4. 山形市を含む二市二町では現在ゴミ減量活動に取り組んでおり、排出量は減少しています。燃えるごみとして出していた量が、資源として再生されているからです。
  5. なんでも燃やせるという触れ込みの流動床式ガス化溶融炉は、これまでのごみ削減努力を無にしてしまう危険性も持ち合わせています。

(2)規模及び金額が大き過ぎます。

  1. 2工場で300トンもの処理能力を持つ必要があるとは思えません。ごみ排出量の過大評価による、税金の大いなる無駄使いとも言えます。
  2. 組合によりますと、川口の溶融炉建設事業入札試算価格は、223億5800万円(土地代・地域振興費別)となっています。さらに、山形市立谷川の溶融炉建設費用は同一規模で、185億4300万円(落札価格/税別)となっており、これだけで二市二町のエネルギー回収施設工事費は、合計409億0100万円となります。
  3. 山形市上山市・山辺町・中山町の受益者人口は合計312,954人(平成25年度)であり、一人当たりの負担額は約13万円超で、この規模の自治体にしては巨額の予算であると言えます。

3.重大な人権無視が存在するから
(1)上山市における建設予定地選定の経緯が、あまりにも非民主的です。

  1. 市民検討委員会を作り、あたかも民意を反映させたかのような形式を取りながら、作為的に検討資料を不適切な表現にしたことは、川口住民の民意に反し、人権を無視した行為です。住民が知る前に行われた第3回清掃工場候補地検討委員会席上で検討委員に配布された資料に明らかな誤記があり、あたかも川口地区民が誘致を望んでいるかのような表現があった。この作文については、平成24年5月当時の上山市市民生活課課長が認めている。(平成25年4月30日刑事告発後、検察受理)この誤記により川口地区が検討委員会において候補地として優位になり、民意に反して候補地となってしまったことは明らかであり、許すことのできない事実です。
  2. 川口地区の景観と環境を守る会が、平成24年10月12日に建設地の白紙撤回を求める3,212人の署名簿を組合管理者宛に提出しましたが、無反応で誠意が感じられませんでした。
  3. 川口地区が候補地になる以前、半郷地区や柏木地区が候補地であった際は、半径500m内の同意が必要でしたが、川口では何故か同意を求められませんでした。住民の民意や健康を無視した勝手な変更だと思います。

(2)土地収用交渉も、行政の行為としてまったく不適切です。

  1. 建設予定地の地権者に対する土地収用交渉が、一部地権者に対し強引に行われたことにより、地域や家庭内の和を崩壊させました。
  2. 建設予定地の収用価格は周辺相場と比較して法外に高額である他、価格算定根拠にも不審な点があり、公金支出としても不適切です。収用価格については平成26年12月26日に守る会会員が不服として山形広域環境事務組合宛に「組合職員措置請求書」を提出。その後意見陳述を行い、監査結果を待っています。

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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