山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

面倒なことは無視、証拠は不要、同じ主張をただ繰り返すだけの組合側に説明する気はみえない

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 平成29年11月17日より開始したこの裁判(控訴審)もいよいよ今月12日に判決をむかえます。
これにあたり、当ブログではこの裁判を数回にわたり振り返ります。
第2回目となる今回は、少し感傷的に、この裁判のむなしさについてです。

実際に考えられる河川への影響はどの程度?
少なくとも具体的な検討と説明が必要:

この工事によって、造成地からどれくらいの排水があってそれはどれくらい河川に対して影響があるのか、水害は果たして起きやすくなるのか。
これはこの川の周囲に住む住民にとって「命と暮らし」がかかっている重要な問題で、裁判でもポイントの一つです。
工事計画書にはこの排水量の計算結果があり、組合は問題がないとして実際に工事をおこないましたが、裁判を通してこの計算にもさまざまな誤りがあることが明らかになりました。そして設計者自身もそれを認める場面もありました。しかし、裁判を通して組合側が再計算をすることはついになく、矛盾していますが、逆に計画書の計算が正しいことを最後まで主張し続けました。
こうした行政側の、肝心な部分をはぐらかし、裁判のテクニックをもって住民を黙らせようとするやり方は、住民の不安、不満と対立を煽るだけです。 そして、明らかに破綻している説明を、法律を盾に突き通そうとする、それでいて安全性については何も答えない姿勢は、説明責任を放棄しているとしか思えません。行政側は税金を使用して裁判をおこないこの内容ですから、納税者である市民側が納得できるはずもありません。
また、仮にこのように争われた点で実際に災害が発生したとしても、行政側は今後も誰も責任をとる必要はなく、被害を被る人は泣き寝入りするしかない仕組みは欠陥としかおもえません。

ワンパターンな組合側の主張と組み立て。
「法に則っているから問題ない」と「独自の見解にすぎない」という表現:

この裁判に限らず、守る会のがおこなう他の裁判でも共通なのが、要約すると「法に則っているから問題ない」という組合側の主張。こちらの主張への反論が多少ずれていても(実際に適用されているとかはあまり重要ではなく法律のどこかに似たような内容があればOK)、大量の法律のコピーを添付して、「法に則っているから問題ない」という手法が組合側の基本です。
この頃の各地の災害の状況をみれば説得力があるように思えませんが、この裁判でもよく見られました。裁判の書類をあえて長文にして枚数を稼ぐのも(なので一回当たりの組合側の内容はとても薄い、でも分厚い)、テクニックの一つかもしれません。
そして、つっこんだ質問に対して、証拠はないけどとりあえず反論しておく場面での「独自の見解にすぎない」という表現。この表現の割には、実は、組合側の主張の多くには根拠がなかったりするのですが、多く見られる表現です。くわえて、都合の悪い(?)点を、反論もなく無視する姿勢はどうなんでしょう。同じことを住民側がやると相手の主張を認めたことになってしまうのですが、組合側がやっても問題がないというのは不公平さを感じます。

こうした裁判でのやりとりは憤りを通りこしてむなしさを感じるという、裁判の経過をおおまかに振り返りました。具体的なやりとりは今回公開の準備書面でご確認いただけます。
次回は、ついに実現した証人尋問についてです。長時間の尋問の内容に、私たちもおどろきました!


関係書類:(PDFファイル)

平成30年05月15日第01回 弁論準備 控訴人:上申書・答弁書
平成30年07月17日第02回 弁論準備 控訴人:控訴審第1準備書面
平成30年07月17日第02回 弁論準備 控訴人:調査嘱託申立書
平成30年09月27日第03回 弁論準備 被控訴人:第7準備書面 
平成30年09月27日第03回 弁論準備 被控訴人:証拠説明書・乙19号・20号
平成30年12月28日第04回 弁論準備 被控訴人:第8準備書面


今後予定されている裁判の日程:

令和元年11月12日(火) 13:15-
判決 平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

未定
平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件

未定
平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件


 

造成工事裁判の仙台高裁での判決へむけて その1

判決のほとんどに役所側の根拠すらない素人の意見が、特に理由なく採用され、根拠ある専門家の意見は全面的に却下。結論ありきのような判決に住民側は到底納得できず

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平成29年11月17日より開始したこの裁判(控訴審)もいよいよ来月の11月12日に判決をむかえます。
これにあたり、当ブログではこれまでの経緯を数回にわたり振り返ります。
第一回目となる今回は、控訴までの経緯を簡単に振り返り、はじめに提出した控訴状を公開します。

 

いったい何のための裁判?

この裁判は、地域の住民(原告)が清掃工場を運営する山形県内の山形市を中心とする二市二町で構成される山形環境事務組合(被告)を相手におこした住民訴訟です。
突如決まり急ピッチで建設された清掃工場の敷地の造成工事は、設計の時間が短いこともあり、入手した計画書・設計図にも、特に河川との関係について、疑問が多く、大きな問題がある考えた住民が提訴しました。

 

控訴までの経緯:

山形地方裁判所でおこなわれた第一審は、平成28年1月21日にスタートし、平成29年11月6日に判決が言いわたされました。
一審では、住民側の主張が全面的に退けられました。その判決は、役所側の、根拠すらない素人の意見が全面的に採用され、住民側の根拠ある専門家の意見が理由なく全面的に却下される内容でした。
判決はむずかしい表現で書かれてはいるものの、実際の説明の部分では論理的でない上に不可解なつながりが多く、結論ありきの裁判ではないかと到底納得できない住民側は仙台高裁に控訴しました。

 

問題の前提:

清掃工場はその排水を直接、その敷地に接する「忠川」という川に排水し、この忠川はすぐ先で「前川」という川に合流します。
ところが、この「忠川」と「前川」が問題なのです。 忠川は実は、その上流にある前川ダムの放水路として設計されたわりとめずらしい川(全面コンクリート貼りのため普通の感覚では川とは呼びづらいかもしれません)で、ダムとの関係からふつうの川に比べていろいろ気をつけなくてはならないことが多いのです。
そして「前川」は、以前から大雨時には氾濫をおこし周囲に水害を起こしており、そのために改修の必要があるいわば「リスト入り」(国土交通省)している、危ない川でもあります。 この川の状況に、急に広大な清掃工場の敷地からの大量の排水が流れ込んでくることになったわけです。

 

何が問題?

こうした、もともと注意が必要な川に、突然発生した広大な清掃工場の敷地からの大量の排水が常に流れ込むことは、川の下流域の水害を助長してその地域の住民が危険にさらされるのではないか?というのがこの裁判の最大のポイントです。
特に住民側が問題視しているのが、この工事がほとんど経験がない素人よって設計されていることです。
川にかんする知識も経験もほとんどない会社が工事を請けおって設計したため、河川の専門家にすれば「致命的レベルでの欠陥だらけ」の状態とのこと。この具体的な危険性を住民側は河川の専門家の協力のもと裁判を通してあきらかにしてきました。
一般的に河川設計は周囲への影響が大きいため(そのまわりの住民の生活など)、高い専門知識と経験が必要とされています。そのため専門外の人間が簡単に設計できるようなものではありません。おもわぬ川への排水一つで周囲の地形や川同士の関係性を壊してしまい、そのことで余計な災害が発生してしまうこともあるのです。
こうした清掃工場からの排水の河川・周囲の地理的環境への影響の検討は、組合側の設計書にはほぼありませんでした。そして、裁判を通してもでてくることはありませんでした。

 


平成28年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件
控訴理由書
 ※「禁無断転載」

※ Web公開用に一部編集を行っています。

 


今後予定されている裁判の日程:

令和元年11月12日(火) 13:15-
判決 平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

平成29年11月17日~ 控訴審仙台高等裁判所(山本 剛史 裁判長,畑 一郎 裁判官,齊藤 顕 裁判官)
控訴人:地域住民 
被控訴人:山形広域環境事務組合
控訴人ら訴訟代理人梶山正三 弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之 弁護士(ごみ弁連事務局長)
被控訴人訴訟代理人内藤和暁 弁護士、小野寺弘行 弁護士
 清掃工場建設予定地の造成工事が、河川法的な観点から隣接する川に対して大きな負荷をかけているのではないかを問う裁判です。

未定
平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件

平成28年12月06日~ 第一審、山形地方裁判所(松下 貴彦 裁判長 平成29年3月迄、貝原信之裁判長 平成29年4月~))
原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人梶山正三 弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之 弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁 弁護士、小野寺弘行 弁護士
 平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。

未定
平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件

平成28年07月18日~継続中 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長平成29年3月迄、貝原信之裁判長 平成29年4月~))
原告:地域住民
被告:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘(山形市長)
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。

 

造成工事の裁判(控訴審)は8月27日(火)に結審しました

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ご報告が遅くなりましたが、平成29年11月17日よりはじまった上山市川口清掃工場の造成工事についての控訴審は8月27日(火)に結審しました。この日の第三回口頭弁論では住民側、組合側双方が最終準備書面を提出し結審となりました。

判決は令和元年11月12日(火)13:15仙台高等裁判所401号法廷となります。

この造成工事の裁判は、平成27年10月の仮処分申立の裁判からはじまり、山形地方裁判所での一審を経て、現在の仙台高等裁判所での二審と、実に4年間をたたかってきました。 そして二審も来月にいよいよ判決をむかえます。

当ブログでは次回より判決に向けて、これまでの経緯を数回にわたり振り返ります。 最初の記事では、控訴までの経緯を簡単に振り返り、はじめに提出した控訴状を公開する予定ですのでどうぞご期待下さい。

 

今後予定されている裁判の日程:

令和元年11月12日(火) 13:15-
判決 平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

平成29年11月17日~ 控訴審仙台高等裁判所(山本 剛史 裁判長,畑 一郎 裁判官,齊藤 顕 裁判官)
控訴人:地域住民 
被控訴人:山形広域環境事務組合
控訴人ら訴訟代理人梶山正三 弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之 弁護士(ごみ弁連事務局長)
被控訴人訴訟代理人内藤和暁 弁護士、小野寺弘行 弁護士
 清掃工場建設予定地の造成工事が、河川法的な観点から隣接する川に対して大きな負荷をかけているのではないかを問う裁判です。

未定
平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件

平成28年12月06日~ 第一審、山形地方裁判所(松下 貴彦 裁判長 平成29年3月迄、貝原信之裁判長 平成29年4月~))
原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人梶山正三 弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之 弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁 弁護士、小野寺弘行 弁護士
 平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。

未定
平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件

平成28年07月18日~継続中 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長平成29年3月迄、貝原信之裁判長 平成29年4月~))
原告:地域住民
被告:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘(山形市長)
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。

 

6月18日の裁判日程が延期されました!

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「本体操業禁止を求める民事訴訟
助成金の返還及び交付禁止を求める行政訴訟

の日程が、相手方(被告/山形広域環境事務組合)の申し出により 9月に延期されましたので、ご連絡致します。 傍聴予定の方は、日程にご注意下さいますようお願い致します。

裁判予定日  令和元年(2019年)6月18日(火) 14:00~(2件)

延期後の期日 令和元年(2019年)9月24日(火) 13:30~(2件)

【経緯】
 去る6月14日、山形地裁より守る会の弁護士宛に電話があり、被告から期日延期の申請が出ているとのことでした。「裁判に向けて、準備書面を書くための調査自体が6月半ば頃から始まるので、6/18の裁判期日には到底間に合わない。ついては、8 月半ば以降に延期して欲しい」とのことでした。
守る会の弁護士は、前回の裁判が2月12日(火)であり、既に4か月 以上経過しているので「元々反論を書くのに時間がかかる、との理由で6月18日という期日にしたはずである。従ってさらに延期というのは納得できない」と述べたものの、結果的に原告、被告との 日程調整となり、やむを得ず予定日から3か月以上延期した9月24日となりました。
前回行われた2月12日から、実に7か月以上経過する日程です。

 そもそも組合は、これまでも守る会側が提出した準備書面に反論書を提出しておりません。都度反論せずに「まとめて反論する」と述べ、 無言を貫いて来ました。
組合側は、過去平成30年8月28日、11月20日平成31年2月12日の 3回の裁判において、準備書面や証拠を一切提出しておりません。 その間守る会は、市民の立場で証拠や事例等を集め、こつこつと書面を 提出して参りました。また守る会の担当弁護士は、理学博士でもあり、 専門性の高い内容です。 準備書面を書くために、裁判予定日頃から調査を始めるとは、どういうことでしょうか。行政として市民に対し、実に誠意のない態度だと思い ます。

 まずは、そのようなことで2件の裁判が延期になったことをお知らせ致し ます。

以上

上山市に対し「クアオルト事業」についての公開質問状を提出しました

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守る会は4月11日に上山市長宛に「クアオルト事業」にかんしての公開質問状を提出しました。「クアオルト事業」とは上山市が推進する温泉などの地域資源を利用した地域活性化の取り組みです。ドイツの「クアオルト(=健康保養地・療養地)」を参考に、健康づくりの町として県内外の観光客を誘致すべく、平成25年頃より始まりました。

守る会ではあることをきっかけとして、このクアオルト事業に注目することになり、その内容を確認すべく、これまで情報公開請求などをおこなってきました。今回は公開質問状という方法で、上山市に質問しています。回答は4月24日までにいただける予定です。

 


2019年4月10日

上山市
横戸長兵衛 殿

山形県の環境と観光産業を守る会

クアオルト事業に関する公開質問状

 私たちは、山形県の環境と観光産業を守ることを目的として2013年4月に発足した市民団体で、山形県内外で活動を行っております。
上山市が取り組んでおられるクアオルト事業について以下の通り質問致しますので、本年4月24日迄に回答を戴きたく、お願い申し上げます。
なお、頂戴した回答につきましては、市民の方々に原文のまま公開させて戴く予定ですので、この点につきまして、予めご了承の上ご回答下さい。

 

質問1 上山市の広報等に見られる「認定コース」について

上山市のクアオルト事業における「認定コース」についてうかがいます。
この「認定コース」、あるいはこれに類する表現は、上山市の広報やさまざまな媒体で多く見受けられます。守る会が先日上山市に対して情報公開請求を行い、「認定コース」について確認したところ、ミュンヒェン大学のコースに対する「認定書」は存在せず、「鑑定書」のみが存在するとの回答でした。このことから、「認定コース」の「認定」は、ミュンヒェン大学によるものではないと考えられます。であるなら、上山市のクアオルト事業における「認定コース」はどのような意味を持つのか、ご回答下さいますようお願い申し上げます。

 

質問2 ミュンヒェン大学・シュー教授の指導について

たとえば、上山市のホームページ内「気候性地形療法の紹介」の頁には、「上山の気候性地形療法は、(…中略…)シュー教授の指導の下、専門的で医科学的手法を基礎として、予防医学や健康増進のために行われる健康づくりの取組です。」(https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/site/kurort/kikou.html 2019年4月7日閲覧)との記載があります。
文中の上山の気候性地形療法に対する「シュー教授の指導」とは具体的にどのようなものか、ご教示下さい。

以上、お手数ではございますが、宜しくお願い申し上げます。


今後予定されている裁判の日程:

平成31年5月28日(火) 13:30- 16:00
第2回 口頭弁論 平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

平成29年11月17日~ 控訴審仙台高等裁判所(裁判長 小川 浩,裁判官 潮見 直之,裁判官 齊藤 顕)
控訴人:地域住民 
被控訴人:山形広域環境事務組合
控訴人ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被控訴人訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地の造成工事が、河川法的な観点から隣接する川に対して大きな負荷をかけているのではないかを問う裁判です。

平成31年6月18日(火) 14:00- 14:05
第10回 口頭弁論 平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件

平成28年12月06日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長平成29年3月迄))
原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。

平成31年6月18日(月) 14:05- 14:30
第8回口頭弁論  平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件

平成28年07月18日~継続中 第一審、山形地方裁判所
原告:地域住民
被告:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘(山形市長)
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。

 

証人尋問がおこなわれることになりました! | 本日の裁判のご報告(平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件)

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本日(2019年2月26日)、仙台高等裁判所上山市川口清掃工場(ゴミ工場)の造成工事に関する裁判が行われました。前回の記事でご案内の通り、今日の裁判では証人尋問を行うかどうかについての判断が示されました。

結果として、守る会側が申請していた5人のうち2人が認められ、次回の裁判においてこの二人に対する証人尋問がおこなわれることになりました。この二人は、「河川工学の専門家」と、「山形市の測量設計会社のこの造成工事の設計担当者」で、それぞれ主尋問約20分、反対尋問約40分の合計1時間に加えて裁判官からの補充質問があり、合計2時間の証人尋問が予定されています。

この記事では、証人の申請を行った「証拠申出書」を公開致します。今日の法廷で裁判官により尋問で聞きたい内容について、あらかじめ示されていますので、この項目は証拠申出書内で赤字にしてあります。

これまで守る会は他の裁判でも証人申請を行ってきましたが、認められたことはなく、今回が初めてとなります。注目の次回の裁判は、5/28 13:30〜16:00、仙台高等裁判所 401号法廷でおこなわれます。どなたでも傍聴することができますので、ぜひお越しください。

 


(* Web用に編集を行っています。)

平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

証拠申出書

控訴人 地域住民
被控訴人 山形広域環境事務組合 監理者 佐藤孝弘

平成30年3月7日
上記控訴人ら訴訟代理人
弁護士  坂本 博之

仙台高等裁判所第2民事部 御中

人証の申請


1 人証の表示

連絡先 x x
控訴人 本人  x x(同行60分)

 証すべき事実控訴人らの主張事実全般。

 尋問事項
① 身上・経歴
②  x x や控訴人らの土地と忠川との位置関係
③ 忠川の護岸コンクリート及びその調査を行った際の状況
④ 忠川護岸コンクリートに対する負荷について
⑤ 本件造成工事前の清掃工場用地のようす
⑥ 本件造成工事前の大雨の際の清掃工場用地からの出水のようす
⑦ 前川の水害について
⑧ 前川の河道及び流量について
⑨ 本件工事の結果発生する可能性のある損害について
⑩ 本件造成地から忠川への配水管のようす
⑪ 忠川に流入する水路について
⑫ その他本件に関連する事実

 

(証人として出廷)


1 人証の表示

連絡先  〒x x x  x x x
証人  x x x (同行60分)

 証すべき事実証人は、河川工学の専門家であり、河川法及びその関係法令上、本件造成工事が違法であることを立証する。

 尋問事項
① 身上・経歴
② 河川法における河川整備計画について
③ 忠川及び前川には河川整備計画があるか
④ 本件造成工事と河川法及びその関係法令との関係について
⑤ 本件造成工事が忠川の護岸に対して与える影響について
⑥ 忠川の護岸コンクリートの構造や強度について
⑦ 本件造成工事の雨水排水計画の問題点について
⑧ 本件造成工事による出水が忠川及び前川に与える影響
⑨ その他本件に関連する事項

 


1 人証の表示

連絡先 〒990-8570 山形市松波二丁目8-1 山形県
証 人  田中伸明(呼出60分)

2 証すべき事実
証人は、山形県において、河川を管理する担当部署の県土整備部河川課に在籍し、控訴人らとの交渉の窓口になったことがあり、前川や忠川に関する知識が豊富であった。そこで、この証人によって、本件造成工事が河川法及びその関係法令上、違法であることを立証する。

3 尋問事項
① 身上・経歴
② 河川法における河川整備計画について
③ 前川及び忠川には河川整備計画があるか
④ 本件造成工事と河川法及びその関係法令との関係
⑤ 本件造成工事が忠川の護岸に対して与える影響について
⑥ 忠川の護岸コンクリートの構造や強度について
⑦ 本件造成工事による出水が忠川及び前川に与える影響
⑧本件造成工事に係る雨水排水計画について
⑨ その他本件に関連する事項

 

(証人として出廷)


1 人証の表示

連絡先 〒x x x 山形県山形市x x x  株式会社 x x測量設計事務所
証人   x x x(呼出60分)

 証すべき事実証人は、被控訴人が本件造成工事の設計を担当し、本件訴訟において提出された乙4号証の作成者である。そこで、この証人によって、本件造成工事が河川法及びその関係法令上、違法であることを立証する。

 尋問事項
① 身上・経歴
② 本件造成工事の設計を行った経緯
③ 本件造成工事が忠川の護岸に対して与える影響について
④ 忠川の護岸コンクリートの構造や強度について
⑤ 本件造成工事による出水が忠川及び前川に与える影響
⑥ 本件造成工事に係る雨水排水計画について
⑦ その他本件に関連する事項

 


1 人証の表示

連絡先  〒x x x 山形県x x x x x 土建株式会社 
証人      x x x (呼出30分)

 証すべき事実本件において談合が行われた事実。

 尋問事項
① 身上・経歴
② 本件造成工事を知った経緯
③ 本件造成工事に入札を行った経緯
④ 入札金額の内容について
⑤ 入札に至るまでの経緯について
⑥ その他本件に関連する事項

 


今後予定されている裁判の日程:

平成31年5月28日(火) 13:30- 16:00
第2回 口頭弁論 平成29年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

平成29年11月17日~ 控訴審仙台高等裁判所(裁判長 小川 浩,裁判官 潮見 直之,裁判官 齊藤 顕)
控訴人:地域住民 
被控訴人:山形広域環境事務組合
控訴人ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被控訴人訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地の造成工事が、河川法的な観点から隣接する川に対して大きな負荷をかけているのではないかを問う裁判です。

平成31年6月18日(火) 14:00- 14:05
第10回 口頭弁論 平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件

平成28年12月06日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長平成29年3月迄))
原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。

平成31年6月18日(月) 14:05- 14:30
第8回口頭弁論  平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件

平成28年07月18日~継続中 第一審、山形地方裁判所
原告:地域住民
被告:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘(山形市長)
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士
 清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。

 

上山市川口清掃工場(ゴミ工場)造成工事 | 守る会側第2準備書面の公開(控訴審)

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明後日の火曜日(2019年2月26日)に行われる予定の造成工事の裁判に関して、前回の裁判で守る会側が提出した第2準備書面を公開いたします。この裁判は、平成27年から長期にわたって続いており(仮処分→一審→二審(控訴審))、控訴審の現在において最終局面を迎えています。

この準備書面はこうした、これまでの長く複雑な内容を、裁判官にむけて簡潔にまとめたもので、この書面を読めば、何が裁判で争われているのかや、これまでの流れなどがわかる内容になっています。

明日後の口頭弁論では、この準備書面でも触れられていますが、守る会側が申請している「証人尋問」をおこなうかどうかの判断が裁判官によって示される予定です。

 

(*公開用に編集を行っています。)


平成29年(行コ)第28号
上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

控訴審準備書面(2)

控訴人 地域住民
被控訴人 山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘

平成30年11月21日

上記控訴人ら訴訟代理人
弁護士 坂本博之

仙台高等裁判所第2民事部 御中

第1 はじめに
 本準備書面は、これまでの控訴人ら及び被控訴人の主張、並びに原判決の内容を概観し、原判決の不備、被控訴人の主張の不備を改めて指摘するものである。
 本件おける控訴人らの主張は、山形広域環境事務組合と××建設・××土建建設工事共同企業体との間で締結された、清掃工場の敷地造成工事に関する請負契約が、河川法に違反し、原告らの人格権を侵害するものであり、入札方法が違法な談合によるものであるから、公序良俗に違反して無効である、というものである。
 以下、本件で問題点となる論点のそれぞれについて、控訴人らの主張、被控訴人の主張、原判決の内容、控訴審における控訴人らの主張、控訴審における被控訴人の主張、残された問題点の順に述べる。

第2 河川法違反であるとの点について

1 控訴人らの主張
 控訴人らの主張は、本件土地から排出される雨水が流入する一級河川忠川及び前川(以下「一級河川」は省略する)には、河川整備計画及び河川整備基本方針及びそれに伴う主要な地点における計画高水流流量(河川法施行令第10条の2第2号ロ)が存在せず、河川法に違反する状態である、というものである。現に、山形県知事が平成15年9月24日に策定し、平成25年3月1日に一部改訂した一級河川最上川水系村山圏域河川整備計画(知事管理区間)(以下「本件河川整備計画」という)、国土交通省が定めた最上川水系河川整備基本方針(以下「本件河川整備基本方針」という)には、前川及び忠川に関して、基本高水流量も計画高水流量も何らの記載もされていない。このような状態の中で、河川に負荷を与える本件工事は違法である、というものである。

2 被控訴人の主張
 被控訴人の主張は、前川及び忠川に関する河川整備計画、河川整備基本方針は存在する、というものである。具体的には、本件河川整備計画、本件河川整備基本方針がこれである、というものである(被控訴人の第3準備書面・2p)。

3 原判決の内容
 原判決は、被控訴人の主張を殆ど無批判に取り入れたものであり、①本件河川整備計画があり、忠川及び前川は、最上川水系に属し、村山圏域の河川であるから、上記河川整備計画に直接記載がないからと言って、上記河川整備計画の対象区域に含まれていると考えるのが自然であるなどとして、忠川及び前川についての河川整備計画が存在しないということはできない、②国土交通省最上川について本件河川整備基本方針を定めており、前川及び忠川は最上川の支流であるから、この河川整備基本方針は忠川及び前川についての河川整備基本方針である、などという判断をした(34p)。

4 控訴人らの控訴審での反論
 しかし、現実に、原判決も認めるように、本件河川整備計画には、前川及び忠川に関しては、忠川そのものや前川ダム、忠川との合流点について、図も示されていないし、計画高水流量の記載もない。前川や忠川に関しては、本件河川整備計画策定後に前川や忠川で行われる具体的な整備内容は何も書かれていない。国土交通省が策定した本件河川整備基本方針にも、前川や忠川に関する記載は全くない。このような場合、一般人の感覚からすれば、前川や忠川が本件河川整備計画や本件河川整備基本方針の区間に含まれていたとしても、何の具体的な計画高水流量の数値、河川整備の目標に関する事項(河川法施行令第10条の3第1号)の記載もなく、具体的な整備計画が何も記載されていないのであれば、通常は、前川や忠川に関しては、河川整備計画は未だ作成されていない(=存在しない)、と考えるのが「自然」である。

5 被控訴人の控訴審での反論
 この点に関して、被控訴人は、単に「原判決の上記判断は相当なものであり」などと述べるものであり、具体的な主張は何ら行っていない(控訴審答弁書12p)。

6 残された問題点
 もし、前川や忠川について、河川整備基本方針やそれに沿って計画されるべき河川整備計画(河川法第16条の2第1項)があるということなら、その具体的内容が明らかにされなければならない。特に、後に述べることとも関連するが、前川や忠川に河川整備計画が存在するのであれば、基本高水流量や計画高水流量が存在するはずである。しかしながら、被控訴人が山形県知事に対して行ったとされる河川整備計画に関する照会に対する回答においては、これらの点が全く触れられていない(乙16)。
 このような点について、山形県の河川に関する担当者がどのような認識を持っているのかについては、当該担当者に対して証人尋問を行って、明らかにするほかはないものと考える。

第3 人格権侵害となるとの点について
1 控訴人らの主張
 人格権侵害に関する控訴人らの主張の基本は、本件清掃工場用地の造成工事は、周辺河川への雨水流出状況を変えることにより、河川下流域で水害等を発生・助長させ、当該下流域の住民の人格権を侵害する可能性がある、というものである。
具体的には、以下の通りである。

(1) 山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱(以下「本件指導要綱」という)というものが存在するが、この要綱では、河川流域で5ha以上の開発を行う場合には、調整池の設置が必要とされているところ、本件造成工事に伴う雨水排水計画の集水域は、山地も含めると32.5haとなり、この範囲の流域開発が行われるにも拘らず、調整池の設置が予定されていない。

(2) 本件清掃工場用地の造成工事により、前川及び忠川の流域の治水計画を定めるに当たって要求される40年確率の大雨が降った場合に、実際にどの程度の負荷を前川及び忠川に与えることになるのかを実際に算出して、その与える影響が多大であることを主張している。より具体的には、この点に関する控訴人らの主張の基本は、次のとおりである。
 道路土工要綱は、工事現場からの排水を行うことを主眼として作られたものであり、周囲の河川に与える負荷を全く念頭に置いていない。
 組合の雨水排水計画は、10年確率の降雨があった場合の排水を念頭に置いているが、対象としている排水先の河川(前川)の計画高水流量150㎥/s(被控訴人の第1準備書面10p)というのは、40年確率の大雨の場合の流量であり、整合性がない。なお、ここで被控訴人は、前川の計画高水流量と述べているが、これは、河川整備計画に基づく数値ではなく、前川治水ダム事業計画に出てくる数値であろうと思われる。
 本件造成地に40年確率の大雨が降った場合の流出量を試算すると、いくつかの数値があり得るが、その一つの計算では、忠川の流量が170㎥/sであるとすると、1.28%増加する(控訴人らの準備書面(2)・8~9p)。また本来は忠川護岸壁に囲まれた造成用地である為、樋管やその上部切り欠き及びU字溝による排水量全てが造成工事による流出量増量であり、排水先の忠川が合流する前川は、現在においても洪水ハザードマップを見ても明らかなように計画高水流量の水が流れると溢水、氾濫する箇所が何カ所もある。本件造成工事は、このような溢水、氾濫の可能性をさらに高めることになる。
 その場合の本件造成地の流出係数は、本件土地が造成工事前にはほぼ休耕田であったため、原野の場合の0.6を、山地は0.7を採用すべきである。
 山形県が作成した調整池等設置基準によると、開発事業地の雨水が河川に流入する地点を基準点とする流域において、当該開発行為に伴う最大流量が、開発前と比して原則として1%以上増加する場合は、調整池の設置等の措置を講ずることが要求される(控訴人らの準備書面(2)・6~7p)。本件造成地からの排水は前川ではなく、忠川に対して行うから、その排水量は、忠川の計画高水流量と比較すべきであるところ、忠川の計画高水流量は0㎥/sである。従って、本件造成地には調整池を設ける必要があることが明らかである。なお、ここで忠川の計画高水流量と言っているが、これは、河川整備計画に基づくものではなく、前川治水ダム事業計画(甲18)に書かれている数値である。
 本件造成地は、休耕田が多く、相当の貯留効果があったものというべきである。従って、本件造成事業以前に本件造成地から排出される雨水は、造成後に排出されることとなる雨水の水量よりも遙かに少なかったものと考えられる。

(3) 忠川の左岸側コンクリートが大きく切り欠かれたことで、従前よりも遙かに大量の雨水排水が可能になった。そのため、造成地からの排水も、従前よりも遙かに大量に行われることとなる。また、この低く切り欠かれた箇所があるため、忠川の護岸の高さは左右両岸において格差が生じてしまっており、豪雨時に前川ダムから放水された水は、この低い護岸部より造成地内に流入し、樋門部を洗掘し、護岸を崩壊させ、さらに大量の排水を前川に対して行う可能性がある。

2 被控訴人の主張
 上記の控訴人らの主張に対する被控訴人の主張は、次のようなものであった。
(1) 上記(1)の点については、本件造成工事は、対象面積が3.6haであり、本件指導要綱に定める河川への排水量増加による河川の洪水処理計画への影響を検討する必要はない。
(2) 上記(2)の点については、基本的に、道路土工要綱に基づいて本件造成工事の雨水排水計画を立てており、同要綱に定められた方法で雨水排水量の計算を行っているので、問題はない。そして、上記ア~カに対しては、次のような主張を行った。
 造成地の工事を行う場合、道路土工要綱に基づいて計画を策定することが一般的であり、本件雨水排水計画は合理的である。
 本件造成地の雨水排水計画が10年確率の大雨を想定しているのに対して、それが流入する河川の流量が40年確率の大雨であるという不整合については、被控訴人は、明確な反論をしていない。
 被控訴人は、改めて本件造成地に40年確率の大雨が降った場合の排水量の計算をすることなく、控訴人らの計算結果を独自の主張などと非難することに終始している(被控訴人の第3準備書面4p等)。
 本件造成地において造成工事が行われる前の流出係数について、被控訴人は、造成工事前の平成24年までは水田として耕作されており、雨水の透水性は耕作が行われていた当時と変わらないなどとして、水田の場合の0.7を用いるべきだ、と主張している(被控訴人の第5準備書面3p)。
 忠川の計画高水流量は0㎥/sではない。前川治水ダム事業計画書に記載されている0という数字は、前川ダムに流れ込む流量が140㎥/sとなった場合に、前川ダムから忠川への放流は行わないということを意味するに過ぎない。本件造成工事前にも、忠川には前川ダム直下から前川合流地点までの区間の各所で雨水が流入していたものであり、忠川全域で計画高水流量が0であったなどということはなかった(被控訴人の第5準備書面4~5p)。
 本件造成地にあった水田は、西側から忠川に向けて緩やかに傾斜しており、水田への降雨は水路を通じて忠川に排水されていたものであり、造成地前の建設地が休耕田であり、大きな貯水能力があったという主張には理由がない。

(3) 上記(3)の点については、排水口の切欠きに関する控訴人らの主張には理由がない、というのが被控訴人の主張である(被控訴人の第6準備書面)。

3 原判決の内容
 原判決の判断は、以下のようなものであった。
(1) 上記(1)の点について、開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の設置の用に供する目的で土地の区画形質の変更をいう、などとして、控訴人らが開発区域であるとすべきと主張する土地は山地であり、本件清掃工場の敷地と一体的に利用することが想定されているものではなく、本件工事における流域開発行為の対象は、本件造成工事が行われる土地のみであり、その面積は3.6haであるとし、本件指導要綱によって求められる調整池の設置は必要ではない、などとした(35~36p)。

(2) 上記(2)の点についての、原判決の判断を、上記ア~カに対応させて整理してみる。
 本件造成工事には本件指導要綱の適用はないから雨水排水計画において道路土工要綱の定める排水に関する指針の考えに沿ったことは誤りとはいえない。
イ~エ 40年確率の降雨強度式の係数については、××が述べる30年確率と50年確率との平均を取ることは不合理とは言えない。本件土地の流出係数は、本件土地が造成工事前にはほぼ休耕田だったとは認めることはできず、むしろ水田に類似する状態であったというべきであるから、水田の係数を参考にして0.7とするのが相当である。到達時間、排水面積、算定式等は、控訴人らが採用するものを用いるのが相当である。そうすると、本件工事前後における40年確率の雨水排水量の合計は、それぞれ、5.120㎥/s、5.298㎥/sである。忠川との合流点付近の前川の計画高水流量は150㎥/sである。本件土地からの雨水排水量の増加は0.178㎥/sであり、組合の計算である0.14㎥/sと大きく異なっていないし、前川の計画高水流量に対して0.12%に過ぎない。
 降雨時に直接忠川に降る雨や、周囲の土地からの忠川へ流れ込む雨水等がある以上、およそ忠川から前川に雨水が流入しないということは考え難いから、忠川の計画高水流量が0㎥/sという前提で忠川に対する影響を考える事はできない。
 本件土地が休耕田であったことは認められないし、本件土地全体が忠川の護岸よりも低地であったと認めることはできないから、本件土地の貯留効果も認められない。
(3) 上記(3)の点については、控訴人らの主張は、具体的な危険性の主張立証をしていないとか、忠川の計画高水流量が0㎥/sであることを前提としているから前提を欠く上、本件造成工事の影響の程度は低い、などとという判断をした(43p)。

4 控訴審における控訴人らの主張
 上記の項目立てに沿って、控訴審における控訴人らの主張の概要を以下に示す。
(1) 上記(1)の点については、本件指導要綱の適用対象となる「流域開発行為」というのは、単に区画形質の変更が行われる地区だけではなく、当該開発行為によって雨水の排出機構が変化する地域も含めて解釈するのが相当である。また、同要綱5条1項は、「開発事業者は、開発区域を含む流域から流出する雨水を適切に排水するため必要な施設を設置し、開発区域外の放流先に支障を及ぼさないようにしなければならない」と規定し、この規定を受けて調整池等設置基準が設けられ、一定の基準に該当する場合には調整池の設置が必要である、とされている。そして、調整池等設置基準には、「開発事業地の雨水が河川へ流入する地点を基準点とする流域において、当該開発行為に伴う最大流量が、開発前と比して原則として1%以上増加する(以下、「最大流量が増加する」という。)場合は、下記により洪水容量の算定を行う」という規定が設けられている(調整池等設置基準は、原判決6~7pにも記載されている)。
 本件は、本件造成用地及び周囲の山林合計32.5haの集水域から排水される雨水の排水のために必要な施設を設けなければならないのである。また後述するように、本件では、本件造成工事により、雨水が河川に流入する地点において、最大流量が従前と比較して1%以上増加するものであるから、調整池等設置基準に従って、調整池の設置が必要となる。

(2) 上記(2)の点について、控訴人らは、控訴審で以下のような主張を行っている。
 本件造成工事は、本件清掃工場用地に「土工構造物」を築造するものではなく、単に清掃工場用地の地盤整備を行うものである。従って、そもそも、本件清掃工場用地造成に道路土工要綱は当てはまらない(甲75・2p、資料1、甲74・1p)。
 それから、道路土工要綱の「共通編」の「第2章 排水」の「2-2 排水施設の計画」の箇所には、「(3) 道路からの排水が周辺地域へ悪影響を及ぼさないよう、適切に流末処理を行わなければならない」と書かれている。しかし、本件清掃工場用地造成計画においては、周辺地域への排水による悪影響の配慮は全くなされていない(甲75・2p、甲74・110p)。従って、本件清掃工場用地造成工事について、仮に道路土工要綱が当てはまるものであったとしても、本件清掃工場用地造成工事は、道路土工要綱に違反している。
 本件造成地の雨水排水計画が10年確率の大雨を想定しているのに対して、それが流入する河川の流量が40年確率の大雨であるという不整合については、原判決も認めたところである。
 控訴人らは、その上で、さらに、原審で行った主張とは別の観点から、即ち、本件造成工事前に実際に存在した排水口の管径に基づいて、本件造成工事前の状況において、最大限排出できる雨水の水量を算出した。即ち、控訴人らは、本件造成工事前に実際に本件造成地に存在した排水管の位置、管径等を調査し、それらの配管を利用した場合の最大の排水量、及び最もあり得べき排水量を算出した。その結果、本件造成工事の結果、40年確率の雨が降った場合の、本件土地から前川に対する雨水排水の増加量は、最低でも3.2947㎥/s、もっともあり得る増加量としては4.2859㎥/sとなるものと算定された。そして、この水量を、原判決が認定した、40年確率の降雨があった場合を想定した前川治水ダム事業報告書(平成9年河川法改正に基づく河川整備基本方針ではない)における「計画高水流量」の150㎥/s、及び本件造成工事後の40年確率での雨水排水量の5.298㎥/sと比較すると、本件造成工事の結果、40年確率の雨が降った場合の、本件土地から排出される雨水による前川の流量に対して与える増加量は、少なくとも2.196%、最もあり得る増加量としては2.8573%となるものと算定された(控訴理由書8~10p)。
 この増加量は、当然、組合において調整池の設置を行わなければならない数値である。また、このような排水量の増加によって、前川は、下流の相当範囲で氾濫することになるものと考えられる。
 原判決の認定にも拘わらず、本件土地が造成工事前において、水田に類似する状況であったことを裏付ける証拠は極めて薄い。
のみならず、工事開始直前の平成24年秋から平成27年7月の造成工事開始までの約3年間は、本件土地の全域が水田ではなかった。また、平成24年よりも前の年代においても、本件造成地の相当部分が耕作放棄地であった。
 そして、本件造成予定地は耕作が放棄されてから手入れがされず、草などが伸び放題の状態であった。一般的に水田は数年も放置すれば草木の生い茂る原野と化すのである。このような状態からするならば、平成24年に全面的に耕作がなされなくなって以降の本件土地の流出係数は、畑原野と同様に0.6という数値を用いるのが適切である。それ以前についても、水田と耕作放棄地とが混在していたものというべきであるから、流出係数は、安全側に立って、やはり0.6を採用するのが、造成工事直前より、下流前川の安全性を低下させないという観点からも適切な計画であったものというべきである。
 本件土地からの排水は、殆どが前川ではなく、忠川に排出される。忠川には、河川整備計画は存在せず、河川整備計画上の計画高水流量は存在しない。ただ、前川ダム事業計画書において、忠川の計画高水流量は0㎥/sとされている。これが40年確率の雨が降った場合の忠川の計画高水流量である。計画高水流量とは、計画雨量が降った場合に、基本高水流量から各種洪水調節施設での洪水調整量を差し引いた流量である(甲91)。前川治水ダム事業計画書において示された0㎥/sという数値は、まさにこのような数値である。なお、計画高水流量という数値は、飽くまでも計画上の数値であることに注意すべきである。
 また、忠川は、昭和48年に策定された前川治水ダム事業計画によって3面コンクリート張りの排水路として計画された。前川治水ダム事業計画における流出計算モデルにおいては、前川ダムから前川合流点までの間には流域が見込まれていない。現実にも、前川ダム直下から前川との合流点までの間に、忠川に合流する河川はないし、流入する水路は、本件造成地からの排水路の他には、ダム直下の右岸側に1本の水路があるだけである。忠川の護岸の途中から、地下水を排水するためのヒューム管はいくつか設置されているが、40年確率の豪雨が降った場合であっても、そのような水抜きのためのヒューム管からの流入量はごく僅かであるものと思われる。
 計画高水流量というのは、1秒間に1㎥(=1t)というレベルの水量を考えるのであり、降雨時に川面に降る雨や上記のような水抜き管から入ってくる水量は無視できる量であるというべきである。
 原判決が述べている「降雨時に、直接忠川に降る雨や、周囲の土地からの忠川へ流れ込む雨水等がある以上、およそ忠川から前川に雨水が流入しないということは考え難い」などということは、計画高水流量という概念を全く理解していない者の妄言であるという他はない。
 結局、実際に本件土地から雨水が排水される河川として、忠川に注目すれば、本件造成工事によって増加する排水量の割合は、無限大となるものという他はない。
 本件土地は、北側が奥羽本線の線路、西側及び南側が山地、東側が忠川の護岸に、それぞれ囲まれる、すり鉢の底のような形状となっている。そして、本件土地は、忠川の護岸よりも低い土地であることは明らかである。従って、元々、本件造成工事以前には、雨が降った場合、本件土地に相当の貯留効果があったことは明らかである。
 また、控訴人らは、原審の準備書面(4)において、本件土地の貯留効果を実際に計算してみた。これは、畦の高さを30㎝と想定し、本件土地の面積を0.032+0.004=0.036 km2(甲16・4p)として、貯留量を、0.3m×(0.036×1000×1000)m2=10800㎥と試算したものである。原判決は、控訴人らのこの主張に関しては、全く触れていない。控訴人らのこのような考えは、専門家によっても受け入れられている考え方である。
 従って、控訴人らが原審において行ったような貯留効果の試算は、十分に根拠のあるものというべきである。
 このように、本件土地には元来相当の貯留効果があったのであり、前川や忠川に排出される水量は、被控訴人が主張する水量よりも遙かに低いものであったということができる。

(3) 上記(3)の点について、控訴人らは、控訴審では特段新しい主張を行っていないが、原審における主張をそのまま維持する。

5 控訴審における被控訴人の主張
 上記の項目立てに沿って、控訴審における被控訴人の主張の概要を以下に示す。
 なお、被控訴人の主張は、何れも理由がないか、控訴人らの主張に対する十分な反論となっていない。この点については、後述の6において具体的に述べる。

(1) 上記(1)の点について、即ち、本件指導要綱に関する控訴人らの主張に対して、被控訴人は、何らの反論もしていない。

(2) 次に、上記(2)の点についての、被控訴人の反論は、次のようなものである。前記ア~カの項目に沿って述べる。
 組合が本件雨水排水計画において道路土工要綱の指針を採用したことは何ら不相当なものではない。本件工事のような造成工事は道路土工と同様の工事だし、造成工事を行う場合には道路土工要綱の指針を利用することが一般的になっている。
 被控訴人は、降雨確率年10年の降雨強度を計算し、これを下に雨水流出量を計算しており、このような計算結果、前川の計画高水流量150㎥/sの0.1%弱の増加量しかないことを確認している、降雨確率年40年の降雨強度で計算しても、増加量は0.1%強に過ぎない、などと述べている(第7準備書面4p)。
 控訴人らの行った雨水流出量の計算は、元々あった配水管の排水口からの最大流出量を求めたものであるが、これが前川への最大流出量であるというのは全く理由がない。大規模降雨時には、排水口から排出されずに直接本件土地から忠川に流入するなどということがあったことからも明らかである(第7準備書面7~10p)。
 本件造成工事前の本件土地は、平成24年の買収までは水田であったのであり、本件工事前の流出係数を0.7としたのは妥当である。また、水田であった土地は、数年間耕作がなされなかったとしても、畦畔の形状は耕作されていた当時と変わらないし、地盤に透水性の低い粘土層があることには変わりがない。従って、平成27年7月当時の流出係数を0.7として計算したことは相当である(第7準備書面5~6p)。
 被控訴人において山形県に対して、前川治水ダム事業計画書25p上段の「計画高水流量配分図」に記載されている、前川ダム下流の「→0」という記載の意味について照会を行ったところ、「これは流量が計画高水流量となった場合には、前川治水ダムから忠川への放流は行われず、前川治水ダムにおいて流入した140㎥/sの全量をカットするとの意味」であるとの回答を得たため、原判決の内容が相当であることが明らかになった(第7準備書面10~11p)。
 原審における主張と同様の主張を繰り返している(第7準備書面11p)。

(3) 上記(3)の点については、何ら触れるところがない。

6 残された問題

(1) 上記の本件指導要綱に関する点については、流域開発行為が行われる面積に関する解釈の問題があるほか、本件造成地からの雨水排水量がどれだけ増加するかという認定が関係してくる。本件造成地からの雨水排水量の増加については、後述する通りである。

(2)  前川及び忠川の流域に関しては、防災計画等では、40年確率の降雨強度の雨が降った場合を想定している。従って、本件造成工事からの雨水排水計画が河川の安全性に与える負荷を考えるに当たっても、40年確率の大雨が降った場合の排水量を考える必要がある。これは、原判決も認定した通りである。
 この点、道路土工要綱は、造成工事現場からの雨水排水計画を10年確率の大雨を前提として計算することとしており、河川の防災計画や治水計画とは明らかに齟齬がある。このような齟齬があることについて、被控訴人は、正面から反論をしていない。
 本件造成地からの雨水排水量を考える場合、40年確率の大雨を想定しなければならないことは、原判決も認めたところである。
 また、組合は、雨水排水計画の策定に当たり、本件造成地からの雨水排水量の増加を検討するに当たり、「忠川の計画高水流量170㎥/s」との比較対象を行っている(甲16・20p)。組合の雨水排水計画は、本件造成地からの雨水排水は10年確率の降雨を想定しているのに対して、忠川の「計画高水流量」は40年確率の降雨を想定しているという齟齬があるほかに、①忠川には、河川法で言うところの本来の計画高水流量というものは存在しない、②忠川に計画高水流量というものがあるとすれば、前川治水ダム事業計画書に記載されたものであるが、それは0㎥/sである、というような、幾重にも重なる誤りがある。
 計画高水流量とは何か、忠川や前川にはその根拠となる河川整備計画や河川整備基本方針はあるのか、前川治水ダム事業計画書に記載された忠川の計画高水流量とは何か、と言った点について、被控訴人や被控訴人から紹介を求められた山形県は、誤魔化しを行っている。例えば、山形県は、前川治水ダム事業計画書に書かれた「→0」という記載を、忠川の計画高水流量ではない旨、被控訴人からの照会に対して回答したが、山形県河川課のホームページや、同県村山総合支庁山形統合ダム管理課発行のパンフレットには、忠川の計画高水流量が0㎥/sである旨の記載がある(甲89、90)。計画高水流量について、原審の裁判官は全く理解していなかったが、当審の裁判官の理解も不十分であることを奇貨として、誤魔化し通そうとしているものという他はない。
 上記の、計画高水流量とは何か、忠川や前川にはその根拠となる河川整備計画や河川整備基本方針はあるのか、前川治水ダム事業計画書に記載された忠川の計画高水流量とは何か、と言った点について、明らかにするために、そして被控訴人や山形県の誤魔化しを明らかにするために、河川工学の専門家である××証人、山形県の担当者である田中信明上人の人証取調は必須である。
 一方、本件造成工事によって、造成工事の前と後とでどれだけの排出量の変化があるかということを考慮するに当たり、本件工事前の雨水排水量がどれだけであったのかを正しく把握する必要がある。
 ところが、被控訴人は、本件造成工事前の雨水排水量を計算するに当たり、造成工事によって造られる排水管、排水口を利用するという前提の計算を行っている。このような計算では、本件造成工事前の排水量を正確に計算することはできない。
 一方、控訴人らは、控訴審において、実際に本件造成地に実際に存在した配水管・排水口の管径や傾きに基づいて、それらの排水口から排出される最大の水量を計算するという手法を用いて、雨水排水量の計算を行った。被控訴人は、このような手法について前記のような批判を行っているが、それ以上に、自らは、従前作成した雨水排水計画の際に行った排水量の計算以外のより正確な計算を行うことは全く行っていない。また被控訴人は、控訴人らの主張に対して、本件造成工事前に存在した排水口の他にも、本件造成地から直接忠川に流入する雨水があったなどと述べているが、そのようなことがどの程度の頻度であったのか、直接忠川に流入する水量がどれだけであったのかと言った点について、具体的な主張はしていない上、そもそもそのような事前調査を行ったことがあるのかどうかも不明である(おそらく行ってはいないと考えられるが)。
 本件造成工事前のより正確な排水量については、控訴人らと被控訴人との間で主張の相違があり、しかも被控訴人の主張は具体性を欠いているうえ、裏付けが乏しい。このような点を明らかにして、控訴人らの主張が正しいことを立証するために、原告××及び証人××の人証取調は必要である。併せて、被控訴人の主張が不相当であり且つ裏付けを欠いているものであることを立証するために、証人××の人証取調も必要である。
 本件工事前の雨水排水量を推定するに当たり、本件工事前の本件造成地の流出係数を推定することも必要である。そして、流出係数を推定するには、本件工事前の本件造成地の状況を明らかにする必要がある。それを行うには、本件造成地の直近に日常的に勤務しており、本件造成のようすを日常的に目にしていた、原告××の人証取調を行うことが必須である。
 本件土地からの排水は、前川ではなく、忠川に対してなされる。前述のように、山形県の調整池等設置基準では、「開発事業地の雨水が河川へ流入する地点を基準点とする流域において、当該開発行為に伴う最大流量が、開発前と比して原則として1%以上増加する……場合は、」調整池等により洪水調整池等の設置により洪水調整を行うべき旨規定されている。
 上記調整池等設置基準に従うならば、本件工事による排水量の増加は、被控訴人が行ったように前川に対して行うべきではなく、忠川に対して行うべきものである。そして、既に述べたように、忠川には、河川法で規定される意味での計画高水流量は存在しない。前川治水ダム事業計画書に書かれている忠川の計画高水流量は、0㎥/sである。被控訴人も原審の裁判官は、計画高水流量について誤魔化しを行っていたり全く理解をしていなかったりという態度であったことは既に述べた通りである。被控訴人や原判決は、前川ダム直下から忠川に流入する水があるとか忠川そのものにも降雨がある筈だから、計画高水流量が0㎥/sとするのは不自然だ、などと述べているが、計画高水流量というのがこのような概念ではないこともまた、既に述べた通りである。
 さらに、ここで注意をしなければならないのは、忠川の計画高水流量を何のために議論をしているかということが忘れられているということである。被控訴人も原判決も、忠川の計画高水流量が0㎥/sであるという点を批判して終わってしまっているが、本件造成地からの排水量の増加が、本件工事前と比べて1%を超えるのか、という点が、本来議論されるべき論点である。被控訴人が、もし、忠川の計画高水流量が0㎥/sではない、或いは40年確率の降雨の際の正確な忠川の流量は0㎥/sではない、と主張するのであれば、忠川の計画高水流量はいくらであるのか、或いは40年確率の降雨の際の正確な忠川の流量はいくらであるのか、という点について、積極的な反論・反証を行うことが必要である。
 控訴人らは、控訴人らの主張が正しいことを立証するために××証人の人証取調が必要であると考える。また、被控訴人が上記の点について何らの考えも持っていないこと、十分な反論をすることができないことを立証するために、××上人の人証取調が必要であると考える。
 本件工事前の本件土地に貯留効果があったことは、従前の本件土地の状況を把握するのが肝要である。そして、それを行うには、本件造成地の直近に日常的に勤務しており、本件造成のようすを日常的に目にしていた、原告××の人証取調を行うことが必須である。

(3) 控訴人らは、上記(3)の点について、即ち、忠川の左岸側コンクリートが大きく切り欠かれたことで、従前よりも遙かに大量の雨水排水が可能になり、造成地からの排水も、従前よりも遙かに大量に行われることとなったこと、この低く切り欠かれた箇所があるため、忠川の護岸の高さは左右両岸において格差が生じてしまっており、豪雨時に前川ダムから放水された水は、この低い護岸部より造成地内に流入し、樋門部を洗掘し、護岸を崩壊させ、さらに大量の排水を前川に対して行う可能性があることについては、河川工学の専門家である××証人の証言を以て立証したいと考えている。従って、同証人の人証取調は必須である。

第4 談合が成立するとの点について
1 控訴人らの主張
控訴人らは、本件工事の入札結果を示し、7つの共同企業体が入札を行ったが、僅かの価格の範囲内に各共同企業体の入札価格が犇めき合い、しかも××建設・××土建建設工事共同企業体の入札価格は予定価格の97%であったことを踏まえ、本件工事の入札においては談合が行われたものと考えられる旨、主張した。

2 被控訴人の主張
被控訴人の主張は、本件入札において談合が行われたことの根拠は一切示されておらず、そのような事実は認められない、というものであった。

3 原判決の内容
原判決は、控訴人らが示したのはあくまで入札結果に過ぎず、談合の具体的内容について明らかにするものではなく、他に具体的な談合の事実を認めるに足りる証拠がない、などという判断を行った(44p)。

4 控訴審における控訴人らの主張
一つの工事について、7社もの入札者があり、僅かの価格の範囲内にそのすべての入札者の入札価格が犇めき合い、しかも落札者の入札価格が予定価格の97%となる、などということは、常識的にみて、入札者(及び組合)が談合を行った結果であるとしか考えられない。何の作為もなしに、このような整然とした入札結果が出るなどということは通常はあり得ないからである。
 原判決の判断は、このような一般通常人の考えとは相容れないものであり、非常識かつ不合理な判決との誹りを免れない。

5 控訴審における被控訴人の主張
 被控訴人の主張は、入札価格が予定価格の97%であったことのみを以て、談合の事実が認められることとなるものではなく、談合の事実を認めるに足りる証拠がないとした原判決の判断は妥当である、と主張している。

6 残された問題
 談合が存在したことを立証するためには、落札した××土建が行った工事代金の積算の内容、入札の経緯等を明らかにする必要があり、その為には、同会社の代表者である××上人の人証取調が必要である。

第5 まとめ
 以上のとおり、本件は、被控訴人によって十分な反論がなされていなかったり、誤魔化されようとしていたりする点が多々ある。このような点については、人証の取調を行い、事実を明らかにする必要がある。
 また、控訴人らにとっても、その主張を立証するために既に挙げた人証の取調が必要であると考えている。

 

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