山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

澄んだ空気と水 第14号 2014.9.12 (金) 発行

ダムと河川が及ぼす周辺地域への影響に関する研修会開催
~その危険性と避難について~

 平成26年9月7日(日)山形市「まなび館」において、当会主催の研修会が行われました。講師は東京都に本拠地がある、 防災・災害ボランティア「かわせみ」代表の谷岡やすし氏です。かわせみさんは、NPOとして防災まちづくりを支援し、災害時には被災地に災害ボランティアとして、復旧・復興支援活動をされていらっしゃる市民活動団体です。今年7月に起こった南木曽、徳島、丹波、その後の広島市での土砂災害・水害現場等で、幅広く活躍され、防災まちづくり関連の講習や情報発信なども行っていらっしゃいます。

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谷岡 やすし氏
防災・災害ボランティアかわせみ代表
http://www.kawasemi-g.org/
博士(河川工学)
技術士(総合技術監理)
技術士(河川砂防及び海岸)
防災、河川部門コンサルタント:27年間

 

ゴミ焼却場建設予定地の上山市川口地区の水害特性について

 建設予定地は、上山市西端の南陽市境に位置し、山形県が管理する「前川ダム」の下手に位置する。敷地は長手の三角形の形状をしており、南側は里山に接し、北側は山形新幹線土堤に接する。東の短辺は、前川ダムの放水路(忠川)に接する。放水路は新幹線のガード下を潜り前川に合流する。今回は、この「前川ダム」と「前川」の治水計画と洪水時の周辺地域に及ぼす水害特性について伺い、当会としての課題をまとめました。

■ 河川法改正

 河川計画は平成9年の「河川法」改正により、従来の治水、利水に加えて「環境」も整備目標に加わった。さらに将来目指すべき目標規模の「河川整備基本方針」、今後20~30年スパンで実施する具体的な「河川整備計画」の二段階の計画をたてることとなった。前川ダムは昭和57年に完成。計画規模等については不明である。流量配分等についてパンフレットに記してあり、洪水時のダム放流量はゼロである。山形県管理の河川は、全体的に市を流れる須川を含めて50年規模の計画になっている。
 一方「前川ダム」は昭和57年に完成した「治水ダム」である。上山市街地を始めとする前川沿川を洪水から防御するため、上山市川口地内に「ロックフィル型式」のダムとして建設された。南陽市小岩沢地点に於いて一定以上の洪水量に達した場合、前川ダム分水工により導水される「河道外貯留ダム」である。前川、ダム、忠川の河川整備計画はない。

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前川ダムと建設予定地、前川との関係

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■ 治水計画の現状

最上川本川計画:
 山形県を貫く母なる川「最上川」は、平成11年に150年規模の河川整備基本方針が示され、その後平成15年に、20~30年スパンの河川整備計画が立案された。これによると、最上川の支川から本川に流れ込むそれぞれの流量が数値で示されているが、この計画流量配分に須川はあれど「前川」までは示されていない。

・須川河川整備計画:
 平成15年に村山圏域河川整備計画のなかで策定され、平成25年に一部変更された。これによると、須川に流れ込む前川の流量が記載されていない。元々前川の整備計画はないものと思われ、問題がある。平成18年には「須川浸水想定区域」が示され、これを元にしてか「上山市洪水ハザードマップ」が作成された。平成26年に改訂されているが、ごみ焼却場建設予定地周辺は、マップに示されていない。

・前川、前川ダム、忠川:
 前川周辺のH25,H26の水害を鑑みて、早急に前川流下能力を正確に調査し、前川ダムの治水容量を最大限有効に利用できる様ダムへの分派量を検討する必要がある。その上で適正な降雨規模での浸水想定を見直すべきである。

■ 解決すべき課題(山形県の環境と観光産業を守る会意見)

 平成25年7月及び、平成26年7月の2年に渡り、前川は氾濫した。本来河川整備計画に基づき見直されるべきだが、氾濫箇所や前川ダムに至る上山市道は未だに復旧されていない。これら、氾濫実績(内水も含めた)をハザードマップに反映させ、住民や観光客の安全な避難路を確保すべきである。現在、幾度も湛水し、十分で安全な排水先、排水方法の考えられない危険な建設予定地に、超高温を発し化学薬品を多用するゴミ焼却施設の立地は不適切である。今年6月に示した専門家の意見では、そもそも1箇所で足りる施設なのである。

 

前川ダムと河川及びゴミ焼却場の安全性についての回答(山形県

 平成26年6月13日、私たち守る会が山形広域環境事務組合管理者である市川山形市長にお目に掛かった際、質問書をお渡しし、7月24日付けの回答書を受理しました。その回答は前号の会報に全面掲載されています。しかし、うち3つの項目について回答を戴くことができなかったため、「施設管理者」である山形県統合ダム管理課に回答を求めました。その回答を下記に掲載致します。同様の内容が山形県ホームページ上に掲載されています。

【意見・提言】山形県の環境と観光産業を守る会より質問)

 現在、山形県広域環境事務組合によって、上山市川口地区にゴミ焼却場(エネルギー回収施設)が建設予定されています。しかし、この敷地の上方には山形県が管理する「前川ダム」があり、敷地入り口部には同様に忠川(前川ダム放水路)が存在します。さらに放水路は、山形新幹線の土手を潜って前川に注ぐ複雑な場所です。ゴミ溶融炉は1300°~1800°という超高温を発するプラントですので、施設の安全性に配慮することは勿論ですが、万一の場合周辺住民が安全に避難することが求められます。果たしてこの場所がその建設場所としてふさわしいと言えるでしょうか。以下の視点から山形県の考え方を伺いたく、ご回答下さいますようお願い申し上げます。

  1. 敷地上方に存在する前川ダムの強度、及び大地震等における耐久性。
  2. 万一、想定外に前川ダムが異常をきたした場合、住民や観光客が安全に避難することは可能でしょうか。
  3. 豪雨等により前川ダムから過大な放水が行われる場合、その膨大な水を受ける前川の容量は十分でしょうか。平成25年の豪雨時、前川は橋桁スレスレまで増水した経緯があります。橋が落ちれば、避難は可能になります。
  4. 組合は敷地内の排水を忠川(放水路)に流させて欲しいと要望しているとのことです。しかし、敷地内には濃度の高い排ガスが降り注ぎ、ダイオキシンや重金属類の化学物質が検出される可能性があります。そこに降った雨水を放水路に流すことは、即、前川に流れ出ることを意味します。前川は上山市を流れる農業用水です。周辺の農地は、ブランド米つや姫ランクAやサクランボ、干し柿の産地で、農作物への悪影響が懸念されます。忠川への放水許可につきまして、お考えをお示し下さい。

【回答】(村山合支庁建設部 山形統合ダム管理課・河川砂防課・建設総務課より回答)

  1. 前川ダムは、ダム構造の技術的基準を定めた「河川管理施設等構造令」に基づき、地震に対する適切な安全性を確保するように設計を行っています。なお、この基準に従い設計されたダムは、東北地方太平洋沖地震を含む大規模な地震が発生した場合でも、安全性が確認されています。(山形統合ダム管理課)
  2. 前川ダムでは、日頃から堤体・放水路の巡視点検を行っているほか、地震が発生した場合には、直ちに臨時点検を行うなど、管理体制を整えています。(山形統合ダム管理課)
  3. ダムからの放水に関わらず、想定以上の大雨の場合は、適切な避難行動がとれるよう準備が必要です。そのため山形県では、河川の水位・雨量などの情報提供を行っています。(河川砂防課・山形統合ダム管理課)
  4. 河川法の規定では、事業に起因した汚水の排水については、1日50㎥以上の排水を行う場合は、届出が必要となります。しかし、ご質問の雨水排水については、既存の排水路を通して河川に流れ込む場合は特に規制しておりません。ただし、雨水排水のための新たな排水樋門叉は排水樋管を河川区域内に設置する場合は、河川法所定の手続きが必要になります。(建設総務課)

※ 会報13号(前号)に掲載された山形広域環境事務組合への質問と回答は、以下の通りでしたので、参考のため再度掲載致します。

質問6:
 敷地上方には、前川ダムが存在します。大地震等の非常時にこの設定での安全性は確保できるでしょうか。強度や耐久性に問題はないでしょうか。

組合回答:
 施設管理者でないため、コメントは差し控えます。

質問7:
 前川ダム及び放水路に異常をきたした場合(想定外はあり得ます)住民の安全な避難は可能でしょうか。避難路の確保に付いてご検討下さい。

組合回答:
 施設管理者でないため、コメントは差し控えます。

質問8:
 豪雨等によりダムからの放水が想定以上に行われた場合、それを受ける前川の容量は十分ではないと思いますが、いかがでしょうか。昨年の降雨時、敷地は冠水して、放水路に自然放流されていた。しかし昨年、前川は橋桁スレスレになっており、橋が冠水すると逃げ場が失われる。橋より先に危険な工場が建つことに問題はないでしょうか。

組合回答:
 施設管理者でないため、コメントは差し控えます。

 

【次回予告】
 建設予定地である上山市川口地区は、名物である干し柿さくらんぼ、つや姫等の生産地です。建設稼働によってこれらの作物や、住民の健康への影響を調べるため、現在の大気と水質調査を実施します。検体は公正を期すため、カナダの分析機関に送られます。

 

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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