山形県の環境と観光産業を守る会

山形県上山市川口地区に建設予定の清掃工場(2018年12月から「エネルギー回収施設(川口)」として稼働開始)に関する詳細、および諸問題について

上山市清掃工場用地造成工事 公金差止請求住民訴訟事件:昨日の裁判について | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 昨日の平成28年12月6日に山形地方裁判所において上山市川口の公称「エネルギー回収施設」敷地造成工事公金支出差し止めを求める裁判(住民訴訟弁論準備)が行われました。

 この裁判(平成28年(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金差止請求住民訴訟事件)のこれまでの経緯:

 昨年(平成27年7月1日)山形広域環境事務組合は、敷地造成工事に関する入札を行い、上山市の羽陽建設・堀川土建建設工事共同体が落札。7月3日に請負代金額3億7098万円で工事請負契約を結び、 7月24日の組合議会で承認後、本契約となりました。 しかし、これに対し守る会は、

  1.  契約内容が不明確である。
  2.  河川法に違反した計画である。
  3.  談合が行われていたと考えられる

として、組合監査委員に対し平成27年10月28日、住民監査請求を行いました。その後同年12月3日、守る会代表3人が意見陳述したものの、 12月28日に棄却されたため、翌平成28年1月27日敷地造成工事公金支出差止住民訴訟を提起しました。

 12月6日まで守る会は、第1から第4準備書面と書証を山形地方裁判所に提出。それに対し組合は、第1から第4までの準備書面と書証を提出しています。

 「河川法に違反した計画である」を証明するために、守る会はこれまで河川工学博士に現場検証と分析を依頼し、組合の計画が多方面で河川法に 違反する主旨の論文を提出して参りました。12月6日に提出された甲58号証を、下記に公開致します。この論文では、組合の行った敷地からの排水量計算に誤りがあるため、下流の忠川や前川に対して組合の計画以上の水が流れるため、水害の被害を助長することを述べています。


*ブログ用に内容を一部編集しております。

平成28年11月19日

組合の清掃工場用地造成工事は 忠川、前川に重大な負荷を与える

博士:河川工学
技術士:総合技術監理(建設)
技術士:河川、砂防及び海岸 建設コンサルティング経歴30年
第一種情報処理技術者

1.造成地雨水排水量の確率年別試算(造成地開発後の10年確率流出量の比較)

 組合の用いている雨水排水計画における、流出係数、流達時間を用いて、山形県の河川整備計画で用いる確率別短時間雨量により造成地雨水排水量の確率別試算を行い、組合排水計画が、一級河川忠川及び前川における現状の流下能力に対し過大であることを述べる。

 組合は造成地の排水計画を、余裕をもたせた計画としているが、それは敷地内の安全性を優先とした意味での余裕に過ぎない。組合の示す「安全性」とは、敷地に接する山や敷地に降った雨水を迅速に忠川に排出することである。そして、敷地内の安全を確保するあまり、排出先の忠川・前川の現流下能力にとって過大かつ負荷を与える計画になり、現在でも余裕のない前川下流域に悪影響を与えることを、ここに示す。

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山形県:降雨強度曲線の係数表
県でのホームページに公開されている“山形地域における河川整備計画”に準拠する。

r=a/(t^ n + b) (mm/hr)

n, a, b = 確率年により代入する

t:降雨の継続時間(分): 組合の計画値(kervey式)を用いて試算する

 近年「気候変動に伴う」とも言われている集中豪雨は、毎年のように“過去最大”と表現され、全国に被害をもたらしている。そのような現状において、流下能力が50年確率に満たない忠川、前川や造成地においても超過降雨に配慮する必要がある。

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■ 流出量計算書
 造成地開発後(河川整備計画における降雨強度式を用いた場合、ほか流出係数、到達時間、排水面積の条件は組合計画と同様)

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造成地開発後の10年確率流出量の比較をおこなう。
  Q=1.357+2.645 =4.002m3/s(県河川確率雨量強度式10年確率による)
  Q=1.498+2.923 =4.421m3/s(組合計画値)(造成地排水能力5.12m3/s)

※ 造成地開発後の排水量は、山形県河川整備計画の降雨強度式の考え方を用いると、 組合が道路土工要綱で計画した流量より余裕を見込んで10%大きく見積もられているため、排出先の河川にとっては過大となってしまう。さらに、組合の計画する排水施設能力(計画+余裕2割=5.12m3/s)と比較すれば、10年確率規模を超える降雨の場合には、28%増となった排水量が忠川、前川に流入するため、河川の大幅な負担増となる。また、組合の排水施設計画は、河川の降雨強度式を用いた場合、計算表から30~40年確率相当規模の降雨をも忠川へ排水する施設としている。このような排水計画では、未だに改修されていない前川の流下能力を超えてしまい、下流域の洪水氾濫被害を助長するものである。

【付設】上記計算による10年確率の開発後流出量は、4.002㎥/sである。 組合は、これを5.12㎥/sとしているが、この数字の差は以下の違いである。

5.12㎥/s
 組合の10年確率における道路土工要領準拠、及び計画排水量4.421㎥/sに対する排水施設計画を行った場合の、余裕も含めた“施設排水能力”である。この流量は、造成地が浸水されることなく、忠川に順調に排水されることを目的とした流量と考えられる。

・4.002㎥/s
 県が公表している河川整備計画における“山形”地域の10年確率降雨強度式(組合の道路土工要領とは異なる)を用いた数字である。組合は、道路土工要領の降雨強度式による到達時間、流出係数、排水域面積の値を用いている。

※つまり、河川計画で考える降雨外力では、同じ10年確率では4.002㎥/sであるが、道路土工要領を用いて計算すると、4.421㎥/sとなってしまう。その結果、流出量は約10%増えるため、河川にとって流入過剰となる。さらに、造成地の排水施設能力が5.12㎥/sであれば、10年確率を超える降雨でも、この量まで排水されることも考えられる。そうなれば、さらに過大放流が見込まれ、下流域に甚大な被害をもたらすこともあり得るのである。

 

2.前川氾濫推定容量と水位上昇量の推定(忠川流出量による前川への影響)

 忠川の前川ダムを含めた計画流量配分は、山形県ホームページによると0㎥/sである。現在改修されていない前川が満杯となり、危険な状況において、忠川からの合流量が重なれば、すなわちその流出量は、洪水氾濫を起こすものとなる。

 ここでは上記で算出した確率年別忠川流量に、図‐1に示す合理式の単一ハイドログラフ(流出波形)を想定し、その容量を推算して前川へ合流後の氾濫容量として算定する。また、それを想定できる氾濫面積で除し、忠川流出による氾濫水深として推算する。

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氾濫容量(V㎥)= Q㎥/s × t 分×2 × 60秒 / 2

 Q :忠川流出流量: 合理式による
 到達時間内降雨強度: 合理式においては到達時間内は一定の降雨強度としている
 t : 到達時間(流達時間と同義)

前川氾濫水深(Hm) = V ㎥ / Am2(氾濫面積)

 氾濫面積は、前川の忠川合流点付近の河川幅:およそ5m程度、氾濫原延長:およそ1km(忠川と前川の合流地点から跨線橋下まで)として5m×1000m=5000m2 と想定した。つまり、現在でも未改修で流下能力の不足している前川が、1km下流の跨線橋下までの間で、護岸崩落や橋桁等への流木などによる閉塞等により満杯となる洪水状況を想定する。そこに忠川の排出容量が流入した場合、5m幅×延長1kmにおいて、平均的に水位Hがどの程度護岸を超えて上昇するかを試算した。

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  • 10年確率においては7200㎥、前川計画40年確率(未整備)の降雨においては、約1万㎥もの排水容量が想定される。また、流出容量としては、雨量ピークの前後にも降雨流出があるので、実際はさらに大きな排水容量となる。
     
  • 想定する10年確率の排水量において、前川の洪水氾濫に対する影響は、その河川氾濫水深1.4m程度に達する。
     
  • 近年の集中豪雨の増加、増大傾向を考えれば、30年から100年確率規模の降雨を当然想定すべきであるが、造成地の排水は、前川氾濫水位に対して、2m程度の水位上昇が推定され、この程度の堤内地(河川外民地)への洪水氾濫被害が助長されることは容易に考えられる。すなわち、前川と忠川合流点より下流の上山市道、及び橋などが冠水することにより、この上方に住む市民の唯一の避難路さえ途絶され、重大な被害が生じることが想定される。
    通常、水深50cm程度で歩行避難は困難となり、自動車も動けず避難には使えない。市道の上流側では、平成26年豪雨の際に道路が大規模に崩落し、通行不能となったことは周知の事実である。
     

3. 造成地開発前後の雨水流出量の比較

① 造成地開発前後のピーク流出量の比較(10年確率)

組合の計画(10年確率の雨が降った場合)に従った場合、造成地開発後の排水量が、造成前と比べてどれだけ増えるかについて、検証する。ここでは、10年確率の雨が降った場合においての造成前の流出量を、河川整備計画の降雨強度式を用いて計算し、組合の雨水排水計画(10年確率)との比較を行う。

  •  造成地開発前の10年確率流出量
    降雨強度式は、山形県が公開している“山形地域における河川整備計画” (道路土工要綱とは異なる)に準拠する。降雨強度rは下式による。
    r=a/(t^ n + b) (mm/hr)
         10年確率での降雨強度式係数 n = 0.84
          a = 1721
          b = 10.2
    :降雨の継続時間(分): 組合の計画値(kervey式)を用いて試算する。
         t1 = 25.1分 : 基準点1
         t2 = 33.9分 : 基準点2

    基準点1   r1 = 1721 / (25.1^0.84+10.2) = 68.3mm/hr
    基準点2   r2 = 1721/ (33.9^0.84+10.2) = 58.4mm/hr

    流出量Q㎥/sは合理式を用いて計算する(道路土工要領、河川整備計画とも合理式)
       
    Q =1/3.6× f・r・A


     ここで、造成地開発前の流出係数 f(現況、計画)は、河川砂防技術基準より以下の地目による平均値とする。(河川砂防技術基準同解説 計画編(国土交通省河川局監修)“2.7.3洪水流出モデルの定数の決定“より)

       密集市街地:0.9      
       一般市街地:0.8     
       畑原野  :0.6      
       水田   :0.7      
       山地   :0.7

    基準点1:造成地については、ほぼ元休耕田であったため畑原野f1=0.6とする
    基準点2:ほぼ山地として、f2=0.7 を用いる。
    造成地開発前の流出量(10年確率) Q㎥/s

    ■基準点1(造成地):t=25.1分
    r1 = 1721 / (25.1^0.84+10.2) = 68.3mm/hr
    Q1 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.6×68.3×9.30ha/100 = 1.059㎥/s

    ■基準点2(山地含む):t=33.9分
    r2 = 1721/ (33.9^0.84+10.2) = 58.4mm/hr
    Q2 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.7×58.4×23.20ha/100 = 2.634㎥/s

    ■合計の排水量
    Q=Q1+Q2=1.059+2.634 = 3.693㎥/s

【付設】ここで行った造成地開発前の10年確率の流出量計算結果3.693㎥/sが、 本論P2の計算表の10年確率の合計Q=4.002㎥/sと異なるのは、流出係数の違いである。造成地建設前の建設地を河川砂防技術基準相当の値としており、後者は造成地開発後雨水排水計画の組合が示す流出係数を用いたものである。

これより、造成地開発前後の10年確率の流出量を比較すると
□ 造成地開発後 組合排水計画(10年:道路土工要綱による)Q=4.421 ㎥/s
■ 造成地開発前 河川計画の考え方               Q =3.693 ㎥/s

造成地開発による増加量は、10年確率の降雨時に、

4.421-3.693=+0.728㎥/s 増 となる。

また、増加率は、4.421 / 3.693 = 1.197倍 となり、約20パーセント増加することとなる。

 ここでは造成地開発前の到達時間(流域上流最遠点から排水地点までの流下時間)を、組合のコンクリート排水路が整備された状況の速い流速で試算しているが、本来造成前の流出速度は開発後より遅いため、洪水の集中も分散されて、到達時間も長くなり、造成地開発前の流出量がさらに小さかったことは容易に想定できる。

 

② 造成地開発前後のピーク流出量の比較(40年確率)

 前川や忠川の治水計画(H9河川法改正以降、河川整備計画・河川整備基本方針は未策定であり、河川法上の正式なものではないという前提)は、40年確率の流出量を算定している。一方、組合は10年確率の計画を立てたうえで、40年確率の前川の流量と比較しており、造成地雨水排水量と比較して過小評価をしている。実際40年確率の流出量について、前川にどのくらい負荷を与えるか、という計算をしてみる。

・本論での40年確率流出量:5.298㎥/s(本資料P2計算表)
・造成前の40年確率の想定流出量は以下に計算する。

造成地開発前の流出量(40年確率) Q㎥/s

■基準点1(造成地):t=25.1分
r1 = 2875 / (25.1^0.89+14.2) = 90.4mm/hr
Q1 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.6×90.4×9.30ha/100 = 1.401㎥/s

■基準点2(山地含む):t=33.9分
r2 = 1721/ (33.9^0.89+14.2) = 77.3mm/hr
Q2 =1/3.6× f・r・A = 1/3.6× 0.7×77.3×23.20ha/100 = 3.487㎥/s

■合計の排水量
Q=Q1+Q2=1.401+3.487 = 4.888㎥/s

【付設】この造成地開発前の流出量計算結果である4.888㎥/sが、本論P2の計算表の40年確率の合計Q=5.298㎥/sと異なるのは、流出係数の違いである。そして、造成前の建設地を、河川砂防技術基準相当の値としている。後者は、造成地開発後の雨水排水計画における道路土工要綱に基づく最大値であり、組合が計画の流出係数を用いたことによる。

 これより、造成地開発前後の40年確率の流出量を比較すると

□造成地開発後 組合排水計画諸元(道路土工要綱の最大流出係数)Q=5.298㎥/s
■造成地開発前 河川計画の考え方(流出係数、降雨強度式)   Q =4.888㎥/s

造成地開発による増加量は、40年確率の降雨時に、

5.298-4.888=+0.410㎥/s 増であり

増加率は、5.298 / 4.888 = 1.084倍 となり、約8パーセント増加することとなる。  ここでは造成地開発前の到達時間(流域上流最遠点から排水地点までの流下時間)を組合のコンクリート排水路が整備された状況の速い流速で試算しているが、本来、造成前の流出速度は開発後より遅いため、洪水の集中も分散されて、到達時間も長くなり、造成地開発前の流出量はさらに小さかったことは容易に想定できる。

③ 造成地開発前の休耕田の貯留による流出抑制効果

 造成地開発前の状況において、山地も含む休耕田の流域の流出量は、一旦休耕田(造成地開発区域と同等)である低地に湛水し、忠川へ排水されると考えられる。この貯留する容量Vは、休耕田の深さを、あぜ道等と想定して平均的に30cmとし、組合の建設地面積(雨水排水計画P4)0.032+0.004=0.036 km2を用いると、

貯留V㎥/s=0.3m×(0.036×1000×1000)m2 = 10800 m3

この休耕田の湛水、貯留容量は、10800 m3程度を見込めることとなる。ここで前期記、表―4 忠川流出量による前川氾濫水深Hの推定表における氾濫容量(忠川への流出)と比較すれば、50年確率降雨での流出氾濫量 V=9905 m3は、全て貯留されるため、忠川及び前川への流出量は、0m3とできる効果がある。
 仮に平均的に20cmの湛水深と想定しても、貯留容量は

貯留Vm3=0.2m×(0.036×1000×1000)m2 = 7200 m3

となり、同じく表―4における氾濫容量Vは10年確率で7204 m3をほぼ貯留、調節できる効果を持っていたと推算できる。

このように休耕田における貯留効果は、少なくとも10年確率~50年確率を有しており、忠川、前川へのピーク排水量を0m3と出来ていたことがわかる。故に、造成地盛土、開発により、流出係数f=1.0(造成地への流出量を全て排水する)を想定した組合の計画は、この造成前の貯留効果を無にするものであり、同等の貯留容量を持つ雨水貯留施設を設置しなければ、忠川を通して流下能力の不足している前川で洪水氾濫を起こすことは明らかである。

※組合造成地の雨水排水施設の流下能力5.12m3/s(施設断面の余裕を含む:10年確率)は、本来忠川の流量が0m3/で計画されているので、仮に前川合流河川の計画流量170m㎥/s (40年確率)との比較をするとしても3.0%となり、1.0%を超えるため、雨水貯留池などの流出抑制施設を設置しなければ、前川への氾濫被害を助長することになる。と共に「山形県河川流域開発に伴う雨水排水対策;第6条(調節地の設置基準)」によれば、1%を超過するため、この対策を行っていない組合の雨水排水計画は、前川へ重大な負荷を与えるものである。

仙台高裁からの造成工事仮処分決定書について | 山形県上山市川口清掃工場問題

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 守る会は、山形広域環境事務組合が進める上山市川口の公称「エネルギー回収施設」 敷地造成工事に対して工事の禁止を求め、とりあえず仮処分命令申し立てを山形地方裁判所に行いました。
 その後に審尋を経て、山形地裁によりこの申し立てが却下されたため、仙台高等裁判所に即時抗告を行っていました。その結果が守る会弁護士に届きましたので、ご報告致します。 これまでの経過は以下の通りです。

平成27年 8月中旬 組合が突然造成工事開始
平成27年10月28日 守る会は山形地裁に工事差止を求める
「仮処分申立書」を提出
同時に組合監査委員宛住民監査請求を求める
                             ↓
後日監査委員が棄却したため、住民訴訟を提起
平成27年11月 4日 山形地裁にて、平成27年(ヨ)第16号第1回審尋
平成27年11月 6日 守る会が申立書の一部変更・差し替え
平成28年 2月22日 組合より証拠乙1号証が届く
平成28年 2月24日 組合が第1準備書面(守る会の申立書に対する反論)を提出
平成28年 2月26日 山形地裁にて、平成27年(ヨ)第16号第2回審尋
平成28年 4月26日 山形地裁にて、平成27年(ヨ)第16号第3回審尋
守る会が「仮処分命令申立書訂正申立書(2)」提出
組合が「上申書」と証拠乙1号証の2提出
         ↓
どちらも証拠は出尽くしたとして【結審】
平成28年 5月12日 平成27年(ヨ)第16号造成工事禁止の仮処分命令
申立事件【決定文】が守る会弁護士宛に郵送される
【債権者(守る会)らの申立てをいずれも却下する】
平成28年 5月23日 守る会は仙台高等裁判所に「即時抗告状」を提出
平成28年 5月31日 敷地造成工事完了
平成28年 6月30日 組合が仙台高裁へ「答弁書」提出
平成28年 7月19日 守る会が仙台高裁へ第1準備書面提出
(平成28年(ラ)第 91号)
平成28年 9月20日 仙台高等裁判所より守る会弁護士宛【決定文】が届く
平成28年(ラ)第91号
【本件抗告を棄却する】

 9月20日に届いた、上記の平成28年(ラ)第91号造成工事禁止の仮処分命令申立却下決定に対する即 時抗告事件(原審:山形地方裁判所平成27年(ヨ)第16号)の決定文を公開致します。
*プライバシーに配慮し、個人名は削除致しますのでご了承下さい。


平成28年(ラ)第91号 造成工事禁止の仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件(原審・山形地方裁判所平成27年(ヨ)第16号)

決定

(**省略**)

主文

1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

1 抗告の趣旨及び理由の要旨
本件抗告の趣旨は,原決定を取り消し,原決定別紙物件目録記載の各土地( 以下「本件土地」という。)において,同工事目録記載の造成工事(以下「本件造成工事」という。)を行ってはならないとの裁判を求めるものであり,その理由の要旨は,以下のとおりである。
本件造成工事は,現況,そのほとんどが休耕田で低湿地のような状態にある本 件土地を清掃工場の敷地として造成する工事であり,本件造成工事が完成すると, 本件土地の雨水浸透量を大きく低下させ,本件土地から忠川への雨水排水量が増加し,忠川や忠川と合流する前川が溢水し,又は,本件士地に雨水が滞留して忠川の護岸コンクリートが圧力を受けることで崩壊して同川が堰き止められ,氾濫するおそれがある。忠川又は前川流域付近において勤務ないし農業に従事してい る抗告人らの生命や身体等に著しい損害又は急迫の危険(人格権侵害)が生じる蓋然性が高いから,本件造成工事を差し止める必要性がある。

2 当裁判所の判断
(1)  抗告人らは,本件造成工事の完成により,従来,本件土地にあった3万5886㎡×50cm(忠川左岸の堤防との高低差) =1万7943㎥の貯水能力が失われるから,本件土地から忠川への雨水流入量が著しく増加すると主張する。 しかし,本件造成工事前の本件土地がすべて忠川護岸よりも低地であるというわけではないし,本件土地に流入した雨水については水路による排水も行われ ている(乙1の1) のであるから,本件土地全体に,水深50 cmの水槽に匹敵 する貯水能力があるかのような抗告人らの想定には,高低差を考慮し,貯水容量を7割(1万2560.1㎥)とし,流出計数を0. 7として貯水能力を想 定したからといって,何ら合理的根拠はない。抗告人らは,平成25年7月の大雨の際に,本件土地が冠水し,水が忠川の護岸コンクリートを越えて本件土地から忠川に流入した事実を指摘するが,この事実からは,本件土地に本件土 地の雨水浸透量を超える降雨があっても,その雨水のすべてが直ちに本件士地 の表層から忠川へ排水されるわけではなく本件土地に一定程度滞留(貯留)すること,その状態が一定時間続くと本件土地が冠水し,さらに降雨が続くと護岸コンクリートを越えて水が忠川に流入すること(その際には,本件土地に流 入した雨水の大部分がそのまま忠川に流入することも考えられる。),平成25 年7月の降雨の際に,上記雨水浸透量を超える降雨が実際に一定時間以上継続したこと(すなわち,本件土地には一定の貯水能力があるが,平成25年7月 にはその貯水能力を超える降雨があったこと)が推測されるだけであって,本件士地の貯水能力が抗告人らの主張するような量になることや本件士地から忠川に流入する水量の程度を想定する抗告人らの主張には,本件記録を精査しても何ら合理的な裏付けはない
。 他方,相手方は,本件造成工事の前後で,本件土地から忠川への雨水排水量は,基準点1 (忠川下流部の排水口)において0.140㎥/s増加するにす ぎず,基準点2 (忠川上流部の排水口)においては雨水排水量に変化はないと主張し,その旨を記載した雨水排水計画(甲16) を作成している。しかしながら,乙1の1によると,同計画は,簡単にいえば,降雨の際の本件土地から忠川への雨水排水量について,本件造成工事完了後の雨水排水量の計算値と, 本件清掃工場の建設地の開発面積0.036km2の流出係数を湛水した水田の流出係数(0. 7)に置き換えて計算した雨水排水量の計算値とを比較し,その差をもって本件造成工事前後の本件士地から忠川への雨水排水量の差としてい るものであって(乙1の1, 20~21 頁),本件造成工事前における本件土地 から忠川への雨水排水量については,近傍における雨量観測所の資料が得られないため,特殊係数法を適用するなど実証的な検証をしているわけではなく, 本件造成工事前の本件士地に一定程度存在していることが推測される上記の貯水能力について検討した様子はない(本件審理においても,貯水能力に関する抗告人らの主張に合理性はないという反論のみに終わっている。乙1の1, 2 2頁)。したがって,仮に,本件造成工事によって降雨の際に本件土地に流入する雨水が速やかに忠川に排水される状況になった場合に,本件土地から忠川へ の雨水排水量の増加量が基準点1 (忠川下流部の排水口)において0.140 ㎥/sにすぎず,基準点2 (忠川上流部の排水口)においては雨水排水量に変化はないという上記雨水排水計画の試算の合理性,正確性については,なお検討の余地がある。

(2)  しかしながら,疎明資料(甲38,乙2, 3) によると,本件造成工事は, 手直しの余地はあるとしても,平成28年5月27日頃までの間に完成したこ とが認められるから,本件申立ての利益は失われたというべきである。 また,この点をひとまず措き,上記(1)の点を踏まえて考慮しても,本件造成工事が行われた場合,本件土地から忠川への雨水排水量がどの程度増加するのかについては何ら明らかとはいえない(雨水排水量の増加量について,合理的 根拠を伴う具体的な主張や疎明はない。)。上記のとおり,平成25年7月の降雨の際には,本件士地が冠水し,溢れた雨水が護岸コンクリートを越えて本件土地から忠川へ流入したことが認められるところ,抗告人らは,それにより忠川が合流する前川が川口地区のみならず下流域広範囲で氾濫したと主張してい るが,相手方はこれを否認しており(原審答弁書6頁(力)),一件記録によっても, 平成25年7月の降雨の際に前川が川口地区のみならず下流域広範囲で氾濫したという事実の疎明はない。また,平成25年7月の本件土地から忠川への上 記の雨水の流入状況を示す抗告人ら提出の写真(甲19の1の写真1) を見て も,護岸コンクリートを越えて本件土地から忠川に流入している雨水の流入量が,前川下流域広範囲の氾濫を惹き起こす原因となるような規模であるとはにわかに認め難い。
 さらに,抗告人らは,本件造成工事で設けられる排水ゲートの構造を問題と し,忠川の水位が排水樋管の排水口よりも高くなって排水できない場合に,本 件土地に雨水が滞留するおそれがあるとも主張しているが,抗告人らは,本件 造成工事によって本件土地の貯水能力が失われる結果,本件土地から忠川へ流 入する雨水の量が増えることにより,忠川や忠川と合流する前川が溢水すると 主張しているのであり,本件造成工事完了後,本件土地から雨水排水計両にお いて想定されている排水ができなかった場合の危険性を主張するのは,本件士 地の貯水能力が失われることを問題とする前記の主張と基本的に矛盾しており (排水できなければ本件士地に雨水が貯留することは,本件造成工事の前後を 通じて同じはずである。),この点についての抗告人らの主張は採用することが できない。護岸コンクリートが劣化しているという主張も同様であり,護岸コンクリートが劣化していることによる崩壊の危険は,本件造成工事とは別の間題というほかない。

3 以上によると,一件記録によっても,本件造成工事が行われることにより,大雨の際に忠川や忠川と合流する前川が溢水し,又は,忠川の護岸コンクリートが崩壊して河川が氾濫し,忠川又は前川流域付近において勤務ないし農業に従事している抗告人らの生命や身体等に著しい損害又は急迫の危険(人格権侵害)が生じると一応認めることはできないから,抗告人らの本件申立ては理由がない。本件申立てをいずれも却下した原決定は相当であり,本件抗告は,理由がない。

よって,主文のとおり決定する。
平成28年9月20日
仙台高等裁判所第1民事部

裁判長裁判官 小野 洋一
裁判官 潮見 直之
裁判官 綱島 公彦

(**以下省略**)

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 一般市民が行政訴訟、または住民訴訟を行うためには、証拠集めが必要ですが、 そのためには行政等に対する「情報公開請求」を行います。情報公開請求は相手自治体に住民票があれば誰でも請求可能ですが、開示されるまで2週間の期間が必 要です。場合によっては(各自治体の情報公開条例に基づく)公開しなくてよいもの があり、検討して公開期日を延長できる場合もあります。
 仮処分申し立ては、期間が限られている中で急いで行う申し立てです。守る会は 平成27年8月に始まった造成工事に対し、情報公開請求を繰り返し、同年10月28日 に急ぎ仮処分申し立てを行いました。
 しかし、その後相手方の組合から、申し立てに対する反論である準備書面が届いたのは、申し立てから4か月近くを過ぎた2月のことでした。工期終了は5月31日予定で 期間が短い中、守る会はこれらの対応を不服として仙台高裁に抗告しましたが、それも「棄却」という結果になりました。
 「すでに工事は終了してしまった」ということですので、造成工事の仮処分事件は終了となりますが、この敷地造成工事については、組合に対する「公金差し止めを求 める住民訴訟」が残っておりますので、守る会は引き続きこちらの訴訟を続けて行く所存です。

■ 来る10月17日に山形地方裁判所において、山形広域環境事務組合に対する敷地造成 工事の住民訴訟(弁論準備)が、13:30から行われます。
平成28(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止請求住民訴訟事件

情報公開請求を通してごみ焼却施設本体の基礎に関する書類を受理しました | 山形県上山市川口清掃工場問題

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守る会は9月12日、組合に対し「清掃工場本体基礎に関する書類」を情報公開請求致しましたが、公開期限である9月26日までに書類を受理することはできませんでした。その理由は以下の通りです。

「公開請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記載されているため、当該情報に係る第三者に対して意見書を提出する機会を与える必要があり、期間内に公開・非公開の決定をすることが困難であるため。」

 この内容が書かれた「公開決定等期間延長通知書」が届き、またこの通知書には公開日は10月6日に延長されることが記載されていました。そして、その期限ぎりぎりの6日に情報公開請求文書を受理しましたので、公開致します。 

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山広環第318号
平成28年10月6日

行政文書部分公開決定通知書

山形県の環境と観光産業を守る会

山形広域環境事務組合
管理者 山形市長 佐藤孝弘

平成28年9月12日付けで請求があった行政文書の公開については、次のとおりその一部を公開することに決定したので、山形広域環境事務組合情報公開条例第11条第1項の規定により通知します。

請求があった行政文書の内容
上山市川口のエネルギー回収施設本体建設工事に関する
  1 基礎数量表(掘削土量を含む)
  2 基礎に関する図面の全て
   ○ 建築確認申請図書の構造図の基礎に関する図面の全て
  3 構造図(構造が明確に分かるもの)
   ○ 建築確認申請図書の構造図の一部
  4 作業工程表
   ○ 作業工程表(マスター工程表

 

公開の日時
平成28年10月6日 午前 11時00分

公開の場所
山形広域環境事務組合 管理課(山形市役所10階)

公開することができない部分及びその理由
上山市川口のエネルギー回収施設本体建設工事に関する
  1 基礎数量表(掘削土量を含む)
   ○ 該当する行政文書が不存在(現時点では作成していない)のため。
  2 基礎に関する図面の全て
   ○ 建築確認申請図書の構造図の基礎に関する図面の内、寸法等、個人名、個人の印影、一級建築士大臣登録番号、建築士証交付番号。
    • 山形広域環境事務組合情報公開条例第8条第3号に該当
    (理由)法人の生産技術に関する情報で、公開することにより、 営業活動等事業活動上の正当な利益を害するおそれが あることが明らかであるため。
    • 山形広域環境事務組合情報公開条例第8条第2号に該当
    (理由)個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るため。
  3 構造図(構造が明確に分かるもの)
   ○ 建築確認申請因書の構造図の内、寸法等、個人名、個人の印影、 ー級建築士大臣登録番号、建築士証交付番号。
    • 山形広域環境事務組合情報公開条例第8条第3号に該当
   (理由)法人の生産技術に関する情報で、公開することにより、 営業活動等事業活動上の正当な利益を害するおそれが あることが明らかであるため。
    • 山形広域環境事務組合情報公開条例第8条第2号に該当 (理由)個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るため。

所管課

山形広域環境事務組合 管理課
電話番号023-641-1844 (内線912)

備考
1 公開の日時に都合が悪い場合には、あらかじめ所管課へご連絡ください。
2 行政文書の公開を受ける際には、この通知書を係員に提示してください。
3 この決定(以下「処分」といいます。)に不服がある場合は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、管理者に対し、審査請求をすることができます。
また、処分の取消しを求める訴えは、処分があったことを知った日(審査請求をした場合 にあっては、当該審査請求に対する裁決があったことを知った日)の翌日から起算して6か 月以内に、山形広域環境事務組合を被告(管理者が被告の代表者となります。)として提起することができます。


■ 今回情報公開請求した結果は以下の通りです。

1 基礎数量表(掘削土量を含む) → 不存在  
2 基礎に関する図面のすべて → これがすべてかどうか不明の上、数字はすべて黒塗り  
3 構造図(構造が明確にわかるもの)  → これがすべてかどうか不明の上、数字はすべて黒塗り  
4 作業工程表 → 開示  

情報公開請求項目は4点ですが、1の基礎数量表は「不存在」と記載されているため、公開できないということです。本体の基礎を打つために、どれだけの土を掘削するか計算して見積も ることは常識で、この書類がないとは信じがたいことです。組合は掘削の数量も分からずに仕事を発注し、現在掘削作業を行 っていることになります。

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 基礎数量表が不存在であること、図面の数字が消されていることは、全く理解することができません。基礎の寸法を公開できない理由は以下の通りです。

「法人の生産技術に関する情報で、公開することにより、営業活動等事業活動の正当な利益を害するおそれがあることが明ら かであるため」

また、4の作業工程表は公開されましたので、掲載致します。

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■ 来る10月17日に山形地方裁判所において、山形広域環境事務組合に対する敷地造成工事の住民訴訟「平成28(行ウ)第1号 上山市清掃工場用地造成工事公金支出差止 請求住民訴訟事件 」が、13:30から行われます。

川口の造成地で掘削工事が始まりました!| 山形県上山市川口清掃工場問題

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 山形広域環境事務組合は、去る8月4日に安全祈願祭を行い、8月26日より清掃工場の建設予定地に資材等の搬入を開始しました。現在は敷地全周囲は塀で囲われ、掘削工事が始められています。

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上山市道から見た敷地全体状況

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敷地奥の本体建設エリアでは、掘削工事が行われているようです。

 以上の経過から守る会は、9月12日、組合に対し新たに情報公開請求を行いました。請求の内容は掘削に必要な基礎の図面と、基礎数量表です。8月22日に山形県から公開された白塗りの図面からは、掘削の深さや、基礎の形状を知ることはできません。

 折しも、東京都の豊洲市場では本体が完成してから、基礎に関する不明瞭な点が発覚し、問題となっております。基礎は本体を支える上で重要な役割を果たしますが、本体が建ってしまうと、地下の内部を調査することは、非常に困難です。まして、ガス化溶融炉工場は超高温を発する建物であり、各地で事故も起きています。住民が安全を確認したい気持ちは、当然のことと思います。

 前回の図面に関する情報公開請求時には、「第三者に関する情報が含まれているため、公開できない」という理由で、一部公開の上、数値は白塗りでしたが、基礎に関してはプラントに関する企業秘密は含まれていないと、守る会は考えております。

 9月12日に請求した情報については、通常2週間以内(9月26日)までに公開すべきですが、またも公開日延長という通知書が届きましたので、公開致します。プラントに関する図面ではなく、あくまで基礎のみに関する情報公開請求です。期限を延長する理由を理解す ることは、非常に困難です。図面も示さずに、掘削を続けるという ことでしょうか。

   延長された10月6日までの公開日を待ちたいと思います。

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本体建設に関する「設置届」書類が情報公開されました

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 山形広域環境事務組合が、上山市川口の造成地に公称「エネルギー回収施設」を設置しようとする際は、山形県に対し「設置届」を提出しなければなりません。この設置届がいつ山形県に提出されるか分からないため、守る会は平成27年12月10日に株式会社神鋼環境ソリューションが落札して以降、組合や山形県に対し情報公開請求を行って参りました。
 まず守る会は、組合に対して設計図の情報公開を求めましたが、「企業の秘密情報保護」との理由で、公開されたのは簡略な立面図4枚とパースのみであり、図面上の数値は「黒塗り」状態でした。これは、図面というよりは「絵」に近いといえます。これら組合の不誠実な情報公開の姿勢に、守る会は山形県に「設置届」の情報公開請求を行うことになりました。
 しかし、本体工事に関する設置届出書類写しの公開は困難を極め、公開日の延長を繰り返した結果、先月8月22日にようやく開示されましたので、その一部を公開致します。

本体建設工事の情報公開請求に関する山形県との経緯は以下の通りです。

平成28年07月08日(金) 山形県村山総合支庁(担当窓口)に対し情報公開請求。
「一般廃棄物処理施設設置届出書」はまだ届出されていない。
意思形成過程情報に該当しているため、不開示になる可能性が非常に高いとのこと。
平成28年07月12日(火) 山形県は、組合が提出した「設置届」を受理。
守る会は、山形県に対し「設置届出書」に関する書類のすべてを情報公開請求。公開までの期限は通常2週間であるため、7月26日までに情報公開されるべきであった。しかし、 届出を受け付けた日より30日間は検討が必要であるとの理由により公開までの期間が延長された。(8月12日まで)設置届に関し、印影を除く書類すべてを公開する予定とのこと。
平成28年07月13日(水) 山形県に対し「設置届出書」に関するデータ1項目を追加情報公開請求
平成28年08月05日(金) 設置届に関する審議会が開催され決定された
平成28年08月09日(火) 山形県循環型社会推進課より電話があり、公開日を8月19 日まで延長したいとのこと。守る会は県庁にて「開示決定期間延長通知書」を受理
平成28年08月22日(月) 7月12日に情報公開請求した「一般廃棄物処理施設設置届 出書」写しを受理。しかし、県と組合、企業との合議により公開されない書類あり。一部公開された図面の数値部分のほとんどは「白塗り」の上、ハッチングが掛けられた状態で、市民が施設の概要を知ることはほとんど不可能な状態。

以下、8月22日に公開された図面の一部を公開致します。数値のほとんどが「白塗り」されているため、建物の大きさや深さを知ることはできません。住民が施設の安全性を知る権利はないのでしょうか。何故、数値を隠す必要があるのか、まったく理解できません。

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外構工事が始まりました | 山形県上山市川口清掃工場本体建設工事

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山形広域環境事務組合は、去る8月4日に造成された川口の敷地で「安全祈願祭」を行いました。その後、おそらく8月26日頃から資材の搬入が始まり、外構工事に着工したと思われます。
 裁判は現在も5件継続されている状態で、来る9月13日(火)には敷地に入るための架橋工事に関する裁判が、2件行われます。この裁判に関し、守る会はすでに準備書面と新たな証拠を提出致しました。

■ この裁判(平成28年9月13日山形地裁)について
11:00~ 山形県に対する河川(忠川)占用許可取消請求行政訴訟
11:10~ 組合に対する架橋工事公金差止請求住民訴訟

 上山市川口に造成された敷地に入るためには、必ず敷地東側に接する一級河川忠川を渡らなければなりません。この忠川の上流には、 山形県が管理する「前川ダム」があり、増水時には忠川に放水する ことも想定されています。そして、平常時の水量は0㎥/sと定められ ています。前川ダム工事に伴い昭和57年に竣工した忠川整備工事により、忠川はコンクリート三面貼りとなりました。ごみ焼却場建設予定地は、かつて田畑であり、当時の忠川護岸はその用途に応じた設計になっています。忠川を渡り農作業をするために、当時農業用の橋が架けられました。
 しかし平成24年、敷地はゴミ焼却場建設予定地となったため、 多くの車両に対応できる橋が必要となり、組合は平成26年に新たな架橋工事を計画しました(平成26年9月山形県へ河川占用許可申請)。 両岸に長いコンクリートパイルを打ち込む「イージーラーメン橋」です。 この新橋は平成27年3月に竣工しましたが、この架橋工事が適切であ ったかどうか、現在組合に対し訴訟を継続中です。また、この架橋工事に際し、忠川を管理する山形県が忠川の河川占用許可を出したこと についても、訴訟が継続されています。  
 もし、この「しんちゅうかわばし」工事が不適切となれば、工事トラック等が敷地に入ることは不可能となると思われます。

f:id:mamorukai:20160905230819j:plain忠川左岸沿いに組まれた鋼管

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掲げられた工事用看板(工期は平成28年2月17日~平成30年11月30日)

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忠川上流部から見た「しんちゅうかわばし」

澄んだ空気と水 第50号 2016.08.27 (土) 発行

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49号の続き

ごみ弁連が 上山市川口の予定地等を視察しました

 平成28年8月1日(月)午前中、ごみ弁連(たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会) は総会を行い、次年度の開催地を東京都に決 定致しました。今回の集会では、福島県由来 の放射能ごみに関連した事例が多く、その深刻な状況が発表されました。放射性ごみが、 福島県のみならず、全国的な問題になっていることは、今後の大きな課題です。その後希望者は、流動床式ガス化溶融炉建設が予定されている上山市川口へ向かい、 高さ400m程度の里山と、一級河川忠川(前川ダム放水路)、JR山形新幹線(奥羽本線)に囲ま れた造成済みの敷地を視察。河川の専門家より、敷地と河川の複雑な関係について説明を受けました。敷地造成工事が、忠川やその下流の前川に与える影響について、様々な意見が 出されました。このような議論を、上山市市民検討委員や組合、議会がかつて行い、検討したことがあったでしょうか。はなはだ疑問に思われます。敷地選定の初歩的なミスではないかという意見も聴かれました。

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造成された敷地を視察する参加者

長井市レインボープラン視察について

 ごみを焼却すること自体に大きな問題があることは、ごみ弁連では共通の認識ですが、ごみを安全に処理する方法について考えることは、非常に重要なことです。前日、青山氏の講 演ではカナダの事例が示されましたが、県内での独自の取り組みを視察させて戴くため、山形県長井市へ向かいました。
 長井市は、上山市から車で約1時間弱の人口27,745人、9,687世帯(平成28年3月)の町 です。自然と共生しながら関わり合いを続けてきた長井市は、平成元年に「不伐の森条例」 を制定し、市民が未来永劫巨木と森の自然を育む聖域づくりに取り組む決意を世界に発信しました。そのような長井市では、土・農・食という「いのちの根幹」への危機感が募る現代 において、食といのちの安全を未来につなげる地域循環づくりに「官」「民」の隔てなく、市民 一体となって「レインボープラン」に取り組んでいます。長井市では、このプランを「ごみ処理事業」として捉えていません。昭和30年代以降の「大量消費社会」により、疲弊した土や低い自給率を背景にして生まれた「循環型社会実現のためのプラン」だということでした。
 レインボープランに関する基本的なレクチャーを受けた後、説明を伺いながら、たい肥化工場を視察しました。工場は、住宅が散らばる田園風景の中に、複数棟建っていました。
 生ごみは、各家庭でよく水切り後、分別して、 週2回集荷所のコンテナへ出し、コンポストセンターへ運ばれて、たい肥化されます。完成した堆肥は、長井市内で使われ、それによってできた作物も、長井市で消費されるという地産地消を実行しています。
工場は非常に開放的で、通風に配慮されています。プラントはアナログ式で、自然の力を借りて稼働している様子が分かります。驚いたことにこのプラントは、ガス化溶融炉を製作しているメーカーのものでした。自治体は、どちらの方式でも選ぶことが可能な訳ですが、小さな自治体は費用負担と維持管理費の少ないコンポスト方式を採用する方が得策だと思えました。特に、難しい高度な技術は必要がないので、地元の方でも働くことができます。こちらの工場は海外からの視察も多いということですが、納得できました。

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コンポストセンター

コンポストセンターの概要
工期 平成8年着工竣工 約8ヶ月間
工費 3億8522万円(税込)
処理量 2,400トン/年 (9トン/日)
敷地 9,690㎡
建物面積 2,008.8㎡(平屋建)
請負業者 (株)荏原製作所
補助事業 地域資源リサイクル推進整備事業
(農林水産省補助)

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内部は非常に開放的

 一方人口25.42万人の山形市は、山形県の県庁所在地であり、隣接する上山市、山辺町、中山町と二市二町合同でゴミ処理を行っています。山形市上山市にそれぞれ150トン/日の流動床式ガス化溶融炉を建設し、焼却するとしていますが、その山形市もすでに「生ごみの資源化」を行っています。都市部では生ごみの収集は難しい点もありますが、これらの処理システムを拡充することで、対応が可能かと思えます。現在、生ごみの処理を各家庭で行う場合、住民であれば市から費用の2分の1が補助されますが、その補助率を上げることはできないでしょうか。焼却場で処理する場合、個人負担はゼロですが、焼却場(公称エネルギー回収施設)の建設費や周辺整備費、運営費等に莫大な費用が掛かり、結局国民の税負担となります。生ごみの各家庭処理を拡大することにより、これらの税負担を軽減し、安全に処理することが可能です。行政は現在行っている政策を推進すればよく、決して難しいことではありません。広域処理に頼る時代ではないと思います。

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山形市の「ごみ減量・分別大百科」より抜粋

 現在山形市では、きちんとゴミの分別が行われており、生ごみは焼却するものの、他のゴミはそれぞれリサイクルされています。現在の燃えるゴミを、各家庭で処理できるようになれば、焼却場はほとんど不要になります。焼却することのデメリットは、これまで再三述べてきたので割愛しますが、市民も行政もここまで分別の努力を重ねながら、何故焼却場の規模を変更しようとしないのでしょうか。
 溶融炉が完成すれば、生ゴミだけではなくプラスチックごみも混焼してしまう危険性があります。さらに、これまでストーカ式炉では焼却できなかった粗大ゴミ等も、溶融できることになります。溶融炉の導入により安易に焼却物の幅を広くし、これまでの努力を無にすることは、ごみ削減政策と矛盾することになると思えます。

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 現在、これだけの分別が行われ、リサイクルを推奨しています。ごみの8割を占める燃えるごみが、家庭内処理やリサイクルされれば、焼却炉も、排出される厄介な焼却灰も削減され、最終処分場を探す必要も無くなるはずです。それは、決して困難なことではなく、これまで進めてき た政策を拡大すればよいのです。多額の税金を要し、安全性に疑問が残るガス化溶融炉政策 を是非見直して戴きたいと、守る会は考えております。これまで、何故このような話し合い に応じて戴けなかったのか、裁判に至ったことを非常に残念に思います。

次回裁判予定

平成28年 9月13日(火)11:00~ 山形県に対する河川占用許可取消請求行政訴訟(山形地裁)
平成28年 9月13日(火)11:10~ 組合に対する架橋工事公金差止請求住民訴訟(山形地裁)
平成28年10月17日(月)13:30~ 組合に対する造成工事公金差止請求住民訴訟(山形地裁)

<紙名〈澄んだ空気と水〉の命名意図>

生物は太陽の光と熱により生息し、空気と水の環境度合いによって生命の維持が左右されています。この会は、わが故郷・緑多き山形が、でき得る限り澄んだ空気と水を維持し、地球汚染の要因とならぬよう努力して行きたいという理念に由来しています。

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