山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (4) | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170212092739j:plain

 上山市川口に現在建設中の公称エネルギー回収施設の敷地は平成28年5月に造成工事が終了したとされています。しかし、その計画は危険で不当だとして、守る会は設置主体の山形広域環境事務組合を提訴し、現在も係争中です。

 組合は敷地造成工事に当たり、敷地の東側に接する県管理の前川ダム放水路に対し、山地及び敷地の雨水排水を行う必要性から、山形県に、排水樋管及び排水口設置の河川占用許可申請を行いました。

 この申請認可が、果たして正しいものであったか、未だに疑問が多いため、守る会は改めて山形県に対し、質問状を提出致しました。過去3日間に公開した図説1~3は、質問状に対する添付資料ですが、下記に質問状の本状を公開致します。

 この質問状に対する回答は、山形県より守る会代表に通知されるものと思います。

 組合が計画した「雨水排水計画」に誤りはなかったのか、山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」や「洪水ハザードマップ整備事業浸水想定区域検討業務報告書」との整合性は取れているか等々安全上の問題が解決したとは思えません。このまま建築工事を進めることに根源的な不安を感じるものです。

 守る会は、河川工学の専門家と相談の上、これらを分析し、とりまとめて公開質問状としました。行政側のご担当者は数年で異動してしまうため、詳細が分からなくなってしまう可能性も高いこと、また市民県民の皆さまにも知って戴くため、ここに公開致します。

f:id:mamorukai:20170212092928j:plain


平成29年2月7日

山形県知事
吉村 美栄子殿

山形県の環境と観光産業を守る会

公開質問状


 日頃より当会(以下、守る会と略す)活動にご協力を賜り、有難うございます。

 設置主体である山形広域環境事務組合(以下、組合と略します)は、現在までに、上山市川口に建設中の公称エネルギー回収施設に係る周辺整備工事に於いて、山形県に対し2件の申請を行いました。

  1.   まず山形県は、建設用地東側に接して流れる一級河川忠川に新橋を架けるための「河川占用許可申請」を組合より受理して、平成26年9月12日に起案し、同年10月7日に許可されました。
  2.   更に、敷地造成工事に係る忠川左岸への排水口及び排水樋管設置に関する「河川占用許可申請」を同組合より受理して、平成27年5月14日に起案し、同年7月23日に許可されました。この許可にあたり、河川占用の目的は「エネルギー回収施設建設に伴う排水口、排水樋管の設置免除」とされています。この審査表において、行政事務的意見として「…公共的な目的で行われること及び河川管理上特に支障となるものではないことから、許可するもやむを得ない。…」とあり、技術的意見としても「許可するもやむを得ない」とされています。

 しかし、敷地造成工事において造成地に設置される排水口及び排水樋管から流出する雨水、雑排水は、排出先の忠川や前川の水量・水質に影響を及ぼすため、疑問点が多々存在しています。
 そこで、この工事及び許可に対する山形県の考え方を改めて伺いたいと存じます。これらの経緯につきまして、勝手ながら県民の皆さまにもご理解を得る為分かりやすいよう、公開質問状とさせていただきました。ご多忙中大変恐縮とは存じますが、3週間以内に回答を戴きたく、ご配慮のほど宜しくお願い申し上げます。

ご質問

 平成29年1月現在、組合は敷地造成工事及びそれに係る排水樋管等設置工事を終了していますが、一級河川前川は、洪水時の前川氾濫被害に更なる悪影響を与え、周辺住民の人命、資産、産業活動を脅かす状況にあると認識しております。故に、以下質問に対し早急に納得できる回答を下さるようお願い申し上げます。
 もし、即時に回答をいただけない場合、県民の安全性に関わる緊急を要する事項ですので、組合に対する応急的措置として改善工事のご指導、ご指示を下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

  1.  造成工事の際、忠川左岸壁の排水樋管、及び排水口が新たに設置されたことにより、忠川左岸のコンクリート護岸壁が一部切り欠かれた結果、天端高は、計画護岸高に対し低く不揃いとなりました。これは河川法上、危険で由々しき事態であると考えますが、貴殿は組合に対し「護岸天端高の復旧指示」を出される予定はございますか。
  2.  造成工事着手以前雨水貯留、及び雨水浸透機能維持のため、「造成前の貯留、及び浸透能力をもつ調整池を造成地内に設置する指示」を、組合に対して出される予定はございますか。現状のままでは、敷地及び里山から流出された雨水が、忠川排水樋管及び排水工を通して直接前川へ排水されることにより、一級河川前川下流域での更なる洪水氾濫の助長が予想されます。豪雨時における前川の堤防洗掘による破堤の危険、及び前川の忠川合流点より下流域での氾濫はご存知の通りで、上山市民の安全上看過できません。
  3.  造成地における本体建設工事の差し止め、もしくは造成・開発区域計画や 設計の変更要求を行う予定はございますか。※山形県の環境と観光産業を守る会(以下“守る会”とする)は、平成9年河川法改正に基づく一級河川前川、忠川の具体的な河川整備基本方針、河川整備計画は、不存在と認識しております。現状は名目のみで内容を伴わず、施設維持のみを行う計画であり、これにより洪水被害を防止することはできません。また、平成9年の河川法改正による環境の内部目的化がなされておらず、本来、開発、造成にあたっては、事前に前川の状況、及び流下能力、河川整備計画の公表及びパブリックコメントを経た上で、進捗状況に照らして初めて「許可」されるべきものであり、排水先の河川の整合、能力を無視した造成、開発、排水施設工事の許認可を行えるものではないと考えます。
  4.  昭和48年8月に山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」のダム設計流量配分において、前川上流より160m/s分派したものを前川へ戻す施設の水路は、どのようなものか、またどのような施設管理がなされているのか、お示し下さい。またその際のリスクをどの様に市民へ周知徹底されているかをお示し下さい。
  5.  平成27年5月、組合が山形県に対し申請した敷地に接する忠川護岸壁への 排水樋管、排水口(排水工とどちらか統一確認ください)の設置を許可した経緯、及び確認事項等を詳細にお示し下さい。許可に当たり「許可するもやむを得ない」とコメントした理由も、具体的に明らかにして下さい。
  6.  敷地造成工事により、これまで休耕田であった貯留浸透機能を無にし、造成 地からの雨水を、排水樋管及び排水口から直接(流出係数100%を忠川に)排水し、さらに里山から休耕田に貯留・浸透していた流出抑制機能(これについ て検討されているか疑問)を無にして水路により雨水を集め、樋管、排水口により直接忠川へ排水することは許可できるものでしょうか。改めて見解をお示し下さい。
  7.  護岸天端の高さについて、排水樋管部、及び排水口部では、従来の連続した コンクリート護岸壁を、こともあろうに大きく切り欠いています。従来は、護岸壁に遮られて、休耕田に一旦貯留・浸透した雨水が直接忠川に越流することはなかったことを考えると、現計画は著しく貯留・浸透効果を欠いています。 にもかかわらず、何故組合に設置許可を与えたのか、その理由をお示し下さい。
  8.  組合は、敷地造成設計に際し作成した雨水排水計画において、開発・造成後 に増加する排水量は、忠川の設計洪水流量170m3/sと比して1%以下であるとしています。しかし現状は、本来の河川整備基本方針、河川整備計画が具体的に策定されておらず、忠川の計画高水流量も定められていない状態です。山形県が策定した「前川治水ダム事業計画」では、前述の通り「洪水時の前川ダム設計洪水流量170m3/s、及び40年確率での計画高水流量0m3/s」と定められています。敷地造成により排水量がわずかでも増えれば、分母がゼロであるため流量の増加する比率は無限大となります。これは、「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱」に反するものと考えます。以上により、洪水に対し無策の排水樋管等設置に係る計画を何故許可できるのか、その根拠をご回答ください。
  9.  前川本川の計画(前川治水ダム事業計画)と、敷地からの排水との整合性は、確認されているのでしょうか。 ※流出係数は、平地で0.6、山地で0.8ですが、造成地排水区域として接する山地も含むべきと考えます。また、初期損失雨量は、流量観測資料を基に20~30mmとしているものの、計画に反映されていません。さらに、流出計算手法は、山形県が単位図法を採っているのに対し、組合は合理式、及び道路土工要綱による計算をしており、双方に齟齬が見られます。また、降雨強度式は、山形県河川整備計画で用いるものと異なっているため、計画自体に整合性が見られず、造成前の安全性が担保できていません。
  10.  前川の忠川合流点から下流の水量について、造成・開発前後の10年確率(造成地の排水計画降雨時)、40年確率(河川の計画降雨時)、また超過洪水(ダムの設計外力)において、前川の洪水量や被害を解析、確認をしておられますか。 忠川(前川ダム放水路)を、既にダム設計流量170m3/sまでの流下能力で改修していることは、本支川バランスを著しく欠いており逆転していると考えますが、これについての見解をお示し下さい。 ※この計画では、一級河川として前川の支川である忠川の流下能力が大きくなり過ぎ、下流である前川への過負荷となっています。この計画は、本来前川ダム上流部及びダム直下流山地狭隘部まででの間で氾濫していた洪水被害を、前川下流部に位相、集中させる行為であって、前川の忠川合流点下流の河道が未改修の現状においては、極めて危険な計画であると言えます。さらにダム設計流量時(東北地域での記録的降雨による超過洪水時)には、本来自然と忠川上流で氾濫していた被害を、前川ダム放水路としてそのまま前川下流へ170m3/sまでの洪水として移し、下流市街地での被害を増大・集中させる構造となっており、極めて不適切であると考えます。
  11.  管理用通路幅員(排水樋管上部、他の地点)について ① 申請当初の図面では3.0mで設計されていたものの、実施図面では2.0mに変更されています。完成時に、すべての区間で2.0m確保できているか、また現状では雑草が茂り、人も歩けないような状況で放置されており、造成工事を優先されていることに疑問を感じざるを得ませんが、その現状確認をなさいましたでしょうか。
    ② すでに造成工事は終了していますが、組合は忠川沿いの管理用通路として幅員を連続させずに放置しています。これを、河川管理者としてどのように考えておられますか。
    ③ 河川管理用通路の幅員は、設計当初図面通り通常の3.0mでしたが、実施設計時2.0mに設計変更した経緯をご存知でしょうか。幅員が1.0mも狭まったことについて、許可された際どのように解釈されましたか。さらに用地境界杭からの造成地までの幅員は2mに欠けている現状をいかに解釈されておられますか。
    ④ 現在造成地の左岸に、2.0mの管理用通路が確保されておりますか。たとえ工事中であっても、安全上、河川管理・監視の観点で管理用通路は、いつでも利用できる状態であるべき、と考えます。
  12.  忠川に旧橋梁を残置したことにより、旧橋と新しく架設された橋が連続し、一級河川忠川の河川上空を余分に占用する結果となりました。橋梁が連続して2ケ所存在することは、河川管理、治水機能、河川環境、景観上望ましいことではありません。これについて、旧橋残置を許可する理由をお示し下さい。また新橋(しんちゅうかわ橋)の河川占用を、造成地通行のみへの占用とされている理由についてもお示し下さい。
  13.  新橋(しんちゅうかわ橋)の河川管理用通路としての部分について、河川管理時、及び平常時に造成地への車両通行止めとする措置がとられているか、ご回答ください。
  14.  河川区域、河川保全区域を如何に設定されているか、またそれが造成工事に反映されているか、をお示し下さい。
  15.  忠川の造成地区間、特に橋梁架設付近の現状点検結果については、錆の流出及び表面に目視できる変状について、河川管理者としていかに評価し、補修の必要なし、異常なしと判断されたのでしょうか。お示し下さい。
  16.  現在上山市が発行している洪水避難地図は、防災上の観点から前川、忠川流域を含む村山圏域として、貴県が氾濫解析を行った結果(基データ)をもとに作成され、公開されています。この氾濫解析は「前川ダム事業完成時の河道条件として、40年確率の洪水に対し河川が改修されていない状況において、同年確率計画の洪水が起こった場合の氾濫区域、氾濫水深を想定した」ものです。この上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)について、お尋ね致します。
     ①  上山市内を流れる前川、及びその上流に位置する前川治水ダム放水路 (旧忠川)の治水安全度は、支川である忠川が高く、本川である前川で低いため、前川下流域での氾濫が増幅されています。この安全度が、本支川で逆転している現状をどのように説明されますか。ちなみに、平成29年1月13日に山形県において情報公開請求文書を受理予定でしたが、前川上流部の「前川危険水位流下能力一覧表」は「不存在」との回答でした。
    ②  洪水避難地図により、県民(40年確率計画を想定条件)と国民(100~200年確率)に危険度を周知し、その対策を講じていることは、防災上、か つ治水安全上の蔑視であると思います。同じ国民として平等であるはずの市民の命、財産に対する防災対策の格差についてご説明をお願い申し上げます。国でも県でも市でも、洪水に対する危険度の見積もり方、周知の仕方、及び防災上の安全対策(避難の仕組み、避難路、避難所の設定等)、同じ確率年で計画を立てるべきではないでしょうか。
    ③  前川、忠川において、添付資料‐2にある通り造成地の直接排水が、前川ダム及び忠川において40年確率の計画高水量を増やし、前川においてはその数値計画すらないというような造成工事を、何故許認可できたのか、その理由をお伺い致します。
    ④  村山圏域の氾濫解析については、“想定外を想定する“ という防災上の 条件として、上流から溢れながらも集まる最大流量(現況河道、下水道整備状況、地目、造成地等、地形状況のトレンドも含み)を見直し、改定して、データを上山市へ渡され、市の防災対策として反映、見直すよう指示される予定はございますか。また隣接する南陽市等も含め、公助としての防災対策を、市単独ではない県として、避難路及び避難所等の防災対策につき、関連市町村へ指導なさる予定はございますか。

【質問16 ①~④に関する解説】

 昨今の気象状況や、気候温暖化等により、全国では洪水被害の頻度が増し、ますます増加傾向にあります。つまり危機管理上は、“想定外を想定しなければならない“というまでの状況に至っております。これに対し、前川治水ダム事業の想定外力は、算定に当たり「東北地方の過去最大規模(Creager‘s equationの係数C=34)」を用いており、かつて貯留機能を持っていた渓谷を流れる旧忠川を、前川治水ダム放水路として新たに構築し、Q=170m3/sという想定内(東北地方の過去最大規模)で改修しています。つまり、添付資料‐3中央図に示す通り、前川下流の洪水量増量分は、前川治水ダム設計洪水量(170m3/s)が、40年確率流量(150m3/s)に加算された結果、合計320m3/sの流量(40年確率計画改修後の150m3/s)の洪水が想定される、と読み取れます。同様に、国管理河川(最上川等)の氾濫想定は、河川の重要度において100~200年確率の洪水に対する解析が行われており、国管理河川の想定規模は、国民に対する氾濫規模及び危険度の周知であると言えます。それに対し県管理河川流域の想定規模は、山形県民に対する氾濫規模、危険度の周知を目的としており、国管理河川よりも危険である40年確率想定となっています。

 つまり、河川氾濫時における人命・財産の危険度は、県民イコール国民ではなく、県民を国民より甘く想定しているのが現状です。さらに、想定外を想定するためには、上流河川は氾濫しながらも、下流に流れてくるであろう最大流量を対象として、河道改修が進む度に解析し、改定されるべきものです。さらに、ダムの下流においては、その決壊も想定した危機管理対策、防災対策、洪水災害に対する平等な危険度周知が必要となります。

【防災について】

 防災上の避難勧告、避難指示などにつきましては、管理者の首長が行うことになっています。自然災害でも、洪水、津波地震災害、火災延焼等、様々であり、避難方法、避難情報の伝達手法等が異なっているのが現状です。そのため、国、県、市町村それぞれの状況判断が、市民への周知徹底に対する混乱を招いております。また防災情報を例にすれば、気象庁の発表する、”命を守る行動を”などを含めてLアラートや、民間防災情報、川の防災情報、地震速報等々実に多様であるため、まさに情報が洪水のごとく氾濫した状態になっています。市民、県民、国民は、何を信じて避難すべきでしょうか。 

 一人ひとりに適切かつ迅速かつ簡潔な情報発信が出来ていないのが現状において、山形県として、どのような防災対策の公助、共助、自助の分担を考えておられ、それを市民に周知徹底されるのか、また公助、共助のうち「公」が行うべき分担の防災対策事業を、どのように位置づけておられるのか、併せてお伺いできれば幸いに存じます。

 以上、ご多忙中大変恐縮ではございますが、3週間以内に回答下さいますよう宜しくお願い申し上げます。
                               

以上


参考とした図書
コンクリート構造物の診断と補修
※以下URLのコンクリートの変状と診断について記載されていたので参考としました。
http://www.ehimedoren.or.jp/11_sigen/kennsyuusiryou/okunai-siryou.pdf
01) 最上川水系 前川治水ダム事業計画書、昭和48年8月 山形県
02) 最上川水系 前川治水ダム事業計画書〔参考資料〕昭和48年12月 山形県
03) 村山総合支庁 村山圏域河川整備計画
04) 平成17年度洪水ハザードマップ整備事業倉津川外浸水想定区域検討業務委託報告書平成18年3月/山形県村山総合支庁/パシフィックコンサルタンツ株式会社
05) 前川治水ダム(パンフレット、山形県HPより)山形県村山総合支庁統合ダム管理課  年次不明
06) 上山市洪水避難地図(洪水ハザードマップ)平成26年3月改定 :A4折A1両面
07) 前川氾濫解析図(山形県HP)
08) 前川定期点検結果:情報公開請求資料
09) 造成工事申請許可設計図面、2種類
10) 排水樋管、排水工、排水路設計図面
11) 雨水排水計画(組合より開示)年次、作者不明
12) 造成工事認可証明書
13) 現地撮影写真
14) 吉川秀夫著、改定河川工学、昭和55年2月1日pp.55-58

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (3) | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170211035157j:plain

 昨日に引き期続き、平成29年2月8日、山形県に郵送した公開質問状に添付した図説(3)を公開致します。

 昨日公開した図説(2)は、昭和57年に前川ダムが完成したことによる 前川への影響についての説明です。山形県が作成した「ダム設計洪水量」、上山市が作成した「洪水避難地図(洪水ハザードマップ)」を参考にしています。

 図説(3)は、前川ダム及び前川放水路が完成した後、平成28年に公称エネルギー回収施設建設のため、敷地造成工事が行われてしまった後の、 前川への流量増という見込みを示しています。

 これまで、事業実施主体である山形広域環境事務組合(山形市上山市 ・山辺町・中山町で構成)は、造成工事に当たり「雨水排水計画」を作成 し、造成地から前川ダム放水路に排水するため、排水樋管、排水口の新設について、山形県許可申請しました。その際提出した書類に、この「雨水排水計画」は含まれていますが、この計算に誤りがある(計算に整合性がない)ことは、裁判において指摘済みです。

 山形県が作成した「前川ダム治水事業計画」の「計画高水(40年確率) 流量配分図」は、平常時の前川と前川ダムの流量を示した図ですが、前川ダム放水路へ流してよい流量は、0m3/sと指定されています。ここに、 造成地に接する山から流れ落ちる雨水や、敷地(3.6ha)に溜まった水、ま た工場で使用された雑排水などが排水されてよい訳がありません。明らかに計画高水流量ゼロを超えています。この行為による前川の流量増、そし て下流域での氾濫を具体的に示したのが、図説(3)となります。

 組合は、かつての田畑がもつ貯留効果を、ほとんど認めておりませんが、 忠川が巨大なコンクリート水路になり、保水力のある田畑が舗装されて、 貯留効果はほとんどない状態においては、敷地内にきちんと流量調整池を設置して、前川の氾濫を増幅させない計画にすべきでした。

3.造成工事によって起きること ~ 清掃工場(ガス化溶融炉工場)敷地造成工事による影響~
前川ダム放水路左岸・耕作放棄地の保水・浸透 貯水機能の喪失。 → 放水路合流後の前川の被害が増大し、人命・財産を脅かす

f:id:mamorukai:20170211042603j:plain

計画洪水流量(40 年確率)が起きた場合

f:id:mamorukai:20170211042720j:plain

[造成工事前] 山形広域環境事務組合が、上山市川口に計画実行している山形市上山市・山辺町・中山町の一般ごみ焼却( ガス化溶融炉) 施設建設用地は、すでに造成工事が終了しています。 この敷地は、前川ダム直下の平地で、以前は田畑だったため、山から流れて来る雨水 及び耕作放棄地への雨水を貯水する (3.6ha 分の) 効果を持っていました。市道 と放水路を挟んで隣接する企業は、敷地内に広大な芝生( 雨水浸透・ 貯留効果) と流量調整 池を保有しています。

f:id:mamorukai:20170211042926j:plain

[造成工事後] 造成工事を行ったこ とで敷地の保水力 ( 貯留・浸透効果) が失われ、前川ダム 放水路に直接排水さ れる流量により、前川が危険な状態に なっています。これまで、敷地に接す る山から流れ落ちてきた雨水は敷地内にとどまらず、山際 と線路側に設けられた水路を通して前川ダム放水路にすべて排水され前川へ合流することになるためです。

計画高水(40年確率)流量配分模式図

f:id:mamorukai:20170211043050j:plain

山形県の策定した「前川治水ダム事業計画」 では、40年確率の計画洪水時、前川上流部での流量配分は 135m3/s であり、前川ダム方面へ 110m3/s 分流するとしています。その時、前川ダム流入量は140m3/sであり、前川ダム放水路への放流量は0m3/s で、これが前川治水ダム事業計画における計画高水流量配分の姿です。

造成工事による流量増分(前川)と前川切断模式図

f:id:mamorukai:20170211043233j:plain

造成工事による流量増分(40 年計画では0m3/sの前川ダム放水路が5.3m3/sになる)により、前川で氾濫する容量を見積もると、左図のグラフに示す流量変化となり、この赤い面積がすなわち前川下流の氾濫容量;約1 万m3 となります。これをイメージし易いように、前川河川幅5m、延長(放水路合流地点~下流袴橋下付近までの)約1kmと仮定した場合、氾濫水深は1.9mにも及び、この量が、 氾濫原である宅地、果樹園などに放流されることと推算できます。

今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 (2) | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170210191952j:plain

 昨日に引き続き、平成29年2月8日、山形県に郵送した公開質問状 に添付した図説(2)を公開致します。

 2月9日公開の図説(1)は、公称エネルギー回収施設の建設予定地の現状を伝える内容でした。敷地は、山と川に接しており、上流には前川治水ダムが存在する、という観光資源に恵まれた土地ですが、豪雨の場合は、下流域での氾濫を想定すべき地形です。平成26年に上山中心市街地を襲った水害を繰り返すべきではありません。

 今日公開する図説(2)は、上流部の前川治水ダムが完成する以前の自然地形と、昭和57年に前川ダムと放水路(忠川)が完成した後との比較を行っています。また、それまでの前川氾濫状況に対応すべく、 昭和48年に「前川治水ダム事業計画書」が策定され、前川ダムと前川ダム放水路は建設されました。

 この計画書には、前川ダムと前川、忠川の果たすべき役割が記載されており、その中に「ダム洪水設計量図」があります。この場では、 それを分かりやすく図解して説明致します。

 前川と、忠川はともに一級河川であり、その管理は山形県に移管されているわけですが、山形県はその河川整備計画を立て、そのデータを各市に提供します。各市はデータに基づき、「洪水避難地図(洪 水ハザードマップ)」を制作することになります。前川上流部の中山地区から、川下の川口地区にかけては、前川と国道13号線、JR奥羽本線 (山形新幹線)が並行して走っている上に、ハザードマップ上では、周辺は氾濫域に指定されています。

 このような条件に考慮すると、ガス化溶融炉という危険施設を立地させるべきではないことが、読み取れます。建設予定地として、十分に検討されたとは言い難い結果でした。また、前川ダム計画時に構造計算された、前川ダム放水路コンクリート護岸の連続性を破壊するような排水樋管、排水口設置を、山形県は認めるべきではなかったと思います。

[ 図説2 ]
2.前川治水ダム事業によって起きること(山間狭隘部を170m3/s の大断面で改修したこと)
→ ダム直下流~狭隘部の氾濫水を直接前川へ放流し、前川の氾濫を増長し人命・財産を脅かしている

f:id:mamorukai:20170210192015j:plain

 

ダム設計洪水流量(東北地域での過去最大の豪雨想定)が起きた場合

f:id:mamorukai:20170210192034j:plain

[ ダム事業前 ] 忠川流域の平地は、周囲の山地から忠川に集 まる水流により形成され、長い間田畑として利用されて来ました。前川ダム完成以前は、自然の忠川池(前川ダムの前身)流域に田畑が広がっており、雨水の貯留・浸透機能をもっていました。忠川池は、池の真ん中に島をもつ景勝地だったと言われています。

[ ダム事業前 ] かつての忠川流域に広がっていた田畑は、山地の樹木による雨水浸透機能と共に、山から雨水が流れ出ることを抑える効果をもっていました。 しかし、前川治水ダム完成後、自然河川忠川は、コンク リート三面張りの人工的な放水路となり、忠川流域をも変更させ、次第に川としての浸透能力を失いました。

 

ダム設計洪水量模式図

f:id:mamorukai:20170210193235j:plain

山形県の「前川治水ダム計画」に記載されている「ダム設計洪水量図」です。豪雨による洪水時、前川上流では400m3/s の水量を想定しており、前川ダムの決壊を避けるためにダム方面へ160m3/s 分流し、すぐに前川へそのまま戻します。

上山市洪水避難地図にもとづく中山地区浸水想定・浸水想定水深

f:id:mamorukai:20170210193408j:plain

40 年確率の前川計画流量に基づいて、現況の前川の流下能力に照らして氾濫解析を行い(県)、その解析結果をもとに上山市洪水避難地図が作成されました。平成25 年の豪雨時の氾濫実績を配慮し、平成26 年3 月に改定されており、以前よりも浸水域が広く、深くなっています。


今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

清掃工場造成工事について 山形県に対し公開質問状を提出 | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170210002628j:plain

 現在、山形県の環境と観光産業を守る会は、上山市川口に建設中の清掃工場(公称エネルギー回収施設(一般ごみガス化溶融炉工場))建設に至る過程 (架橋工事に関する河川占用許可の是非)において、山形県と係争中で す。

 その訴訟とは別に、守る会は、山形広域環境事務組合(施設設置主体) を相手に、敷地造成工事(既に工事終了)の公費返還を求める住民訴訟を 行っております。造成工事自体にたいしては、山形広域環境事務組合は山形県の認可は必要ありません が、敷地及び敷地に接する山(通称物見山)から排出される雨水について は、一級河川忠川(前川ダム放水路)へ排水されるため、忠川を管理する 山形県の許可を取る必要があります。守る会は、造成工事計画自体が危険で違法であるとして、計画実行した山形広域環境事務組合を提訴しています。

 平成27年5月14日、山形県は山形広域環境事務組合より忠川の河川占用許可申請を受理し、「許可するをやむを得ない」というコメント付きで、同年7月23日 に許可しました。この、山形県が認可した経緯、詳細については明らかではありません。守る会は訴訟以前より、山形県の河川課に対し、専門家と共に何度か話し合いに訪れていますが、未だに納得できる回答を戴いておりません。そこで守る会は、これまでの経緯を含めて資料を作成し、公開質問状に回答して戴くことに致しました。

 公開質問状は、河川法に関する複雑な内容が多いため、図を用いて分かりやすくしております。これらの図説は、専門的な資料に基づき、河川工学の専門家に分析して戴いた内容です。守る会は、この敷地造成工事を行ったことにより、豪雨時に下流域での水害が増幅されると主張しております。

 添付資料が多いため、数日に分割して公開して参ります。この記事では、公開質問状に添付した資料(全3枚)の1枚目を公開します。

f:id:mamorukai:20170209032310j:plain

(*図中の説明文(左上から))

■ 観光資源  前川ダム湖での釣りや、かつて忠川の両岸に広がっていた自然景観、山地のトレッキング、物見山に祀られている岩屋観音、前川に架かる堅盤橋などがあります。高畠から上山に至る旧街道は、山形県アルカディア( 桃源郷) 街道と言われ、明治初期にイザベラ・バードも、この橋を渡りました。

■ 産業資源  山形ブランドとしての米( つや姫) に象徴される田園風景や、観光果樹園( 紅柿・サクラン ボ・ラフランス・ぶどう等) が、前川沿いに広がっています。

■ 前川ダム  治水ダムとしての完成により自然渓流であった忠川の豊 かな自然環境、景観、親水性、生態系を一気に破壊してしまいました。

■ 前川ダム放水路(一級河川忠川) 広がる田園を巨大なコンクリート水路で分断され、流量がコントロールされているため、常に水はほとんど流れていない( 流量配分は0m3/s) 状態にあります。

■ 結果として  前川ダム治水計画 は、それまでの豊かな自然や河川環境を、景観的、生態系的に破壊してしまったことがうかがえます。

f:id:mamorukai:20170209184603j:plain
避難路寸断 上山市道谷部崩落 平成26 年7 月12 日

1.上山市道前川ダム東線一部崩落
 前川ダム堤頂及びダム管理所へ向かう上山市道前川ダム東線は、平成 26 年7 月の豪雨によりダム手前の 谷部が崩落し、長期間通行禁止となりました。山の谷部は、前川ダム周辺に数か所存在しており、今後も土砂崩れや道路崩落の危険性があり、 市道は災害時の避難路としては問題が残ります。

 

f:id:mamorukai:20170209184654j:plain
前川氾濫により護岸が一部流出   平成26 年7 月12 日 

2.前川氾濫により護岸が一部流出
 前川ダム建設に伴い、昭和57 年に前川ダム放水路が整備されました。この計画は、かつて自然な山間を縫って流れる忠川としての渓谷美や、重要な 観光資源であった優美な忠川池をも無にし、自然な貯水効果をもつダムとしての役割を果たしていた山間の狭隘部を、巨大なコンクリート断面で貫いた ため、河道および沿河の田畑としての貯留効果も失いました。更にダムから の放水を直接前川へ流すようにしたため、改修の進まない一級河川前川への負担(洪水量)は大きくなり、その結果下流域での危険は増幅されることになってしまいました。

 

f:id:mamorukai:20170209184706j:plain
耕作放棄田畑に溜まった雨水が前川に越流 平成25 年7 月18 日 

3.耕作放棄田畑に溜まった雨水が前川に越流
 平成25 年豪雨の際の雨水は、すでに耕作が放棄された建設予定地からあふれ出て、忠川へ直接滝のように流出しました。コンクリート護岸壁で遮られた水流は、土に浸透貯留することなく下流へ真っすぐに流れ下ります。
 更に、建設予定地の地面は、敷地造 成工事により保水力を失った(ほぼゼロになる) ため、前川への流入量は益々増大して、下流域での氾濫を増幅し、人口密集地での被害を拡大させると考えられます。実際、平成25 年、26 年と、 上山市は2 年連続で豪雨に襲われ、前川流域に被害を及ぼしています。

f:id:mamorukai:20170209185617j:plain
*図中の絵を拡大


今後予定されている裁判:

平成29年2月14日
平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件

清掃工場の建設される土地の、主に河川法の観点からの違法性についてが主題です。

平成29年2月23日
平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件

この訴訟では、清掃工場建設予定地までの道路の改良工事に使用した公金の返還を求めています。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(上山市長 横戸長兵衛氏、(控訴審では被控訴人として))の責任を追及しています。

平成29年3月7日
山形県上山市川口清掃工場建設に関する裁判|本体訴訟(事件名称未定)

突如建設が決まった、山形県上山市「川口」清掃工場の建設中止および操業差し止めを求める裁判です。この清掃工場建設計画は、平成11年に山形広域環境事務組合によって計画され、以後4度に渡り計画が頓挫しました。川口は5度目の候補地として、平成24年12月に突然決定されたため、建設中止及び操業差し止めを求めています。

先月12月27日の裁判について:山形広域環境事務組合提出の準備書面の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170121004640j:plain

 先月の平成28年12月27日に、山形県に対する「上山市忠川河川占用許可取消請求事件」 裁判が行われ、結審したことは前回ご報告の通りです。
 同日、山形広域環境事務組合に対する「忠川橋梁建設公金差止請求住民訴訟事件」裁判が行われましたので、ご報告致します。

 この2つの裁判はどちらも、山形広域環境事務組合が上山市川口を公称エネルギー回収施設の建設地として決定した後、敷地に入るための一級河川・忠川(前川ダム放水路)に橋を架ける工事を巡っての訴訟です。山形県に対しては「県(本来は国)が管理する忠川に新橋を架けるための、安易な許可取り消しを求める」という主旨でした。

 組合に対する訴訟は、同じ忠川に対し、設置主体である組合が計画した架橋工事が不 適切であるため、これまで支出した公金の返還を求める訴訟です。「忠川への新架橋工 事は違法」とする点は、どちらの訴訟にも共通する事項であり、準備書面や証拠も類似 しておりますので、ご注意下さい。

 昨年12月27日、山形地裁で行われた口頭弁論において、組合側は第5準備書面と証拠資料を提出しましたが、守る会も追加で第6準備書面と証拠資料を提出致しましたので、公開致します。

 山形県に対する裁判同様、組合に対する裁判も同日結審し、判決は次回平成29年3月 21日に山形地裁で言い渡されることになりました。この結審に至るまで、守る会は昨年 8月、山形地裁に対し、現地視察及び証人尋問を申し出ましたが、いずれも却下されました。守る会としては、裁判官が現地視察をされることで、新橋周辺のコンクリート護岸に対する亀裂等の劣化状況を把握されること、証人尋問では被害を受けると想定される周辺住民の意見や、橋梁を設計した企業ご担当者の説明を求めるものでしたが、いずれも認められず、準備書面と証拠のやりとりのみで結審してしまったことを、非常に残念に思います。

 


山形広域環境事務組合提出 第5準備書面
※ブログ用に内容を一部編集しておりますので、予めご了承下さい。

f:id:mamorukai:20190219120629j:plain


平成27年(行ウ)第2号 忠川橋梁建設公金差止請求住民訴訟事件
原告 ****
被告 山形広域環境事務組合

第5準備書面

平成28年12月27日
山形地方裁判所 民事部 合議係 御中

被告訴訟代理人
弁護士  内藤 和暁
同  古澤 茂堂
同(担当) 小野寺 弘行

 被告第4準備書面8頁において詳述したように,河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書は,「堤防の全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」には,河川管理用道路の幅員を3m以上と定める河川管理施設等構造令第27条,同施行規則第15条第1号本文の規定は適用しないこととしているものである。

 この点について,原告ら準備書面(6)の7頁下段は,甲第51号証の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁の, 「『その全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板若しくはこれに準ずるものによる構造のもの』とは,いわゆる自立式構造(盛士《押え盛土を除く》の部分がなくても自立する構造)の特殊堤をいうものである・・・。コンクリートの自立式擁壁・・又は矢板等による自立式構造・・の堤防がこれに該当し,三面張構造の特殊堤はこれに該当しない。」 との記載を基に,忠川のコンクリート護岸は三面張り構造であり,自立式構造ではないことから,忠川については河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書の適用はない旨を主張している。

 しかしながら,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「自立式構造」の特殊堤とは,盛土の部分がなくても自立する構造の特殊堤をいうものであるところ,忠川のコンクリート護岸は,甲第27号証の前川治水ダム図集88頁,89頁の配筋図からも明らかなように,鉄筋コンクリート造の構造で,護岸部分も鉛直方向に自立した構造となっているものである(却って,乙第10号証の報告書15頁乃至17頁で応力度の計算を行っているように,自立しているのみならず,周辺地盤の盛土の土圧をも支えているものである。)。

 従って,忠川のコンクリート護岸は,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「自立式構造」の特殊堤に該当し,河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書の「堤防の全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」であることから,忠川については,河川管理用道路の幅員を3m以上と定める河川管理施設等構造令第27条,同施行規則第15条第1号本文の規定は適用されないものである。

 なお,原告は忠川のコンクリート護岸は三面張り構造であるとしているが,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「三面張構造の特殊堤」とは,法面及び天端の三面をコンクリートで被覆した特殊堤をいうものであり (乙第17号証 建設省河川砂防技術技術基準(案)同解説8頁,乙第18号証 河川構造物の耐震性能照査の取り組み4枚目を参照),本件における忠川のコンクリート護岸はこれに該当するものではない。

 よって,上記原告ら主張には理由がないものである。

以上


平成28年8月提出 原告・市民側提出の検証申立書

f:id:mamorukai:20170120222055j:plain

平成27年(行ウ)第2号 忠川橋梁建設公金支出差止請求住民訴訟事件

検証申立書

原  告   ****
被  告   山形広域環境事務組合
監理者 佐藤 孝弘


平成28年8月  日


上記原告ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之
弁護士 松村  孝

山形地方裁判所民事部合議係 御中

第1 証すべき事実
忠川の護岸コンクリートは、本件橋梁付近においてクラックが顕著に存在すること、クラックや水抜き穴から鉄分が滲出していること、本件橋梁の建設の結果忠川の管理用道路の幅が3mに満たなくなっていること、本件橋梁の直下の旧橋梁が通行困難であること。

第2 検証の目的物
① 忠川の護岸コンクリートのようす。
② 本件橋梁付近の管理用道路のようす。
③ 本件橋梁直下の旧橋梁のようす。

第3 検証によって明らかにしようとする事項
① 忠川の護岸コンクリートは、本件橋梁付近においてクラックが顕著に存在するのであり、且つ、水抜き穴やクラックから赤褐色の鉄分が滲出しているが、水抜き穴から鉄分が出ているのは本件橋梁付近だけであり、それはその部分の鉄筋に錆が生じていることを示している。
② 本件橋梁の建設により、忠川左岸側の管理用道路の道幅が3m以下になってしまっている。
③ 本件橋梁の建設により、忠川の左岸側にあった道路にスロープが設けられたため、その直下にある旧橋梁は通行が困難となってしまっている。


※以下スキャンデータ

f:id:mamorukai:20190219120629j:plain

f:id:mamorukai:20170120222824j:plain

f:id:mamorukai:20170120222836j:plain

f:id:mamorukai:20170120222055j:plain

f:id:mamorukai:20170120222850j:plain

[随時更新]進行中の裁判とこれまでの裁判結果 | 山形県上山市川口清掃工場問題

 f:id:mamorukai:20170112001647j:plain

 ※この記事では、現在守る会がおこなっている裁判と、これまでの裁判結果を随時お知らせしています。

現在進行中の裁判:

最終的更新日:平成31年(2019年)02月15日

1.清掃工場本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟
(事件名称:平成28年(ワ)第236号 一般廃棄物焼却施設建設禁止等請求事件)
 

平成28年12月06日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦 裁判長(第5回口頭弁論まで)、貝原信行 裁判長(第6回口頭弁論〜))

原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連*会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士**、小野寺弘行弁護士

概要:
平成24年5月に突如山形県上山市川口地区に建設が決定した清掃工場(公称エネルギー回収施設:山形広域環境事務組合は清掃工場とよばずに「エネルギー回収施設」と呼んでいます)本体の建設中止、かつ建設後の操業禁止を求める訴訟です。川口地区決定に至るまで、平成11年に山形市志土田地区、13年に山形市蔵王半郷地区、18年に上山市柏木地区、22年に上山市大石陰地区と候補地を定めながらも住民の反対運動が激しく、4度に渡り計画を断念した経緯があり、5度目の今回では、あまりにも強引に決定されたため(地域住民にはほとんど清掃工場についての説明がないまま、きわめて短期間のうちに決まった)、この経過・結果に納得できない市民が住民訴訟を提起しました。

裁判日程:

平成28年12月06日 起訴(原告:訴状)
平成29年03月07日 第01回 口頭弁論(被告答弁書提出)
平成29年05月23日 第02回 口頭弁論(原告:文書送付嘱託申立書、意見陳述2名、被告:意見書、証拠乙5~13提出)
平成29年09月05日 第03回 口頭弁論(原告:第1準備書面提出、証拠甲9~18号証)
平成29年11月28日 第04回 口頭弁論 (被告:第2準備書面・乙14〜18号証、原告:第2準備書面・甲19~25号証提出 )
平成30年02月28日 第05回 口頭弁論 (被告:第3準備書面・乙26〜29号証提出)
平成30年05月29日 第06回 口頭弁論 (原告:第3準備書面・甲26の1~36,甲27号証提出)
(*今回より裁判長交代、松下貴彦氏→貝原信行氏へ)
平成30年08月28日 第07回 口頭弁論 (原告:第4準備書面・乙28〜30号証提出)
(※以降、被告は都度の反論をせず原告が主張を終えた時点でまとめて反論するとのこと)
平成30年11月20日 第08回 口頭弁論 (原告:第5準備書面 )
平成31年02月12日 第09回 口頭弁論 (原告:第6準備書面)
( ※今回より裁判官交代、菅原光祥彦氏→板場敦子氏へ。原告側によるプレゼンテーションの申請)
平成31年06月18日 第10回 口頭弁論 予定

関係書類:

平成28年12月06日 訴状(リンク)
平成29年03月07日 第01回 口頭弁論 被告:答弁書(リンク)
平成29年05月23日 第02回 口頭弁論 被告:第1準備書面(リンク)
平成29年09月05日 第03回 口頭弁論 原告:第1準備書面(リンク)
平成30年11月20日 第08回 口頭弁論 原告:第5準備書面 (リンク)
平成31年02月12日 第09回 口頭弁論 原告:第6準備書面(リンク)

*  ごみ弁連とは「たたかう住民とともにごみ問題の解決をめざす弁護士連絡会」の略称です。
** 古澤茂堂弁護士は平成30年11月22日に死去のため訴訟代理権が消滅。(平成30年12月14日訴訟代理権消滅通知書)


最終的更新日:令和 (平成31年)(2019年)11月12日

2.清掃工場造成地に関する裁判
(事件名称:平成28年(行コ)第28号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件 )

平成29年11月17日~ 控訴審仙台高等裁判所(裁判長 小川 浩,裁判官 潮見 直之,裁判官 齊藤 顕)

控訴人:地域住民 
被控訴人:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘
控訴人ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被控訴人訴訟代理人:内藤和暁弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
清掃工場建設予定地の造成工事が、河川法に違反しており、隣接する川に対して大きな負荷をかけているのではないかを問う裁判です。

裁判日程:

平成29年11月17日 控訴状提出
平成30年03月07日 進行協議
平成30年05月15日 第01回 弁論準備(予定されていた口頭弁論から当日に弁論準備へ変更。被控訴人:上申書・答弁書・乙14~16号を提出))
平成30年07月17日 第02回 弁論準備(第一準備和解室。控訴人:第1準備書面・甲83~91号・調査嘱託申立書提出。被控訴人:乙17~18号提出。被控訴人(組合側は「これ以上主張することがない」とのことだが、裁判官により反論の提出を求められる))
平成30年09月27日 第03回 弁論準備(第一準備和解室。被控訴人:第7準備書面、乙19~20号提出)
平成30年12月18日 第04回 弁論準備(第一準備和解室。控訴人:第2準備書面提出 甲93号、証人尋問・現場検証の申請。被控訴人:第8準備書面提出)
平成31年02月26日 第01回 口頭弁論(401号法廷)控訴人の人証申請(2人)を認める。次回証人尋問。
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論(401号法廷)証人尋問、担当裁判官の変更。被控訴人:第9準備書面、乙21~30号証提出)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論(401号法廷)結審 控訴人:第3・4準備書面提出 甲97~101号証提出。被控訴人:第10準備書面(最終準備書面)、乙31~35提出)
令和元年11月12日 棄却(401号法廷)

関係書類:
*控訴人山形県の環境と観光産業を守る会(守る会)側
 被控訴人=山形環境事務組合(組合)側
 組合側の準備書面の番号は一審からの通し番号。
平成30年02月21日 控訴理由書(リンク)
平成30年03月07日 証拠申出書(リンク)
平成30年05月15日 第01回 弁論準備 控訴人:上申書・答弁書(リンク)
平成30年07月17日 第02回 弁論準備 控訴人:控訴審第1準備書面(リンク)
平成30年07月17日 第02回 弁論準備 控訴人:調査嘱託申立書(リンク)
平成30年09月27日 第03回 弁論準備 被控訴人:第7準備書面(リンク) 
平成30年09月27日 第03回 弁論準備 被控訴人:証拠説明書・乙19号・20号
平成30年12月28日 第04回 弁論準備 控訴人:控訴審第2準備書面(リンク)
平成30年12月28日 第04回 弁論準備 被控訴人:第8準備書面(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 証人調書(設計者)(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 証人調書(河川工学博士)(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 被控訴人:第9準備書面(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 被控訴人:証拠説明書(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 被控訴人:乙21~29号証(リンク)
令和元年05月28日 第02回 口頭弁論 被控訴人:乙30号証(設計者の陳述書)(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 控訴人:控訴審第3・4準備書面(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 控訴人:証拠説明書(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 控訴人:甲97号証(河川工学博士の証人尋問への意見)(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 控訴人:甲98~101号証(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 被控訴人:第10準備書面(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 被控訴人:証拠説明書(リンク)
令和元年08月27日 第03回 口頭弁論 被控訴人:乙31~35号証(リンク)


最終的更新日:令和02年(2020年)10月12日

3.清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の返還を求める住民訴訟
(事件名称:平成29年(行ウ)第8号 川口地区助成金公金差止等請求住民訴訟事件 )

平成29年(2017)07月18日~ 第一審、山形地方裁判所(松下 貴彦 裁判長、貝原 信行 裁判長))

原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合管理者 佐藤孝弘
原告ら訴訟代理人梶山正三弁護士(理学博士、ごみ弁連会長)、坂本博之弁護士(ごみ弁連事務局長)
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
清掃工場建設予定地である山形県上山市川口地区の地区会に対する不正な助成金の受け渡しについてを問う裁判で、川口地区会に支払われた助成金の返還と今後支払われる予定の助成金の支払停止等を求めています。

裁判日程:

平成29年07月18日 訴状提出
平成29年09月05日 第01回口頭弁論 (被告側答弁書提出(2Pのみ))
平成29年11月28日 第01回弁論準備(被告側:第1準備書面、乙1〜15号証提出)
平成30年02月28日 第02回弁論準備 (原告側:第1準備書面、甲1〜17号証提出、被告:証拠説明書、乙11〜12の2号証提出)
平成30年05月29日 第02回口頭弁論 (被告側:第2準備書面提出)
平成30年08月28日 第03回口頭弁論 (原告側:第2準備書面、甲18〜21号証、証拠申出書提出)(*4人の証人を申請)
平成30年08月29日 訴訟告知書
平成30年11月20日

第04回口頭弁論 (原告側:甲22号証、意見陳述書、資料1〜7提出。組合側は予定していた書面の提出おこなわず。

平成31年02月12日 第05回口頭弁論 (被告側:第3準備書面提出)
原告側:訴の変更申立書提出*原告は訴えの変更申し立てを行ったが手違いにより受理されず。次回までに正式な手続きの予定)

令和01年06月18日

第06回口頭弁論 → 突然裁判所より通知があり9/24に延期

令和01年09月24日

第06回口頭弁論 証人申請(平成30年8/28)の却下。

令和02年01月21日

第07回口頭弁論 (原告側:訴の変更申立書(2)、最終準備書面、証拠甲23~30号証)

令和02年04月01日

指定代理人選任届受理(中沢孝志→桜井武・庄司幸一)

令和02年04月21日

第08回口頭弁論 → 新型コロナウイルスの影響拡大により延期

令和02年07月28日

第08回口頭弁論 (原告側:訴えの変更申立書訂正申立書)

令和02年10月13日

第09回口頭弁論 結審予定

関係書類:
平成29年07月18日 原告側:訴状(リンク1)(リンク2)
平成29年09月01日 被告側答弁書(リンク)
平成29年10月23日 被告側第1準備書面(リンク)
平成30年02月28日 原告側第1準備書面(リンク)、甲1〜17号証
平成30年02月28日 被告側証拠説明書(リンク)、乙11〜12の2号証
平成30年05月29日 被告側第2準備書面(リンク)
平成30年08月28日 原告側第2準備書面(リンク)証拠説明書(2)(リンク)、甲18〜21号証、証拠申出書
平成30年08月29日 被告側訴訟告知書(リンク)
平成30年11月20日 原告側:甲22号証、意見陳述書、資料1〜7
平成31年02月12日 被告側第3準備書面(リンク)
平成31年02月12日 原告側:訴えの変更申立書
令和02年01月21日 原告側:訴の変更申立書(2)(リンク)第3準備書面(リンク)、証拠説明書(4)、証拠甲23~30号証
令和02年07月28日 原告側:訴えの変更申立書訂正申立書


最終的更新日:平成29年(2017年)1月21日

4.山形広域環境事務組合に対する敷地造成工事の公費返還を求める住民訴訟
(事件名称:平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件)

平成28年1月21日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長)

原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合 管理者 佐藤孝弘
原告ら訴訟代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
清掃工場(公称エネルギー回収施設)を建設するための造成工事(平成28年5月31日 工事終了)の建設計画や安全性などに多くの問題みられるため、すでに支出した公金の返還を求める訴訟です。守る会は、組合の監査委員に対し住民監査請求をおこないましたが、棄却されたため住民訴訟を提起しました。

裁判日程:
平成29年02月14日 第6回・口頭弁論
平成28年12月06日 第5回・口頭弁論
平成28年10月17日 第4回・口頭弁論
平成28年08月16日 第3回
平成28年05月31日 第2回
平成28年03月29日 第1回
平成28年01月21日 訴状

関係書類:
第3準備書面(被告側提出:平成28年12月2日)(リンク)
第2準備書面(被告側提出:平成28年8月10日)(リンク)
答弁書(リンク)
訴状(リンク)


 

最終的更新日:平成31年(2019年)2月9日

終了した裁判:

1.平成27年(ヨ)第5号 橋梁建設等禁止の仮処分命令申立事件

期間:平成27年2月17日~平成28年10月22日
山形地方裁判所(竹田奈未裁判官)

債権者:地域住民 
債務者:山形広域環境事務組合
債権者代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士 
債務者代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
山形広域環境事務組合が清掃工場に向かうときに渡る川に架ける新橋(新ちゅうかわ橋)の即時建設差し止めを求める訴訟でした。

裁判日程:
平成28年10月22日 棄却
平成27年10月07日 第4回・審尋
平成27年07月30日 第3回・審尋
平成27年06月03日 第2回・審尋
平成27年03月23日 第1回・審尋
平成27年02月17日 仮処分命令申立書

関係書類:
(公開準備中)


2.平成27年(ヨ)第16号 造成工事禁止の仮処分命令申立事件

期間:平成27年2月17日~5月12日
山形地方裁判所(竹田奈未裁判官)

債権者:地域住民 
債務者:山形広域環境事務組合
債権者代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
債務者代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
当時行われていた清掃工場(公称エネルギー回収施設(川口))の敷地造成工事の即時差し止めを求める訴訟でした。

裁判日程:
平成27年05月12日 棄却
平成28年04月26日 第3回・審尋
平成28年02月26日 第2回・審尋
平成27年12月04日 第1回・審尋
平成27年02月17日 仮処分命令申立書

関係書類:
答弁書リンク1リンク2
書証・甲24号証(リンク)


3.平成28年(行ウ)第2号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟事件

期間:平成28年1月25日~10月18日
山形地方裁判所(松下貴彦裁判長、曽我学裁判官、菅原光祥裁判官)

原告:地域住民 
被告:上山市長 横戸長兵衛
原告ら訴訟代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士 
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
上山市長 横戸長兵衛氏に対し、現在進められている清掃工場に至る「前川ダム東線道路改良工事」に使用した公金の返還を求める訴訟です。工事自体は既に完了していますが、この計画自体があまりにも杜撰で、工事を行ったにもかかわらず既存の問題がまったく解決しておらず、計画内容にも多々問題があるため、裁判において被告(横戸長兵衛氏)の責任を追及しています。請求が棄却されたため、控訴しています。→(平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件)

日程:
平成28年10月18日 判決・請求棄却
平成28年08月16日 第3回
平成28年05月31日 第2回
平成28年03月29日 第1回
平成28年01月25日 訴状

関係書類:
(公開準備中)

 


4.平成28年(ラ)第91号 造成工事禁止仮処分命令申立即時抗告事件

期間:平成27年2月17日~5月12日
即時抗告、仙台高等裁判所(小野洋一裁判長、潮見直之裁判官、綱島公彦裁判官)

抗告人:地域住民 
相手方:山形広域環境事務組合
抗告人ら代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
相手方代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
平成28年5月12日の平成27年(ヨ)第16号仮処分命令申立事件が棄却されたため、この決定の取消を求めて即日抗告しました。

裁判日程:
平成28年09月20日 決定・棄却
平成28年07月19日 準備書面提出
平成28年06月30日 答弁書 受領
平成28年05月23日 即時抗告状

関係書類:
決定分(リンク)
抗告人側提出・第1準備書面(リンク)
答弁書(リンク)
即時抗告状(リンク)


最終的更新日:平成29年(2017年)10月02日

5.上山市長 横戸長兵衛氏に対する上山市道改良工事の公費返還を求める住民訴訟
(事件名称:平成28年(行コ)第19号 前川ダム東線道路改良工事公金支出差止請求住民訴訟控訴事件)

平成28年12月27日~平成29年04月27日 控訴審仙台高等裁判所

控訴人:地域住民 
被控訴人:上山市長 横戸長兵衛 外1名
控訴人ら訴訟代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
被控訴人訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
国道13号線から清掃工場(公称エネルギー回収施設)までの、上山市道について、その工事内容、決定の経緯、入札内容等に不審な点が多々見られるため、すでに支出した公金の返還を求める訴訟です。守る会は、組合の監査委員に対し住民監査請求を行ったものの、棄却されたため住民訴訟を提起し、被告である上山市長・横戸長兵衛氏の責任を追及しましたが、控訴棄却。

裁判日程:
平成29年04月27日 判決
平成29年02月23日 第1回・口頭弁論
平成28年12月27日 控訴理由提出

関係書類:
平成29年04月27日 判決文(リンク)
平成29年02月21日 控訴人提出 第1準備書面(リンク)
平成29年02月17日 被控訴人提出 答弁書(リンク)
平成28年12月27日 控訴理由書(リンク)
※ 証拠資料等の資料が補完される可能性があります。


最終的更新日:平成29年(2017年)1月21日

6.山形県に対する一級河川忠川の河川占用許可取消を求める行政訴訟
(事件名称:平成27年(行ウ)第1号 上山市忠川河川占用許可取消請求事件)

平成27年2月17日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長)

原告:地域住民 
被告:山形県
原告ら訴訟代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
山形広域環境事務組合が清掃工場に向かうときに渡る川に架けた新橋(新ちゅうかわ橋)が、一級河川忠川を占用していることが不当として、許可取り消しを求める行政訴訟です。

裁判日程:
平成29年03月21日 判決
平成28年12月27日 第10回・口頭弁論 <結審>
平成28年11月01日 第9回・口頭弁論
平成28年09月13日 第8回・口頭弁論
平成28年07月04日 第7回・口頭弁論
平成28年04月26日 第6回
平成28年02月26日 第5回
平成27年12月04日 第4回・弁論準備
平成27年10月07日 第3回
平成27年07月28日 第2回
平成27年04月14日 第1回
平成27年02月17日 訴状

関係書類:
第8準備書面(原告側提出:平成28年12月26日)(リンク)
第6準備書面(被告側提出:平成28年12月27日)(リンク)
(以下、公開準備中)


最終的更新日:平成29年(2017年)1月21日

7.山形広域環境事務組合に対する新ちゅうかわ橋架橋工事公費返還を求める住民訴訟
(事件名称:平成27年(行ウ)第2号 忠川橋梁建設公金差止請求住民訴訟事件)

平成27年4月14日~ 第一審、山形地方裁判所(松下貴彦裁判長)

原告:地域住民 
被告:山形広域環境事務組合 原告ら訴訟代理人坂本博之弁護士、松村孝弁護士
被告訴訟代理人:内藤和暁弁護士、古澤茂堂弁護士、小野寺弘行弁護士

概要:
山形広域環境事務組合が清掃工場に向かうときに渡る川に架けた新橋(新ちゅうかわ橋)の設置工事に掛かった公金支出の差し止めを求める住民訴訟です。

裁判日程:
平成29年03月21日 判決
平成28年12月27日 第10回・口頭弁論 <結審>
平成28年11月01日 第9回
平成28年09月13日 第8回
平成28年07月04日 第7回
平成28年04月26日 第6回
平成28年02月26日 第5回
平成27年12月04日 第4回・弁論準備
平成27年09月14日 第3回
平成27年07月28日 第2回
平成27年06月12日 第1回
平成27年04月14日 訴状

関係書類:

第5準備書面(被告側提出:平成28年12月27日)(リンク))
検証申立書(原告側提出:平成28年8月(リンク))
(以下、公開準備中)


先月12月27日の裁判について: 経過報告と山形県提出準備書面の公開 | 山形県上山市川口清掃工場問題

f:id:mamorukai:20170109195239j:plain

 山形広域環境事務組合は、公称エネルギー回収施設建設のため、平成24年12月、上山市川口を半ば強引に候補地として決定しました。しかし、建設予定地に入るためには、敷地東側に接して流れる一級河川忠川(前川ダム放水路)に、しかるべき橋を架ける必要がありました。建設用地は元々田畑 だったため、農作業用の小さな橋が架けられていましたが、工事車両を含む大型車は、この橋を渡ることができないため、新たな架橋工事が必要でした。

 組合は、この新橋架橋工事を行うにあたり、平成26年9月10日、忠川を管理する山形県に対し、工作物新設のための河川占用許可を申請しました。 この忠川の護岸は、ダム放水路としてコンクリート三面張りとなっており、 前川ダム建設に伴い完成していますが、すでに護岸壁の構造計算書は廃棄 されており、詳細な構造を確認することは不可能です。

 しかし、架橋工事の進捗に伴い、建設用地に接する左岸の護岸壁には多くのクラック(亀裂)が目視できるようになりました。元々この護岸は、田畑を支持する構造計算になっていたはずです。架橋工事の際に加わった新 たな盛り土の土圧や、パイル打ち込み時、作業車両の振動等により亀裂が深まり、護岸崩壊の危険性が増すとして、守る会は平成27年2月17日、河川占用許可を出した山形県を提訴し、許可の取り消しを求めました。

 以降、山形地方裁判所において裁判が続けられましたが、去る平成28年12月27日の口頭弁論において、山形県側は第6準備書面を提出しましたので公開致します。 これに伴い、守る会は第8準備書面提出致しましたので、こちらも公開致します。この準備書面の中で守る会は、今後も争う姿勢を示しましたが、口頭弁論終了後に松下貴彦裁判長により「結審」が告げられました。

  また、守る会は平成28年8月、山形地方裁判所に対し現地の様子を裁判官に確認して戴くため、「検証申立書」を提出致しましたが、この申し立ても却下となり、裁判官が現地検証を行うことなく結審し、平成29年3月21日に判決の予定となりました。

 結審しましたので、当ブログでは今後この裁判の総括を行っていく予定です。

 ※内容はブログ用に一部編集しておりますので予めご了承ください。


山形県が12月27日に提出しした「第6準備書面

f:id:mamorukai:20190219120235j:plain



平成27年(行ウ)第1号 上山市忠川河川占用許可取消請求事件 

原告 ****
被告 山形県

第6準備書面

平成28年12月27日

山形地方裁判所 民事部 合議係 御中

被告訴訟代理人
弁護士  内藤和暁
同  古澤茂堂
同(担当) 小野寺弘行

 被告第5準備書面第1において詳述したように,河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書は,「堤防の全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」には,河川管理用道路の幅員を3m以上と定める河川管理施設等構造令第27条,同施行規則第15条第1号本文の規定は適用しないこととしているものである。

 この点について,原告ら準備書面(6)の7頁下段は,甲第51号証の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁の, 「『その全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板若しくはこれに準ずるものによる構造のもの』とは,いわゆる自立式構造(盛士《押え盛土を除く》の部分がなくても自立する構造)の特殊堤をいうものである・・・。コンクリートの自立式擁壁・・又は矢板等による自立式構造・・の堤防がこれに該当し,三面張構造の特殊堤はこれに該当しない。」 との記載を基に,忠川のコンクリート護岸は三面張り構造であり,自立式構造ではないことから,忠川については河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書の適用はない旨を主張している。

 しかしながら,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「自立式構造」の特殊堤とは,盛土の部分がなくても自立する構造の特殊堤をいうものであるところ,忠川のコンクリート護岸は,甲第 27号証の前川治水ダム図集88頁,89頁の配筋図からも明らかなように,鉄筋コンクリート造の構造で,護岸部分も鉛直方向に自立した構造となっているものである(却って,乙第8号証の報告書15頁乃至17頁で応力度の計算を行っているように,自立しているのみならず,周辺地盤の盛土の土圧をも支えているものである。)。

 従って,忠川のコンクリート護岸は,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「自立式構造」の特殊堤に該当し,河川管理施設等構造令施行規則第15条第1号但書の「堤防の全部若しくは主要な部分がコンクリート,鋼矢板又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」であることから,忠川については,河川管理用道路の幅員を3m以上と定める河川管理施設等構造令第27条,同施行規則第15条第1号本文の規定は適用されないものである。

 なお,原告は忠川のコンクリート護岸は三面張り構造であるとしているが,上記の「解説・河川管理施設等構造令」113頁,114頁にいう「三面張構造の特殊堤」とは,法面及び天端の三面をコンクリートで被覆した特殊堤をいうものであり (乙第13号証 建設省河川砂防技術技術基準(案)同解説8頁,乙第14号証 河川構造物の耐震性能照査の取り組み4枚目を参照),本件における忠川のコンクリート護岸はこれに該当するものではない。 よって,上記原告ら主張には理由がないものである。

以上

平成27年(行ウ)第1号  上山市忠川河川占用許可取消請求事件

f:id:mamorukai:20170109200650j:plain

f:id:mamorukai:20170109200657j:plain


*原告による12月16日提出の第8準備書面

f:id:mamorukai:20170109201801j:plain

平成27年(行ウ)第1号  上山市忠川河川占用許可取消請求事件

準備書面(8)

原  告   ****
被  告   山形県

平成28年12月26日

上記原告ら訴訟代理人
弁護士 坂本 博之

山形地方裁判所民事部合議係 御中

第1 はじめに
 本書面は、被告の平成28年10月28日付第5準備書面に対して、認否・反論を行うものである。

第2 被告の第5準備書面に対して

一 同第1に対して

  第1段落は認める。
  第2段落は争う。
  第3段落は争う。
  第4段落は争う。
  第5段落は否認する。

 第一に、被告の主張は、これまでの被告の主張と矛盾する。即ち、これまで被告は、本件訴訟に至る以前の原告らに対する説明や、本件訴訟における準備書面において、管理用道路の道幅の問題について、本件橋梁の建設によって3m幅を維持することができるという主張を行ってきたものであるし、実際に行われている工事は、管理用道路について、3mの道幅を維持しようと努力しているもののようである。しかし、この度の被告の主張は、そもそも管理用道路の道幅は3mなど必要がないというものであり、これまでの主張や態度を反故にするようなおかしな内容である。

 第二に、堤防とは、河川の「流水が河川外に流出することを防止するために設ける」ものである(河川管理施設等構造令17条)。被告が述べている忠川のコンクリート護岸は、忠川の流水によってその両岸が洗掘されることを防止するために設けられているものであって、堤防の一部ではない。護岸コンクリートが流水の堤防外への流出防止の役割を担っている部分がないわけではないが、それは全体ではなく、一部である。そして、忠川では、護岸コンクリートの外側に、管理用道路が作られている土盛部分があるのであって、その土盛部分が堤防である(甲32の写真等)。この土盛部分は、コンクリート護岸が施されていない。

 第三に、被告が指摘する河川管理施設等構造令施行規則第15条1号「堤防の全部若しくは主要な部分がコンクリート…又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」というのは、河川管理施設等構造令第19条の「堤防は、盛土により築造するものとする。ただし、高規格堤防以外の堤防にあつては、土地利用の状況その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合においては、その全部若しくは主要な部分がコンクリート、鋼矢板若しくはこれらに準ずるものによる構造のものとし、又はコンクリート構造若しくはこれに準ずる構造の胸壁を有するものとすることができる。」という規定を踏まえたものである(甲51・155p)。ここで、「その全部若しくは主要な部分がコンクリート、鋼矢板若しくはこれらに準ずるものによる構造のもの」というのは、所謂自立式構造(盛土の部分がなくても自立する構造)の特殊堤をいうものであり、コンクリートの自立式擁壁はこれに該当するが、三面張構造の特殊堤はこれに該当しない、とされている(甲51・113~114p)。忠川の護岸コンクリートは、三面張り構造であり、所謂自立式構造ではない。従って、忠川の護岸コンクリートに関しては、河川管理施設等構造令施行規則第15条1号は適用がない。

 第四に、仮に忠川の護岸コンクリートについて、河川管理施設等構造令施行規則15条1号の適用があると考えられるとしても、本件忠川の護岸コンクリートは、河川管理施設等構造令施行規則15条1号に定める「主要な部分がコンクリート…又はこれらに準ずるものによる構造のものである場合」に該当しない。何故なら、コンクリート等の構造を有する堤防は、流水による洗掘や流水の浸透による地滑り等の被害を防止することができると考えられるから土盛の堤防のような幅は不要である、とされたものと考えられる。しかし、本件忠川の護岸コンクリートが劣化しており、強度が不足であると考えられることは、これまで原告らが繰り返し主張してきたところである。従って、本件忠川の護岸コンクリートは、河川管理施設等構造令施行規則15条1号の規定に該当しないものと言うべきである。
 従って、被告の主張は失当である。

 

二 同第2に対して
 1 同1に対して
   第1段落は認める。
   第2段落は争う。
   第3段落は争う。
   第4段落は争う。

 被告の主張は誤っている。即ち、第一に、地震時に、基礎杭の上部(杭頭)が変位することは、被告作成の「下部工計算書」の記載から明らかである。従って、基礎杭上部に乗っている橋台もまた変位することになることは明らかである。そして、橋台の変異量は、基礎杭上部の変位量よりも大きくなることも明らかである。支点部より離れれば離れるほど変位が大きくなることは、構造力学の一般的な考え方である。

 第二に、被告は、「地震時の揺れによる慣性力」と、「地震時における水平方向の応力」とが異なったものだと主張しているが、原告の「地震時の基礎杭と橋台とが変位し、その変位がコンクリート護岸に伝わる」という主張に対して、被告は、橋台とコンクリート護岸との間の土砂がクッションの役割を果し、護岸には伝わらない、という主張をしてきた。即ち、地震時に橋台と基礎杭とにかかる力(被告の主張する地震の揺れに係る慣性力)が水平方向の応力として土砂に係ることを認めたうえで、土砂がクッションとなってコンクリート護岸には伝わらないという主張を行っていたのである。即ち、「地震時の揺れによる慣性力」と、「地震時における水平方向の応力」とは用語は異なっているが、同じ内容を表しているものであって、被告もこれを認めていたものである。被告の第5準備書面での主張は、破綻している。

 第三に、原告らは、被告の「地震の揺れによる慣性力」を前提として、地震時の「地震時の揺れによる慣性力」と、「地震時における水平方向の応力」と「水平方向の応力」を算出したものであるが、本来は、被告がコンクリート護岸への悪影響として「水平方向の応力」を、橋梁の設計時に考慮しておくべきであったのである。コンクリート護岸の存在を認識していれば、この度の橋梁の構造や形式について適切な検討を行ったうえで、現に採用された構造・形式を変更する必要があったり、老朽化した護岸コンクリートの補強等を行う必要があったりすることに気付いたはずであったにも拘わらず、被告には、それを怠ったという決定的なミスがある。そもそも、本件のような橋梁の設計時において、既存の河川構造物への影響を考慮して設計を行うのが本来の手法であるが、被告は、既存のコンクリート護岸の存在を全く無視し、橋梁単体の安全性だけを求めてしまったのであり、設計開始時からの重大なミスであると強く指摘せざるを得ない。その結果、コンクリート護岸に多数の亀裂を生じさせ、護岸の崩壊をも危惧しなければならない事態を招いているのである。このことは、河川管理施設等構造令第60条の第2項の「河川区域内に設ける橋台及び橋脚は、…付近の河岸及び河川管理施設の構造に著しい支障を及ぼさず…構造とするものとする」という条項にも違反するのである。ここで、「河川区域」とは、堤防の川裏(堤防の河川に面していない側)の法尻から、対岸の堤防の川裏の法尻までの間の河川としての役割を持つ土地のことをいう(甲52)。忠川に関していえば、左岸側の管理用道路の川裏側の法尻から、右岸側の市道に至るまでの区間をいうものと考えられる。本件橋梁の橋脚は、この河川区域に存在するものである。

 なお、被告が指摘する甲41の「護岸底辺部にかかる曲げモーメント」と甲47・17pの「護岸天端部にかかる曲げモーメント」というのは、「護岸天端部にかかる曲げモーメントに対して、護岸底辺部の鉄筋が耐えられない」、という意味である。

2 同2に対して
  第1段落は争う。
  第2段落は認める。
  第3段落は争う。
  第4段落は争う。
  第5段落は争う。
  第6段落は争う。
  第7段落は争う。
  第8段落は争う。

 被告は、「空気間隙が0に近くなる」ということと、「体積の10%程度の空気間隙がある」ということの違いを強調している。「0に近い」と「10%程度」とが違うということであるが、例えば、30%程度よりも、10%程度というものの方が「0に近い」ということができるのであり、これは相対的な問題にしか過ぎない。

 締固めは、土に含まれる空気を追い出して密度の高い地盤を造る作業である。これは、乙11の2・40pにも記載されていることである。その締固めの管理項目の一つが、空気間隙に関わる締固め度であり、もう一つの項目が表面沈下である。被告は、空気間隙の「0に近い」と「10%程度」という数値の違いに拘る一方で、表面沈下量については認識していないようであるが、「国土交通省の基準で定められた締固め方法で施工された土壌は、締固め度が90%以上であり、表面沈下が収束した状態であることから、重い建設機械が乗っても、これ以上沈下することなく…」(甲47・3~4p)とあるように、締め固められた土壌にクッション性があるというのは誤りである。

 また、被告は、この土砂の「クッション性」について、何の根拠も示さずにただ述べているだけにしか過ぎない。被告が提出した乙11の2及び乙12のどこにも、土砂のクッション性についての記載はない。寧ろ、上記のように、十分に締固めがなされた地盤は、重い建設機械が乗っても、表面沈下しない状態に至っているのであるから、クッション性があるとはいえない、と判断するのが相当である。

 さらに、甲47添付の別紙2の「土壌の凍結・融解」に、「土は凍結すると大変硬くなり、圧縮強さなどは数十倍にもなる。コンクリートにも優るとも劣らないこの強さは、元来の土はもとより、純粋な氷よりもはるかに大きい」とあるように(同3丁目)、本件の基礎杭や橋台周辺の土壌が凍結した場合には、このように硬くなり、クッション性などは到底なくなってしまうことは明らかである。そして、本件土地は、山形県上山市川口地区に所在するが、この場所は、冬期には氷点下15℃にまで下がることがあり、土壌が凍結してコンクリート並みの強度になることが往々にしてあることが容易に予想される。 因みに、固まったコンクリートにも、空気間隙が数%あるが、固まったコンクリートにクッション性がないことは常識的にみて明らかである。このように、空気間隙があることとクッション性があることとは別問題であるということも言える。

 

3 同3に対して
  第2段落のうち、被告が指摘する原告の主張については認め、その余は否認する。
  第3段落のうち、第1文は認める。第2文は争う。
  第4段落は争う。
  第5段落は争う。
 第一に、本件工事によってコンクリート護岸の側壁部分が破壊されるような荷重及び振動が発生・伝達されたことは、既に述べた通りである。

 第二に、被告の、忠川コンクリート護岸内部の鉄筋が腐食したとすることはできないとの主張は、原告らの主張に対して、何らの反論にもなっていない。原告らは、護岸コンクリートのクラックから滲出している鉄分が、鉄筋の錆によるものか、盛土に含まれる地下水の鉄分によるものか断定できないとした場合であっても、仮にそれが地下水由来の鉄分であったとしても、それは護岸内部の鉄筋が地下水に曝されているということを意味するのであり、地下水に曝された鉄筋は早晩錆を生じて膨張し、護岸コンクリートの崩壊を招くことになる、と主張しているのである。被告の主張は、この原告らの主張に対して、何らの反論にもなっていない。

 因みに、被告は、「水分の滲出はコンクリート内部を透過した水分が滲出したと思われるのであり…」と、コンクリート内部を水が透過していることを認めているが、水に触れたコンクリートが錆びることにまで、思いが及んでいない。しかし、鉄が水に触れれば錆びることは、常識に属することである。

 鉄筋コンクリートは、圧縮強度の強いコンクリートと曲げ・引張強度の強い鉄筋とを組み合わせた複合材である。そして、錆びる鉄筋を、アルカリ性のコンクリートで被覆し、その強度を保持している材料である。近年、鉄筋コンクリート製の橋脚や高速道路の橋脚の痛みが問題になっているが、その原因の殆どは、コンクリートのクラック(亀裂、ひび割れ)やコンクリートの中性化によるものが多い。即ち、クラックから水が侵入し、内部の鉄筋を錆びさせ、膨張させ、コンクリート崩壊に至るという順序である。土木、建築にかかわらず、建設業界では、鉄筋コンクリート構造物を造る際には、図面通りの鉄筋本数・鉄筋径は勿論のこと、鉄筋カブリ(コンクリート表面から鉄筋までの隙間)にも十分に注意を払い、且つクラックが生じないように、コンクリートの配合、施工、養生を行うものである。このように、鉄筋コンクリートのコンクリートにクラックが生ずれば、鉄筋に錆が生じて鉄筋を膨張させ、クラックは更に拡大するので、遂にはコンクリートの破断に至り、コンクリート構造物に被害を与えてしまう。そのため、建設業界では鉄筋に錆が生じてコンクリート構造物に被害を与えないようにすることは、常に細心の注意を払うものである。被告のように、クラックが生じて、そこを水が透過していても何らの問題も感じないということでは、公共事業を行う主体としての能力に大いに問題があるということになる。 

 もし被告が、鉄筋コンクリート護岸にクラックが生じ、そのクラック中を水が透過していることを認識し、しかもそのことについて何らの問題もないと考えるのであれば、コンクリートにクラックが生じても鉄筋には水が触れないと考えているのか、あるいは鉄筋に水が触れても鉄筋は錆びないと考えているのか、何れかであろうと思われるが、その何れであるのか、また、どうしてそのようなことが可能なのか、そのメカニズムを説明すべきであろう。

以上


※申立が却下された「検証申立書」

f:id:mamorukai:20170109204611j:plain

f:id:mamorukai:20170109204620j:plain

© 山形県の環境と観光産業を守る会, All rights reserved. 当ブログへのリンクについてはこちら。